時局処理方策(ひらがな化、一部新字体化)
昭和六年十月八日
時局処理方策
一、解決方針
(イ)満蒙問題は支那本部より分離して満洲に樹立せらるへき新政権と交渉し根本的解決を期す
但し新政権の樹立を待つことなく満蒙各地に成立する地方機関と交渉し局地毎に我権益の実現に努む
(ロ)支那本部に対しては排日行為を根絶し通商貿易を円滑ならしめむことを期す
之か為要すれは武力を行使することあるへし
(ハ)第三国(者)に対しては極力諒解を得るに努め不法なる干渉は之を排除す
二、解決要領
其一、満蒙に関するもの
(イ)満蒙に樹立すへき新政権は我帝国に信倚するものなるを要し其樹立には絶対に表面的関与を避け裏面的に助力を与ふ
(ロ)新政権樹立迄に相当の時日を要すへきも既に満蒙各地に地方政権成立しつつあるを以て之等政権と各地毎に成るへく速に既得権益の実現に努む
(ハ)支那本部所在の政権とは満蒙自体の問題に関する交渉は之を避く
(ニ)満蒙に於ける新政権及地方政権に対し容認せしむへき解決事項別紙の如し
(ホ)関東軍司令官隷下部隊は問題解決迄概ね現在の態勢を保持し且治安維持の為必要なる行動を取らしむ
其二、支那本部に関するもの
(イ)支那本部政権に対し排日排貨等不当不法の行為を即時停止し且将来に亘り之か根絶を期すへきことを要求し同時に右政権にして之に応せさるか又は之を事実に現はし得さる場合に於ては帝国は必要にして有効なる措置を取るへき旨を通告し且之を中外に声明す
(ロ)現地に於て帝国居留民を保護するの必要生するに於ては概ね之を北平、天津、青島、漢口、上海、厦門等に集合し長江沿岸、青島、厦門等に於ては海軍之か保護に任し北平、天津に於ては所要の陸兵を派遣し之か保護に当らしむ
情況之を要すれは青島又は上海に一部の陸兵を派遣す
其三、国民指導並宣伝
(イ)国民に対し時局に関する理解認識を徹底せしめ挙国一致目的の貫徹に邁進す
(ロ)対外宣伝並列国の諒解を得ることに努め以て第三国(者)の干渉を防止す然れとも尚且其干渉を見る場合に於ては断乎として之を排撃す
別紙
満洲新政権及地方政権に対し容認せしむへき解決事項
一、従来の諸懸案に関する主なる事項(速に具現策を講す)
1.鉄道問題
(イ)吉敦線の延長工事
(ロ)長大線の敷設
(ハ)吉敦、洮昂及四洮各鉄路局の会計管理
2.商租問題-満洲の解放
3.不当課税問題
二、将来商議協定すへき事項
1.交通運輸政策(空輸権を含む)就中在満蒙鉄道(満鉄を含む)日満合弁経営
2.金融に関する諸問題
3.関税に関する問題
4.資源の一般解放
5.赤化防止問題
三、本事変の直接善後処理として要求すへき事項
1.排外的不法諸法令、諸施設等の即時撤廃及之に関する将来の保障
2.満蒙に於ける治安警察を刷新完備せしむること
3.満蒙政権に属する兵力は前項警察力と相俟ちて治安維持に必要なる最小限に止むること
4.満洲に於ける治安維持上必要とする我軍の行動の自由を獲得すること
5.損害の処理
(国立公文書館:20.時局処理方策 10月8日 C12120034500)
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