連盟総会における日本代表の引揚げその他対策に関する閣議決定(ひらがな化)
昭和八年二月二十日 閣議決定
一、帝国政府は二月一日閣議決定の結果臨時総会に対する帝国代表に対し同総会か規約第十五条第四項の適用に移りたる場合我方に於て連盟脱退の措置に出つるや否やは同項に基く報告書の内容を慎重検討したる上自主的に之を決定すヘきことを電訓せる次第なり
二、然るに今般連盟側の提示し来れる報告書案に依れは帝国代表の努力に拘らす我か対満方針と相容れさる所述並に勧告を為し居る処我方としては連盟の態度如何に拘らす既定の方針を遂行せさるを得す従て総会に於て該報告書案の採択を見る場合には帝国政府としては帝国と連盟との関係に付連盟脱退の方針を定め帝国憲法上の手続を執るの要あるに付我方としては差当り左記手順に依り臨時総会に対する帝国代表の引揚を行ふと共に総会の採択せる報告書に対し第十五条第五項に基く陳述書を公表すヘし
(一)引揚の時期は総会に於て我方の立場を闡明する声明をなし且報告書の採択に対し反対投票をなしたる上即時之を行ふこと
(二)前記引揚は臨時総会閉会に伴ふ当然の引揚と同一視せられ其の政治的効果面白からさるに付前項の声明中には「総会の採択せる報告書は我方の承認し得さるものにして茲に帝国政府は日支紛争事件に関し連盟と協力し得る限度に達したるものと認むると共に帝国と連盟とは東洋平和の確立に関する所信を異にせることを体得せり」等の趣旨を明示すること
三、尚愈々連盟脱退の場合には之に伴ふ内外機微の情勢に対し特に慎重の考慮を払ひ善処するを要するを以て既定の対満方針に邁進する一方対支、対露其の他欧米諸国との関係に於ては努めて公正の態度を持し厳に事端の発生を避くると共に一般的平和事業には引続き誠意を以て参与するの方針を執り以て脱退に伴ふ内外の不安を緩和するに努むヘく而して右趣旨を中外に徹底せしむる為厳粛にして適切なる手段を講すヘし
(日本外交文書デジタルコレクション 満洲事変第3巻P509~510)
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