新中央政府樹立方針(ひらがな、新字体化)
新中央政府樹立方針
昭和十四年六月六日
五相会議決定
一、新中央政府は汪、呉、既成政権、飜意改替の重慶政府等を以て其の構成分子となし支那側の問題として此等の適宜協力に依り之を樹立すへきものなり
二、新中央政府は日支新関係調整に関する原則に準拠して日支の国交を正式に調整すへく之か構成分子は予め右原則を受諾すへきものなり
三、新中央政府の構成並樹立の時期は全局に亘る戦争指導上の段階に即し自主的見地に基きて律せらる之か為特に人的要素及基礎的実力の具備を必要とす
四、支那将来の政治形態は其の歴史及現実に即する分治合作主義に則るへきも其の内容に関しては日支新関係調整方針に準拠し北支を国防上及経済上(蒙彊は特に高度の防共自治区域)又揚子江下流地域を経済上の日支強度結合地帯とし南支沿岸特定島嶼に特殊地位を設定するの外内政問題として支那側に委するを本則とし努めて之に干渉することを避く特に新中央政府の形態に即し且其の為政者の意思を尊重すると共に既成政権に対する我特殊関係の処理を考慮す
五、国民党並三民主義に関しては容共抗日を放棄し親日満防共を方針とする如く改むるに於ては他の親日防共を主義とするものと等しく其の存在を妨けす
六、重慶政府か抗日容共政策を放棄し且所要の人的改替を行ふこと並前記第一及第二項を受諾したる場合には之を屈伏と認め新中央政府構成の一分子たらしむ
別 紙
「汪」工作指導腹案
一、指導の方針
汪をして呉及既成政権等と協力し文武の実力を具備せる強力なる政府を樹立せしむ之か為先つ所要の準備をなさしめ且其の間特に重慶政府諸勢力就中其の要人の獲得に努力せしむ
二、指導要領
1.汪をして呉及既成政権等と協力し強力なる政府を樹立する為所要の準備工作をなさしむ
而して準備工作は基礎地盤の設定、対重慶工作、既成諸勢力の糾合、資金準備、兵力整備等の各般に亘るものとし之に対する我方の表面的干与は努めて之を制限す
2.新中央政府の樹立は我自主的戦争指導の段階に即応して律せらるへく之に関し帝国として汪に要望すへき条件左の如し
イ、新中央政府樹立準備期間に於て汪、呉、既成政権等相協力し極力重慶政府諸勢力就中其の要人を獲得するに努むると共に基礎地盤を確立し以て文武の実権を具備せる強力なる政府を樹立せしむ
ロ、新中央政府は日支新関係調整に関する原則を認むへく之か樹立時機並其内容等は右準備工作の進展、就中人的要素及基礎的実力の具備の報度により日本側と協議の上之を定むるものとす但し支那将来の政治形態は分治合作の主義に則り其内容は日支新関係調整方針に準拠し北支を国防上及経済上(蒙彊は特に高度の防共自治区域)又揚子江下流地域を経済上の日支強度結合地帯とし南支沿岸特定島嶼に特殊地位を設定することを受諾せしむ、又既成政権に対する我特殊関係に就ては十分考慮せしむ
ハ、国民党並に三民主義に関しては容共抗日を放棄し親日満防共を方針とする如く改むるに於ては他の親日防共を主義とするものと等しく其存在するを妨けす
ニ、事変中我か占拠地域内に於ては日本側の認めさる国旗等を掲揚するを許さす
三、所要経費
本工作実施の為規定経費以外の支出を必要とする場合は別途考慮するものとす
四、本工作に関しては日本側として必要の積極的内面支援を与ふるものとす
(注)呉及既成政権等に対しても亦汪と協力せしむる如く工作するものとす
(備 考)
応 対 要 領
(イ)事変処理の方針を自主的に堅持し其根本方針に就ては汪をして服従せしむるも其他は彼の意思を暢達せしめて前途の光明と絶対信頼の印象とを付与す
特に東亜新秩序建設乃至日支関係調整に関する信念、事変処理に関する決意並我正義と寛容とを宣示することを主眼とし細部に迄立入りて詮議立てせさるものとす
(ロ)汪に面接する範囲は五相及近衛前総理と予定す
Source:(国立公文書館:6 重要決定事項(其ノ一) 2 B02030545700)
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