日支新開係調整要綱(ひらがな化、一部新字体化)
日支新關係調整要綱
一、日支両国政府は別記「日支新関係調整に関する基本原則」に準拠し新国交を調整すること。
二、新国交修復以前に於て、既成政府の弁じたる事項は差当り之を継承し、事態之を許すに伴ひ第一項の原則に準拠して調整せらるべきこと。
三、事変継続中は之に伴ふ特殊の事態の存在を諒解すること。
右特殊事態は情勢の推移乃至事変の解決に伴ひ第一項の原則に準拠し整理せらるべきこと。
〔別 記〕
一、日支新関係調整に関する基本原則
日満支三国は東亜に於ける新秩序建設の理想の下に相互に善隣として結合し、東洋平和の枢軸たることを共同の目的と為す。之が為基礎たるべき事項左の如し。
左 記
一、互恵を基調とする日満支一般提携就中善隣友好、共同防共、経済提携原則を設定すること。
二、北支及蒙疆に於ける国防上並に経済上日支間の緊密なる合作地帯を設定すること。
蒙疆地方は前項の外特に防共の為軍事上並に政治上特殊地位を設定すること。
三、揚子江下流地域に於て、経済上日支間の緊密なる合作を具現すること。
四、南支沿岸特定島嶼に於ける軍事上緊密なる合作を具現すること。
五、右諸項の具体的事項に関しては「日支新関係調整に関する具体原則」に準拠し、所要の協定を締結すること。
二、日支新関係調整に関する具体原則
第一、善隣友好
日満支三国は相互に本然の特質を尊重し、緊密に相提携して東洋の平和を確保し、善隣有効の実を挙ぐる為、各般に亘り互助敦睦の手段を講ずること。
一、支那は満洲帝国を承認し、日本は支那の領土及行政の保全並に主権の独立を尊重し、日満支三国は新国交を修復すること。
二、日満支三国は政治、外交、教育、宣伝、交易等諸般に亘り相互に好誼を破壊するが如き措置及原因を撤廃し、且将来に亘り之を拒絶すること。
三、日満支三国は相互提携を基調とする外交を行ふこと。
四、日満支三国は文化の融合、創造及発展に協力すること。
五、日満支善隣関係の具現に伴ひ日本は漸次租界、治外法権等の返還を考慮すること。
第二、共同防共
日満支三国は協同して防共に当る。
一、日満支三国は各々其の領域内に於ける共産分子及組織を芟除すると共に、防共に関する情報、宣伝等に就き提携協力すること。
二、日支協同して防共を実行すること。之が為日本は所要の軍隊を必要と定めたる地域に駐屯すること。
三、日支両国は共通の治安維持に関し協力すること。
四、支那は駐屯地域及之に関連する地域に存在する鉄道、航空、通信主要港湾及水路に対し、別に協定する所に従ひ日本の軍事上の必要事項に関し、其の要求に応ずること。
但し日本は平時に於て其の行政権及管理権を尊重すること。
(註)二、三、四に付ては軍機に亘り且つ支那側の対内工作等に影響あるを以て、取扱上特に注意を要す。
第三、経済提携
日満支三国は互助及防共の実を挙ぐる為産業、経済等に関し長短相補有無相通の趣旨に基き、平等互恵を旨とすること。
一、北支、蒙疆に於ける特定資源就中国防上必要なる埋蔵資源に関しては、共同防共及経済合作の見地より日支協力して開発し、其の利用に関しては支那の需要を考慮し、日本に特別の便宜を供与すること。其の他の地域に於ても、国防上必要なる特定資源の開発利用に関し、経済合作の見地より日本に必要なる便宜を供与す。但し利用に関しては支那の需要を考慮すること。
二、一般産業に就ては日本は支那との協議に基き、支那に必要なる援助を与ふること。
三、支那の財政、金融(特に新中央銀行の設立、新通貨の発行等)、経済政策の確立に関し、日本は支那との協議に基き支那に所要の援助を為すこと。
四、交易に関しては関税の自主と双方の利益とを尊重し、妥当なる関税及通関手続を採用する等、日満支間の一般通商を振興すると共に、日満支就中北支間の物資需給に就き、各自給を妨げざる範囲に於て便宜且つ合理的ならしむること。
五、支那に於ける交通、通信、気象及測量の発達に関しては、日本は支那との協議に基き支那に所要の援助及至協力を与ふること。
六、新上海の建設に付日本は支那との協議に基き、所要の援助及協力をなすこと。
第四、其の他
一、支那は別に定むる所に依り、日支協力事項に関し日本人顧問、職員を招聘採用すること。
二、日本は事変の為生じたる支那難民の救済に協力すること。
三、支那は事変発生以来、支那に於て日本国臣民の蒙りたる権利利益の損害を補償すること。
以 上
(国立公文書館:12.日支新国交調整方針要領(昭和15年1月8日閣議了解) B02030544300)
コメント
コメントを投稿