本土決戦完遂基本要綱(ひらがな化、一部新字体化)
本土決戦完遂基本要綱
昭和二〇・二・二六
参謀本部、陸軍省
一 帝国は本年中期を目途とし国土作戦準備を完成す 之か為省部真に一体となり 根本的戦政諸施策を概ね三月末頃迄に決定し且中央諸施策は即時開始し遅くも三月末迄に全面的発動を完了す
二 国家戦力の配分は新なる戦局に基く作戦上の要請を充足するを第一義として軍民需の間を調整す 尚AB間の配分に関しては両統帥部を中心とし陸海省部間に於て作戦に基く今後の戦備の大綱を決定したる上軍政当局に於て即時交渉を開始し速かに之を決定するものとす
之か為上下心を一にし上級者は陣頭に立ちて直接交渉に任する外有ゆる措置を講し以て陸軍の要求を貫徹す 本土に在る所要海軍部隊は適宜該方面所在陸軍指揮官の指揮に入らしむる外海軍保有の人員、資材、施設中所要のものを陸軍に転活用するに努む
三 国土決戦に応する必勝兵備を完整すへき国力の運営は秋期に於ける決戦即応を第一義とし国力の著しき低下は之を忍ふものとす
1 航空及限定せる特攻兵備は優先とし既定計画の完遂に努む
2 地上兵備は既定計画(装備に就ては別途研究す)を完遂す
四 輸送に関しては左の如く措置す
1 在大陸兵団資材等の内地還送は本秋決戦戦力の集中結成を第一義とし物動物資は第三項に即応し本年中期迄に戦力化可能なるものに限定す
但し糧秣は本年端境期頃に於ける需要をも顧慮し所要最低限量を還送す
2 本年秋期決戦に即応する如く船舶運行の最大能力を発揮する為船舶及港湾は陸軍主体となり軍に於て一元的に運用す 差当りC船の大部は陸軍に於て徴傭(使用)する外A、B船をして極力物動物資の輸送に協力せしむ
尚海上護衛特に朝鮮海峡の防衛を重視す
前諸項を急速に具現するため戦争目的完遂の根本問題として概ね三月末を目途とし左記施策を講す
左 記
新なる性格の大本営を設置し且内閣官制を改正すると共に特に陸海軍の統合を急速に断行し強力敏速なる作戦及戦争指導の実行を期す
筆者注 文中A-陸軍、B-海軍、C-民需の略号
(戦史叢書82大本営陸軍部<10>昭和二十年八月までP73~)
コメント
コメントを投稿