松岡=ヒトラー会談要領(ひらがな化、一部新字体化)
松岡外務大臣「ヒツトラー」総統會談記錄(要領)
昭和十六年三月二十七日午後四時より
総統官邸に於て
会談時間約二時間半
一、「ヒ」総統も戰況竝に欧州情勢に関し「リ」外相と大同小異の説明を為せるが、特異の諸点左の如し、
二、現在独は対蘇兵力として百五十箇師団を配置あり、而して欧大陸には敵とすべき兵力なきに依り要すれば全兵力を蘇連に向け得る状況にあり、蘇連のやることは結局共産主義の拡大にして「バルチツク」三国併合後の如きも完全なる暴圧政治を行ひ居り、全知識階級は何処にか消失せり、次に来るべき敵は米国及蘇連なり、
三、米国は英国に対する軍需品の供給と自己の軍備拡張に熱中しあり、而して更に参戦すると云ふが如き三つのことを行ふは中々困難なりと認む、蘇連は何をやるか分らず、或は英国側陣営に入ることも可能なり、自分は「スターリン」が斯くの如き賢明ならざる政策を採用するものとは思考せざるも、万一斯る事態発生せば百五十箇師の独軍は数ヶ月にして蘇軍を撃滅すべし、
四、自分は元来同盟は長年月に亘り利害の扞格生ぜざる国家間にのみ締結せらるべきなりとの信念を有し、青年時代より日本との提携を考へ来れり、独逸としては戦後「アフリカ」に植民地を建設することを以て足れりと為し居り極東植民地に手を触るる意志なく従て日本とは長年月に亘り提携し行けるものと確信し居れり、
五、世界新秩序建設には英国を打倒することお互に必要にして、而して前述の如く米国の参戦には困難あり、蘇連に対しては前述の如く独逸に確信あり、今次戦争はすでに独逸勝利し居れり、従て日本が立ちて新嘉坡を叩く絶好の機会にして右は英国打倒の為有効なるのみならず東亜に於ける新秩序建設の為にも必要なるべし、大事業を為すには常に果敢(Wagnis)を要すべく、日本の新嘉坡攻略を希望す、
(未完)
(日本外交文書デジタルコレクション:第二次欧州大戦と日本 第1冊
日独伊三国同盟・日ソ中立条約P336~)
コメント
コメントを投稿