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北支指導方策 1937年04月16日

 北支指導方策(ひらがな化、一部新字体化)


   北支指導方策  (昭和十二年四月十六日外務、大蔵、陸軍、海軍四大臣決定)

     方  針

一、北支指導の主眼は該地域をして実質上確固たる防共親日満の地帯たらしめ併せて国防資源の獲得並に交通施設の拡充に資し以て一は赤化勢力の脅威に備へ一は日満支三国提携共助実現の基礎たらしむるに在り。

二、右目的達成の為め差当り先つ北支民衆を対象とする経済工作の遂行に主力を注くものとす。然して右工作の遂行に当りては北支政権に対する内面指導の外南京政権に対する施策に依り同政権をして実質上北支の特殊的地位を確認し進むて日満支提携共助の諸施策に協力せしむる様指導するものとす。

     要  綱

一、北支指導に対する態度

  北支に対する我方の施策は同地域の地理的特殊性にも鑑み従来動もすれは支那並に列国に対して恰も帝国に於て停戦地域の拡張、満洲国の国境推進乃至は北支の独立等の企図を有するか如き誤解を与へたることなきに非す。仍て今後の対北支政策に当りては此の種無用の誤解を与ふるか如き行動は厳に之を慎むと共に先つ北支民衆の安居楽業を本旨とする文化的経済的工作の遂行に専念し以て我方所期の目的達成に資すること肝要なり。

  北支の文化的経済的開発に当りては努めて解放的態度を採り民間資本の自由なる進出を計ると共に冀察政権又は南京政権の要望にして其の至当なるもの又は面子上尤もなりと認めらるるものに対しては常に理解ある態度を以て臨むこと必要なり。冀東地区に於ける特殊貿易並に北支自由飛行の問題に関しては速に之か解決を計るものとす。

二、冀察政権の指導

  冀察政権に対する指導に当りては最も公明なる態度を以て臨み特に財政経済軍事等百般の事総て軍閥的秕政を清算して明朗なる地域を構成し民心の把握に努めしむるを要す。

三、冀東自治政府の指導

  冀東自治政府の指導に当りては特に其の内政の向上に努め産業の徹底的開発を行はしむると共に真に軍閥的搾取秕政なき安居楽業の模範地域たらしめ以て北支に対する帝国の公正なる真意を事実の上に具現せしむることに努む。

  前記施策に当りては冀東自治政府は結局単独に存立し得さるものなる点をも考慮に容れ北支諸政権指導上の障害となるか如き施措は之を為ささるを要す。

四、山東、山西、綏遠諸政権の指導

  此等諸政権特に山東に対する施策は日満支の融通提携を目的とする文化的経済的工作の漸進的遂行に依り帝国との連帯関係を一層密接ならしむるを以て主眼とす。

  右施策に当りては最も公正なる態度を以て臨み徒に民衆の感情を激発し支那側に排抗日の口実を与ふるの惧あるか如き政治工作は之を避くるを要す。

五、経済開発に関する方針

  北支経済開発は民間資本の自由進出を本旨とする我方権益の伸暢を図ると共に支那資本をも誘致し以て日支人の一致せる経済的利益を基礎とする日支不可分の事態を構成し平戦両時に於ける北支の親日態度保持に資せしむるを以て目的とす。特に国防上必要なる軍需資源(鉄、石炭、塩等)の開発並に之に関連する交通、電力等の施設は要すれは特殊資本に依り速に之か実現を図るものとす。

  尚経済開発に当りては第三国をして北支に於ける我か特殊地位並に権益を尊重せしむると共に第三国の既得権益は之を尊重し要すれは此等諸国の施設と合同経営し又は其資本材料等をも利用する等第三国特に英米との提携共助にも留意するものとす。

(国立公文書館:13 北支指導方策 B02030160100)

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