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第二次日露協約 1910年07月04日

第二次日露協約(訳文、一部新字体化)

日露第二囘協約
日本帝國政府及露西亞帝國政府ハ千九百七年七月三十日即露歴十七日ヲ以テ締結シタル協約ノ定ムル主義ヲ誠實ニ保持シ且極東ニ於ケル平和ノ確保ノ爲該協約ノ效果ヲ擴張セムコトヲ希望シ左ノ條款ヲ以テ該協約ヲ補成スルコトヲ協定セリ 
 第一條
兩締約國ハ列國ノ交通ヲ便易ナラシメ其ノ商業ヲ發達セシムル目的ニ依リ滿洲ニ於ケル各自鐵道ノ改善及該鐵道ノ聯絡業務整備ノ爲相互ニ友好的協力ヲ與フルコト並此ノ目的ノ遂行ニ有害ナル一切ノ競爭ヲ爲ササルコトヲ約ス
 第二條
兩締約國ハ孰レモ今日ニ至ル迄日本國ト露西亞國トノ間又ハ兩國ト清國トノ間ニ締結セラレタル一切ノ條約又ハ其他ノ約定ニ基ク滿洲ノ現状ヲ維持尊重スルコトヲ約ス
前記諸約定ノ謄本ハ日本國ト露西亞國トノ間ニ交換ヲ了セリ
 第三條
前記現状ヲ侵迫スヘキ性質ノ何等事件發生スルコトアルトキハ兩締約國ハ該現状ヲ維持スルニ必要ト認ムル措置ニ付協定セムカ爲相互ニ隨時商議ヲ爲スヘシ
右證據トシテ下名ハ各其ノ政府ヨリ正當ノ委任ヲ受ケ本協約ニ記名調印スルモノナリ
明治四十三年七月四日即チ露歴千九百十年六月二十一日(七月四日)聖彼得堡ニ於テ本書ヲ作ル
 本野一郎
 イズヴォルスキー
    
 
 祕密協約  
日本帝國政府及露西亞帝國政府ハ千九百七年七月三十日即露歴十七日聖彼得堡ニ於テ調印シタル祕密協約ノ條款ヲ確實ニシ且之ヲ擴張セムコトヲ希望シ左ノ諸條ヲ協定セリ
 第一條
日本國及露西亞國ハ千九百七年ノ祕密協約追加條款ニ定メタル分界線ヲ以テ滿洲ニ於ケル兩國特殊利益ノ各地域ヲ劃定セルモノト承認ス
 第二條
兩締約國ハ前記地域内ニ於ケル其特殊利益ヲ相互ニ尊重スルコトヲ約ス從テ兩締約國ハ各自カ其地域内ニ於テ該利益ヲ擁護防衛スルニ必要ナル一切ノ措置ヲ自由ニ執ルノ權利ヲ相互ニ承認ス
 第三條
兩締約國ハ孰レモ前記地域ノ限界内ニ於テ他ノ一方ノ特殊利益カ將來益々確保増進セラルヽ場合ニ何等之ヲ妨礙セサルコトヲ約ス
 第四條
兩締約國ハ孰レモ滿洲ニ於ケル他ノ一方ノ特殊利益ノ地域内ニ於テ何等政事上ノ活動ヲ爲ササルコトヲ約ス且日本國ハ露西亞地域内ニ於テ又露西亞國ハ日本地域内ニ於テ孰レモ他ノ一方ノ特殊利益ヲ害スヘキ性質ノ何等特權又ハ許與ヲ求メサルヘキ又日本國政府及露西亞國政府ハ孰レモ他ノ一方カ其地域内ニ於テ本日調印ノ公表協約第二條ニ掲クル條約又ハ其他ノ約定ニ依リ獲得セル一切ノ權利ヲ尊重スヘキモノトス
 第五条
兩締約國ハ其相互的約定ノ圓滿ナル實行ヲ期セムカ爲滿洲ニ於ケル各自ノ特殊利益ニ共通ノ關係アル一切ノ事項ニ付隔意ナク且誠實ニ隨時商議ヲ爲スヘシ
前記特殊利益カ侵迫セラルヽコトアルトキハ兩締約國ハ該利益ノ擁護防衛ノ爲共同ノ行動ヲ爲シ又ハ相互ニ援助ヲ與フルノ目的ヲ以テ執ルヘキ措置ニ付協議スヘシ
 第六條
本協約ハ兩締約國ニ於テ嚴ニ祕密ニ附スヘシ
右證據トシテ下名ハ各其ノ政府ヨリ正當ノ委任ヲ受ケ本協約ニ記名調印スルモノナリ
明治四十三年七月四日即チ露歴千九百十年六月二十一日七月四日聖彼得堡ニ於テ本書ヲ作ル
 本野一郎
 イズヴォルスキー
(外務省:日本外交文書第43巻第1冊3 第二回日露協商一件)

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