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斬奸状 1921年09月03日

内容見直し点:原本等と未照合

斬奸状(原文:ひらがな、一部新字体化)

 奸富安田善次郎巨富を作すとも富豪の責任を果さず国家社会を無視し貪慾卑吝にして民衆の怨府たるや久し余其頑迷を憐み仏心慈言雖も改悟せず由て天誅を加えて世の警めと為す

神州義団々長 朝日 平吾

死の叫び声

 日本臣民は朕が赤子なり臣民中一名たりとも其堵に安ぜざるものあれば是朕の罪なり――とは先帝陛下の御仰せなり。歴代の天皇も此大御心を以て国を統べさせ給い今上天皇陛下も等しくこれを体し給うものにして一視同仁は実に我が神国の大精神たり
 されど君側の奸陛下の御徳を覆い奉り自派権力の伸張を計るため各々閥を構え党を作りこれが軍資を得んため奸富と賊誼を結び奸富は利権を占めんためこれに応じ其結果は理由なき差別となり上に厚く下に薄く貧しき者正しき者弱き者を脅し窘虐するに至る。斯は歴代の内閣総べて然らざるなく元老其範を示し政界の巨星等しくこれが元凶たり元老範を垂れ元凶政事を為す。即ち知る可し藤田は伊藤博文の命により紙幣を偽造して男爵となり大倉は石塊の缶詰を納入して得たる不浄財の一部を献金して男爵となり山本権兵衛は軍艦を甜め、シーメンスを演じて巨財を作り大隈山県其他老星の豪奢は在閣時の悪徳に在り憲政会には岩崎控え政友会は満鉄と阿片とにて軍資を調達し其他の政治家顕官悉く奸富と通じ私利に汲々たり。而して之れありて濁富を得し者に三井岩崎大倉浅野近藤安田古河鈴木の巨富あり其他の富豪皆然らざるなし上流の混濁其れ斯の如し何ぞ下流の清澄なるを得にんや。宝塚事件の如き各所郵便局員の不正事件の如き鉄道省小役人の売職事件の如き税務吏の収賄の如き東京市の疑獄事件の如き其他会社重役背徳横領の如きは上流階級の悪感化の為め世を挙げて道徳観念の消滅せる証左にして将に正に正義は亡び愛国心は消え失せんとするに至る。此の秋に当り危ない哉我が国体と相容れざる悪思想大挙して来り。彼等特権者のため永年虐遇迫害せられし貧者の深刻なる怨恨を煽動し冷かなる笑と怨めしげなる眼は正に凶暴と殺気とを表し自暴の極は国家を顧みず聖慮をも軽視する傾化を醸成しつつあり。
 嗚呼夫れ弥高く弥厚き大御心は一部の権力者に壟断せられ。慈心渉らず恩沢局限するの奇現象を呈せしめしは抑も誰の罪ぞ。過労と不潔栄養不良とのため肺病となる赤子あり。夫に死なれ愛児を育つるため淫売となる赤子あり。三代も四代も水呑百姓たらざるを得ざる赤子あり。戦時のみ国家の干城と煽て上げられ負傷して不具者となれば乞食に等しき薬売りをする赤子あり。如何なる炎天にも風雨にも右に左にと呼びて四辻に立ちすくむ赤子あり。之れに反し大罪を犯すも法律を左右して免れ得る顕官あり。高等官や貴族や顕官の病死は三段抜きの記事を以て表彰され国家交通工事の為め惨死せし鉄道工夫の名誉の死は呼捨にて報道さる社会の鐸木なりと自称する新聞雑誌は概ね富者の援助に依るが故に真個の鐸木たるなく。吾人の祖先を戦死せしめ兵火にかけし大名は華族に列せられて遊惰淫し吾人の兄弟等の戦死により将軍となりし官吏は自己一名の功なるが如く。傲然として忠君愛国の切売をなす。洵に思え彼等新華族は吾人の血をすすりし仇敵にして大名華族は吾人の祖先の生命を奪いし仇敵なり、吾人は人間たると共に真正の日本人たるを望む。真正の日本人は陛下の赤子たり分身たるの栄誉と幸福とを保有し得る権利あり。併も之れなくして名のみ赤子なりと煽てらし干城なりと欺かる。即ち生き乍らの亡者なり。寧ろ死するを望まざるを得ず。我等の実在は祖先の実在にして吾等の血液は祖先の血液なり而して我等の実在は子孫の実在を実証して吾等の血液は子孫の血液其物なり、故に吾等の生其者は直に子孫の生にして吾等が生れし日本国は子孫の永遠に生くべき地なり従って吾等の生を確保し子孫の永続を希う天賦の要求を充すため日本国の隆昌ならん事を希うのみなり。日本国の隆昌は七千万国民の真の和合と協力に依らざるべからず真の和合と協力とを計るには一視同仁の善政を布き真正の日本人たる恩沢を差別なく浴せしめざるべからず前述の如き現下の社会組織は国家生活の根源たる陛下と臣民とを隔離するの甚しきものにして君臣一体の聖慮を冒涜し奉るものなり。而して之れが下手人は現在の元老なり政治家なり華族なり顕官なり。更に如其き下手人に油を注ぎ糧を給するものは実に現在の大富豪なり従って君側の奸を浄め奸富を誅するは日本国隆昌のための手段にして国民大多数の幸福なると共に真正の日本人たる吾等当然の要求なり権利なり。
 吾れ十数年来這次にも此事を忘れず具に肺肝を砕き家を捨て親を忘れ東に西に孤独流転し既に数百名の盟友を得たり。されど吾人は論議の価値なきを知るが故に敢て言わず叫ばず動かず組まず黙々の裡に胆を練り機を窺いて悠悠自適せり。彼の何等実行の真剣味なき無政府主義者と称し共産主義者と称する輩とは其根抵に於て全然相容れざるが故に彼等の如く妄せず論ぜざるのみ更に又吾人と共鳴し得る国家社会主義者の一団あるも之れとて只無用の論をなすのみにて真に血をすすり肉を削り合うに足るものにあらざるを知るが故に近かず計らざるなり。
 昨夏予が組織せし平民青年党の如き今春計画せし神州義団の如きは実に之れが実行機関たらしむる真意なりしも軍資欠乏にして維持する能はず然も予の盟友たり配下たるものは総べて白画の若輩にして総べての計画も資金調達も予の若衆に依らずんば立案するを得ざりしなり。既にして再度の計画成らざりしに依り表面社会事業を標榜し仇敵たる富豪に出資せしめ徐々に一味の結束をなす目的を以て労働ホテルの建設を画策し渋沢子爵を動かし資金調達に半歳の努力を為せしも自己の利益以外には何等の国家観念も社会的責任もなき彼等奸富は事業の有無経営者の当否等を案じて出資するに非ず。故に後来十万円の出資を五十万百万にして回収し得る準備行為としては男らしく出資する者にして。官憲よりの勧誘には応じ其他将来政権を握り得げき政治家の勧誘には応じ然も表面社会奉仕の美名を売り衆愚を眩惑するものにして予が心血を注いでの奔走も奔命を労するに過ぎざりき。
 予茲に於て軍資を得るの絶望にして我徒の共同動作の難事なるを知り更に君側の奸を養う彼等奸富の代表的人物一、ニを誅し然も尚反省し悔悟せざるに於ては予の残党をして決行せしむるの遅きに非ざる事を悟る。
 幸にして予の行為効を奏し富豪顕官貴族等が悔悟し悔悛せば即ち予の盟友も配下も沈黙す可く未知の共鳴者も騒がざるべく社会一般も平穏なるを得べきも。然らざるにも於ては随所に暗殺行われ刺客出没し富豪も貴族も元老も之れが番犬たる政治家も悉く白刃と爆弾との洗礼を受けるものと知れ。
 予の配下は未だ二十歳に満たざる少年者のみにして今日の有識青年の如く打算的ならず小才子ならず其特長は愚直なるにあり不言実行にあり猪突なるにあり総べて名利に依って起つに非ず信念に立つが故に強くして黙々たり望む所は瓦全にあらず玉砕にあり期する所は決死的真実に在り天下の事総べて賭博なりとの人生観と病死するよりも奸物を誅せて死するは男子の本懐なりとの気位とを強く鼓吹し置けり。加之親なく家なく教義なきが故に世を呪うの眼と反貴族の深怨とを有せり愚なるが故に頼母しく沈んで強し是等不学薄幸の徒を教養せしば即ち現今の軽薄なる学生等の遂に語るに足らざるを実見せし結果にして朝三暮四名論卓説の販売をなす彼の青年政客と称する猪小才子の如き或は労働者を喰物とせるブローカーの如きは共に倶に気の抜けたるビールに等し。
 されば予は最初の皮切として模範として一奸物を誅し自らも自刃すと雖も予の思想を体し抱負を汲める第二第三の予幾十度も出没して予の希望を貫徹し予等が渇望せる社会を実現すべきを信ずるが故に予は莞爾として往かむのみ。
 世の富豪に訓う!汝等は我利我欲の為め終生戦々競々たるよりも寧ろ大我的見地の安全なるを悟らば。汝等が罪悪の結晶物たる不浄財の大半を擲て防貧事業保険事業、其他の慈善事業、社会事業の完成を期し更に汝等の為めにのみ都合よき法律習慣を打破革新し能く万民平等の実を挙げるの意なきか。然らずんば汝等の最愛なる妻子眷族は財を奪われ家を焼かれ夫を殺され宵闇の木陰に淫を売り人の門前に食を乞うの惨害に遇わんのみ。
 世の元老政治家顕官などに教う!汝等は君国の為めなりとの金看板の裏にかくれ地位を利用し一味と計り忠良にして愚直なる国民を欺き自己に都合よき法律制度を布き不浄財を蓄え更に恐れ多くも陛下の聡明を蔽い奉り至富と結びて赤子を迫害せし積悪を悔悟するの意なきや。汝等積悪の果として光輝ある国体を破壊し汝等祖先の苦心計営になりし日本の特長と分化とを粉砕するを望むや。今にして汝等悔悟せずんば軈て汝等は他国に亡命するか虐殺の標的となるか断頭台の露と消ゆるの外なかるべし。
 世の華族に訓う!汝等の祖先が我等の祖先を戦死させ我等の祖先の財産を強奪し而して大名となり藩主となりしが故に汝等は華族に列せられしを知るか。即ち汝等の華族たるは畢竟我等の祖先の賜にあらず。即ち汝等祖先の賜ならずとせば。汝は何の顔あり何等の意義あり権利ありて華族たり得るか。功なく実なくして国家の栄爵を売すは罪悪なり況んや何等の人間としての天職も果さず徒らに遊堕淫逸するに於ておや。速かに爵位を奉還し一労働者となり国家社会に奉仕すべし。
 其他自己の力量功績を以て華族に列せし以外の世襲華族等は栄爵に留まる資格なきのみならず全然天意に反する事を悟れ。
 世の将軍等に誨ゆ!汝等は汝等の兄弟又は戦友の戦死と奮闘と犠牲とに依りて今日の栄位を辱うしながら我等の兄弟戦友の遺族が食うや食わずの惨状に涕泣せるを知らず顔に威張り得るか。戦争のときのみ国家の干城となりと煽て上げ平時は血の出る如き納税を強い然も参政権をさえ与えざる今日の法令を肯定し得るか卿等は宜しく政党と称する悪魔等を応懲し真個の君民一体の御代となすべく努力せよ。
 更に世の青年志士に檄す卿等は!大正維新を実行すべき天命を有せり而して之を為すには先ず第一に奸富を葬る事。第二に既成党を粉砕する事。第三に顕官貴族を葬る事。第四に普通選挙を実現する事。
 第五に世襲華族世襲財産制を撤廃する事。第六に土地を国有となし小作農を救済する事。第七に十万円以上の富を有する者は一切没収する事。第八に大会社を国営となす事。第九に一年兵役となす事――等より染手すべし。最も最急の方法は奸富征伐にしてそは決死を以て暗殺する外に途なし。
 最後に予の盟友に残す!卿等予が平素の主義を体し語らず騒がず。表さず。
 黙々の裡に只刺せ。只衝け。只斬れ。只放て!然して同志の間往来の要なく結束の要なし。一名にて一命を葬れば足る即ち自己一名の手段と方法とを尽せよ。然らば即ち革命の気運は熟し随所に烽火揚がり同志は立所に雲集せむ夢々利を取るな名を好むな。只死ね只眠れ必ず賢を採るな大愚を採り大痴を習え。吾れ卿等の信頼すべきを知るが故に檄を飛ばさず死別を告げず黙々として予の天分に往くのみ。

嗟呼!夫れ何等の光栄ぞや何等の喜悦ぞや。    大正十年九月三日
東宮殿下を奉迎するの日書す           朝日 平吾

(http://guns-road.hp.infoseek.co.jp/geki/geki26.shtml)

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