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ロンドン軍縮条約(1930年ロンドン海軍条約) 1930年04月22日

ロンドン軍縮条約(口語訳)

千九百三十年ロンドン海軍条約
第一編
第一条
締約国は1922年2月6日「ワシントン」に於いて相互の間に署名せられ且つ本条約に於いて「ワシントン」条約と称せられる海軍軍備制限に関する条約の第二章第三節に規定される主力艦代換トン数の竜骨据付の自国の権利を1931年から1936年までの期間中行使しないことを約する。
上規定は不慮の事変に依り亡失し、又は破壊された艦船の代換に関する前記条約第二章第三節第一款(ハ)に掲げられる規定の適用を妨げることはない。
もっとも、フランス及びイタリアは前記条約の規定により、1927年及び1929年に自国が起工する権利を与えられた代換トン数を建造することができる。
第二条
一 アメリカ、イギリス並びに日本は下の主力艦を本条の規定される所に従い処分しなければならない。アメリカ フロリダ、ユター、アーカンソー又はワイオミング
イギリス ベンボー、アイアン・デューク、マーバラ、エンペラー・オヴ・インディア、タイガー
日本 比叡
(イ)(ロ)の規定を留保し、前記艦船は「ワシントン」条約第二章第二節二(ハ)に依り、専ら標的用に変更されない限り、左の如く廃棄せねばならない。
アメリカによって廃棄されるべき艦船中の1隻及びイギリスによって廃棄されるべき艦船中の2隻は本条約の実施の時より12ヶ月以内に「ワシントン」条約第二章第二節三(ロ)に従い、戦闘任務に適しないようにしなければならない。上艦船は右実施の時より24ヶ月以内に右第二節二(イ)又は(ロ)に従い、確定的に廃棄しなければならない。アメリカに依り廃棄しなければならない艦船中の第二隻並びにイギリスにより廃棄しなければならない艦船中の第三隻及び第四隻については、上期間は本条約の実施の時よりそれぞれ18ヶ月及び30ヶ月とする。
(ロ)本条により処分せらるべき艦船中下記は練習用のため保有してもよい。
アメリカ アーカンソー又はワイオミング
イギリス アイアン・デューク
日本 比叡
上艦船は本条約第二編第二付属書第五款に規定される状態に減勢しなければならない。上艦船を要求せられた状態に減勢する作業は本条約の実施の時よりアメリカ及びイギリスについては12ヶ月以内に、又日本については18ヶ月以内にこれを開始しなければならない。上作業は前記期間の満了の時より6ヶ月以内に完了しなければならない。
二 本条約第一条に掲げられる代換トン数をフランス又はイタリアが建造することにより「ワシントン」条約により必要となることあるべき主力艦の処分を別とし、「ワシントン」条約第二章第三節第二款に掲げられる一切の現存主力艦にして処分しなくていいものと前号において指定されてないものは本条約の有効期間中保有することができる。
三 代換の権利は、代換トン数の起工の遅延により失われることなく、かつ?艦は代換されるものに至るまでは、「ワシントン」条約第二章第三節第二款により、廃棄の期限が到来する場合でも保有することができる。
第三条
一 「ワシントン」条約の適用については、当該条約第二章第四節に示される航空母艦の定義はここに下の定義を持ってこれに変える。
「航空母艦」なる用語は排水量の如何を問わず、特に且つ専ら航空機を搭載するの目的をもって設計され、且つ艦上において航空機の発着ができる構造を有する一切の水上艦船を包含する。
二 主力艦、巡洋艦又は駆逐艦に航空機の着艦用又は離艦用の台、又は甲板を装備することは上艦船が専ら航空母艦として設計さられたか又は改造されたものはない限り、上の用に装備された艦船を航空母艦の艦種に参入し、又は分類することにはならない。
三 1930年4月1日に現存する主力艦には航空機着艦用の台又は甲板を装備することはできない。
第四条
一 口径6.1インチを超える砲を搭載する基準排水量10,000トン又はこれに達しない航空母艦はいずれの締約国もこれを取得し、又はこれを建造し、若しくは建造せしめることを得ない。
二 一切の締約国につき、本条約の実施される時より口径6.1インチを超える砲を搭載する基準排水量10,000トン又はこれに達しない航空母艦はいずれの締約国の法域内においても建造することはできない。
第五条
航空母艦は各場合に従い、「ワシントン」条約第九条若しくは第十条により又は本条約第四条により認められるものに比べ一層有力なる砲を搭載するための設計及び構造を有しないことを要する。
上第九条及び第十条の何れの場所におけるを問わず、口径6インチと掲げられるときは口径6.1インチをもってこれに代える。
第二編
第六条
一 「ワシントン」条約第二章第四節に規定されている基準排水量の決定に関する規則はこれを各締約国の一切の水上艦船に適用しなければならない。
二 潜水艦の基準排水量とは、乗員充実して、機関据え付けられ且つ航海準備(一切の武器弾薬、装備品、艤装品、乗員の糧食、各種の需品並びに戦時において搭載されるべき各種の要具を含む)完成し唯燃料、潤滑油、清水又は「バラスト」用水は如何なる種類のものたるを問わず、これを搭載せざる工事完成した艦船(非防水構造の水を含まない)の水上排水量をいう。
三 海軍の各先頭艦船は基準の状態にある際の諸艦船の排水量トン数を計測される「トン」は「メートル式トン」なる用語におけるものを除く他は、2,240ポンド(1,016キログラム)のトンと解される。
第七条
一 基準排水量2,000トンを超えるか又は口径5.1インチを超える砲を有する潜水艦はいずれの締約国もこれを取得し、又はこれを建造し、若しくは建造させることができない。
ニ もっとも各締約国は基準排水量2,800トンを超えない潜水艦最大限三隻を保有し、建造し又は取得することができる。当該潜水艦は、口径6.1インチを超えない砲を搭載することができる。当該隻数内において、フランスは既に浸水された口径8インチの砲を有する2,880トンのもの一隻を保有することができる。
三 締約国は、1930年4月1日において、その所有している基準排水量2,000トンを超えない潜水艦で、口径5.1インチを超える砲を装備するものを保有することができる。
四 一切の締約国について、本条約が実施される時より、基準排水量2,000トンを超えるか又は口径5.1インチを超える砲を有する潜水艦は、本条ニに規定されているところを除くほかはいずれの締約国の法域内においても建造できない。
第八条
以下の艦船は、これに対して制限することあるべき特別の協定を留保し、制限を免除される。
(イ) 基準排水量600トン以下の海軍水上戦闘艦船
(ロ) 基準排水量600トンを超え2,000トンを超えない海軍水上戦闘艦船但し下の特性のいずれも有しない場合に限る
(一) 口径6.1インチを超える砲を搭載すること
(ニ) 口径3インチを超える砲を四門を超え搭載すること
(三) 魚雷を発射するよう設計され、又は装置されたこと
(四) 20ノットを超える速力を得るよう設計されたこと
(ハ) 特に戦闘艦船として建造されたるに非ざる海軍の水上艦船にして、艦隊要務の為に使用され、軍隊輸送船として使用され又は戦闘艦船としての用途以外の用途に使用されるもの但し下の特性のいずれも有しない場合に限る
(一) 口径6.1インチを超える砲を搭載すること
(ニ) 口径3インチを超える砲を四門を超え搭載すること
(三) 魚雷を発射するよう設計され、又は装置されたこと
(四) 20ノットを超える速力を得るよう設計されたこと
(五) 装甲板によって防護されていること
(六) 機雷を敷設するように設計され、又は装置されたこと
(七) 空中より航空機が着艦するように装置されたこと
(八) 中央線上に航空機発進装置一基を又は各舷側に一基づつ即ち二基を超えて搭載すること
(九) 航空機を空中に発進させる何らかの手段が装置されている場合に三機を超える航空機を海上において行動させることができるよう設計され又は改造されること
第九条
本第二編第一附属書に掲げられる代換規則は、航空母艦を除くほか、基準排水量10,000トンを超えない艦船にこれを適用する。当該航空母艦の代換は、「ワシントン」条約により規律される。
第十条
締約国は主力艦、航空母艦及び第八条により制限を免除された艦船以外の各艦船にして本条約の実施後締約国により又は締約国の為に起工され、又は竣工されたものの起工の日及び竣工の日の後それぞれ1ヶ月以内に下記細目事項を他の各締約国に通知しなければならない。
(イ) 竜骨据付の日及び下の細目
艦船の艦種別
トン及びメートル式トンによる基準排水量
主要寸法即ち水線全長、水線における又は水線下の最大幅員
基準排水量における平均吃水
最大備砲の口径
(ロ) 竣工の日及び上の日における当該艦船に関する前記細目
主力艦及び航空母艦につき為されるべき通知は「ワシントン」条約により規律される。
第十一条
本条約第二条の規定を留保し、本第二編第二附属書に掲げられる処分規則は上条約により処分されるべき一切の艦船及び第三条に定義される航空母艦に適用されなければならない。
第十二条
一 本第二編第三附属書中の表を関係締結国間において変更をすることあるべき一切の補足協定を留保し、上表中に示される特殊艦船は保有されることと得るべく且つそのトン数は制限を附されるトン数中に包含されることなかるべし。
ニ 上特殊艦船の保有の目的である用途に充てる為建造され、改造され又は取得される他の何れの艦船もその特性に従い適当の戦闘艦船艦種のトン数中に算入されなければならない。但し、上艦船が第八条により制限を免除された艦船の特性に適合する時はこの限りではない。
三 もっとも日本は1936年12月31日前に機雷敷設艦阿蘇及び常磐を新機雷敷設艦二隻に代換することを得る。各艦船の基準排水量は5,000トンを超えることをできない。上艦船の速力は20ノットを超えることを得ざるべく且つ当該艦船の他の特性は第八条(ロ)の規定に従わねばならない。上新艦船は特殊艦船と看做されるべく且つそのトン数は何れの戦闘艦船艦種のトン数中にも算入されることなかるべし。阿蘇及び常磐は代艦竣工の時において本第二編第二附属書の第一款又は第二款に従い処分されなければならない。
四 浅間、八雲、出雲、磐手及び春日は球磨級の最初の艦船三隻が新艦船により代換されたときは、本第二編第二附属書第一款又は第二款に従い処分されなければならない。上球磨級の艦船三隻は本第二編第二附属書第五款(ロ)ニに規定される状態に減勢されるべく且つ練習艦として使用される上艦船のトン数は制限を附せられるトン数中に爾後包含されざるべし。
第十三条
1930年4月1日前に固定練習用施設又は「ハルク」として使用される各種の型式の現存艦船は、航海不能の状態において保有されることができる。


ロンドン軍縮条約(原文:一部ひらがな、一部新字体化)

第一編
第一条
締約國は千九百二十二年二月六日「ワシントン」に於て相互ノ間に署名セラレ且本条約二於て「ワシントン」条約と稱せらるる海軍軍備制限二關する条約ノ第二章第三節に規定せらるる主力艦代換トン數ノ龍骨据附ノ自国ノ福利ヲ千九百三十一年乃至千九百三十六年ノ期間中行使せざることを約す
右規定は不慮ノ事髮二依る亡失シ叉は破壊セラレタル艦船ノ代換に關する前記条約第二章第三節第一款(ハ)に掲げらるる規定ノ適用ヲ妨ぐることなし
尤モ佛蘭西国及伊太利国は前記条約ノ規定に依り千九百二十七年及千九百二十九年二自国が起工スルノ権利ヲ與ヘラレタル代換トン數ヲ建造することを得
第二条
一 合衆国、「グレート、ブリテン」及北部「アイルランド」聯合王国竝に日本國は左ノ主力艦ヲ本条に規定せらるる所に從ヒ處分すべし
 合衆國
  「フロリダ」
  「ユター」
  「アーカンソー」叉は「ワイオーミング」
 聯合王国
  「ベンボー」
  「アイアン、デューク」
  「マーバラ」
  「エンペラー、オヴ、インディア」
  「タイガー」
 日本國
  比叡
(イ)(ロ)ノ規定ヲ留保シ前記艦船は「ワシントン」条約第二章第二節二(ハ)に依り專ラ標的用に変更セラレザル限り左ノ如く廃棄せらるべし
 合衆国に依り廢棄せらるべき艦船中ノ一隻及聯合王国に依り廃棄せらるべき艦船中ノ二隻は本条約ノ實施ノ時より十二月以内に「ワシントン」条約第二章第二節三(ロ)に從ヒ戦闘任務に適せざるものと爲さるべし右艦船は右寳施ノ時より二十四月以内二右第二節二(イ)又は(ロ)に從ヒ確定的に廃棄セラルベシ合衆国に依り廢棄せらるべき艦船中ノ第二隻竝に聯合王国に依り廢棄せらるべき艦船中ノ第三隻及第四隻に付ては右期間は本条約ノ實施ノ時より夫々十八月及三十月トス
(ロ)本条に依り處分せらるべき艦船中左記は練習用ノ爲保有せらるることを得
   合衆国   「アーカンソー」叉は「ワイオーミング」
   聯合王国  「アイアン、デューク」
   日本國   比叡
 右艦船は本条約第二編第二附屬書第五款に規定せらるる状態に減勢せらるべし右艦船ヲ要求セラレタル状態に減勢するの作業は本条約ノ実施ノ時より合衆国及聯合王国に付ては十二月以内に又日本国二付ては十八月以内に之ヲ開始スベシ右作業は前記期間ノ満了ノ時より六月以内に完了せらるべし
 右艦船中ノ何れかにして練習用ノ爲保有せられざるものは本条約ノ實施ノ時より十八月以内に戦闘任務に適せざるものと爲サレ且三十月以内に確定的に廃棄せらるべし
二 本条約第一条二掲げらるる代換トン數ヲ佛蘭西國叉は伊太利國が建造することに依り「ワシントン」条約に依リ必要と爲ることあるべき主力艦ノ處分ヲ別トシ「ワシントン」条約第二章第三節第二款に掲げらるる一切ノ現存主力艦にして處分せらるべきものと前號二於て指定せられざるものは本条約ノ有效期間中保有せらるることを得
三 代換ノ権利は代換トン數ノ起工ノ遅延に依り失はるることなく且舊艦は代換せらるるに至る迄は「ワシントン」条約第二章第三節第二款に依り廢棄ノ期限ノ到来せる場合と雖モ保有せらるることを得
第三条
一 「ワシントン」条約ノ適用に付ては該条約第二章第四節に示さるる航空母艦ノ定義は茲二左ノ定義ヲ以て之に代ふ
 「航空母艦」なる用語は排水量ノ如何ヲ問はず特に且專ラ航空機ヲ搭載するの目的ヲ以て設計セラレ且艦上に於て航空機ノ發著シ得る構造ヲ有する一切ノ水上艦船ヲ包含ス
ニ 主力艦、巡洋艦叉は驅逐艦二航空機ノ著艦用又は離艦用ノ臺叉は甲板ヲ装備することは右艦船が專ラ航空母艦として設計せられたるか叉は改造せられたるものに非ざる限り右ノ如く装備せられたる艦船ヲ航室母艦ノ艦種二算入シ叉は分類するに至らしむることなし
三 千九百三十年四月一日に現存する主力艦には航空機著艦用ノ臺叉は甲板ヲ装備することを得ず
第四条
一 口径六・一インチ(百五十五ミリメートル)ヲ超ゆる砲ヲ搭載する基準排水量一萬トン(一萬百六十メートル式トン)叉は之に達せざる航空母艦は何レノ締約國モ之ヲ取得シ叉は之ヲ建造シ若は建造せしむることを得ズ
二 一切ノ締約國に付本条約ノ實施せらるる時ヨリ口径六・一インチ(百五十五ミリメートル)ヲ超ゆる砲ヲ搭載する基準排水量一萬トン(一萬百六十メートル式トン)叉は之に達せざる航空母艦は何レノ締約國ノ法域内に於ても建造せられざるべし
第五条
航空母艦は各場合に從ヒ「ワシントン」条約第九条若は第十条に依り叉は本条約第四条に依り認めらるるものに比し一層有力なる砲ヲ搭載する爲ノ設計及構造ヲ有せざることを要す
右第九条及第十条ノ何レノ場所二於けるを問はず口徑六インチ(百五十ニミリメートル)と掲げらるるときは口径六・一インチ(百五十五ミリメートル)ヲ以て之に代フ
第二編
第六条
一 「ワシントン」条約第二章第四節に規定せらるる基準排水量ノ決定に關する規則は之ヲ各締約國ノ一切ノ水上艦船に適用スベシ
二 潜水艦ノ基準排水量とは乗員充賓セラレ、機関倨附けられ且航海準備(一切ノ武器及彈藥、齊備品、艤装品、乗員用ノ糧食、各種ノ需品竝に戦時に於て搭載せらるべき各種ノ要具ヲ含ム)完成シ唯燃料、潤滑油、清水叉は「バラスト」用水は如何なる種類のものたるを問はず之ヲ搭載せざる工事完成セタ艦船(非防水構造内ノ水ヲ含まず)ノ水上排水量ヲ謂フ
三 海軍ノ各戦闘艦船は基準状態に在る際の該艦船ノ排水量トン數にて計測せらるべし「トン」なる語は「メートル式トン」なる用語に於けるものを除クノ外二千二百四十ポンド(千十六キログラム)ノトンナリト解せらるべし
第七条
一 基準排水量二千トン(二千三十二メートル式トン)ヲ超ゆるか叉は口径五・一インチ(百三十ミリメートル)ヲ超ゆる砲ヲ有する潜水艦は何レノ締約國モ之ヲ取得シ叉は之ヲ建造シ若は建造せしむることを得ズ
二 尤モ各締約国は基準排水量二千八百トン(二千八百四十五メートル式トン)ヲ超えざる潜水艦最大限三隻ヲ保有シ、建造シ叉は取得することを得右潜水艦は口径六・一インチ(百五十五ミリメートル)ヲ超えざる砲ヲ搭載することを得右隻數内に於ては佛闌西国は既に進水せられたる口径八インチ(二百三ミリメートル)ノ砲ヲ有する二千八百八十トン(二千九百二十六メートル式トン)ノモノ一隻ヲ保有することを得
三 締約國の千九百三十年四月一日に於て其ノ所有せる基準排水量二千トン(二千三十ニメートル式トン)ヲ超えざる潜水艦にして口徑五・一インチ(百三十ミリメートル)ヲ超ゆる砲ヲ装備せるものを保有することを得
四 一切ノ締約國二付本条約が實施せらるる時より基準排水量二千トン(二千三十二メートル式トン)ヲ超ゆるか叉は囗徑五・一インチ(百三十ミリメートル)ヲ超ユル砲ヲ有する潜水艦は本条二に規定セラルル所ヲ除クノ外何レノ締約國ノ法域内に於ても建造せられざるべし
第八条
左ノ艦船は之に対し制限ヲ附することあるべき特別ノ協定ヲ留保シ制限ヲ菟除せらる
 (イ) 基準排水量六百トン(六百十メートル式トン)以下ノ海軍水上戦闘艦船
 (ロ) 基準排水量六百トン(六百十メートル式トン)ヲ超ゆるも二千トン(二千三十二メートル式トン)ヲ超えざる海軍水上戦闘艦船但シ左ノ特性ノ何レヲモ有せざる場合に限る
  (一) 囗径六・一インチ(百五十五ミリメートル)ヲ超ゆる砲ヲ搭載すること
  (二) 口径三インチ(七十六ミリメートル)ヲ超ユル砲ヲ四門ヲ超え搭載すること
  (三) 魚雷ヲ發射する様設計セラレ又は装置せられたること
  (四) 二十ノットを超ユル速力ヲ得ル様設計せられたること
 (ハ) 特に戦闘艦船として建造せられたるに非ざる海軍ノ水上艦船にして艦隊要務ノ爲に使用セラレ、軍隊輸迭船トシテ使用せられ叉は戦闘艦船としての用途以外ノ用途に使用せらるるもの但シ左ノ特性ノ何レヲモ有セザル場合に限る
  (一) 口径六・一インチ(百五十五ミリメートル)ヲ超ユル砲ヲ搭載すること
  (二) 口径三インチ(七十六ミリメートル)ヲ超ゆる砲ヲ四門ヲ超え搭載すること
  (三) 魚雷ヲ発射する様設計セラレ叉は装置せられたること
  (四) 二十ノットヲ超ユル速力を得る様設計せられたること
  (五) 装甲鈑二依り防護せられたること
  (六) 機雷ヲ敷設スル様設計セラレ叉は装置せられたること
  (七) 空中ヨリ航空機ノ著艦する様装置せられたること
  (八) 中央線上に航空機発進装置一基ヲ叉は各舷側に一基ヅツ即チ二基ヲ超え搭載すること
  (九) 航空機ヲ空中に発進せしむる何等カノ手段が装置せられたる場合に三機ヲ超ゆる航空機ヲ海上に於て行動セシムル様設計セラレ叉は改造せられたること
第九条
本第二編第一附屬書に掲げらるる代換規則は航空母艦ヲ除くの外基準排水量一萬トン(一萬百六十メートル式トン)ヲ超エザル艦船に之ヲ適用す右航空母艦ノ代換は「ワシントン」条約ノ規定に依り規律せらる
第十条
締約國は主力艦、航空母艦及第八条に依り制限ヲ免除せられたる艦船以外ノ各艦船にして本条約の實施後締約國に依リ叉は締約國ノ爲に起工セラレ叉は竣工セラレタルモノノ起工ノ日及竣工ノ日ノ後夫々一月以内に左記細目事項ヲ他ノ各締約國二通知スベシ
 (イ) 龍骨据附ノ日及左ノ細目
      艦船ノ艦種別
      トン及メートル式トンに依ル基準排水量
      主要寸法即チ水線全長、水線に於ける又は水線下の最大幅員
      基準排水量に於ケル平均吃水
      最大備砲ノ口徑
 (ロ) 竣工ノ日及右ノ日に於ける当該艦船に關する前記細目
主力艦及航空母艦に付爲さるべき通知は「ワシントン」条約に依り規律セラル
第十一条
本条約第二条ノ規定ヲ留保シ本第二編第二附屬書に掲げらるる處分規則は右条約に依り處分せらるべき一切ノ艦船及第三条に定義せらるる航空母艦に適用せらるべし
第十二条
一 本第二編第三附屬書中ノ表ヲ關係締約國間に於て変更することあるべき一切ノ補足協定ヲ留保シ右表中に示さるる特殊艦船の保有せらるることを得べく且其ノトン數は制限ヲ附せらるるトン數中に包含せらるることなかるべし
二 右特殊艦船ノ保有ノ目的たる用途に充ツル爲建造セラレ.改造せられ叉は取得セラルル他ノ何レノ艦船モ其ノ特性に從ヒ適当ノ戰闘艦船艦種のトン數中に算入セラルベシ但シ右艦船が第八条に依リ制限ヲ免除せられたる艦船ノ特性に適合するときは此ノ限に在らず
三 尤モ日本國は千九百三十六年十二月三十一日前に機雷敷設艦阿蘇及常磐ヲ新機雷敷設艦二隻に依り代換することを得各新艦船ノ基準排水量は五千トン(五千八十メートル式トン)ヲ超ゆることを得ズ右艦船ノ速力二十ノットヲ超ゆることを得ざるべく且該艦船ノ他ノ特性は第八条(ロ)の規定に從フベシ右新艦船は特殊艦船と看做さるべく且其のトン數は何レノ戦闘艦船艦種ノトン數中にも算入せらるることなかるべし阿蘇及常磐は代艦竣工ノ時に於て本第二編第二附屬書第一款叉は第二款に從ヒ處分せらるべし
四 浅間、八雲、出雲、磐手及春日は球磨級ノ最初ノ艦船三隻が新艦船に依り代換せられたるときは本第二編第二附屬書第一款叉は第二款に從ヒ処分セラルベシ右球磨級ノ艦船三隻は本第二編第二附屬書第五款(ロ)二に規定せらるる状態に減勢せらるべく且練習艦として使用せらるべし
 右艦船ノトン數は制限ヲ附せらるるトン數中に爾後包含せられざるべし
第十三条
千九百三十年四月一日前に固定練習用施設又は「ハルク」として使用せられたる各種ノ型式ノ現存艦船は航海不能ノ状態に於て保有せらるることを得


  第一附属書
(以下省略)
(日本外交文書デジタルコレクション)

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内容見直し点:口語訳中途 修好条規(口語訳、前文署名省略) 第一条 この条約締結のあとは、大日本国と大清国は弥和誼を敦うし、天地と共に窮まり無るべし。又両国に属したる邦土も、各礼を以て相待ち、すこしも侵越する事なく永久安全を得せしむべし。 第二条 両国好を通ぜし上は、必ず相関切す。若し他国より不公及び軽藐する事有る時、其知らせを為さば、何れも互に相助け、或は中に入り、程克く取扱い、友誼を敦くすべし。 第三条 両国の政事禁令各異なれば、其政事は己国自主の権に任すべし。彼此に於て何れも代謀干預して禁じたる事を、取り行わんと請い願う事を得ず。其禁令は互に相助け、各其商民に諭し、土人を誘惑し、聊違犯あるを許さず。 第四条 両国秉権大臣を差出し、其眷属随員を召具して京師に在留し、或は長く居留し、或は時々往来し、内地各処を通行する事を得べし。其入費は何れも自分より払うべし。其地面家宅を賃借して大臣等の公館と為し、並びに行李の往来及び飛脚を仕立書状を送る等の事は、何れも不都合がないように世話しなければならない。 第五条 両国の官位何れも定品有りといえども、職を授る事各同じからず。因彼此の職掌相当する者は、応接及び交通とも均く対待の礼を用ゆ。職卑き者と上官と相見るには客礼を行い、公務を辨ずるに付ては、職掌相当の官へ照会す。其上官へ転申し直達する事を得ず。又双方礼式の出会には、各官位の名帖を用う。凡両国より差出したる官員初て任所に到着せば、印証ある書付を出し見せ、仮冒なき様の防ぎをなすべし。 第六条 今後両国を往復する公文について、清国は漢文を用い、日本国は日本文を用いて漢訳文を副えることとする。あるいはただ漢文のみを用い、その記載に従うものとする。 (これ以下まだ) 第七条 両国好みを通ぜし上は、海岸の各港に於て彼此し共に場所を指定め、商民の往来貿易を許すべし。猶別に通商章程を立て、両国の商民に永遠遵守せしむべし。 第八条 両国の開港場には、彼此何れも理事官を差置き、自国商民の取締をなすべし。凡家財、産業、公事、訴訟に干係せし事件は、都て其裁判に帰し、何れも自国の律例を按して糾辨すべし。両国商民相互の訴訟には、何れも願書体を用う。理事官は先ず理解を加え、成丈け訴訟に及ばざる様にすべし。其儀能わざる時は、地方官に掛合い双方出会し公平に裁断すべし。尤盗賊欠落等の事件は、両国の地方官より

ダンバートン・オークス提案(一般的国際機構設立に関する提案) 1944年10月09日

 ダンバートン・オークス提案(一般的国際機構設立に関する提案)(訳文)     一般的国際機構設立に関する提案 (「ダンバートン、オークス」会議の結果「ソ」連邦、米国、英国及重慶政権に依り提案せられ千九百四十四年十月九日発表せられたるもの) (本提案の英文は千九百四十四年十月十一日附「モスコー、ニュース」より之を採り「ストックホルム」電報等に依り長短相補ひたるものなり) 「国際連合」なる名称の下に一の国際機構設立せらるべく其の憲章は左の提案を具現するに必要なる規定を掲ぐべし    第一章 目的 本機構の目的は左の如くなるべし 一、国際平和及安寧を保持すること、右目的の為平和に対する脅威の防止及除去並に侵略行為又は他の平和侵害行為の抑圧を目的とする効果的且集団的措置を執ること及平和の侵害に至るの虞ある国際紛争を平和的方法に依り調整又は解決すること 二、各国間の友好関係を発展せしめ且世界平和を強化すべき他の適当なる措置を執ること 三、各国間の経済的、社会的及他の人道上の問題の解決の為国際協力を完成すること及 四、右共同目的完成の為各国の行動を調整すべき中心たるべきこと    第二章 原則 第一章に掲げたる目的を遂行せんが為本機構及其の締盟国は以下の原則に従ひ行動すべし 一、本機構は一切の平和愛好国の主権平等の原則に其の基礎を置くものとす 二、本機構の一切の締盟国は締盟国全部に対し締盟国たるの地位に基く権利及利益を保障する為憲章に従ひ負担したる義務を履行することを約す 三、本機構の一切の締盟国は其の紛争を国際平和及安寧を危殆ならしめざるが如き平和的方法に依り解決すべきものとす 四、本機構の一切の締盟国は其の国際関係に於て本機構の目的と両立せざる如何なる方法に於ても脅威又は兵力の行使を避くるものとす 五、本機構の一切の締盟国は本機構が憲章の規定に従ひ執るべき如何なる行動に於ても之に対し有らゆる援助を与ふるものとす 六、本機構の一切の締盟国は本機構が防遏的又は強制的行動を執行中なる如何なる国家に対しても援助を与ふることを避くるものとす 本機構は、国際平和及安寧保持に必要なる限り本機構の非締盟国が右原則に従ひ行動することを確実ならしむべし    第三章 締盟国 一切の平和愛好国は本機構の締盟国たり得べし    第四章 主要機関 一、本機構は其の主要機関として左記を有すべし  イ

第二次近衛声明(東亜新秩序建設の声明) 1938年11月03日

 第二次近衛声明(東亜新秩序建設の声明)                     (昭和十三年十一月三日)  今や 陛下の御稜威に依り帝国陸海軍は、克く広東、武漢三鎮を攻略して、支那の要域を戡定したり。国民政府は既に地方の一政権に過ぎず。然れども、尚ほ同政府にして抗日容共政策を固執する限り、これが潰滅を見るまで、帝国は断じて矛を収むることなし。  帝国の冀求する所は、東亜永遠の安定を確保すべき新秩序の建設に在り。今次征戦究極の目的亦此に存す。  この新秩序の建設は日満支三国相携へ、政治、経済、文化等各般に亘り互助連環の関係を樹立するを以て根幹とし、東亜に於ける国際正義の確立、共同防共の達成、新文化の創造、経済結合の実現を期するにあり。是れ実に東亜を安定し、世界の進運に寄与する所以なり。  帝国が支那に望む所は、この東亜新秩序建設の任務を分担せんことに在り。帝国は支那国民が能く我が真意を理解し、以て帝国の協力に応へむことを期待す。固より国民政府と雖も従来の指導政策を一擲し、その人的構成を改替して更生の実を挙げ、新秩序の建設に来り参ずるに於ては敢て之を拒否するものにあらず。  帝国は列国も亦帝国の意図を正確に認識し、東亜の新情勢に適応すべきを信じて疑はず。就中、盟朋諸国従来の厚誼に対しては深くこれを多とするものなり。  惟ふに東亜に於ける新秩序の建設は、我が肇国の精神に淵源し、これを完成するは、現代日本国民に課せられたる光栄ある責務なり。帝国は必要なる国内諸般の改新を断行して、愈々国家総力の拡充を図り、万難を排して斯業の達成に邁進せざるべからず。  茲に政府は帝国不動の方針と決意とを声明す。 (国立公文書館:「近衛首相演述集」(その二)/1 第一章 「声明、告諭、訓令、訓辞」 B02030031600)