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軍用資源秘密保護法 1939年03月24日

軍用資源秘密保護法(原文:一部ひらがな、一部新字体化)

法律第二十五号
   軍用資源祕密保護法
第一条 本法ハ国防目的達成ノ為軍用に供スル(軍用に供スベキ場合ヲ含ム以下之に同ジ)人的及物的資源に関シ外国に秘匿スルコトヲ要スル事項ノ漏泄ヲ防止スルヲ以テ目的トス
第二条 陸軍大臣又ハ海軍大臣(官庁ノ管理に属スルモノに係ルトキハ勅令ノ定ムル所に依リ主務大臣)ハ左に掲グルモノに就キ命令ヲ以テ軍用資源秘密ヲ指定ス但シ公示ヲ不適当トスルモノに係ル指定ハ当該事項又ハ図書物件ノ管理者又ハ之に準ズベキ者に対スル通知ヲ以テ之ヲ為ス
 一 全国(関東州及南洋群島ヲ含ム以下之に同ジ)又ハ一地方に於ケル軍用に供スル重要ナル物資ノ生産額、生産能力、生産能力判定資料タル設備ノ種類別数(之ヲ判定シ得ベキ比率ヲ含ム以下之に同ジ)及政府ノ決定シタル生産計画並に此等ヲ表示スル図書物件
 二 兵器ヲ生産スル工場事業場又ハ之に転用スルコトヲ得ル工場事業場ノ当該兵器ノ生産額、生産能力並に生産能力判定資料タル重要ナル設備ノ種類別数及其ノ設備に属スル従業者ノ総数(之ヲ判定シ得ベキ比率ヲ含ム以下之に同ジ)又ハ種類別数並に此等ヲ表示スル図書物件
 三 兵器以外ノ軍用に供スル重要ナル物資ヲ生産スル工場事業場又ハ之に転用スルコトヲ得ル工場事業場ノ当該物資ノ生産額、生産能力、生産能力判定資料タル重要ナル設備ノ種類別数及其ノ設備に属スル従業者ノ総数又ハ種類別数並に政府ノ決定シタル生産計画並に此等ヲ表示スル図書物件
 四 全国又ハ一地方に於ケル軍用に供スル重要ナル物資ノ貯蔵額及貯蔵設備ノ貯蔵能力、此等ノ判定資料タル重要ナル貯蔵設備ノ当該物資ノ貯蔵額及貯蔵能力、政府ノ決定シタル当該物資ノ貯蔵計画並に此等ヲ表示スル図書物件
 五 政府ガ貯蔵セシメタル軍用に供スル重要ナル物資ノ貯蔵額、政府ガ当該物資ヲ貯蔵セシメタル貯蔵設備ノ貯蔵能力、政府ノ決定シタル当該物資ノ貯蔵命令等に係ル貯蔵計画並に此等ヲ表示スル図書物件
 六 全国若ハ一地方又ハ重要ナル港湾に於ケル軍用に供スル重要ナル物資ノ輸入額及政府ノ決定シタル輸入計画並に此等ヲ表示スル図書物件
 七 全国又ハ一地方に於ケル軍用に供スル特殊技能者其ノ他ノ重要ナル人的資源ノ総数又ハ種類別数及此等ヲ表示スル図書物件
 八 全国又ハ一地方に於ケル軍用に供スル航空機、自動車又ハ馬ノ総数又ハ種類別数及此等ヲ表示スル図書物件
 九 軍用に供スル重要ナル鉄道ノ輸送能力及輸送能力判定資料タル輸送統計、此等ヲ表示スル図書物件並に軍用に供スル重要ナル鉄道ノ施設又ハ車輌に関スル重要ナル記録図表及其ノ内容
 十 軍用に供スル重要ナル飛行場又ハ其ノ附属設備に関スル重要ナル記録図表及其ノ内容
 十一 軍用に供スル船舶に於ケル特殊設備に関スル重要ナル記録図表及其ノ内容
 十二 軍用に供スル重要ナル通信連絡系統及其ノ通信能力、此等ヲ表示スル図書物件並に軍用に供スル重要ナル通信設備又ハ其ノ設備ノ通信能力若ハ連絡系統に関スル重要ナル記録図表及其ノ内容
 十三 陸軍大臣若ハ海軍大臣ノ命令若ハ委嘱に依ル重要ナル試験研究又ハ軍事上秘匿ヲ要スル発明考案に関スル事項及図書物件
 十四 軍事上秘匿ヲ要スル気象に関スル重要ナル事項及図書物件
 十五 特に秘匿ノ措置ヲ要スル第二号乃至第五号及第九号乃至第十二号に規定スル設備、第十三号ノ試験研究に関スル設備並に此等ノ機構及性能並に此等ヲ表示スル図書物件
第三条 軍用資源秘密トシテ秘匿スルノ要ナキに至リタルモノに付テハ其ノ指定ヲ解除ス
 前条ノ規定ハ前項ノ規定に依ル解除ノ場合に之ヲ準用ス
 軍用資源秘密に関シ政府ノ公表シタルモノアルトキハ勅令ノ定ムル所に依リ其ノ内容ト為リタル部分に限リ其ノ指定ノ解除アリタルモノト看做ス
第四条 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ勅令ノ定ムル所に依リ軍用資源秘密に属スル図書物件に一定ノ標記ヲ附セシムルコトヲ得
第五条 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ第二条第十五号に該当スル軍用資源秘密に属スル設備ヲ秘匿スル為必要アルトキハ其ノ管理者又ハ之に準ズベキ者に対シ当該設備ノ遮蔽其ノ他之ヲ秘匿スルに必要ナル措置ヲ命ズルコトヲ得
第六条 陸軍大臣又ハ海軍大臣(官庁ノ管理に属スルモノに付テハ勅令ノ定ムル所に依リ主務大臣)ハ第二条第十五号に該当スル軍用資源秘密に属スル設備ヲ秘匿スル為必要アルトキハ命令ヲ以テ之に付立入又ハ測量、撮影、模写、模造若ハ録取又ハ其ノ複写若ハ複製ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
第七条 政府ハ軍用資源秘密ヲ秘匿スル為特に必要アルトキハ勅令ノ定ムル所に依リ軍用資源秘密ヲ記載スル登記簿ノ閲覧又ハ謄本若ハ抄本ノ交付ヲ制限スルコトヲ得
第八条 政府ハ第二条第二号又ハ第十五号に該当スル軍用資源秘密ヲ秘匿スル為特に必要アルトキハ勅令ノ定ムル所に依リ法令に基ク出願、申請、報告、届出等ヲ為シ又ハ立入、検査、質問等ヲ受クル場合に付軍用資源秘密ノ開示又ハ交付ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得
第九条 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ第五条ノ規定に依ル命令に係ル事項に関シ当該設備ノ管理者又ハ之に準ズベキ者に対シ報告ヲ命ジ又ハ当該官吏ヲシテ必要ナル場所に立入リ、検査ヲ為シ若ハ関係者に対シ質問ヲ為サシムルコトヲ得
第十条 政府ハ勅令ノ定ムル所に依リ第五条ノ規定に依ル命令に因リ生ジタル損失ヲ補償ス
 前項ノ規定に依ル補償金額に付不服アル者ハ其ノ補償金額ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月以内に通常裁判所に出訴スルコトヲ得
第十一条 外国若ハ外国ノ為に行動スル者に漏泄シ又ハ公にスル目的ヲ以テ軍用資源秘密ヲ探知シ又ハ収集シタル者ハ十年以下ノ懲役に処ス
第十二条 業務に因リ軍用資源秘密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ外国若ハ外国ノ為に行動スル者に漏泄シ又ハ公にシタルトキハ一年以上ノ有期懲役に処ス
 外国若ハ外国ノ為に行動スル者に漏泄シ又ハ公にスル目的ヲ以テ軍用資源秘密ヲ探知シ又ハ収集シタル者之ヲ外国若ハ外国ノ為に行動スル者に漏泄シ又ハ公にシタルトキ亦前項に同ジ
 前二項に規定スル原由以外ノ原由に因リ軍用資源秘密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ外国若ハ外国ノ為に行動スル者に漏泄シ又ハ公にシタルトキハ十年以下ノ懲役に処ス
第十三条 業務に因リ軍用資源秘密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ外国人に漏泄シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ二千円以下ノ罰金に処ス
 前項に規定スル原由以外ノ原由に因リ軍用資源秘密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ外国人に漏泄シタルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金に処ス
第十四条 第二条第二号又ハ第十五号に該当スル軍用資源秘密ヲ知得シ又ハ領有シタル者之ヲ他人に漏泄シタルトキハ六月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金に処ス
第十五条 軍用資源秘密ヲ外国又ハ外国ノ為に行動スル者に漏泄スル為之ヲ探知シ、収集シ又ハ漏泄スルコトヲ目的トシテ団体ヲ組織シタル者又ハ其ノ団体ノ指導者タル任務に従事シタル者ハ五年以下ノ懲役に処ス
 情ヲ知リテ前項ノ団体に加入シタル者ハ二年以下ノ懲役に処ス
第十六条 第六条ノ規定に依ル禁止又ハ制限に違反シタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金に処ス
第十七条 第五条ノ規定に依ル命令に違反シタル者ハ三千円以下ノ罰金に処ス
第十八条 第七条ノ規定に依ル制限に違反シタル者及第九条ノ規定に依ル立入若ハ検査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ質問に対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者ハ五百円以下ノ罰金に処ス
 第九条ノ規定に依ル報告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ報告ヲ為シタル者亦前項に同ジ
第十九条 第十一条及第十二条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第二十条 第十一条、第十五条又ハ前条ノ罪ヲ犯シタル者未ダ官に発覚セザル前自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽シ又ハ免除ス
第二十一条 第五条ノ規定に依リ秘匿ノ措置ヲ命ゼラレタル者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務に関シ第十七条又ハ第十八条第二項ノ違反行為ヲ為シタルトキハ自己ノ指揮に出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第二十二条 第十七条及第十八条第二項ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員に、未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ其ノ法定代理人に之ヲ適用ス但シ営業に関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者に付テハ此ノ限に在ラズ
第二十三条 本法ノ罰則ハ何人ヲ問ハズ本法施行地外に於テ罪ヲ犯シタル者に亦之ヲ適用ス
第二十四条 軍用資源秘密ハ勅令ノ定ムル所に依リ政府ノ許可ヲ受ケタルトキハ之ヲ他人に開示シ若ハ交付シ又ハ公にスルコトヲ妨ゲズ
第二十五条 軍用資源秘密にシテ官庁ノ管理に属スルモノに係ル標記及秘匿ノ措置に関シテハ勅令ノ定ムル所に依ル
第二十六条 朝鮮、台湾又ハ樺太に於テハ本法に規定スル主務大臣ノ職権ハ勅令ノ定ムル官庁之ヲ行フ
   附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
(国立公文書館:軍用資源秘密保護法(勅令第四百十二号参看)・御署名原本・昭...) 

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