南方占領地行政実施要領(原文:ひらがな、一部新字体化)
南方占領地行政実施要領
十一月二十日大本営政府
連 絡 会 議 決 定
第一 方 針
占領地に対しては差し当り軍政を実施し治安の恢復、重要国防資源の急速獲得及作戦軍の自活確保に資す
占領地領域の最終的帰属並に将来に対する処理に関しては別に之を定むるものとす
第二 要 領
一、軍政実施に当りては極力残存統治機構を利用するものとし従来の組織及民族的慣行を尊重す
二、作戦に支障なき限り占領軍は重要国防資源の獲得及開発を促進すへき措置を講するものとす
占領地に於て開発又は獲得したる重要国防資源は之を中央の物動計画に織り込むものとし作戦軍の現地自活に必要なるものは右配分計画に基き之を現地に充当するを原則とす
三、物資の対日輸送は陸海軍に於て極力之を援助し且陸海軍は其の徴傭船を全幅活用するに努む
四、鉄道、船舶、港湾、航空、通信及郵政は占領軍に於て之を管理す
五、占領軍は貿易及為替管理を施行し特に石油、ゴム、錫、「タングステン」、「キナ」等の特殊重要資源の対敵流出を防止す
六、通貨は勉めて従来の現地通貨を活用流通せしむるを原則とし已むを得さる場合にありては外貨標示軍票を使用す
七、国防資源取得と占領軍の現地自活の為民生に及ほさるるを得さる重圧は之を忍はしめ宣撫上の要求は右目的に反せさる限度に止むるものとす
八、米、英、蘭国人に対する取扱は軍政実施に協力せしむる如く指導するも之に応せさるものは退去其の他適宜の措置を講す
枢軸国人の現存権益は之を尊重するも爾後の拡張は勉めて削減す
華僑に対しては蒋政権より離反し我か施策に協力同調せしむるものとす
原住土民に対しては皇軍に対する信倚観念を助長せしむる如く指導し其の独立運動は過早に誘発せしむることを避くるものとす
九、作戦開始後新に進出すへき邦人は事前に其の素質を厳選するも嘗て是等の地方に存住せし帰朝者の再渡航に関しては優先的に考慮す
一〇、軍政実施に関連し措置すへき事項左の如し
イ、現地軍政に関する重要事項は大本営政府連絡会議の議を経て之を決定す
中央の決定事項は之を陸海軍より夫々現地軍に指示するものとす
ロ、資源の取得及開発に関する企画及統制は差当り企画院を中心とする中央の機関に於て之を行ふものとす
右決定事項の実行は(イ)項に拠るものとす
ハ、仏印及泰に対しては既定方針に拠り施策し軍政を施行せす状況激変せる場合の処置を別に定む
備 考
一、占領地に対する帝国施策の進捗に伴ひ軍政運営機構は逐次之を政府の設置すへき新機構に統合調整又は移管せらるるものとす
(国立公文書館:昭和16年11月20日 南方占領地行政実施要領)
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