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工場法施行令 1916年08月02日

 工場法施行令(ひらがな、一部新字体化)


勅令第百九十三号

工場法施行令

  第一章 通則

第一条 左に掲くる事業のみを営む工場に付ては工場法の適用を除外す但し農商務大臣の定むる原動機を用ふるものは此の限に在らす

  菓子、飴又は麺麩の製造

  寒天、凍蒟蒻、凍豆腐、湯葉、麺類又は麩の製造

  清酒、濁酒、白酒、味醂、焼酎、酢、醤油又は味噌の製造

  行李、簾、籠、和傘骨其の他の杞柳、籐、竹、籜、経木、蔓、茎又は藁の手工品の製造

  経木真田又は麦稈真田の編製

  「アタン」「パナマ」又は之に類するものを以てする帽子其の他のものの編製

  扇子、団扇、和傘又は提燈の製造

  紙、糸、棉、竹又は布帛を主たる材料とする玩具又は造花の製造

  形紙、紙函、元結又は水引の製造

  被服、足袋其の他の布帛類の裁縫

  手工に依る組紐の編製

  刺繍、「レース」、「パテンレース」又は「ドローンウォーク」の業

第二条 鉱業法の適用を受くる工場に付ては工場法の適用を除外す

第三条 左に掲くる事業を営む工場は工場法第一条第一項第二号に該当するものとす

  毒劇物又は毒劇薬の製造

  動物の剥製

  金属の溶融又は精錬

  水銀を用ふる計器の製造

  燐寸の製造

  火薬、爆薬又は火工品の製造又は取扱

  塗料又は顔料の製造

  「エーテル」の製造

  溶剤を用いる護謨製品の製造

  脂肪油の精製

  溶剤を用いる油脂の採収

  「ボイル」油の製造

  鉱油の蒸留又は精製

  乾燥油又は溶剤を用いる擬革紙布又は防水紙布の製造

  亜硫酸瓦斯、■素瓦斯又は水素瓦斯を用いる事業

  金属、骨、角又は貝殼の乾燥研磨

  硝子の製造、腐蝕、砂吹又は粉砕

  織物又は編物の起毛

  製綿

  麻の梳解

  其の他農商務大臣の命令を以て指定したる事業

  第二章 職工又は其の遺族の扶助

第四条 職工業務上負傷し、疾病に罹り又は死亡したるときは工業主は当該職工の重大なる過失に因ることを証明したる場合を除くの外本章の規定に依り扶助を為すヘし但し扶助を受くヘき者民法に依り同一の原因に付損害賠償を受けたるときは工業主は扶助金額より其の金額を控除することを得

 前項扶助の義務は別段の定ある場合を除くの外職工の解雇に因りて変更せらるることなし

第五条 職工負傷し又は疾病に罹りたるときは工業主は其の費用を以て療養を施し又は療養に必要なる費用を負担すヘし

第六条 職工療養の為労務に服すること能はさるに因り賃金を受けさるときは工業主は職工の療養中一日に付賃金二分の一以上の扶助料を支給すヘし但し其の支給引続き三月以上に渡りたるときは其の後の支給額を賃金三分の一迄に減することを得

第七条 職工の負傷又は疾病治癒したる時に於て左の各号の一に該当する程度の身体障害を存するときは工業主は左に掲ぐる区別に依り扶助料を支給すベし

 一  終身■■を弁すること能わさるもの   賃金百七十日分以上

 二  終身労務に服すること能わさるもの   賃金百五十日分以上

 三  従来の労務に服すること能わさるもの、

    健康■に復すること能わさるもの又は

    女子の■■に醜痕を残したるもの    賃金百日分以上

 四  身体を障害し■に服すること■■■

    と雖引続き従来の労務に服する

    ことを得るもの            賃金三十日以上

第八条 職工死亡したるときは工業主は遺族賃金百七十日分以上の遺族扶助料を支給すヘし

第九条 職工死亡したるときは工業主は葬祭を行ふ遺族に十円以上の葬祭料を支給すヘし

第十条 遺族扶助料を受くヘき者は職工の配偶者とす

 配偶者なき場合に於て遺族扶助料を受くヘき者は職工死亡当時之と同一の家に在りたる職工の直系卑属又は直系尊族とし其の順位は親等の近き者を先にし卑属と尊属と親等相同しきときは卑属を先にす

第十一条 前条第二項に定めたる同順位者の間に在りては其の順位は左の規定に依る

 一 職工の家督相続人又は戸主は之を他の者より先にす

 二 男は之を女より先にす

 三 直系卑属に付ては男又は女の間に在りては嫡出子を先にし嫡出子、庶子及私生子の間に在りては嫡出子及庶子は女と雖之を私生子より先にす

 四 前二号に掲くる事項に付相同しき者の間に在りては年長者を先にす

第十二条 第十条の規定に該当する者なき場合に於ては左に掲くる者の中一人に遺族扶助料を支給すヘし但し職工の遺言又は工業主に対して為したる予告に依り左に掲くる者の中一人を特に指定したるときは之に従ふヘし

 一 職工の家督相続人又は戸主

 二 職工の兄弟姉妹にして職工死亡当時之と同一の家に在りたる者

 三 職工の親族又は職工と同一の家に在る者にして職工死亡当時其の収入に依り生計を維持したる者

第十三条 第六条の規定に依る扶助料は毎月一回以上之を支給すヘし第五条の規定による費用を本人に支給する場合亦同し

第十四条 第五条の規定に依り扶助を受くる職工療養開始後三年を経過するも負傷又は疾病治癒せさるときは工業主は賃金百七十日分以上の扶助料を支給し以後本章の規定に依る扶助を為ささることを得

第十五条 工業主は左の各号の一に該当する場合に於ては本章の規定に依る扶助を為ささることを得

 一 職工の解雇後一年を経過して扶助を請求するとき但し既に受けたる扶助の原因たる負傷又は疾病に基き請求するときは此の限に在らす解雇前に又は解雇後一年内に請求したる扶助の原因たる負傷又は疾病に基き請求するとき亦同し

 二 扶助を受けて治癒したる負傷又は疾病か職工の解雇後に於て再発するとき

第十六条 第六条乃至第八条及第十四条の規定に依る扶助料算出の標準とすヘき賃金は左の各号の金額とす

 一 定額に依り賃金を定むる場合に於ては其の賃金の額

 二 稼高又は就業時間に依り賃金を定むる場合に於ては疾病に在りては診断に拠る発病の日を除き発病の日明ならさるときは診断前七日を除き負傷又は即死に在りては事故発生の日を除き其の前就業三十日分の賃金の平均額但し就業三十日に満たさるときは其の賃金の平均額とす

 三 前二号の規定に依りて金額を算出することを得さる場合に於ては扶助規則に於て定むる金額但し扶助規則に定なきときは地方長官之を定む

第十七条 前条第一号又は第二号の規定に依り金額を算出する場合に於て工業主か食事其の他の給与を支給するときは其の価額は之を金額中に加算す

第十八条 地方長官は職権を以て又は申請に因り職工の負傷、疾病若は死亡の原因、第七条各号に掲くる身体障害の程度其の他扶助に関する事項に付之を審査し及事件の調停を為すことを得

 前項の場合に於て必要と認むるときは医師をして診断又は検案せしむることを得

第十九条 工業主は扶助規則を作成し扶助の金額、手続其の他扶助に関し必要なる事項を定め之を地方長官に届出つヘし扶助規則を変更せむとするとき亦同し

 地方長官必要と認むるときは扶助規則の変更を命することを得

第二十条 官立工場に於ける職工の扶助に付ては別に定むる規程に依る

  第三章 職工の雇入及解雇

第二十一条 工業主は職工名簿を調製し工場毎に之を備付くヘし

 職工名簿に記載すヘき事項に関しては農商務大臣の定むる所に依る

第二十二条 職工に給与する賃金は通貨を以て毎月一回以上之を支払ふヘし

第二十三条 工業主は職工の死亡若は解雇の場合又は農商務大臣の定むる場合に於て権利者の請求ありたるときは遅滞なく賃金を支払ふヘし

 前項の場合に於て積立金、信認金其の他何等の名義を用いるに拘らす職工の貯蓄金は遅滞なく之を返還すヘし

第二十四条 工業主は職工の雇人に関し前二条の規定に違反する契約又は工業主の受くヘき違約金を定め若は損害賠償額を予定する契約を為すことを得す但し左の事項に付予め方法を定め地方長官の許可を受けたるときは此の限に在らす

 一 職工に貯蓄を為さしめ又は職工の利益の為賃金の一部に代ヘ他の給付を為すこと

 二 職工か雇入契約に違反し其の他職工の責に帰すヘき事由に因り解雇せらるる場合に於て職工の貯蓄金中工業主の給与に係る部分を交付せさること

第二十五条 職工の貯蓄金を管理する場合に於ては工業主は予め確実なる方法を定め地方長官の認可を受くヘし

第二十六条 尋常小学校の教科を修了せさる学■児童を雇傭する場合に於ては工業主は就学に関し必要なる事項を定め地方長官の認可を受くへし

第二十七条 未成年者若は女子か工業主の都合に依り解雇せられ又は第五条若は第六条の規定に依り扶助を受くる職工若は第七条第一号第二号に該当する職工解雇せられ解雇の日より十五日内に帰郷する場合に於ては工業主は其の必要なる旅費を負担すヘし第十四条の規定に依り扶助を廃止せられたる者廃止の日より十五日内に帰郷する場合亦同し

 第十八条の規定は前項の旅費に関し之を準用す

  第四章 徒弟

第二十八条 工場に収容する徒弟は左の各号の条件を具備することを要す

 一 一定の職業に必要なる知識技能を習得するの目的を以て業務に就くこと

 二 一定の指導者指揮監督の下に教習を受くること

 三 品性の修養に関し常時一定の監督を受くること

 四 地方長官の認可を受けたる規程に依り収容せらるること

第二十九条 工業主前条第四号の認可を申請するには左の事項を具備すヘし

 一 徒弟の員数

 二 徒弟の年齢

 三 指導者の資格

 四 教習の事項及期間

 五 就業の方法及一日に於ける就業の時間

 六 休日及休憩に関する事項

 七 品性修養に関する監督の方法

 八 給与の方法

 九 第三十条の規定に依り設くる規程

 十 徒弟契約の条項

第三十条 徒弟未成年者又は女子なる場合に於ては其の就業に付十五歳未満の者又は女子に関する工場法の規定に準拠して危険を避け及衛生上の害を防くの方法を定むヘし

 第二十六条及之に関する罰則は徒弟の収容に之を準用す

第三十一条 地方長官は工業主に於て第二十八条第四号の規程に遵はす又は徒弟教習の目的を完くすること能はすと認むるときは之を矯正する為必要なる事項を命し又は第二十八条第四号の認可を取消すことを得

第三十二条 第二十八条の条件を具備せさる者に対しては工業主に於て徒弟の名義を用いるに拘らす職工に関する工場法及本令の規定を適用す第二十八条第四号の認可を取消されたるとき従来の徒弟に付亦同し

  第五章 罰則

第三十三条 工業主左の各号の一に該当するときは二百円以下の罰金に処す

 一 地方長官の為したる扶助規則変更の命令に違反したるとき

 二 職工の雇入に付詐術を用いたるとき

 三 第二十四条に違反し又は同条但書の規定に依る許可の条件に違反したるとき

 四 不正に扶助義務の全部若は一部を免し又は免しむとするの所為を為したるとき

 五 不正に賃金支払の義務、職工の貯蓄金返還の義務又は第二十七条第一項の規定に依る義務の全部又は一部を免れ又は免れむとするの所為を為したるとき

 六 第二十五条の認可を受けす又は認可を受けたる方法に依らすして職工の貯蓄金を管理したるとき

 七 第二十六条の認可を受けすして尋常小学校の教科を修了せさる学齢児童を雇傭したるとき

 八 第二十八条第四号の規程又は第三十一条の規定に依る地方長官の命令に違反したるとき

 工業主の為にする職工の雇入に付詐術を用いたる者又は工業主をして不正に前項第四号若は第五号に掲くる義務の全部若は一部を免れしめ若は免れしめむとするの所為を為したる者は罰前項に同し但し其の者の所為に付工場法第二十二条の規定に依り工場主又は之に代る者を罰すへき場合に於ては此の限に在らす

■■■■■■ここから

第三十四条 職工の周施に付詐術を用いたる者は二百円以下の罰金に処す

第三十五条 工業主左の各号の一に該当するときは百円以下の罰金又は過料に処す

 一 職工名簿の調製又は備付を怠りたるとき

 二 扶助規則の作成又は届出を怠りたるとき

 三 通貨に非さるものを以て賃金を支払ひたるとき

第三十六条 本令に規定する所為か同時に刑法其の他の法令の罰則の規定に触るる為其の所為を為したる工業主又は之に代る者の代理人、雇主、家族、同居者、雇人其の他の従業者に対し刑法其の他の法令を適用する場合に於ても工業主又は之に代る者に対し本令を適用することを妨けす

  附 則 (抄)

第三十七条 本令は大正五年九月一日より之を施行す

第三十八条 第二十四条の規定は本令施行後一年間本令施行前の契約に之を適用せす

 賃金の支払期に関し第二十二条の規定に異る慣習あるときは工業主は地方長官の許可を受け本令施行後三年内其の慣習に依る支払期を延長せさる限度に於て支払期を定むるの契約を為すことを得

第三十九条 本令施行の際工場法の適用を受くる工場の工業主は本令施行の日より四月内は第十九条、第二十一条、第二十二条、第二十五条及第二十六条の規定に依らさることを得

 本令施行の際職工の貯蓄金を管理し又は尋常小学校の教科を修了せさる学齢児童を雇傭し若は徒弟として収容する工業主前項の期間内に第二十五条、第二十六条又は第三十条第二項の規定に依る認可を申請したるときは之に対する行政処分ある迄仍従前の例に依ることを得

 前項の規定は前条第二項の許可の申請に付之を準用す

第四十条 現行の命令は工場法又は本令に牴触せさる限り本令施行の為其の効力を妨けらるることなし

第四十一条 本令に定むるものの外主務大臣及地方長官は職工の雇入、解雇、周旋の取締其の他本令施行の為必要なる事項に関し命令を発することを得

第四十二条 本令中地方長官とあるは東京府に於ては警視総監とす

(参考:中野文庫https://geolog.mydns.jp/www.geocities.jp/nakanolib/rei/rt05-193.html)

(国立公文書館:工場法施行令・御署名原本・大正五年・勅令第百九十三号)

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