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対支実行策 1936年08月11日

 対支実行策(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)


   對支實行策(昭和十一年八月十一日関係諸省間決定)

昭和十一年八月七日決定の「帝国外交方針」に遵拠し対支政策に関し差当り執るへき施策左の通。

一、対北支施策

北支処理の主眼は該地域を防共親日満の特殊地帯たらしめ併せて国防資源の獲得並に交通施設の拡充に資し一は以て蘇連の侵寇に備へ他は以て日満支三国提携共助実現の基礎たらしむるに在り。右親日満的地帯は北支五省を以て目途とすへきも徒に地域の拡大若は理想的分治の一挙完成に焦慮するは却て紛糾を増し目的を達成する所以に非るのみならす、速に対蘇態勢を有利ならしめんとする考慮に反するの結果となる虞あるを以て、先つ徐に冀察二省の分治完成に専念し爾他三省殊に山東に対しては防共親日及日満支経済提携を主眼とする諸般の工作に努む。分治の形式に就ては名目の如何に拘泥することなく、実質を取ることに著眼し南京政権の面子をも考慮し同政権をして其の授権の形式下に実際上北支聯省分治を承認せしむること得策なりとす。(別紙第二次北支処理要綱参照)

尚我方としては前記南京の授権を認むることは右を南京政権に対する政治上の手として利用し之に依り南京側との懸引に付最大限度の効果を収めんとするものなるを以て、之が処理に当りては中央及出先は一体となり緩急機宜の措置に出で飽迄厳正なる態度を持し假にも支那側をして之に乗じ所謂二重政策等を弄する余地なからしむること肝要なり。

二、南京政権に対する施策

南京政権に対しては漸次反蘇的態度を執り帝国と近接する如く具体的に促進を計り特に北支事態の改善に対しては同政権をして自ら進むで努力せざるべからざる如く施策するものとす。右施策に当りては南京政権の面子を考慮し同政権をして国民の手前抗日標榜の已むなきに至らしむるが如き措置を避くると共に支那民衆を対象とし如実に共存共栄を具現するが如き経済工作に力を注ぐ一方、前記一、対北支施策の急速実現を終始念頭に置き必要に依りては与ふるに利益を以てし仍つて以て南京政権をして我方に依存するの已むなきに至らしむるが如くすること必要なりとす。但し南京政権の政策を是正せしむることなくして、之か基礎を強化せしむるか如き措置は執らざるものとす。

 (一)防共軍事協定の締結

  (イ)本協定締結の為両国軍事専門家より成る秘密専門委員会を組織す

  (ロ)専門委員会は防共協定の施行範囲、協定の内容、目的達成の為の手段等に付協議す

 (二)日支軍事同盟の締結

   第三国よりの侵寇に対する攻守同盟締結の目的を以て日支両国同数の専門委員よりなる秘密専門委員会を組織す

 (三)日支懸案の解決促進

  (イ)最高政治顧問の傭聘

   国民政府に最高の邦人政治顧問を傭聘せしめ国民政府の内治外交等の枢機に参画せしむ

  (ロ)軍事顧問の傭聘

   軍事顧問及軍事教官を傭聘せしむ

  (ハ)日支航空連絡の開始

   日支航空連絡の急速実現を期す。右目的達成の為には北支航空会社を設立するの外台湾福建間飛行、上海福岡間試験飛行等の方法を利用し南京側をして応諾に導くものとす

  (ニ)日支互恵関税協定の締結

   冀東特殊貿易の廃止及排日的高関税の低下に関する関係者打合の方針に基き日支互恵税率協定の急速実現を期す。之が為嬰すれば日支共同の専門委員会の組織方提議す

 (四)日支経済提携の促進

  支那民衆を対象として日支共存共栄を如実に具現するが如き経済提携工作を進め以て支那政局の動向如何に依り影響せられざる日支不可分関係の構成を期す。

本項南京政権に対する施策は必しも前項対北支施策と併行し同時解決を期せんとするものに非ず、緩急時宜に応じて工作し以て之が解決を期するを要す。尚右施策に当りては要すれば南京政権及■部の機構、人的要素等に付必要の調整を加へしむ。

三、其の他の地方政権に対する施策

 地方的政権に対する我方施策は此等局地的政権を親日的ならしむることに依り我方権益の伸張を期すると共に右に依り南京政権の対日態度を更改せしむるを以て主たる目的とす。従つて特に統一を助長し又は分立を計る目的を以て地方政権を援助するが如き政策は之を執らざるものとす。

 前記方針の下に局地的政権に対し執るべき実行策左の如し。

 (一)南支に対する経済的進出(例へば福建、広東、広西省等の資源開発。廣油鉄道、日■航空連絡、福州台北間航空連絡等)

 (二)邊境に対する調査(四川、甘粛、新疆、青海等に対する資源調査隊の派遣等)

四、内蒙方面に対しては親日満を基調とする蒙古人の蒙古建設を指導し以て対蘇態勢を調整す。而して之が工作に方りては成るべく内密且内面的に行ひ対蘇及対支政策との協調に留意す。



   第二次北支処理要綱(昭和十一年八月十一日関係諸省間決定)

     方  針

一、北支処理の主眼は北支民衆を本位とする分治政治の完成を援助し該地域に確固たる防共親日満の地帯を建設せしめ併せて国防資源の獲得並に交通施設の拡充に資し以て一は蘇国の侵寇に備へ■は日満支三国提携共助実現の基礎たらしむるに在り

二、右目的達成の為には該地政権に対する内面指導に依ると共に之と併行し南京政権をして北支の特殊性を確認し北支の分治を牽制するが如き施措をなさず進むで北支政権に対し特殊且包括的なる分治の権限を賦与せしむる様施策するものとす

     要  綱

一、分治の内容

 分治の内容は前記方針に基き北支政権をして財政産業交通等諸般の事項に付実質上の権限を行使せしめ北支民衆の安居楽業並に日満支三国の提携共助を目的とする政治上及経済上各般の施措に関し南京政権其の他排日的工作により影響を受けざるが如き状態に在らしむるを以て目途とす。特に該地域に於ける支那領土権を否認し又は南京政権より離脱せる独立国家を育成し或は満洲国の延長を具現するを以て帝国の目的たるが如く解せらるる行動は厳に之を避くるを要す

二、分治の地域

 分治の地域は窮極に於て北支五省を目途とするも徒に地域の拡大に焦慮するは却て我方所期の目的を達する所以に非ざるを以て先づ冀察二省の明朗化(経済の開発及民心の安定)と分治の完成とに主力を傾倒す。尚爾他三省に対しては第五項に基き施策するものとす。

三、冀察政権の指導

 冀察政権の指導に当りては最も公明なる態度を以て臨み該政権の機構を改善し其の人的浄化刷新を計ると共に特に財政、経済、軍事等百般の事総て軍閥的■政を清算して■■ある地域を構成し民心の把握に努めしむるを要す

 右内面指導と共に南京政権に対する工作に依り同政権をして帝国の対北支政策に協力せしむる如く施策する等南京政府利用策をも併用し両々相俟つて成果の向上に努むるを要す

四、冀東自治政府の指導

 冀東自治政府の指導に当りては特に其の内政の向上に努めしめ同政権をして冀察政権に対する範たらしむるに着意するを要するも同時に冀東自治政府は結局単独に存立し得ざるものなる点をも考慮に容れ北支五省分治結成の障害となるが如き施策は之をなさざるを要す

 冀察政権の分治機能信頼するに足るに至らば冀東地域は之を冀察政権下の特別区として同政権に合流せしむるものとす

五、山東、山西及綏遠諸政権の指導

 山東に対し強ひて之を冀察側に合流せしむるか如き工作を行ふは却て其の対日依存を困難ならしめ延て其の存在をも危くするの惧多きを以て之を慎み防共親日及日満支経済提携を主眼とする諸般の工作に依り帝国との連帯関係を一層密接ならしむること並に成るへく南京政権其の他の妨害を排除して将来の分治を容易ならしむることに着意して之を指導するものとす。

 山西及綏遠に関しては右に準す。而して此等両政権に対する指導は内蒙工作との調和を必要とすること勿論なるも同時に対支政策の円満なる遂行に留意し該省政権を駆逐し又は之を内蒙政権に隷属せしむるか如き施策は之を行はさるものとす

六、北支経済開発は民間資本の自由進出を本旨とする我方権益の伸暢に依り日支人の一致せる経済的利益を基礎とする日支不可分の事態を構成し、平戦爾時に於ける北支の親日態度保持に資せしむるを以て目的とす特に国防上必要なる軍需資源(鉄、石炭、盬等)の開発並に之に関連する交通電力等の施設は要すれば特殊資本に依り速に之か実現し■るものとす

 尚経済開発に当りては第三国をして北支に於ける我特殊地位並に権益を尊重せしむると共に第三国の既得権益は之を尊重し要すれば此等諸国の施設と合同経営し又は其の資本材料等をも利用する等第三国特に英米との提携共助に留意するものとす。



   附 録(昭和十一年八月十一日関係諸省間決定)

一、別紙第一は「第二次北支処理要綱」の趣旨に基き差当り冀察政権側(冀東政権亦之に準す)をして執らしむへき措置の限度を例示せるものなり

一、別紙第二は北支に於ける国防資源中速に開発を計るへきものを例示せるものなり従て其の具体的事項に付ては今後調査の上改案を必要とするものあるへく又之か実現に当りては所要資金の調達の関係を考慮するものとす

別紙第一

一、関税の処理

 関税の処理は外債負担部分及海関維持費を除きたる河北省関税収入(已むを得されは内債負担部分をも控除することを得)を収得するを目的とし冀察政権をして南京政権との話合に依り之を実現せしむるを原則とす若し南京政権か飽く迄右話合に依る接収を拒否する場合に於ては窮極の処置として海関監督を通し海関行政の実質を掌握し依て以て関余の収得を図るものとす但し如何なる場合に於ても海関の実力的接収、海関人事に関する実力干渉、海関組織の分離又は統一破壊、特殊関税制度及地帯の設定並に外債負担部分の抑留積立等は之を為ささるものとす

二、金融対策

 窮極の目標は南京側金融支配より脱却せる北支の中央金庫を設立するに在りと雖も北支金融の現情、南京政権の通貨金融政策、其の他の諸情勢は直に右目的を達成し難きものあるに鑑み河北省銀行の如き北支既存金融機関に付其の内容を調査の上適当と認められたるものを漸を追て育成強化し以て名実兼備せる冀察の中央金庫の基礎を構成することを差当りの目途とす

三、関税以外の中央税権の処理

 盬税統税其の他中央税権に付ては概ね第一項関税処理の原則的接収方法に倣ひ以て中央税権統一の破壊及二重課税の発生を避け収入の接収を旨とする一万外債負担部分に触れさることとす

四、交通通信等

 交通通信等に関しては差当り既存施設の統合改善を図るを主旨とし分治の限度に付ては具体的問題の伸展に伴ひ考慮すへきも概ね地方的行政に関するものと全国的行政に関するものとに分ち前者に付ては出来得る限り広汎なる権限を要求せしむるも後者に付ては南京政権側の交通通信機関との連絡上の便宜をも考慮に容れ統一の破壊を避くるものとす(鉄道に関しては支那に於ける鉄道統一に関する華府会議決議参照)


別紙第二

第一、国防資源

一、鉄 鉱

 先つ龍烟鉄坑及河北省に於ける有望なる諸鉄坑を開発す

 若は差当り興中公司をして実施せしめ満鉄をして之に協力せしむ鉱石として輸出すへきや或は製銑の上輸出すへきやは本邦内地外地満洲等に於ける斯業との調整並企業者の採算関係其他に依り決定す

 山東省金嶺鎮鉄坑は既に我か利権関係あるを以て前記冀察両省に於ける鉄坑開発の進度を見たる上之か開発を決定することとす

二、「コークス」用炭鉱

 津石鉄道建設にも関連し対日輸出を目的とし井■炭坑に日本資本を注入し日支合弁とし其の増産を期す

 山東省黒山炭坑を中心とし附近小炭坑の統合経営を誘導す

 開濼炭坑に関しては龍烟鉄坑の開発及北支製鉄事業の便宜をも考慮し窮極に於て日英支合弁事業たらしむる如く指導に努む之か為前記井■炭及博山炭の増産をも適宜利用するものとす

三、盬

 長蘆盬並に山東盬の改良増産を図る

 製盬事業は支那人に依る民営に委するも我方より所要の資金並に技術的援助を与ふるものとす

 長蘆盬の改良増産及対日輸出は既定の方針に依り急速実現を期す

四、棉 花

 先つ河北山東両省に於ける棉花の改良増産を図り逐次之を山西其他の地方に及ほすものとす

 改良増産は農民の自覚と北支当局の指導奨励に俟つへきも我方よりも所要の資金及技術的援助を与ふるを要す

 尚既定方針に従ひ興中公司の設立すへき棉花倉庫公司及運輸公司をして棉花の取引輸送等に関し産棉事業の発達の為協力せしむ

五、液体燃料

 北支就中山西省に於ける石炭を利用し我方の技術及資本の援助に依り石炭液化事業を促進す

六、羊 毛

 緬羊の改良増殖に依り羊毛の増産を図る

 先つ察哈爾、河北、山東省に於て実施し逐次綏遠其の他四北地方に及ほすものとす

 緬羊の改良増殖は功を急くことなく差当り技術的指導に重点を置く

第二、其の他の国防施設

 前記国防資源の開発を促進し併せて戦時之か確保を遺憾なからしむる為北支に於ける交通機関の整備拡充を策し就中龍烟鉄坑及井■炭坑の開発に伴ふ鉄道の建設及改良並に必要に応し関係港湾の改良等の急速なる実現を期す

 尚国防的経済的見地よりすれは夫々平綏線の改良及西部延長並山東鉄道の延長を重要とするを以て之等に付ても逐次実現を期す

(国立公文書館:昭和財政史資料第6号第66冊)

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