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満洲国鉄道港湾河川に関する処理方針 1932年04月15日

 満洲国鉄道港湾河川に関する処理方針(ひらがな化、一部新字体化、附属文書省略)


満洲國鐵道港灣河川ニ關スル處理方針

満蒙新国家に対しては本年三月十二日閣議に於て帝国としては差当り承認を与ふる事なきも新国家を相手方として出来得る限り非公式の方法を以て之と事実上の関係を結ひ以て帝国の権益の実現拡充及事実上の既成状態の形式に努むヘき旨決定の次第ある処今般満蒙に於ける鉄道の管理其の他の事項に関し満洲国執政より関東軍司令官に対し別紙第一号の通り文書の提出あり仍て関東軍司令官と南満洲鉄道株式会社総裁との間に別紙第二号の如き協定を締結せり別紙第一号は満洲国執政と関東軍司令官との間の地方的取極なるか右は前記閣議決定の趣旨に合致するものなるに付政府は之を承認すヘく又別紙第二号は前記地方的取極に依り生したる新事態の処理に関する関東軍司令官と南満洲鉄道株式会社総裁との協定にして政府に於て之を承認し支障なきのみならす其の趣旨とする所は満蒙現下の情勢に即し適当なるものと認めらるるを以て

(イ)之を南満洲鉄道株式会社に対し正式に有効ならしむる為には政府より同会社に絶対極秘の指令を与ふるの形式に依る事とし又

(ロ)本件に関し帝国及南満洲鉄道株式会社と満洲国との関係を正式化するに当りては帝国及満洲国の対外関係殊に門戸開放機会均等の原則並に対支借款団規約との関係を考慮して適宜其の形式を調整する事とし

別紙第一号及第二号を承認する事と致度但別紙第二号に関しては別添了解事項に依るものとす


     別紙第二号に関する諒解事項

一、本協定は非常時の措置として之を認め可成速に其の正式化を計ること

二、本協定は南満洲鉄道株式会社の委託にかかる鉄道のみに限り同社固有の鉄道に及はさること

三、本協定は満鉄に対する法令等に基く政府の監督権の作用に影響なきこと

四、南満洲鉄道株式会社は委託経営に関する特別勘定を設くること

五、河川の委託経営とは河川の航運事業を意味し治水事業を包含せさること

六、附表第二鉄道計画中第二次建設線以下は関係省間に更に協議を遂けて実行すること

七、協定本文第十五条に依る協定内容の変更は国防上緊急必要ある場合を想定するものとす

八、南満洲鉄道株式会社か政府に納入する金額は守備の為満洲国に駐箚する国軍費用の財源に充当すること

九、委託経営の利益金(総収入より営業費、新借款利子及旧借款利子の約半額を控除したる残額)の給百分の五を委託経営者に収得せしむること

十、委託経営に依る総収入より(1)営業費(2)新借款利子(3)旧借款利子の約半額(4)委託経営者収得金(5)納入金の順序に依り控除すること

十一、第十条に関する協定第一条括弧内の借款利子中四洮、洮昂及吉敦線に関するものは国軍費用中経常費の全額を支弁し得るに至る迄其の支払を為ささるものとす但其の約半額は第三年度(昭和九年度)より之を支払ふこと

 経営者収得金及旧借款利子の支払は前年度納入金額を低下せさることを条件とすること

十二、過剰利益(委託経営利益金より納入金、委託経営者の収得金、借款元利金を控除したる残額)は委託経営者及満洲国政府に於て収得すること


(参考)

満蒙新国家成立に伴ふ対外関係処理要綱(四)

「我方は出来得る限り非公式の方法を以て新国家との間に事実上の関係を結ひ(私法的契約の形式を原則とし例外的には帝国出先官憲と新国家若くは其の官憲との地方的取極の形式に依る)以て帝国権益の実現拡充及事実上の既成状態の形成に努むること」


別紙第一号

(省略)


別紙第二号

   鐵道港灣河川ノ委託經営竝新設等ニ關スル協定

関東軍司令官(以下甲と称す)と南満洲鉄道株式会社総裁(以下乙と称す)との間に甲の管理に属する満洲国政府の鉄道港湾及河川(以下鉄道港湾河川と称す)の経営並に新設等に関し協定を為すこと左の如し

第一条 甲は附表第一に定むる鉄道港湾河川(附帯事業を含む)の経営を乙に委託するものとす

第二条 乙は法令並本協定の定むる所に依り鉄道港湾河川の経営を為すものとす

第三条 乙は鉄道港湾河川の経営に関し甲の指揮監督を受くるものとす

第四条 乙は重要なる諸規程、運賃及料金の制定並改廃に関し予め甲の承認を受くるものとす

第五条 乙は予算、決算、利益金の処分、重要なる財産の処分並予算の重要なる変更に関し予め甲の承認を受くるものとす

第六条 本協定成立の趣旨に鑑み南満洲鉄道株式会社総裁を関東軍最高顧問に南満洲鉄道株式会社の鉄道港湾河川業務担当首脳者を関東軍顧問に嘱託するものとす

第七条 甲は監督官を南満洲鉄道株式会社に派遣し鉄道港湾河川の経営を監督せしむるものとす

第八条 鉄道港湾河川に関する左記各項の資金は乙に於て之を調達するものとす

 一、民間出資及之に準するものの償還に要する資金

 二、新設買収並拡築改良に要する資金

 三、車輌船舶の新造改造に要する資金

 四、其の他之に準する資金

第九条 前条の資金及現に乙の有する鉄道借款並工事請負契約に基く債権額を貸金総額とし鉄道港湾河川に属する一切の財産(営業権を含む)を担保とする借款契約を乙と満洲国政府との間に締結するものとす

第十条 乙は別に協定する金額を日本政府に納入するものとす

第十一条 鉄道港湾河川に関する工事は附表第二の定むる所に依り乙をして之を施行せしむるものとす

第十二条 甲は乙に対し鉄道港湾河川の施設改良に関し軍事上必要なる指示をなすことを得るものとす

第十三条 甲は鉄道港湾河川の軍事用法を完からしむる為別に定むる所に依り将校を配置するものとす

第十四条 本協定は昭和七年 月  日より其の効力を発生するものとし其の期間は効力発生の日より満五拾ヶ年とす

第十五条 甲は国防上必要あるときは本協定の内容を変更することを得るものとす

第十六条 本協定書は二通を作成し甲乙各其の一通を保有するものとす

  昭和七年三月十日

     関 東 軍 司 令 官

     南満洲鉄道株式会社総裁

附 則

本協定第七条に定むる監督官並其の属員の諸給与其の他に要する費用は委託経営の収入中より之を支弁するものとす


附表第一

 一、鉄道

  甲

四 洮 線

洮 昂 線

洮 索 線

斉 克 線

呼 海 線

吉 長 線

吉 敦 線

吉 海 線

瀋 海 線

奉 山 線

打 通 線

  乙

   本協定第八条並第十一条に依り建設せらるヘき鉄道

 二、港湾

  葫 蘆 島

  河北(営口)

  安 東 県

 三、河川

松 花 江

嫩   江

遼   河

黒 竜 江

鴨 緑 江


附表第二

 第一次建設線

一、敦 化-図們江線

二、拉法站-哈爾賓線

三、克 山-海倫線

 第二次建設線

一、通遼又は錦県より赤峰を経て熱河に至る線

二、長 春-大賚線

三、延 吉-海林-依蘭-佳木斯線

次の諸線の建設着手順序及時期は別途協議の上之を決定するものとす

大 賚-洮安線

斉克線の一駅より大黒河に至る線

洮 南-索倫-満洲里(又は海拉爾)線

開 原-西安線

撫順駅より瀋海撫順站に至る線

新邱より義州站及巨流河站に至る線

公主嶺-伊通線

鉄 嶺-法庫門線

瓦房店-復州線

第一次線は成るヘく速に工事に着手するものとし第二次線は事情の許す限り速に着手するものとす

尚別に対東支政策の遂行に資する為速に伯都納-哈爾賓線の測量を行ふものとす


     第十条に関する協定

第一条 乙か日本政府に納入する金額は鉄道港湾河川の経営に依る利益金(総収入より営業費及借款利子を控除したる残額)並乙か鉄道港湾河川の委託経営を受けたることに依り利得したりと認むヘき利益金を以て支弁するものとす

 前項前段の利益金より納入金を支出したる残余は之を借款未払利子及借款元金の償還に充当し尚残余あるときは之か処分に関し甲乙間に於て協議決定するものとす

第二条 第一条の納入金額は当該年度毎に甲乙間に於て協議の上決定するものとし第一年度第二年度協定額を左記の通りとす

     左  記

                   (単位千円)

 第一年度(昭和七年度)       なし

 第二年度(昭和八年度)       七、○○○


     昭和七年五月九日付満鉄総裁宛拓務次官通牒

(省略)


指令殖秘第一号

(省略)

(国立公文書館:6.満洲国鉄道港湾河川に関する処理方針。附.満鉄総裁宛拓務省通牒及指令 B02030709500)

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