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満洲国経済建設要綱 1933年03月03日

 満洲国経済建設要綱(ひらがな化、一部新字体化)


  大同二年三月一日

                満 洲 國 政 府

   満洲國經濟建設要綱

第一 序 説

我か満洲国は旧東北軍閥秕政の跡を受け昨年三月高遠なる理想の下に建国し爾来満一年内外真に多事多難なりしと雖も内は極力往日の暗黒政治を廓清し諸般の法律制度を改善し政治機構の基礎を固め幣制並に財政の確立を計ると共に一方匪禍の粛清治安の維持に努め外は独立国家として善隣との友好関係を深厚にし国際的地位の向上に努力し来れり

抑々建国の本義は一に順天安民にして之か具体化は三千万民衆の楽土実現にあり

今や建国一周年紀念日に際し茲に経済建設の方針を確立し健実なる歩調を以て此の理想実現の歴史的大事業に第一歩を踏出さんとす素より為政の事たる多言を取らす只実行にありと雖も経済建設の大業は確固たる方針周到なる計画共同一致の努力を以てするも猶ほ至難の事に属すされは茲に敢て其根本方針並建設計画の綱要を示し官民協力実行邁進の規準と為す

而して本綱要は永年に亙る大計なるを以て近き将来に関しては別に計画を策定し之を公表するところあるへし

第二 経済建設の根本方針

我国経済の建設に当りては無統制なる資本主義経済の弊害に鑑み之に所要の国家的統制を加へ資本の効果を活用し以て国民経済全体の健全且つ溌剌たる発展を図らんとす斯くして国民大衆の経済生活を豊富安固ならしめ其の国民的生活を向上し我国力を充実し併せて世界経済の発展に貢献し文化の向上を計り以て建国の大理想たる模範国家を実現するは経済建設究極の目標なり

右大目標に到達する為め次の四大根本方針の下に経済建設に邁進するを要す曰く国民全体の利益を基調とし利源開拓実業振興の利益か一部階級に壟断さるるの弊を除き万民共楽ならしむるを以て方針第一とす曰く国内賦存の凡有資源を有効に開発し経済各部門の総合的発達を計る為め重要経済部門には国家的統制を加へ合理化方策を講するを以て方針第二とす曰く利源の開拓実業の奨励に当りては門戸開放機会均等の精神に則り広く世界に資本を求め特に先進諸国技術経験其の他凡有文明の粋を蒐めて之を適切有効に利用するを以て方針第三とす曰く東亜経済の融合合理化を目途とし先つ善隣日本との相互依存の経済関係に鑑み同国との強調に重心を置き相互扶助の関係を益々緊密ならしむ之を以て方針第四とす敍上の四方針は経済建設の根本方針たるを以て凡有場合に徹底遵奉し其の完成を期するものとす

第三 経済統制の方策

前述根本方針の主旨に基き政府は現下の情勢上実現可能にして最善なる手段として下記の範囲に於て国民経済の統制を行ふ

 一 国防的若くは公共公益的性質を有する重要事業は公営又は特殊会社をして経営せしむるを原則とす

 二 右以外の産業及資源等各般の経済事項は民間の自由経営に委す只特に国民福利を重んし其の生計を維持する為に生産消費の両方面に亙り必要なる調節を行ふ

第四 交通の充実

我国経済の根幹たる農業其の他一般資源の開発振興治安の維持商業の隆盛対外経済連繋上交通の整備は経済建設の基礎工作として最も緊密なるを以てその有機的拡充を企図す

一 鉄 道

 (イ)鉄道建設は経済開発を主眼とし併せて国防の安固及治安の維持を期するを以て方針とす

 (ロ)将来鉄道の総延長は二万五千粁を目途とし今後十ヶ年間に先つ四千粁の新線を敷設し既設のものと合し総延長一万粁に達せしむ

 (ハ)主要鉄道は国有とし統一経営す

二 港 湾

 (イ)我国経済開発を促進し生産地方と海港とを最も経済的に連絡する為我国港湾の外隣国の港湾を有効に利用す

 (ロ)営口安東の両港に所要の改修を加ふ

 (ハ)葫蘆島の築港工事は将来経済上の要求切実を加ふるの時に完成す

 (ニ)海運は差当り近海航路の充実を図り外洋航路に付てもなるへく速に其の発展を期す

三 河 川

 河川の重要性に鑑み黒竜江松花江鴨緑江及遼河に於ける河運の便を増進す

四 道 路

 (イ)国民の一般交通の便を加へ治安を維持する為主要都市相互間及主要都市と県城間を連絡する為の路線其の他未開地方の開発及国防等の必要に属する路線等総計約六万粁を十ヶ年間に之を新設又は改修す

 (ロ)今後此等路線上には全国に亙り自動車交通を発達せしむ

五 通 信

 (イ)国内に於ては通信の統一連絡を主眼とし併せて海外連絡通信の充実を期す

 (ロ)有線無線の電気通信を統一経営し経済幹線及之に附随する支線の改良拡張と主要都市電話施設の改善拡張放送施設の拡充を行ふ

六 空 運

 日進月歩の趨勢に鑑み空運の発達を助長し優秀なる機材と技術とを有する満洲航空会社に之を経営せしめ差し当り今後三ヶ年間に航空路約三、五〇〇粁を開拓し更に将来欧亜及東洋各地間航空路の開拓に努む

七 都市計画

 (イ)国都新京は広表二百平万粁収容人口五十万を目標とし模範的都市を建設す

 (ロ)奉天哈爾濱吉林斉斉哈爾等の都市に対しては適当の時期に近代的都市計画の実現を期す

第五 農業の開発

(一)農産業

 (1)我国民経済は農を以て其の根幹とす而して量産増殖の目標は外国に依存する農産物の自給を図ると共に一般農産物の輸出に努め以て農民大衆福利を増進し其の生活を向上せしめんとす

 (2)量産の改良増殖

   (イ)我農業経営の基幹を為す大豆高粱粟玉蜀黍に付ては之か栽培に指導奨励を加へ品種の改良と其の増殖を図る

   (ロ)綿は栽培面積三十万町歩繰綿年産額一億五千万斤に達せしむ

   (ハ)小麦は栽培面積二百三十万町歩年産額二千万石に達せしむ

   (ニ)煙草麻類落花生胡麻蓖麻忽布甜菜果樹蔬菜等の栽培並柞蠶の飼育を奨励して農業経営の改善並農家経済の福利を図る

(二)畜産業

 (1)我国の畜産は其の量豊富なるに拘らす資質劣等なるもの多く資源としての価値低き憾あり仍て其の資源の開発は家畜頭数の増加と共に品種の改良を行ふを以て主眼とす

 (2)家畜の改良増殖

   (イ)馬は「アラブ」「アングロアラブ」等に依り在来種の改良を行ひ少くとも改良馬二百万頭を保持せむとす

   (ロ)緬羊は主として「メリノ」に依り在来種の改良を行ひ少くとも四百万頭の在来種を改良種によりて置換す

   (ハ)牛は在来種の選択淘汰を行ひ優良型の増殖に努め少くとも二百七十万頭の整備を図る

   (ニ)豚は国内に於ける肉類需給を目標とし主として「バークシャー」に依り其の改良増殖を行ふものとす

 (3)家畜衛生制度を確立し畜産業の安定を図り畜産資源の涵養に資す

 (4)牧野の改良を行ひ以て家畜頭数の増加を促進す

(三)林 業

 (1)林業は森林の濫伐を抑制し之か保護増殖に努め合理的経営に依つて林力の保続を図るを主眼とす

 (2)新たなる林場権の発放は暫く之を中止し今後五ヶ年を期して林場権の整理を行ふと共に主要森林の基礎調査を行ひ国有林を規整し之か合理的経営の基礎を確立せんとす国有林の経営は国営を原則とし必要に応し其の他の形に依つて之を行ひ公有林私有林は政府監督の下に夫々合理的経営を為さしめ又一面造林を奨励し林業発達を図るものとす

(四)水産業

 (1)漁 業

    孵化養殖に依り資源の涵養に努め濫獲を戒めて其の恒久的利用を図らむとす

 (2)製塩業

    塩田の整備拡張を行ひ塩業の発達を期す

(五)農業経営

 在来の牧畜農業経営を基礎とし各種新作物を栽培せしむると共に副業経営並機械農法を加味して其の改善を図る

(六)農業施設

 (1)農村の振興を図り農家の経済力を充実せしむるを目途ととし盛んに農村組合制度を興し以て生産消費の改善を図り融資を円滑ならしめて斯業の発達を促すの外農村諸制度の改善確立を図る

 (2)農業の指導奨励を行ふ為漸次各種試験機関家畜改良機関獣疫研究機関試作地苗圃模範造林地等の機関を設置す

 (3)大同元年度より概ね五ヶ年間に気象施設を完備す

 (4)治水感慨事業等に付基礎的調査を行ふ

(七)土 地

 (1)速かに土地の調査に着手し土地制度を確立し土地兼併の弊を防止す

 (2)未耕地は農地開拓の特殊機関を設置し農業移民をして十五ヶ年間に於て概ね五百万町歩の開発を行はしむ

第六 鉱工業の振興

(一)方 針

 鉱産資源を開発し基礎工業及国防工業の確立を図り国民経済を豊富ならしめ国富を増大せしむるを以て方針とす

(二)鉱 業

 (イ)石炭は諸炭砿を統一し合理的生産と供給とを行ひ以て低廉豊富なる燃料を提供すると共に輸出の増進を図る

 (ロ)国防鉱産資源は原則として特殊会社をして其の鉱業権を確保せしめ以て無統制濫掘を戒むると共に其の開発に便す

 (ハ)砂金及金鉱は国有のものと然らさるものとに区分し国有以外のものは之を一般に開放す

(三)工 業

 (イ)左記工業は国内需要に伴ひ所要の統制下に逐次発達せしむ

金属工業

機械工業

油脂工業

「パルプ」工業

曹達工業

酒精工業

柞蠶工業

紡績工業

製粉工業

「セメント」工業

醸造工業

 (ロ)前記以外のものは差当り自然の発達に委するも将来必要に応し所要の統制を加ふることあるへし

 (ハ)電気事業は統一経営を行ひ豊富低廉なる電力を供給す

(二)施 設

 (イ)工業の健全なる発達を促進し施設集中の利益を図るため左の地方に工業地域を設定す

     奉 天

     安 東

     哈爾濱

     吉林附近

 (ロ)工業品の規格を統一す

第七 金融の整備

旧軍閥の秕政中其の害毒の大なりしは紙幣の濫発片紙の流行なりしに鑑み政府は建国当初の既定方針に基き国幣の流通と其の価値の維持に努め以て金融の基礎を鞏固ならしむると共に一般的に信用制度を改善し流通経済の暢達を図る

(1)満洲中央銀行は速かに附業を整理し通貨の調節安定を計り専ら金融の統制に任す

(2)産業組合金融組合等各種庶民金融機関並一般金融機関の整備を計り之に対し適当なる助成並に取締の方法を講す

(3)農工業の発達に資する為め特殊金融機関を設立し割増金付債券の発行を特許する等の方法により長期低利資金の供給を行はんとす

(4)彩票の発行は政府自ら之を行ふの外之を許可せす

   割増金附債券の発行は前号に掲けたるものの外之を許可せす

(5)一般国民に対し貯蓄心を涵養せしむる為め郵便貯金制度を改善し其の発達を計る

第八 商業の助長

(一)一般商業に対しては努めて之を助長奨励し取引の円滑を期し国内産業の販路を広く世界に求め以て商売の繁栄を計らんとす

   之か為め我商民の特徴は益々之を助長せしめ旧慣の改む可きは之を矯正し以て取引の合理化を期す

   又生活の必要品其の他国民生活に重要なる関係を有する商品につきては適切なる供給と価格と調節とをなす

(二)新に特許法商標法等を発布し工業所有権の保護を計り寄託保険等に関する法制を定め度量衡の制度を統一し其の他取引所の制度を改善する等商取引に関する文明的施設をなさむとす

(三)関税政策は貿易の振興を旨とし国際取引の増進を期す

第九 私経済の改善

政府は単に民に禍する旧東北軍閥の秕政を排するに止らす積極的に各種の政策及施設を実行し済世救民以て恵沢を一般民衆に及ほし其の私経済を改善し民力培養に努むされと徒らに遊民徒食の輩の存在を許さす自治隣保扶助の美風を作興普及す之か為め左の如き方策を講す

 一 凡有方法を講し国民大衆の生命及財産の安固を期す

 二 官民協力し適当の施設を行ひ恆に飢饉其の他天災に備へ野に餓孚なからしむるを期す

 三 税制を整理し負担の均衡及軽減を図り民力の伸張を期す

 四 国民大衆に対し生活必需品の低廉なる供給を図る

 五 各種産業組合及金融組合の健全なる発達を図り相互扶助の実を挙くるに努む

 六 一般失業者に対して生業を与ふるの道を講す

第十 結 論

以上開示せる経済各部門に関する建設方針の要綱は尚其の規模小なりと雖も漸次我国財政経済の実力に応し其の計画を拡大せんとするものにして然も本計画を以て進むに現在我国総生産額三十億円は十年を出てすして増加するを疑はす況んや尚将来に於ける国力の増大は期して待つへきものあらん然りと雖も前記初期方針の実行に於ても巨額の資本と優季なる技術及国民一致の協力を必要とす其の経済建設資金は広く之を世界に求むると共に国内に於ては主として中小資本の吸収に努め国民全般の福利増進を主眼とし技術的指導亦之を中外に求むへし

要は国家と国民永遠の繁栄を基調とし世界に比類なき新経済組織を完成し我王道建国の大使命を全ふせんとするに在り茲に三千万民衆に本建設綱要を示して切に其の確固たる決心と協力を冀望する所以なり

(国立公文書館:44.満洲国経済建設要綱(満洲国政府公表) B02030713200)

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