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降伏後に於ける米国の初期の対日方針 1945年09月06日

 降伏後に於ける米国の初期の対日方針(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)


   降伏後ニ於ケル米國ノ初期ノ對日方針(假譯)

以下は降服後の日本に対する書記の全般的政策に関し国務省、陸軍省及海軍省に依り共同に作成せられ九月六日大統領の承認を得たる声明なり、本文書の概要は八月二十九日「マクアーサー」元帥に対し書信を以て通達せられ九月六日大統領の承認を経たる後伝書使に依り同元帥に送付せられたり

本文書の目的

本文書は降伏後の日本国に対する初期の全般的政策に関する声明なり本文書は大統領の承認を経たるものにして連合国最高司令官及米国内関係各省及機関に対し指針として配布せられたり、本文書は日本占領に関する諸問題中政策決定を必要とするものを網羅し居らす本文書に含まれす又は充分尽され居らさる事項は既に別個に取扱はれ乃至は将来別個に取扱はるへし

第一部 究極の目的

日本に関する米国の究極の目的にして当初の時期に於ける政策が従ふへきもの左の如し

A 日本か再ひ米国の脅威となり又は世界の平和と安全の脅威となることなき様保証すること

B 他国家の権利を尊重し連合国憲章の理想と原則に示されたる米国の目的を支持すへき平和的且責任ある政府を追て樹立すること、米国は斯る政府か出来得る限り民主主義的自治の原則に合致することを希望するも自由に表示せられたる国民の意思に支持せられさるか如き政体を日本に強要することは連合国の責任にあらす

此等の目的は左の如き主要手段に依り達成せらるへし

A 日本国の主権は本州、北海道、九州、四国竝に「カイロ」宣言及米国か既に参加し又は将来参加することあるへき他の協定に依り決定せらるへき重要ならさる附近島嶼に限らるへし

B 日本は完全に武装解除せられ且非軍事主義化せらるへし、軍国主義者の権力と軍国主義の影響力は日本の政治、経済及社会生活より一掃せらるへし、軍国主義及侵略の精神を表示する制度は強力に抑圧せらるへし

C 日本国民は個人の自由竝に基本的人権の尊重特に信教集会言論出版の自由に対する欲求を増大する様奨励せらるへく且民主主義的及代議的組織の形成を奨励せらるへし

D 日本国民は平時の要求を充し得るか如き経済を自力に依り発達せしむへき機会を与ヘらるへし

第二部 連合国の権力

 1  軍事占領

  降伏条項を実施し上述の究極目的達成を促進する為日本本土は軍事占領せらへし右占領は日本と戦争状態に在る連合各国の利益の為行動する主要連合国の為の軍事行動たるの性質を有すへし右の理由に因り対日戦争に於て指導的役割を演したる他の諸国の軍隊の占領ヘの参加は歓迎せられ且期待せらるるも占領軍は米国の指定する最高司令官の指揮下に在るものとす

  日本の占領及管理の施行に関し充分協議を行ふと共に適当なる諮問機関を設けて主要連合諸国を満足せしむべき政策を樹立する様有らゆる努力を尽すへきも万一主要連合諸国に意見の不一致を生したる場合に於ては米国の政策に従ふものとす

 2 日本国政府との関係

天皇及日本政府の権力は降伏条項を実施し日本の占領及管理の施行の為樹立せられたる政策を実行する為必要なる一切の権力を有する最高司令官に隷属するものとす

日本社会の現在の性格並に最小の兵力及資源に依り目的を達成せんとする米国の希望に鑑み最高司令官は米国の目的達成を満足に促進する限りに於ては天皇を含む日本政府機構及諸機関を通して其権限を行使すへし日本政府は最高司令官の指示の下に国内行政事項に関し通常の政治機能を行使することを許容せらるへし但し右方針は天皇又は他の日本の機関か降伏条項実施上最高司令官の要求を満足に果ささる場合最高司令官か政府機構又は人事の変更を要求し乃至は直接行動する権利及義務の下に置かるるものとす尚右方針は最高司令官をして米国の目的達成を目途する前進的改革を抑へて天皇又は他の日本の政府機関を支持せしむるものにあらす即ち右方針は現在の日本統治形式を利用せんとするものにして之を支持せんとするものにあらす封建的又は権力主義的傾向を修正せんとする統治形式の変更は日本政府に依ると日本国民に依るとを問はす許容せられ且支持せらるへし斯る変更の実現の為日本国民又は日本政府か其の反対者抑圧の為強力を行使する場合に於ては最高司令官は麾下の部隊の安全竝に占領の目的の達成を保障するに必要なる限度に於て之に干渉するものとす

 3 政策の弘布

日本国民及世界一般は占領の目的及政策竝に其の達成上の進展に関し詳細なる情報を与ヘらるへし

      第三部 政   治

一、武装解除及非軍国主義化

武装解除並に非軍国主義化は軍事占領の主要任務にして即時且断乎として実行せらるへし、日本国民に対しては其の現在及将来の苦境招来に関し陸海軍指導者及其の協力者か為したる役割を徹底的に知らしむる為一切の努力か行はるへし、

日本は陸海空軍、秘密警察組織又は何等の民間航空を保有することなし、日本の地上航空並に海軍兵力は武装を解除せられ且解体し、日本国大本営、参謀本部(軍令部)及凡ての秘密警察組織は解消せしめらるへし、陸海軍資材、陸海軍艦船、陸海軍施設及陸海軍並民間航空機は引渡され且つ最高司令官の要求する所に従ひ処分せらるへし

日本大本営及参謀本部(軍令部)の高級職員、日本政府の其他の陸海軍高級職員、其他の国家主義的並に軍国主義的組織の指導者其他の軍国主義並に侵略の重要なる代表人物は拘禁せられ、将来の処分の為留意せらるへし、軍国主義並に好戦的国家主義の積極的代表人物たりし者は公共的職務並に公的又は重要なる私的責任ある如何なる地位よりも排除せらるへし、極端なる国家主義的又は軍国主義的の社会、政治、職業並に商業上の団体及機関は解消せらるへし

理論上並に実践上の軍国主義及極端なる国家主義(軍事教訓を含む)は教育制度より除去せらるへし、嘗て■■■の職業的将校並に下士官たりし者其他の軍国主義並に極端なる国家主義の代表人物たりし者は凡て監督的及教育的地位より排除せらるへし

二、戦争犯罪人

最高司令官又は適当なる連合国機関により戦争犯罪人として告発せられたる者(連合国俘虜又は其他の国民を虐待せる廉により告発せられたる者を含む)は逮捕せられ裁判に付され有罪の判決ありたる時は処罰せらるへし、連合国中の他の国より其の国民に対する犯罪を理由に要求せられたる者は最高司令官により裁判の為又は証人として或は他の理由に依り必要とせられさる限り当該国に引渡し拘禁せらるへし

三、個人の自由及民主主義過程ヘの希求の奨励

宗教的信仰の自由は占領と共に直に宣言せらるへし同時に日本人に対し極端なる国家主義的並に軍国主義的組織及運動は宗教の外被の蔭に隠るるを得さる旨明示せらるへし、日本国民は米国及其他の民主主義国家の歴史、制度、文化及成果を知る機会を与ヘられ且つ其の事を奨励せらるへし、占領軍人員の日本人との交渉は所要の限度に於てのみ占領政策並に占領目的を促進する為統制せらるへし

集会及公開言論の権利を保有する民主的政党は奨励せらるへし但し占領軍の安全を保持する必要に依り制限せらるへし

人種、国籍、信教又は政治的見解を理由に差別待遇を規定する法律、命令及規則は廃止せらるへし又本文書に述へられたる諸目的並に諸政策と矛盾するものは廃止、停止又は所要程度に修正せらるへし、此等諸法規の実施を特に其の任務とする諸機関は廃止又は適宜改組せらるへし、政治的理由に因り日本当局により不法に監禁せられ居る者は釈放せらるへし

司法、法律及警察組織は第三部の一及二に於て掲けられたる諸政策に適合せしむる為出来■る限り速に改革せらるへく爾後個人の自由並に民■を保護する様進歩的に指導せらるへし

      第四部 経  済

一、経済上の非軍事化

日本軍事力の現存経済基礎は破壊せられ且つ再興を許与せられさるを要す従て先つ下記諸項を含む計画か実施せらるへし

○各種の軍事力又は軍事施設の装備、維持又は使用を目的とする一切の物資の生産の即時停止及将来に於ける禁止

○海軍艦船及一切の形態の航空機を含む諸般の戦争手段の生産又は修理の為の一切の専門的施設の禁止

○隠蔽又は偽装軍備を防止する為日本の経済活動に於ける特定部門に対する監察管理制度の設置

○日本国にとり其値か主として戦争準備に在る如き特定諸産業乃至生産部門の除去

○戦争遂行力増進に指向せられたる専門的研究及教育の禁止

○将来の平和的需要の限度に日本重工業の規模及性格を制限すること

○非軍事化目的の達成に必要なる範囲に日本商船を制限すること

本計画に従つて廃止せらるへき日本の現存生産設備の終局的処分に関し、用途転換、外国ヘの搬出、又は屑鉄化の何れとすへきや目録作成(「インベントリー」)後決定せらるへし右決定に至る迄の間に於ては容易に民需生産に転換し得る諸設備は非常の場合を除き破壊せらるへからす

二、民主主義勢力の助長

民主主義的基礎に基き組織せられたる労働、生産業及農業部内の諸組織の発展は之を奨励支持すへし、生産及商業手段の所有権及之か収入を広範囲に分配することを得しむる諸政策は支持すへし日本国民の平和的傾向を強化し且経済活動を軍国主義的目的の為に支配乃至指導することを困難ならしむると認めらるる経済活動の各形態、組織及指導者は之を支持すへし

右目的の為最高司令官は左の如き政策を執るへし

A平和目的のみを目指して将来の日本の経済活動を指導せさる者は之を経済界の重要なる地位に留め又は斯かる地位に選任することを禁止すること

B日本の商工業の大部分を支配し来りたる産業上及金融上の大「コビネーション」の解体を支持すへきこと

三、平和的経済活動の再開

従来の日本の政策は日本国民に経済上の大破滅を齎し且日本国民を経済上の困難と苦悩の見透しに直面せしむるに至れり

日本の現在の状態は日本自らの行為の直接の結果にして連合国は其の蒙りたる損害復旧の重荷を負はさるへし

之か復讐は唯日本国民か一切の軍国主義的目的を放棄し欣然且専心平和的生活様式に立向ふ暁に於てのみ実現せらるへし、日本は物質的再建に着手すると共に其の経済活動及経済上の諸機構を徹底的に改革し且日本国民を平和ヘの線に沿ひ有益なる職業に就かしむること必要なり連合国は適当なる期間内に右諸措置か実現さるることを妨くることあるへき条件を課せんとする意図なし

占領軍の必要とする物資及労働の調達に関しては之か為飢餓、疾病の流行及甚しき生理上の困難を生せさる程度に於て日本か調達せんことを期待す

日本当局に対しては左の目的に役立つ計画を続行、着手、実施することを期待するものにして必要ある場合に於ては之を命令すへし

A甚しき経済上の苦難を避くること

B入手し得る物資の公正なる配給を確保すること

C連合国政府間に協定せらるる賠償引渡の要求に応すること

D日本国民の平和的需要を適度に充し得る如く日本経済の再建を促進すること

右に関連し日本当局は自己の責任に於て必須国家公共事業、財政、銀行、必需物資の生産及分配等を含む経済活動の管理を施することを許さるへし

四、賠償並びに返還

 日本の侵略に対する賠償方法は左の如し

 1賠  償

  A日本の保有する領域外に在する日本財産の関係連合国当局の決定に従ひ引渡すこと

  B平和的日本経済乃至占領軍に対する補給の為必要ならさる物資、現存資本設備及施設を引渡すこと

尚賠償勘定に於て輸出方指令せられたるもの乃至は原所有主への返還の為輸出方指令せられたるものの外荷受主か所要の交換的輸入の提供に同意乃至は外国為替による支払に同意する場合にのみ国外輸出を許容す、日本の非軍事化計画(「デミリタリゼーシヨン」)と矛盾し若くは之に支障を来すか如き種類の賠償を強要することなかるへし

 2返  還

略奪せる財産は略奪品なること判明する限り一切之を完全且速時に返還するを要す

五、財政、貨幣並に銀行政策

日本当局は最高司令官の同意及監督の下に依然国内の財政、貨幣並に信用政策の管理及指導の責任を保持すへし

六、国際通商及金融関係

日本はやかては諸外国との正当なる通商関係の再開を許容さるへきも占領期間中は適当なる統制の下に外国より平和的なる目的の為に必要とする原料並に他の商品を購入すること並に許容せられたる輸入の支払をなす為の商品輸出を許可せらるへし

一切の商品輸出入、外国為替並金融取引に対し統制を維持すへき処右統制実施の為に執るへき政策及実際の統制運営は何れも右諸取引か占領軍当局の政策に違反せす且特に日本の獲得する一切の対外購買力か日本の欠くへからさる必要の為にのみ利用さるることを確実ならしめる為最高司令官の承認及監督下に置かれるへし

七、在外日本資産

日本の在外資産及降伏条件に依り日本より分離せしめられたる地域に在る日本の資産は全部乃至一部皇室並に政府の所有に属する資産も含め占領軍当局に明示せられ且連合国当局の決定に依る処分を委ねらるへし

八、日本内に於ける外国企業に対する機会均等

日本当局は自ら若くは日本の産業組織を通し如何なる外国の企業に対しても排他的乃至優先的機会乃至条件を与ヘさるへく又外国企業に対し経済活動の如何なる重要なる部門の統制権をも譲渡せさるへし

九、皇室の財産

皇室の財産は占領の諸目的達成に必要なる措置より免除せらるることなかるへし

(国立公文書館:5.降伏後における米国の初期の対日方針(一九四六.九.六)及び降伏後... B18090013800)

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