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徴兵令 1919年07月16日

 徴兵令(ひらがな化、一部新字体化、一部省略)


法律第六十一号

大正七年法律第二十四号中左の通改正す

第十三条第一項第二号中「学校を卒業したる者」を「学校を卒業し又は学校の課程を修了したる者」に改め同条第二項、第三項及第四項中「卒業」の下に「又は修了」を加ふ

第二十三条中「又は之と同等以上と認むる学校」を「若くは之と同等以上と認むる学校又は高等学校」に改む

   附 則

本法は大正八年十二月一日より之を施行す

(官報:1919年7月17日)



改正後本文

   第一章 総則

第一条 日本帝国臣民にして満十七歳より満四十歳迄の男子は総て兵役に服するの義務あるものとす

第二条 兵役は分て常備兵役後備兵役補充兵役及国民兵役とす

第三条 常備兵役は分て現役及予備役とす

 現役は陸軍は三箇年海軍は四箇年にして満二十歳に至りたる者之に服し予備役は陸軍は四箇年四箇月海軍は三箇年にして現役を終りたる者之に服す

第四条 後備兵役は陸軍は十箇年海軍は五箇年にして常備兵役を終りたる者之に服す

第五条 補充兵役は陸軍に在りては十二箇年四箇月海軍に在りては一箇年にして其の年所要の現役兵員に超過する者の中所要の人員之に服す

第六条 国民兵役は分て第一国民兵役第二国民兵役とす

 第一国民兵役は陸軍に在りては後備兵役又は召集せられたる補充兵にして其の役を終りたる者海軍に在りては後備兵役を終りたる者之に服し第二国民兵役は常備兵役後備兵役補充兵役及第一国民兵役に在らさる者之に服す

第七条 各兵役の期限既に満ると雖も戦時或は事変に際するとき若くは臨時に演習或は観兵の挙あるとき若くは航海中或は外国駐箚中其期を延すことある可し

第七条の二 第十二条又は第十三条に依る場合を除くの外志願に由り兵籍に編入せらるる者の服役に関しては勅令の定むる所に依る

 前項に依り兵籍に編入せられたる者満四十歳迄に兵籍より除かるるに至りたるときは勅令の定むる所に依り兵役に服す

第八条 六年の懲役又は禁錮以上の刑に処せられたる者は兵役に服することを許さす

   第二章 服役

第九条 現役兵及補充兵は毎年所要の人員に応し壮丁の身材芸能職業に従ひ勅令の定むる各兵及雑卒に区別し抽籤の法に依り徴集順序を定め之に充つ

 警備隊を置きたる島嶼の壮丁(近衛師団に編入する者を除く)は総て之を警備隊に充て其地に於て服役せしむ但在営期限は一箇年以内とす

第十条 雑卒の現役期限は其職務に因り之を短縮することある可し但常備兵役の全期は之を減することなし

第十一条 抽籤番号の順序に由り其年の補充兵役所要員に超過する者は国民兵役に服せしむ

第十二条 二十歳に至らすと雖も満十七歳以上の者は志願に由り現役に服すことを得

第十三条 左に掲くる者にして陸軍予備役後備役将校同相当官たるの希望を有する満十七歳以上二十一歳未満のものは志願に由り一箇年間陸軍現役に服することを得此場合に於ては其現役中の食糧被服装具等の費用は自弁とす但費用の一部を官給することある可し

第一 官立学校(小学科及撰科等の別科を除く)師範学校又は中学校を卒業したる者

第二 勅令の定むる所に依り中学校の学科程度と同等以上と認むる学校を卒業し又は学校の課程を修了したる者

 前項に掲くる学校に在学する者にして二十二歳未満迄に卒業又は修了し入営することを得るもの亦前項に同し

 前項に依り志願を為したる者は卒業又は修了迄入営を延期す

 第二項に掲くる者満二十二歳以上に非されは卒業又は修了し入営することを得さるに至りたるときは抽籤の法に依らすして之を徴集す

 第一項又は第二項に依り現役に服する者は其現役中之を一年志願兵と称す

 六年未満の懲役又は禁錮の刑に処せられたる者は一年志願兵たることを許さす

 一年志願兵の現役終りたる者の予備役後備役期間は勅令を以て之を定む

第十四条 二十歳未満にして師範学校を卒業したる者又は満二十歳以上にして師範学校に在校し満二十三歳迄に之を卒業すへき者は一箇年間陸軍現役に服せしむ

 前項に依り現役に服する者は其現役中之を一年現役兵と称す

 第一項の場合に於て師範学校在学中の者は卒業迄入営を延期す

 一年現役兵の現役を終りたる者は直に第一国民兵役に服せしむ

 一年現役兵として現役に服すへき者、其現役中の者又は其現役を終りたる者左の各号の一に該当するときは之を徴集す但満二十一歳以上の者の徴集は抽籤の法に依らさるものとす

第一 満二十三歳迄に師範学校を卒業せさるに至りたるとき

第二 師範学校卒業の年に入営したる者其現役を終りたる日より六箇月を経過したる後に於て小学校の教職に在らさることあるとき

第三 師範学校卒業の年に入営せさる者卒業の日より二箇年を経過したる後に於て小学校の教職に在らさることあるとき

第四 小学校の教職に就くの資格を有せさるに至りたるとき

 一年現役兵の現役を終りたる者前項に依り徴集せられたるときは一箇年現役期間を短縮す

 第五項第二号乃至第四号は満二十八歳を過きたる後小学校の教職を退きたる者に付ては之を適用せす

第十五条 現役中殊に勤務に熟し品行方正なる者は帰休を命することある可し

第十六条 予備兵後備兵は戦時若くは事変に際し之を召集す平常に在ては毎年一度六十日以内勤務演習の為め之を召集し又毎年一度簡閲点呼を為す

第十七条 陸軍補充兵及海軍補充兵は現役兵の補欠に充て又戦時若くは事変に際し之を召集す但陸軍補充兵を以て現役兵の補欠に充つるは其服役の初年に限る

 陸軍補充兵は平常に在て百五十日以内教育の為め之を召集す其他勤務演習及簡閲点呼を為すこと予備兵に同し

第十八条 国民兵は戦時若くは事変に際し後備兵を召集し仍ほ兵員を要するときに限り之を召集す

   第三章 免役及延期

第十九条 兵役を免するは㾱疾又は不具等にして徴兵検査規則に照し兵役に堪へさる者に限る

第二十条 左の掲くる者は徴集を延期す次年に於て仍ほ徴集に適せさる者は国民兵役に服せしむ

  第一 体格完全且強壮なるも身幹未た定尺に満たさる者

  第二 疾病中又は病後にして労役に堪へさる者

第二十一条 禁錮以上の刑に該るへき犯罪の為め予審若くは公判中の者犯罪の為め拘禁中の者刑の執行停止中の者又は仮出獄中の者は徴集を延期す

第二十二条 徴集に応するときは其家族自活し能はさるの確証ある者は本人の願に由り徴集を延期す其事故三箇年を過くるも仍ほ止まさる者は国民兵役に服せしむ但分家又は絶家廃家再興の故を以て本条に当る者其他自活し能わさる事故を作為したる者は其願を許可せす

第二十三条 一年志願兵として服役すへき者にして勅令の定むる所に依り修業年限三箇年以上の専門学校若くは之と同等以上と認むる学校又は高等学校に在校するものに対しては本人の願に由り其学校の修業年限に応し満二十七歳迄入営を延期す

 一年志願兵として服役すへき者其服役を為ささるときは之を徴集す但満二十一歳以上の者の徴集は抽籤の法に依らさるものとす

第二十三条の二 満二十歳に至らさる前より露国領沿海州、露国領薩哈連、支那、香港及澳門以外の外国に在る者に対しては本人の願に由り満三十七歳迄徴集を延期す

 前項に依り徴集を延期せられたる者延期の事由消滅したるときは抽籤の法に依らすして之を徴集し満三十七歳を過きたるときは国民兵役に服せしむ

第二十三条の三 第七条の二第二項に依り兵役に服すへき者又は第十四条第五項若くは前条第二項に依り徴集せらるへき者にして満二十七歳迄のものは志願に由り一箇年間陸軍現役に服することを得此場合に於ては第十三条を適用す

 前項に依り志願を為したる者に対しては第二十三条第一項に依る延期を為さす

第二十四条 余人を以て代ふ可からさる職務を奉する官吏及市町村長、助役及収入役は予備兵後備兵に在ると陸軍補充兵に在るとを問はす勤務演習簡閲点呼の為め召集することなし

 法律を以て設立したる議会の議員其開会中亦同し

   第四章 雑則

第二十五条 第三条第二項、第十二条、第十三条第一項第二項第四項、第十四条第五項但書、第二十三条第二項但書及第二十三条の三第一項に掲くる年齢は十二月一日に於ける年齢とす

第二十五条の二 毎年一月一日より十一月三十日迄に満二十歳と為る者は其年一月中に、十二月一日より同月三十一日迄に満二十歳と為る者は翌年一月中に書面を以て(戸主に非さる若は戸主より、戸主未成年者又は禁治産者なるときは戸主の法定代理人より)本籍の市町村長に届出を可し但現役を終へたる者又は現役中の者に付ては此限に在らす

 第十四条第五項、第二十三条第二項若くは第二十三条の二第二項に該当する者又は第二十三条第一項に依る延期の事由止みたる者は十四日以内に書面を以て本籍の市町村長に届出を可し

第二十六条 (以下省略)

第二十七条 

第二十八条 

第二十九条 

第二十九条の二 本令中市町村長とあるは勅令を以て指定する市に在りては区長、市制町村制を施行せさる地に在りては市町村長に準すへき者とす

   第五章 罰則

第三十条 第二十五条の二第一項の届出を為ささる者は科料に処す

第三十条の二 第二十五条の二第二項の届出を為ささる者及正当の事故なくして身体の検査を受けさる者は百円以下の罰金又は三円以上の科料に処す

第三十一条 (以下省略)

第三十二条 

    附 則

本法は大正八年十二月一日より之を施行す

(以下省略)

(国立公文書館:御署名原本・明治二十二年・法律第一号・徴兵令改正 A03020030000)

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