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満蒙鉄道に関する件 1924年08月19日

 満蒙鉄道に関する件(ひらがな化、一部新字体化、附属文書省略)


    滿蒙鐵道ニ關スル件

満蒙鉄道に関し別紙の通り閣議決定相成度此段及請議候也


     満蒙鉄道に関する閣議案

満蒙地方に於ける鉄道網の拡張は同地方の経済的発展と治安維持に資する所尠からさるへく従て之か為日支両国の裨益する所大なるものあるへきに顧み帝国政府は多年右促進に留意し随時必要なる措置を講し来れるか他面満蒙地方に於ける鉄道建設及鉄道に対する投資に関しては専ら南満洲鉄道会社をして其の衡に当らしむること右鉄道網の統一上最も適当と認めらるる所今回同会社代表者と東三省支那当局との間に本件に関し別紙第一号の通了解成立したる趣に付此の機会に於て左の方法に依り其の促進を図らむとす

一、此の際直に南満州鉄道会社をして洮南昻々渓間の鉄道建設を実行せしむると共に同一の形式に倣ひ速に吉林会亭線(実際に於ては差当り吉林敦化間)及長春洮南線(実際に於ては差当り長春大賚間)の建設促進を図らしむること

一、本件南満州鉄道会社代表者と東三省支那当局との間に成立せる了解に依れは奉天側に於て自ら奉天省城より海龍城に至る鉄道建設を行ふに於ては我国は開原海龍城間の鉄道を建設せさることを承認すへく又奉天側に於て開原海龍線又は奉天海龍線建設に関し外資を借入るるときは先つ我国と商議することとなり居る処別紙第二号対照表に掲記せる通り日支両国間の既成協定並支那政府と興業、朝鮮、台湾三銀行との間の契約に依り我国か支那側をして我資本を以て開原海龍線を建設せしむるの権利は今回成立せる了解の結果として放棄するの已むを得さるに至ることあるへし将又奉海線建設の暁は開海線営養地域より搬出せらるる貨物か南満鉄道を経由することにより得へき同鉄道会社の利益は之を失ふこととなるのみならす奉海線営養地域より搬出せらるる貨物中京奉線に吸収せらるるものあるは予見するに難からさる所なり然れとも大局より之を観るに(一)南満鉄道会社の受くへき前顕損失は敢て問題とするを要せさる程度のものたると(二)奉海線か将来吉林及吉林以北に延長せらるる場合と雖南満鉄道を幹線とする従来の我根本方針に何等影響を受くるの虞なきことの二点を考慮するときは結局本件東三省当局者との新了解は我国に取り何等懸念すへき事態を惹起することなかるへしと認められ且奉海及開海両線に対し外資を仰く場合には支那側より先つ我国に商議すへき言明あると共に他面此の際一定条件の下に我国に於て開海線放棄の予約を為すに非されは洮南昻々渓線及前項に記載せる我留保線の建設促進を図ること困難と認めらるるに付旁々開原海龍線放棄に関する予約を承認し速に本件鉄道計画の実現を図ること尤も右に関し三銀行との関係は別紙第三号の趣旨に依り解決を期すること

一、洮南昻々渓鉄道に付ては対露関係に付特に注意を要するのみならす他面新借款団成立当時帝国政府と英米両国政府との間に於ける往復公文の次第を考慮する必要ある処今回成立せる了解は建設請負契約にして且右請負金処理方法も公募に依らさるものなること並南満鉄道会社は借款団に加入し居らさる事実とに顧み純理論を以てせは本件企業に対し新借款団に属する他国団体の参加を求むるの義務なきか如きも愈々本鉄道契約調印を了し東三省支那当局より之を奉天省議会に附議する運となる場合には前顕の行懸及列国の協調を主とする新借款団の精神並全局の利害に稽へ我国は遅滞なく新借款団関係国及同団体に対し本鉄道請負契約成立の次第を通告すると共に先方に於て参加の希望あるに於ては参加の方法及条件等に関し協議に応すへきことを申添ふること

一、満蒙と支那中央政府との関係に顧み本件企業は東三省支那当局との契約に基き直に南満洲鉄道会社をして工事を進捗せしむる外なかるへきも右契約は早晩中央政府の承認を得ること得策と認めらるるに付同会社をして適当の機会を捉え之か為最善の方法を講せしむること


     南満洲鉄道会社と奉天支那当局との了解要領

       (本了解は政府の認可を経たる上改めて所定の手続を経て効力を生するものなり)

一、南満洲鉄道会社は洮南より昻々渓に至る鉄道の建設を請負ひ本契約調印後一ケ年以内に起工し起工の時より貳箇年以内に完成すること

一、請負金額は千二百九十二万円とす

一、支那は南満洲鉄道会社の推薦する顧問一名を傭聘す

  右顧問は本鉄道に関する一切の収支を代管し且支出に付一切の書類に局長と連署す又顧問は南満洲鉄道会社を代表すること

一、工事完成の上線路の引渡を受けたるときは支那当局に於て遅滞なく請負金額を南満洲鉄道に仕(原文ママ)払ふこと若し六ヶ月を経過するも請負金の全部又は一部の支払なきときは大要左の条件にて未払金額を貸金とすること

  (イ)期限 四十年 十年据置、年賦償還但し期限前償還を妨けす

  (ロ)利子 年九分

  (ハ)担保 鉄道財産及収入を担保とす

一、本鉄道の運賃は将来南満洲鉄道会社と協定すること

一、奉天省に於て自ら奉天省城より海龍城に至る鉄道建設を行ふに於ては日本は開原海龍城間の鉄道を建設せさること

一、開海鉄道の建設は奉天側の資金を用ゆへく若し外国より借款するときは必らす先つ日本と商議すること

一、奉海線に関し外資を借用して之を建設するときは必らす先つ日本と商議すへきこと

一、支那側は吉会線及長洮線の建設促進を図る意向なること


第二号

     開原海龍吉林線関係の日支協定比較

(省略)


第三号

(省略)

(国立公文書館:満蒙鉄道ニ関スル件 B04120013900) 

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