スキップしてメイン コンテンツに移動

ロンドン海軍条約 1936年03月25日

 ロンドン海軍条約(ひらがな化、一部新字体化、仮訳、一部括弧内省略、一部省略、附属文書等省略)


仮訳

   千九百三十六年「ロンドン」海軍條約

(前文省略)

   第一編

    定 義 

     第一条

本条約の適用に付ては左の用語は以下に定むる意義に解せらるべきものとす

      甲 基準排水量

(一) 水上艦船の基準排水量とは工事完成せられ、乗員充実せられ、機関据付けられ且航海準備(一切の武器及弾薬、斎備品、艤装品、乗員用の糧食及清水、各種の需品並に戦時に於て搭載せらるべき各種の要具を含む)完成し唯燃料及予備缶水を搭載せざる艦船の排水量を謂ふ

(二) 潜水艦の基準排水量とは乗員充実せられ、機関据付けられ且航海準備(一切の武器及弾薬、斉備品、艤装品、乗員用の糧食、各種の需品並に戦時に於て搭載せらるべき各種の要具を含む)完成し唯燃料、潤滑油、清水又は「バラスト」用水は如何なる種類のものたるを問はず之を搭載せざる工事完成せる艦船(非防水構造内の水を含まず)の水上排水量を謂ふ

(三)「トン」なる語は「メートル式トン」なる用語に於けるものを除くの外二千二百四十ポンド(千十六キログラム)のトンを示す

      乙 艦種

(一)主力艦とは左の二艦級の一に属する水上軍艦を謂ふ

(甲)航空母艦、補助艦船又は(乙)級主力艦以外の水上軍艦にして基準排水量一万トンを超ゆるか又は八インチを超ゆる口径を有する砲を搭載するもの

(乙)航空母艦以外の水上軍艦にして基準排水量八千トンを超えず且八インチを超ゆる口径を有する砲を搭載するもの

(二)航空母艦とは排水量の如何を問はず主として海上に於て航空機を搭載し且行動せしむる様設計せられ又は改造せられたる水上軍艦を謂ふ軍艦に降著用又は離昇用の甲板を装備することは右軍艦が主として海上に於て航空機を搭載し且行動せしむる様設計せられ又は改造せられたるものに非ざる限り右の如く装備せられたる軍艦を航空母艦の艦種に分類するに至らしむることなかるべし

 航空母艦の艦種は左の二艦級に分たる

(甲)航空機が離昇し又は空中より降著し得る飛行甲板を装備せられたる艦船

(乙)前記(甲)に掲げらるる飛行甲板を装備せられざる艦船

(三)軽水上艦とは航空母艦、戦闘用小艦船又は補助艦船以外の水上軍艦にして基準排水量百トンを超え一万トンを超えず且八インチを超ゆる口径を有する砲を搭載せざるものを謂う

 軽水上艦の艦種は左の三艦級に分たる

(甲)六・一インチを超ゆる口径を有する砲を搭載する艦船

(乙)六・一インチを超ゆる口径を有する砲を搭載せず且基準排水量三千トンを超ゆる艦船

(丙)六・一インチを超ゆる口径を有する砲を搭載せず且基準排水量三千トンを超えざる艦船

(四)潜水艦とは海面下に於て行動する様設計せられたる一切の艦船を謂ふ

(五)戦闘用小艦船とは補助艦船以外の水上軍艦にして基準排水量百トンを超え二千トンを超えざるものを謂ふ但し左の特性の何れをも有せざる場合に限る

(イ)六・一インチを超ゆる口径を有する砲を搭載すること

(ロ)魚雷を発射する様設計せられ又は装置せられたること

(ハ)二十ノットを超ゆる速力を得る様設計せられたること

(六)補助艦船とは基準排水量百トンを超ゆる海軍水上艦船にして平常艦隊要務の為に使用せられ、軍隊輸送船として使用せられ又は戦闘用艦船としての用途以外の用途に使用せられ且特に戦闘用艦船として建造せられたるに非ざるものを謂ふ但し左の特性の何れをも有せざる場合に限る

(イ)六・一インチを超ゆる口径を有する砲を搭載すること

(ロ)三インチを超ゆる口径を有する砲を八門を超え搭載すること

(ハ)魚雷を発射する様設計せられ又は装置せられたること

(ニ)装甲板に依り防護せらるる様設計せられたること

(ホ)二十八ノットを超ゆる速力を得る様設計せられたること

(ヘ)主として海上に於て航空機を行動せしむる様設計せられ又は改造せられたること

(ト)航空機発進装置を二基を超え搭載すること

(七)小艦艇とは基準排水量百トンを超えざる海軍水上艦船を謂ふ

      丙 艦齢超過

左の艦種又は艦級の艦船は竣工後左記年数を経過したるときは「艦齢超過」と為れるものと看做さるべし

(イ)主力艦  二十六年

(ロ)航空母艦  二十年

(ハ)(甲)級及(乙)級軽水上艦

(一)千九百二十年一月一日前に起工せられたるときは  十六年

(二)千九百十九年十二月三十一日後に起工せられたるときは  二十年

(ニ)(丙)級軽水上艦  十六年

(ホ)潜水艦  十三年

      丁 月

本条約に於ける「月」なる語にして期間に関するものは三十日より成る月を示す

   第二編

    制 限

     第二条

本条約の実施の日後に於ては本条約本編に依り規定せらるる排水量又は兵装に関する制限を超ゆる艦船は何れの締約国も之を取得することなかるべく又何れの締約国も之を建造し、建造せしめ又は其の法域内に於て之が建造を許すことなかるべし

     第三条

本条約本編に依り規定せらるる制限を超ゆる口径を有する砲を本条約の実施の日に於て搭載せる艦船は改造せられ又は現代化せらるるに当りては該艦船が以前に搭載せるものよりも大なる口径の砲を以て再装備せらるることなかるべし

     第四条

(一)主力艦は基準排水量三万五千トンを超えざるべし

(二)主力艦は十四インチを超ゆる口径を有する砲を搭載せざるべし

 但し千九百二十二年二月六日「ワシントン」に於て署名せられたる海軍軍備制限に関する条約の当事国の何れかが本条約の実施の日前且何れの場合に於ても千九百三十七年四月一日より遅からざる時期に右規定遵守の協定を締結せざる場合には主力艦に搭載せらるる砲の最大口径は十六インチたるべし

(三)(甲)級主力艦にして基準排水量一万七千五百トンに達せざるものは千九百四十三年一月一日前には起工せられ又は取得せらるることなかるべし

(四)主たる兵装が口径十インチに達せざる砲より成る主力艦は千九百四十三年一月一日前には起工せられ又は取得せらるることなかるべし 

     第五条

(一)航空母艦は基準排水量二万三千トンを超えざるべく又六・一インチを超ゆる口径を有する砲を搭載せざるべし

(二)航空母艦の兵装が口径五・二五インチを超ゆる砲を含む場合には右口径を超ゆる砲の搭載総数は十門を超えざるべし

     第六条

(一)(乙)級軽水上艦にして基準排水量八千トンを超ゆるもの及(甲)級軽水上艦は千九百四十三年一月一日前には起工せられ又は取得せらるることなかるべし

(二)前記(一)の規定に拘らず何れかの締約国に於て自国の安全の要件が何れかの国に依る(乙)級軽水上艦又は前記(一)の制限に準拠せざる軽水上艦の現実の又は公認せられたる建造量に依り重大なる影響を受けたりと認めたる場合には右締約国は他の締約国に自国の意思及之が理由を通告するに於ては(甲)級及(乙)級の軽水上艦にして基準排水量一万トンに至る迄のものは之を起工し又は取得するの権利を有すべし但し本条約第三編の規定に従ふべきものとす右の場合に於ては他の各締約国は同一の権利を行使するの権利を有すべし

(三)前記(一)の規定は右(一)に規定せらるる制限を千九百四十二年後に継続するの明示の又は黙示の約束を構成せざるものとす

     第七条

潜水艦は基準排水量二千トンを超えざるべく又口径五・一インチを超ゆる砲を搭載せざるべし

     第八条

各艦船は本条約第一条甲に定義せらるる所に従ひ右艦船の基準排水量に於て計測せらるべし

     第九条

商船は軍艦に変更するの目的を以て平時之に武装を施すの準備を為すことを得ず但し口径六・一インチを超えざる砲を装備する為必要なる甲板の補強設備は此の限に在らず

     第十条

本条約の実施の日前に起工せられたる艦船にして基準排水量又は兵装が本条約本編に於て右艦船の艦種又は艦級に付規定せらるる限度又は制限を超ゆるもの或は右の日前に以前の条約の規定に依り専ら標的用に変更せられ又は専ら実験用若は練習用に保有せらるるものは右の日前に右艦船に附したる艦種又は呼称を保有すべし

   第三編

    事前通報及情報交換

     第十一条

(一)各締約国は自国の法域内に於て建造せらるるものたると否とを問はず第十二条(イ)に掲げらるる艦種及艦級の一切の艦船の建造又は取得に付ての年次計画に関する情報並に右艦船に関する詳細及既に竣工せられたる右艦種又は艦級の艦船の改造に関する詳細を示す定期情報を以下に規定せらるる所に従ひ毎年他の各締約国に通報すべし

(二)本条約本編以下の諸編の適用に付ては情報は該情報が之を与ふる締約国に駐箚する他の締約国の外交代表者に送達せられたる日に右他の締約国に到達したるものと看做さるべし

(三)右情報は之を供給する締約国に依り公表せらるる迄秘密のものとして取扱はるべし

     第十二条

前条に依り一の締約国が建造し又は建造せしむる艦船に関し提供せらるべき情報は左の如く与へらるべく且一切の他の締約国に所定の期間内又は時期に到達する様与へらるべし

(イ)各暦年の最初の四月以内に左の艦種及艦級の一切の艦船の年次建造計画にして各艦種又は艦級の艦船の数及各艦船に付最大備砲の口径を記載するもの、右艦種及艦級は左の如し

主力艦

 (甲)級

 (乙)級

航空母艦

 (甲)級

 (乙)級

軽水上艦

 (甲)級

 (乙)級

 (丙)級

潜水艦

(ロ)龍骨据付の日の少くとも四月前に右各艦船に付左の細目

艦名又は呼称

艦種及艦級

トン及メートル式トンに依る基準排水量

基準排水量に於ける水線全長

基準排水量に於ける水線又は水線下の最大幅員

基準排水量に於ける平均吃水

計画馬力

計画速力

機械の型式

燃料の種類

口径三インチ以上の一切の備砲の数及口径

口径三インチ未満の備砲の概数

魚雷発射管の数

機雷を敷設する為の設計の有無

航空機にして之に要する施設の設けらるべきものの概数

(ハ)右各艦船の龍骨の据付後成るべく速に右据付の日

(ニ)右各艦船の竣工後一月以内に竣工の日及竣工時の当該艦船に関する前記(ロ)に明示の一切の細目

(ホ)毎年一月中に前記(イ)に掲げらるる艦種及艦級に属する艦船に付

(一)建造中の艦船に前年中に加ふることを必要とするに至りたることあるべき一切の重要なる変更にして前記(ロ)に掲げらるる細目に影響する限り之に関する情報

(二)既に竣工せる艦船に前年中に加へられたる一切の重要なる変更にして前記(ロ)に掲げらるる細目に影響する限り之に関する情報

(三)前年中に廃棄せられ又は他の方法に依り処分せられたることあるべき艦船に関する情報

 右艦船が廃棄せられざる場合に付ては右艦船の新地位及状態を決定するに充分なる情報が与へらるべし

(ヘ)竣工せられたる艦船をして前記(イ)に掲げらるる艦種若は艦級中の一に属するに至らしむるが如き変更又は右艦船をして右艦種若は艦級の一より他に変ぜしむるが如き変更に着手する少くとも四月前に前記(ロ)に明示せらるる右艦船の計画せられたる特性に関する情報

     第十三条

第十二条(イ)に掲げらるる艦種又は艦級に属する艦船は之を包含せる年次計画及第十二条(ロ)に依り規定せらるる右艦船に関する細目の両者が一切の他の締約国に到達したる日より四月の期間の満了したる後に非ざれば何れの締約国に依りても起工せられざるべし

     第十四条

締約国が第十二条(イ)に掲げらるる艦種又は艦級に属する艦船にして全部又は一部竣工せるものを取得せんと欲する場合には右艦船は右第十二条に規定せらるる年次計画中に包含せらるる艦船と同時に且之と同様の方法に依り宣言せらるべし右艦船は右宣言が他の一切の締約国に到達したる日より四月の期間の満了したる後に非ざれば取得せらるることなかるべし右艦船に関しては第十二条(ロ)に掲げらるる細目及龍骨据付の日は右艦船の取得契約が署名せられたる日の後一月以内に他の一切の締約国に到達する様提供せらるべし第十二条(ニ)、(ホ)及(ヘ)に掲げらるる細目は右各号に規定せらるる所に従ひ与へらるべし

     第十五条

第十二条(イ)に依り規定せらるる年次計画を通報するに当りては各締約国は他の一切の締約国に対し従前の年次計画及宣言に包含せらるる一切の艦船にして未だ起工せられざりしか又は取得せられざりしも当該年次計画の包含する期間中に於て起工し又は取得するの意思あるものを通知すべし

     第十六条

第十二条(イ)に掲げらるる艦種又は艦級に属する艦船の龍骨の据付前に第十二条(ロ)に依り通報せられたる右艦船に関する細目に付重要なる変更が加へらるるときは右変更に関する情報は与へらるべく且龍骨の据付は右情報が他の一切の締約国に到達したる後少くとも四月を経過する迄延期せらるべし

     第十七条

締約国は第十二条(イ)に掲げらるる艦種又は艦級の艦船にして予め当該年度の年次建造計画若は取得宣言又は右年度前の年次計画若は宣言に包含せられざりしものを起工し又は取得することなかるべし

     第十八条

第十二条(イ)に掲げらるる艦種又は艦級に属する艦船の建造、現代化又は改造にして本条約の締約国に非ざる国の註文に依るものが何れかの締約国の法域内に於て為さるる場合には右締約国は速に当該契約の署名の日を他の一切の締約国に通報し且成るべく速に右艦船に関し第十二条(ロ)、(ハ)及(ニ)に掲げらるる一切の情報をも供給すべし

     第十九条

各締約国は自国の一切の戦闘用小艦船及補助艦船の表にして右艦船の第十二条(ロ)に列挙せらるる特性及右艦船に充てんとする特定任務に関する情報を併記するものを他の一切の締約国に本条約の実施の日後一月以内に到達する様与ふべく且右表の修正及情報の変更を他の一切の締約国に爾後毎年一月中に到達する様与ふべし

     第二十条

各締約国は第十二条(イ)に掲げらるる艦種又は艦級の一切の艦船にして自国の法域内に於て建造中のものたると否とを問はず本条約の実施の日に於て自国の為に建造中のものの第十二条(ロ)所掲の細目及本条約の締約国に非ざる国の為に右の日に自国の法域内に於て建造中の右艦種又は艦級の艦船に関する同様の細目を他の各締約国に右の日後一月以内に到達する様之に通報すべし

     第二十一条

(一)各締約国は自国の最初の年次建造計画及取得宣言を通報するに当りては第十二条(イ)に掲げらるる艦種又は艦級の艦船にして既に公認せられ右計画の包含する期間中に起工し又は取得するの意思あるものを他の各締約国に通報すべし

(二)本条約本編は各締約国が自国の当初の年次建造計画又は取得宣言に包含せらるる若は包含せらるべき又は既に公認せられたる艦船を本条約の実施の日後四月中何時にても起工し又は取得することを妨げざるべし但し各艦船に関する情報にして第十二条(ロ)に規定せらるるものは他の一切の締約国に本条約の実施の日後一月以内に到達する様通報せらるべし

(三)本条約が千九百三十七年五月一日前に実施せられざる場合には第十二条(イ)及第十四条に依り通報せらるべき当初の年次建造計画及取得宣言は他の一切の締約国に本条約の実施の日後一月以内に到達するを要す

   第四編

    一般条項及保障条項

     第二十二条

締約国は贈与、売却又は如何なる譲渡の形式に依るを問はず外国海軍に於て水上軍艦又は潜水艦と為すを得るが如き方法に依り其の水上軍艦又は潜水艦を処分することなかるべし本規定は補助艦船には之を適用せざるべし

     第二十三条

(一)本条約は艦船が其の艦齢超過と為る前に亡失し又は不慮の事変に依り破壊したる場合に於て該艦船を同一の艦種又は艦級の艦船を以て右艦船に関する第十二条(ロ)所掲の細目が他の一切の締約国に到達したるとき直に代換するの締約国の権利を害することなかるべし

(二)前号の規定は同様の場合に於て(乙)級軽水上艦にして基準排水量八千トンを超ゆるもの又は(甲)級軽水上艦が艦齢超過と為る前なるときは一万トンに至る迄の基準排水量を有する同一艦級の軽水上艦を以て之を即時代換する場合にも適用せらるべし

     第二十四条

(一)何れかの締約国が戦争に従事するに至りたる場合に右締約国は自国の国防に関する海軍の要件が重大なる影響を受けたりと認むるに於ては自国の関する限り本条約の義務の何れか又は全部を停止することを得但し右締約国は状況が右停止を必要ならしむるものなることを他の締約国に速に通告すべく且停止を必要なりと思考する義務を明示すべし

(二)右の場合に於ては他の締約国は速に協議し本条約の義務にして右締約国が停止することあるべきものあるときは之に関し合意に到達するの目的を以て右に依り生じたる事態を検討すべし右協議に依り合意に達するに至らざるときは右何れの締約国も自国の関する限り本条約の義務の何れか又は全部を停止することを得但し右締約国は停止を必要と思考する義務を速に他の締約国に通告すべし

(三)敵対行為終了の上は締約国は条約の義務にして停止せられ居るものが再び実施せらるるに至るべき日を決定し且本条約中の改正にして必要と思考せらるることあるべきものに関し合意に到達するの目的を以て協議すべし

     第二十五条

(一)本条約第四条、第五条及第七条に依り規定せらるる基準排水量及兵装に関する限度及制限に従はざる艦船が本条約の締約国に非ざる国に依り公認せられ、建造せられ又は取得せらるる場合に各締約国は自国の安全の要件に応ずる為離脱を必要と認むるに於ては右必要の範囲に於て左記より離脱するの権利を留保す

(イ)条約の残存期間中第三条、第四条、第五条、第六条(一)及第七条の限度及制限並びに

(ロ)当該年中自国の年次建造計画及取得宣言

右権利は以下の規定に従ひ行使せらるべし

(二)右権利を行使することを必要と認むる締約国は他の締約国に其の旨を、為さんとする離脱の性質及範囲並に其の理由を正確に示して通告すべし

(三)右の場合には締約国は協議し為さるることあるべき離脱の範囲を最小限度迄縮減するの目的を以て協定に到達する為努力すべし

(四)前記(二)に依り為されたることあるべき通告の最初のものの日より三月の期間の満了したるときは各締約国は締結せられたることあるべき反対の協定を別とし本条約の残存期間中本条約第三条、第四条、第五条、第六条(一)及第七条に規定せらるる限度及制限より離脱するの権利を有すべし

(五)前号に掲げらるる期間が満了したるときは各締約国は前記(三)に規定せらるる協議中に締結せられたることあるべき協定を別とし且他の一切の締約国に通報するに於ては自国の年次建造計画及取得宣言より離脱すること並に建造中の又は既に自国の計画若は宣言中に掲げられたる艦船の特性を変更すること自由たるべし

(六)斯かる場合に於ては本条約第三編の規定の何れに依りても艦船の取得、龍骨据付又は改造の延期は必要とせらるることなかるべし但し第十二条(ロ)に掲げらるる細目は艦船の龍骨の据付に先ち他の一切の締約国に通報せらるべし取得に付ては当該艦船に関する情報は第十四条の規定に依り与へらるべし

     第二十六条

(一)何れかの締約国に於て本条約第六条(二)、第二十四条及第二十五条に規定せらるるもの以外の状況の変化に依り自国の安全の要件が重大なる影響を受けたりと認むるときは右締約国は当該年中自国の年次建造計画及取得宣言より離脱するの権利を有すべし但し本条約の締約国に依る該条約の限度及制限内の建造量は本条の適用に付ては状況の変化を構成せざるべし前記の権利は以下の規定に従ひ行使せらるべし

(二)右締約国は前記権利を行使せんと欲するときは他の一切の締約国に其の旨を、自国が如何なる点に付其の年次計画及取得宣言より離脱せんとするかを之が理由と共に示して通告すべし

(三)右の場合には締約国は事態に応ずる為離脱を必要とするか否かに関し合意に到達するの目的を以て協議すべし

(四)前記(二)に依り為されたることあるべき通告の最初のものの日より三月の期間の満了したるときは各締約国は締結せられたることあるべき反対の協定を別とし自国の年次建造計画及取得宣言より離脱するの権利を有すべし但し如何なる点に付自国が右の如く離脱せんとするかを正確に示せる通告を他の締約国に速に与ふべし

(五)斯かる場合に於ては本条約第三編の規定の何れに依りても艦船の取得、龍骨据付又は改造の延期は必要とせらるることなかるべし但し第十二条(ロ)に掲げらるる細目は艦船の龍骨の据付に先ち他の一切の締約国に通報せらるべし取得に付ては当該艦船に関する情報は第十四条の規定に依り与へらるべし

   第五編

    最終条項

     第二十七条

本条約は千九百四十二年十二月三十一日迄引続き効力を有すべし

     第二十八条

(一)「グレート、ブリテン」及北部「アイルランド」連合王国に於ける皇帝陛下の政府は海軍軍備の縮小及制限に関する新条約を作成する為会議を開催するの目的を以て千九百四十年の最後の三月中に外交手続に依り本条約当事国の政府間に於ける協議を発議すべし右会議は予備協議に依り右の如き会議を右時期に開催することが望ましからず又は実行し得ざるものなること明と為りたるに非ざる限り千九百四十一年に行はるべし

(二)前号に掲げらるる協議に於ては当時の状況並に主力艦の設計及建造に関し当該時迄の期間中に得られたる経験に照し将来の年次計画に依り建造せらるべき主力艦の基準排水量又は備砲の口径を縮少することを協定し得るか否か及之に依り為し得ば主力艦費に縮減を斉し得るか否かに関し決定する為意見が交換せらるべし

     第二十九条

本条約の規定は将来の何れの条約に関しても先例と為ることなかるべし

     第三十条

(一)本条約は署名国に依り各自の憲法上の手続に従ひ批准せらるべく且批准書は成るべく速に連合王国に於ける皇帝陛下の政府に寄託せらるべし右政府は一切の批准書寄託調書の認証謄本を右署名国及第三十一条の規定に従ひ加入したる国の政府に送付すべし

(二)本条約は千九百三十七年一月一日迄に右一切の国の批准書が寄託せられたるときは右の日より実施せらるべし前記一切の批准書が千九百三十七年一月一日迄に寄託せられざりしときは本条約は爾後右一切の批准書が受領せられたるとき直に実施せらるべし

     第三十一条

(一)本条約は千九百三十年四月二十二日に「ロンドン」に於て署名せられたる海軍軍備の制限及縮少に関する条約に署名したるも本条約に署名せざりし国の加入の為本日より後何時にても開き置かるべし加入書は連合王国に於ける皇帝陛下の政府に寄託せらるべく右政府は寄託調書の認証謄本を署名国及加入したる国の政府に送付すべし

(二)加入は本条約の実施の日前に行はるるときは右の日に効力を発生すべく爾後に行はるるときは直に効力を発生すべし

(三)加入が本条約の実施の日後に行はるるときは加入する国は左の情報を一切の他の締約国に加入の日後一月以内に到達する様与ふべし

(イ)第十二条(イ)に掲げらるる艦種又は艦級に属する艦船にして既に公認せられたるも未だ起工せられざりしか又は所得せられざりしものに関する第十二条(イ)及第十四条所定の当初の年次建造計画及取得宣言

(ロ)前記の艦種又は艦船の表にして本条約の実施の日後に竣工せられ又は取得せられたる右艦船に関する第十二条(ロ)に明示の細目及本条約の当事国に非ざる国の為に本条約の実施の日後当該加入国の法域内に於て建造せられたる右艦種又は艦級の艦船に関する同様の細目を示せるもの

(ハ)加入国の法域内に於て建造中のものたると否とを問はず加入の時に該国の為に建造中なる前記の艦種又は艦級の一切の艦船に関する第十二条(ロ)に明示の細目及本条約の当事国に非ざる国の為に右加入国の法域内に於て該時に建造中なる右艦種又は艦級の艦船に関する同様の細目

(ニ)一切の戦闘用小艦船及補助艦船の表にして右艦船の特性及之に関する情報を併記する第十九条所定のもの

(四)各締約国は本条約の実施の日後に加入したる国の政府に対し前記(三)に明示せらるる情報を右政府に同号に掲げらるる期間内に到達する様相互的に提供すべし

(五)本条約第三編は加入国が自国の当初の年次建造計画又は取得宣言に包含せらるる若は包含せらるべき又は既に公認せられたる艦船を加入の日後四月中何時にても起工し又は取得することを妨げざるべし但し各艦船に関する情報にして第十二条(ロ)に依り規定せらるるものは他の一切の締約国に加入の日後一月以内に到達する様通報せらるべし

     第三十二条

本条約は仏蘭西語及英吉利語の本文を以て共に均しく正文とし「グレート、ブリテン」及北部「アイルランド」連合王国に於ける皇帝陛下の政府の記録に寄託せらるべく右政府は右条約の認証謄本を千九百三十年四月二十二日「ロンドン」に於て海軍軍備の制限及縮少に関する条約に署名したる国の政府に送付すべし

(以下署名等省略)


    署名議定書

(省略)


    追加議定書

(省略)

(国立公文書館:1936年「ロンドン」海軍條約署名議定書及追加議定書の件 C05034804700)

コメント

このブログの人気の投稿

日清修好条規 1871年09月13日

内容見直し点:口語訳中途 修好条規(口語訳、前文署名省略) 第一条 この条約締結のあとは、大日本国と大清国は弥和誼を敦うし、天地と共に窮まり無るべし。又両国に属したる邦土も、各礼を以て相待ち、すこしも侵越する事なく永久安全を得せしむべし。 第二条 両国好を通ぜし上は、必ず相関切す。若し他国より不公及び軽藐する事有る時、其知らせを為さば、何れも互に相助け、或は中に入り、程克く取扱い、友誼を敦くすべし。 第三条 両国の政事禁令各異なれば、其政事は己国自主の権に任すべし。彼此に於て何れも代謀干預して禁じたる事を、取り行わんと請い願う事を得ず。其禁令は互に相助け、各其商民に諭し、土人を誘惑し、聊違犯あるを許さず。 第四条 両国秉権大臣を差出し、其眷属随員を召具して京師に在留し、或は長く居留し、或は時々往来し、内地各処を通行する事を得べし。其入費は何れも自分より払うべし。其地面家宅を賃借して大臣等の公館と為し、並びに行李の往来及び飛脚を仕立書状を送る等の事は、何れも不都合がないように世話しなければならない。 第五条 両国の官位何れも定品有りといえども、職を授る事各同じからず。因彼此の職掌相当する者は、応接及び交通とも均く対待の礼を用ゆ。職卑き者と上官と相見るには客礼を行い、公務を辨ずるに付ては、職掌相当の官へ照会す。其上官へ転申し直達する事を得ず。又双方礼式の出会には、各官位の名帖を用う。凡両国より差出したる官員初て任所に到着せば、印証ある書付を出し見せ、仮冒なき様の防ぎをなすべし。 第六条 今後両国を往復する公文について、清国は漢文を用い、日本国は日本文を用いて漢訳文を副えることとする。あるいはただ漢文のみを用い、その記載に従うものとする。 (これ以下まだ) 第七条 両国好みを通ぜし上は、海岸の各港に於て彼此し共に場所を指定め、商民の往来貿易を許すべし。猶別に通商章程を立て、両国の商民に永遠遵守せしむべし。 第八条 両国の開港場には、彼此何れも理事官を差置き、自国商民の取締をなすべし。凡家財、産業、公事、訴訟に干係せし事件は、都て其裁判に帰し、何れも自国の律例を按して糾辨すべし。両国商民相互の訴訟には、何れも願書体を用う。理事官は先ず理解を加え、成丈け訴訟に及ばざる様にすべし。其儀能わざる時は、地方官に掛合い双方出会し公平に裁断すべし。尤盗賊欠落等の事件は、両国の地方官より

ダンバートン・オークス提案(一般的国際機構設立に関する提案) 1944年10月09日

 ダンバートン・オークス提案(一般的国際機構設立に関する提案)(訳文)     一般的国際機構設立に関する提案 (「ダンバートン、オークス」会議の結果「ソ」連邦、米国、英国及重慶政権に依り提案せられ千九百四十四年十月九日発表せられたるもの) (本提案の英文は千九百四十四年十月十一日附「モスコー、ニュース」より之を採り「ストックホルム」電報等に依り長短相補ひたるものなり) 「国際連合」なる名称の下に一の国際機構設立せらるべく其の憲章は左の提案を具現するに必要なる規定を掲ぐべし    第一章 目的 本機構の目的は左の如くなるべし 一、国際平和及安寧を保持すること、右目的の為平和に対する脅威の防止及除去並に侵略行為又は他の平和侵害行為の抑圧を目的とする効果的且集団的措置を執ること及平和の侵害に至るの虞ある国際紛争を平和的方法に依り調整又は解決すること 二、各国間の友好関係を発展せしめ且世界平和を強化すべき他の適当なる措置を執ること 三、各国間の経済的、社会的及他の人道上の問題の解決の為国際協力を完成すること及 四、右共同目的完成の為各国の行動を調整すべき中心たるべきこと    第二章 原則 第一章に掲げたる目的を遂行せんが為本機構及其の締盟国は以下の原則に従ひ行動すべし 一、本機構は一切の平和愛好国の主権平等の原則に其の基礎を置くものとす 二、本機構の一切の締盟国は締盟国全部に対し締盟国たるの地位に基く権利及利益を保障する為憲章に従ひ負担したる義務を履行することを約す 三、本機構の一切の締盟国は其の紛争を国際平和及安寧を危殆ならしめざるが如き平和的方法に依り解決すべきものとす 四、本機構の一切の締盟国は其の国際関係に於て本機構の目的と両立せざる如何なる方法に於ても脅威又は兵力の行使を避くるものとす 五、本機構の一切の締盟国は本機構が憲章の規定に従ひ執るべき如何なる行動に於ても之に対し有らゆる援助を与ふるものとす 六、本機構の一切の締盟国は本機構が防遏的又は強制的行動を執行中なる如何なる国家に対しても援助を与ふることを避くるものとす 本機構は、国際平和及安寧保持に必要なる限り本機構の非締盟国が右原則に従ひ行動することを確実ならしむべし    第三章 締盟国 一切の平和愛好国は本機構の締盟国たり得べし    第四章 主要機関 一、本機構は其の主要機関として左記を有すべし  イ

第二次近衛声明(東亜新秩序建設の声明) 1938年11月03日

 第二次近衛声明(東亜新秩序建設の声明)                     (昭和十三年十一月三日)  今や 陛下の御稜威に依り帝国陸海軍は、克く広東、武漢三鎮を攻略して、支那の要域を戡定したり。国民政府は既に地方の一政権に過ぎず。然れども、尚ほ同政府にして抗日容共政策を固執する限り、これが潰滅を見るまで、帝国は断じて矛を収むることなし。  帝国の冀求する所は、東亜永遠の安定を確保すべき新秩序の建設に在り。今次征戦究極の目的亦此に存す。  この新秩序の建設は日満支三国相携へ、政治、経済、文化等各般に亘り互助連環の関係を樹立するを以て根幹とし、東亜に於ける国際正義の確立、共同防共の達成、新文化の創造、経済結合の実現を期するにあり。是れ実に東亜を安定し、世界の進運に寄与する所以なり。  帝国が支那に望む所は、この東亜新秩序建設の任務を分担せんことに在り。帝国は支那国民が能く我が真意を理解し、以て帝国の協力に応へむことを期待す。固より国民政府と雖も従来の指導政策を一擲し、その人的構成を改替して更生の実を挙げ、新秩序の建設に来り参ずるに於ては敢て之を拒否するものにあらず。  帝国は列国も亦帝国の意図を正確に認識し、東亜の新情勢に適応すべきを信じて疑はず。就中、盟朋諸国従来の厚誼に対しては深くこれを多とするものなり。  惟ふに東亜に於ける新秩序の建設は、我が肇国の精神に淵源し、これを完成するは、現代日本国民に課せられたる光栄ある責務なり。帝国は必要なる国内諸般の改新を断行して、愈々国家総力の拡充を図り、万難を排して斯業の達成に邁進せざるべからず。  茲に政府は帝国不動の方針と決意とを声明す。 (国立公文書館:「近衛首相演述集」(その二)/1 第一章 「声明、告諭、訓令、訓辞」 B02030031600)