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昭和十九年末頃を目途とする帝国戦争指導に関する説明 1944年07月27日

 昭和十九年末頃を目途とする帝国戦争指導に関する説明(ひらがな化、一部新字体化、表省略)


     昭和十九年末頃ヲ目途トスル

     帝國戰争指導ニ關スル説明

     (最高戦争指導会議席上討議の参考)

            昭一九・七・二七

            大陸第二十班


      目   次

  第一  戦争指導方針確立の要に就て

  第二  戦争の現段階に就て

  第三  世界情勢判断に就て

  第四  帝国国力戦力の推移に就て

  第五  今後の戦争指導方策に就て


  第一  戦争指導方針確立の要に就て

帝国は今や「マリアナ」群島の一部失陥により中部太平洋方面絶対国防圏の一角に破綻を生し而も之に関連する日米海空決戦に依り主敵対米戦力の骨幹たる帝国海軍の実質的戦力を衰耗せらるるに至り帝国戦争遂行の為の基礎条件は一変し玆に昭一八・九・三〇 御前会議決定の戦争指導方針を更改するの已むなき事態に逢着せり

而して今後の戦争指導方針決定に方りては事態推移に関し真に可能性ある見透し持すること即ち政戦両略に亘る諸施策の努力目標と実現目標とを冷静に予察把握するの要切なり 即ち真に一歩を誤らは皇統連綿たる国体の護持すらも不可能に陥るへき危険を率直に観察し死中に活を求むへく真面目なる検討を必要とすへし


  第二  戦争の現段階に就て

帝国は開戦初動の有利なる態勢に於て敵を圧倒したる上速かに長期不敗の戦略態勢を確立し敵の反攻を随時随所に撃砕しつつ内に力を蓄積して機を見て攻勢に転せんとするの企図なりしも彼我実力の懸隔は遂に我か長期戦態勢完整に先たち国防複郭圏周辺に於て決戦を強要せられんとしあるの実情なり

即ち現下戦争の進度は彼我相対的の努力により滔々たる勢を発し現象的には正に決戦段階たるへく内在的には世界各国共漸く戦争終末期の様相を呈せんとしつつある状態なり


  第三  世界情勢判断に就て

概ね本年末頃を目途とする世界情勢判断別冊の如くなるも其の判決的事項を述ふれは

東亜に於ては

敵は帝国に対し短期終戦を目途とし各方面相策応しつつ組織的総攻勢を続行すへく特に本土空襲と本土、南方地域との分断を目的とする攻勢作戦を重視し之に依り本年夏秋の候戦局の急速なる進展を企図すへし

又右戦局の進展に伴ひ本土上陸の機をも窺ひあるへしと判断せらる 尚敵は其の武力攻勢に策応し政謀略を益々激化して我か戦意の喪失を企図すると共に大東亜諸国家諸民族の対日離間を策すへし

欧州に於ては

米英軍の北仏上陸及「ソ」軍の夏季攻勢開始に伴ひ漸く本格的決戦段階に突入し其の大勢は一般に独側に不利ならんとしつつありて今後独側にして政戦局転機を把握せさる限り其の戦争指導は愈々困難の度を加ふるに至るへし

又概ね本年末以降に於ては「ソ」の現在の如き対日態度の維持に変異を生し得へきを考慮の要あり斯かる情勢に於て世界政局の動向は

今や交戦各国共内在する窮状漸く表面に露呈せんとし茲に彼我戦勢の均衡に破綻を生するか或は予想すへからさる異変等突発する場合に於ては直ちに政局転機の動因を包蔵しあるの状顕著なりと称し得へし

以上を総合し今や主敵米は戦争の主動権を把握しあるの現状に来し全力を傾倒して政戦両略に亘る真面目なる決戦攻勢を続行強化せんとし之に対し帝国は独と策応し物心両面に亘る国力戦力の全縦深を展開して其の進攻企図の破摧に努めんとし茲に今夏秋の候戦政局の推移は愈々重大化し以て興亡の関頭に立つへく帝国として一歩を誤らんか遺憾なから最悪事態に逢着するの算少からさるの情勢にあり


  第四  帝国国力戦力の推移に就て

帝国の国力は蓄積力の消尽と船舶運営を基調とする戦争経済体制の行詰りとにより本年初頭を劃して逐次低下の傾向を辿り最近其の状漸く顕著ならんとしつつありたる所之に加ふるに先般中部太平洋方面国防圏突破せられ敵機動艦隊に対する帝国海軍の機能激減し加ふるに敵潜水艦の跳梁は愈々激化し物的国力の基礎たるへき船舶の損耗は今後逐増すへく茲に南北両国防圏の紐帯保持は十月頃以降は極めて至難なる状態となり八月以降激化増大すへき本土空襲被害と相俟つて帝国々力戦力は本年上期を劃して爾後逐次其の計画性を放棄せさるを得さるの窮境に立ち今後国力戦力維持の為抜本的施策を講する場合に於ても十九年度年間を通し

                         (計画) 

  飛行機            機程度    (五万二千機)

  普通鋼々材     二五〇-三〇〇万屯程度 (四五〇万屯)

  「アルミニューム」 一五万屯程度      (一九万屯強)

  燃料還送量     一五〇万竏程度     (三〇〇万竏以上)

  甲造船       一五〇万屯       (二五五万屯)

以上の計画通りを望むは過望にして本年内は戦争遂行上最低所要量を充足し得へしと雖も近代的戦争遂行の為の組織的国力戦力は全く其の計画性を喪失すへし

即ち帝国国力戦力は如何に努力するも「ジリ」貧の一途を辿り本年末頃迄の決戦には辛うして追随し得へきも明年以降実力ある攻勢を反覆するの実力なかるへし 而して本年決戦を回避し国力戦力を温存せんとするも敵の来攻を阻止し得さる限り時間の問題なり

飜つて之を軍需動員の面より観察するに在庫は皆無となり特に航空機以外の戦争兵器の需給関係は惨憺たる状況を呈し武器を有せさる軍隊の現出も遠き将来の事に属せす国土防空用弾薬の如きも数回の大規模空襲により消尽するの虞大なり

而して戦争兵器の不足を補ひ大和民族の特性を発揮せんか為爆薬等の如き原始的簡易戦力の使用を企図するも直ちに量的成約を受け更に又兵器技術面に於ける帝国の水準も実用の点に於て劃期的向上の目途なく斯くして物的戦力に関する限り量質共に彼我の懸隔は余りにも甚しく今後時日の経過と共に益々拡大する虞頗る大なり

之を要するに作戦的には国力戦力の全縦深を展開して決戦を指導するも尚且敵の進攻を確実に圧倒破摧し得るの準備の余裕と自信なく良好なる戦果を得たる場合に於ても国力戦力見地よりするときは某期間敵の進攻を阻止するの程度なるへし


  第五  今後の戦争指導方策に就て

以上の諸条件を冷静に観察するときは自ら帝国の採るへき方途定まれりと雖も茲に重複を厭はす各種策案を按するに思想的に左記五案に分類し得へし(別図参照)

第一案 本年後期に国力戦力の全縦深を展開して対米決戦を指導し明年以後の為の施策は全然考慮せさる案(短期決戦案)

第二案 本年後期に国力戦力の全縦深を展開して対米決戦を指導したる後明年以降長期戦的努力を重視す(準短期決戦案)

第三案 本年後期に国力戦力の徹底的重点(七、八割)を構成して主敵米の進攻に対し決戦的努力を傾倒し一部(二、三割)を以て長期戦的努力を強化す(決戦重点二本立案)

第四案 本年後期従来程度の決戦的努力を行ふと共に併せて長期戦的努力を行ふ(併行二本立案)

第五案 戦局の前途短期決戦の見込なきを以て決戦的努力を従とし長期戦的努力を主とす(長期戦重点二本立案)

右各案に就き其の本質的検討を加ふるに

第一第二案は

何れも決戦指導に全国力を賭し爾後の戦争には殆んと考慮を払はさる案にして作戦思想的には存在し得るも戦争指導的には成立し得さるものと認む何となれは今夏秋の決戦は相当の期間を要し此の間最少限の国力の維持培養無くしては決戦そのものをも拘束することとなり又縦ひ観念的に斯かる決意を採り得たりとするも今後の準備期間と決戦遂行の地域とを勘案せは量的にも種類的にも之を全面的に戦力化することは至難と謂ふへく 茲に作戦に集中し得る力には自ら一定の限界あるを知り得へし 更に又決戦の結果不幸にして最悪の事態を惹起せる場合に於ても帝国か断乎戦争を継続し得る最少限の措置は作戦と併行し即刻実行し置かされは機を逸するに於て益々然り

第四案は

作戦国力の併行案にして所謂長期戦即応国力維持に破綻を生せさる範囲に於て作戦との節調を保持せんとするものなるも現在程度の作戦的努力に依り此の困難なる戦局を乗り切り得るの前提の下に於てのみ成立を期待し得るものなり

而して敵の圧倒的に優勢なる決戦攻勢に対し従来程度の作戦的努力の結果如何は太平洋方面の攻防に於て既に試験済と謂うへく時間と地域の余裕を喪失せる現状に於て敵の重圧に対抗せんか為には作戦的に決戦の断行あるのみ

飜って国力の現状は従来の観念を以てせは既に破弾界に到達しありとも観察し得へきを以て爾後の長期戦的努力(南方と分断せられたる場合に於ても尚日満支に於て組織的国力戦力を保持せんとする努力)に相当の力を注入せは前記決戦的要請に即応し得す 茲に遺憾なから斯かる両面の要求を平等に調和せしむることは不可能なりと観察せさるを得す

第五案は

決戦を回避し長期戦的努力に徹底せんとする案なるも本案は中部太平洋方面の絶対国防圏を確保しありとの前提に於てのみ成立し得るものなるも現状に於ては問題と無し得す

第三案は

作戦思想としては全戦力を、戦争指導として国力の七-八割を当面の作戦に傾倒し以て決戦を指導し此処に唯一の勝目を見出さんとする案なるも同時に戦争は此の決戦のみに依りて終結するものに非す

而も最悪の事態惹起せる場合に於ても此に対応し得る為可能の範囲(二-三割)に於て長期戦的努力をも講せんとするものなり

本案に於て最も問題たるへき点は斯かる努力に依り果して作戦必勝を期し得るや否やに存するも本件は最早能否を超越し国運を賭して断行せらるへきものにして今後の努力如何に存す

此の期に臨み国力温存の魅力に眩惑せられ土俵際に於ける渾身の勇を躊躇せさること最も肝要なり

以上を総合し帝国か戦争の現段階に対処し皇統連綿たる国体を護持して将来の飛躍を期し得る唯一の道は

内に於ては

本年後期国力戦力の全縦深を展開して決戦を指導し以て敵の企図を破摧するに努め最悪の場合に於ても本年内に作戦的破綻を来ささるの方途を確立すると共に他面最悪の事態は当然惹起すへしとの前提に於て一億皇土を護持して鉄石の団結を確保し以て独力戦争完遂を期し得る為の諸施策の敏活果敢なる断行を期するを要し

外に対しては

独と提携し万難を克服して本年内に世界情勢の転回を図る為作戦と呼応し遅くも初秋の候迄には独「ソ」和平を斡旋し更に重慶の落脱を図る等徹底せる条件の下果断なる政略活動を即刻開始するを要す

右政略活動は其の能否の問題を超越し決戦遂行の為の絶対的要請なり

而して右政略施策の不成功の場合に於ても帝国の継戦意志に何等の動揺あるへからす万難を排して独力戦争を完遂するを要し斯かる場合に於ては逐次組織ある戦争指導の遂行は不可能となるへきも飽く迄皇土を護持して最後の一人に至る迄敢闘し敵の戦意放棄を俟つを要す

戦機は刻々経過しつつあり

以上の戦争指導の根本方策は国内政局の変動等により一時と雖も停滞を許さす

此の際速かに方途を確立して果敢断行せされは帝国の滅亡期して俟つへく何に依つてか臣道を全ふせんや


(表省略)

(国立公文書館:昭和19年7月27日 昭和19年末頃を目途とする帝国戦争指導に関する説明 C12120291600)

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