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重慶工作実施に関する件 1944年09月05日

 重慶工作実施に関する件(ひらがな、一部新字体化)


   重慶工作實施ニ關スル件    (昭一九、八、三一)

一、方針

対重慶政治工作は大東亜戦争遂行の為重慶政権の対日抗戦を終止せしむるを以て主眼とす

二、要領

(イ)工作の系統

 八月二十六日最高会議決定に依る

(ロ)工作の直接担当者及重慶との連絡方法(工作路線)

1.速かに国民政府側に対し帝国の意向を明確に伝達し重慶との連絡方法(人及方法)に関し意見を具申せしめ南京現地機関(大使、軍司令官)の意見をも徴したる上最高会議に於て之を決定す

2.重慶との交渉の進捗如何に依り我方より重要人物派遣を考慮す

(ハ)工作の時期

 成るへく速かに工作に着手す

(ニ)工作実施に当り我方に於て態度を決定すへき事項(和平条件の決定)

 日華同盟条約の内容か日華関係の基準たるへきも工作実施に当りては結局左の諸点か具体的の問題たるへきに鑑み予め之に対する帝国の態度を決定するを要す

1.和平と重慶の対米英関係

 全面和平後重慶か米英に対し宣戦すること(日華共同宣言及日華同盟条約の存続)最も望ましきも帝国としては其処迄要求するの要なく結局支那の好意的中立を以て満足す此の場合支那をして在支米英軍の武装解除を為さしむ(要すれは帝国軍隊を以て之を援助す)

 此の場合日華同盟条約の改定を考慮す米英に対する戦争の必要存続する限り我方の軍事行動は容認せしむ

2.重慶政権と国民政府との関係

 蒋介石の南京帰還、統一政府の樹立を認む(両者間の調整は能ふ限り両者の直接交渉に委す)

3.満洲国の処置

 満洲国は結局に於て支那の領域たらしむることを認む(関東州租借地の返還を含む)

 但し満洲国の処置に関しては対「ソ」関係を考慮するを要す)

4.台湾澎鼓島の処置

 現状維持とす

5.香港の処置

 支那に返還す

6.南方占領地に対する支那側の要求

 南方占領地に対し或る地域の領有(又は経済開発参加)を認む

7.延安政権及共産軍の取扱

 対「ソ」関係を考慮し本件は支那内政問題なりとの建前を持し差当り不即不離の態度にて進むも将来の蒋介石の対延安政権方針に対する帝国の態度は其の時の日「ソ」関係を考慮して別に決定す日蘇提携強化か先行する場合に於ては日蘇両国の延安政権援助を以て蒋介石圧迫に利す

8.支那荒廃地の復興に対する援助

 戦後能ふ限り物と技術とを以て之を援助す

(ホ)工作実施に関し留意すへき事項

1.今次工作は所謂謀略にあらす飽迄大東亜建設の理想より此際日華の正常関係を回復せんとする誠意と熱意とを以て堂々と(公然との意にあらす)之か実施に当り其成否は常に政府に於て責任を取る覚悟にて進むを要す

2.従来の如く先つ重慶側の和平意向の有無を打診し若し有らは具体的に条件を交渉すへしとする遣方にては不徹底にして又最初の工作者に於ても相当困るへし

 故に前記和平条件に対する帝国の腹案を最初より其儘さらけ出す必要はなきも其の中相当程度のものは国民政府側にも初より明確にして着手するを要す従て先つ和平条件に付き我方の態度を決定するの要あり

3.工作段階と正式停戦交渉とを混同することなく工作は右に至る準備として行ふ

(国立公文書館:対重慶政治工作ニ関スル件 B02032986000)

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