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世界情勢判断 1943年09月30日

 世界情勢判断(ひらがな、一部新字体化、不明文字あり)


   世界情󠄁勢判󠄁断


目次

第一節 各国の戦争指導

第二節 各国の戦争遂行能力

第三節 今明年に於ける主要なる情勢の推移

第四節 総合判断

   付録 各国戦争遂行上の主なる強弱点


    第一節 各国の戦争指導

一、米国

米国の戦争の目的は自国を中心とする世界体制の確立を期し日独特に日の完全屈伏に在り而して米は速に終戦を企図し今明年中に戦勝の態勢を概成せんことを期し優越せる物的戦力を極度に発揮して英国と協力し「ソ」及重慶を利用し以て日独の打倒を図るへし

其の攻撃兵力の重点は東亜に指向せらるへく又「ソ」を対日戦に導入するに努むへし

戦争交綏し日独の完全屈伏至難なりと認むる場合に於ては日独の勢力を努めて圧縮し興国並に敗戦国に自己勢力を扶植する程度に止め戦局収拾を企図することなしとせさるへし

二、英国

英国の戦争目的は概ね戦前に於ける勢力を維持する為日独特に独の完全屈伏に在り

而して英は米との提携を愈々緊密にして其の重点を独に指向し「ソ」を利用して先つ独の屈伏を図り他方米と協力して東亜戦線に於ける攻勢を加重し戦後に於ける東亜処理に不動の地歩を確保せんとするならん其の間英帝国の結束及近東、阿弗利加に於ける従来の地位の確保に努むへし

然れとも欧州の勢力均衡を計り得る範囲に於て独の存在を許し「ソ」の欧州赤化の防止に利用し自国の健在を策することあるへし而して戦勝の為には米に追随すへしと雖も独の脅威低減するに至らは米に対し自主的態度に復帰することなしとせす

三、重慶

重慶の抗戦建国の目的は外国勢力を排除し其の領土及主権の完整を計るに在り而して帝国に対しては主として米英戦力に依る日本の屈伏を冀求し少くとも支那事変前の態勢に復帰することを期しつつ自らは概ね防勢を持して戦力の消耗を回避し此の間為し得る限り自力更生の策を講して戦後に於ける自主的地位の確立を図るへし

四、「ソ」連

「ソ」連は依然世界赤化政策を遂行すへきも現戦争目的は差当り独の脅威を芟除し独「ソ」開戦前の領土を回復するに在りて更に為し得る限り「スラブ」民族の統一、「バルカン」、西亜方面に対する勢力の伸長を企図すへし

之か為「ソ」は自主的に世界戦争に対処し極力英米を利用しつつ先つ独の屈伏に専念すると共に戦後処理に対する発言権を確保する為政謀略を活発にすへし

「ソ」は帝国に対しては当分静謐保持を主旨とすへし

五、独国

独の戦争目的は「ソ」連の脅威を芟除すると共に英国の旧支配勢力を打破し大独逸民族国家を組織し其の生存の為の欧州広域生活圏を建設するに在り

而して独は不敗態勢の確立を期し当分持久体制を持続して国防力の充実特に航空勢力の増強に努め其の間為し得る限り「ソ」戦力を減殺し戦争主導権の回復を計り且好機を捉へて英米の進攻特に第二戦線構成を撃砕すると共に交通破壊戦並に対英空襲を強化し其の戦意喪失に努むへし

対英本土上陸及西亜方面進出は当分見込なし


    第二節 各国戦争遂行能力

一、米国

1.国民の団結力は依然鞏固にして其の物的優越感にも鑑み継戦意志は動揺せさるへし然れとも其の志気は主として戦勢の振否に依り級数的に増減すへし

 人的資源は漸次困難を感しつつあり

2.「ル」の地位は鞏固にして其の政治力は戦勢の有利なる限り動揺せさるへし

 大統領の改選期の動向には注視を要す

3.工業生産力は昭和十八年末頃略々頂点に達し爾後概ね其の水準を維持すへし

 但し飛行機等の重点軍需工業は其の後と雖も相当期間尚上昇するならん

 食料の国内自給は充分なるも与国に対する補給は中南米の利用に俟たさるへからす

4.地上兵力一二六師団を基幹とする現陸軍拡張は昭和十九年中期に一応概成を見るへく戦艦二十三隻、航空母艦三十七隻保有を目途とする現海軍拡張は昭和二十年頃迄に概ね完了するならん

二、英国

1.国民の団結力は愈々鞏固にして戦勢の不利となり国民生活逼迫するも最後の勝利を信し継戦意志は動揺せさるへし

 本国の人口資源は利用の最大限度に達しあり

2.「チ」の地位は鞏固にして其の政治力は動揺せさるへし

3.本国の生産力は上昇の余地なきも米国の援助に依り現状維持概ね可能なるへし

 食料は海外依存性極めて大なるも未た其の需給に窮迫しあらす

4.陸海空軍は米国の援助と自治領、属領等の利用とに依り尚相当の増勢を見るへし

三、重慶

1.継戦意志は相当に鞏固なり

 人的資源豊富なり

2.蒋の地位は尚鞏固にして其の政治力未た衰へす

3.軽兵器及食料の自給可能なり

4.軍隊は装備劣等なるも現状程度の戦闘に支障なし

 在支米空軍は漸次増強の趨勢に在るを以て之か活動は軽視を許ささるへし

四、「ソ」連

1.国民性の粘着力と「ス」の指導力とに依り国民の継戦意志は尚鞏固にして動揺せさるへし

 人的資源は概ね限度に達しつつあり

2.「ス」の地位は極めて鞏固にして其の政治力は動揺せさるへし

3.生産力は明年基礎工業に於ては独「ソ」開戦前の約七、八割程度に回復すへし

 但し飛行機並に戦車の生産量は本年末頃には戦前の生産量を凌駕すへきも爾後急速なる上昇は期待し得さるへし

 食糧は相当窮迫しあるも未た国内動揺を来す程度に至らす

4.年度の絶対損耗を概ね昨年程度(約二五〇万)とするも明年末に於て現有兵力(約九〇〇万)の保持は可能なるへし

五、独国

1.国民生活は相当逼迫しあるも国民の志気は旺盛にして其の団結は鞏固なるのみならす国民の愛国心と前大戦の苦き経験とにも鑑み戦争意志は動揺せさるへし

 人的資源は概ね限度に達しあり

2.「ヒ」の地位は極めて鞏固にして其の政治力は動揺せさるへし

3.生産力は向上の見込なきも現戦力の維持は概ね可能なり

 航空機生産の急速なる増加を企図しあるも空襲並に労働力の状況に依りては予期の成果を収め得さることあるへし

 食糧は勢力圏内の需要を概ね充足し得へし

4.年度の絶対損耗を約六、七十万(昨年度の絶対損耗約八十万)以内に止むるにあらされは明年末に於て現有兵力(約一、〇〇〇万)保持は困難なるへし

六、各国戦争遂行上の主なる強弱点附録の如し


    第三節 今明年に於ける主要なる情勢の推移

一、独「ソ」戦の見透

「ソ」は英米の欧州進攻と策応し冬期に至るも依然自主的攻勢を続行すへく独は守勢を執り極力敵側の人的物的資源の消耗を図るへきも其の戦線は逐次西移し概ね沿「バ」地方及「ドニエープル」河に沿ふ要域に於て停頓するならん

而して「ドニエープル」河に沿ふ要域の喪失は独に執りて食糧、石油等の資源の取得並に傘下諸国の掌握に及ほす影響等極めて大なるへきを以て独は極力之か保持に努むへし

二、欧州に於ける英米の第二戦線

英米は先つ独傘下諸国の撹乱並に中立国の反枢軸陣営導入を策し「ソ」を利用して極力独戦力の減殺を図り且対独空爆を激化すへく此の間主として地中海方面、一部を以て北欧方面等よりする対独包囲攻勢に努むへし

又独戦力の程度並に英米の大陸侵攻作戦の準備進捗度を較量し決戦的西欧進攻作戦を企図することあるへく其の時機は明年春夏の候となる公算大なるへし

而して英米と「ソ」との間に伏在する機微なる関係は右第二戦線構成の時期及方面の選定に相当の影響を与ふることあるへし

独は既に対英米は勿論対「ソ」早期決戦の機を失し脆弱なる素因をも有する国防圏に立脚し大規模空爆下に防勢を採るの已むを得さる状況に在るも英米の対独包囲攻勢作戦に対しては極力遠々阻止するに努むると共に其の西欧侵攻作戦に対しては好機を求め可及的大なる戦力を集中して之か撃摧を企図するならん

其の西欧作戦の成敗は独「ソ」戦の帰趨と共に独対英米戦の大勢を決すへし

三、東亜に於ける米英の反攻

米英は帝国の不敗態勢確立に先ち速かに之か破摧を企図し欧州戦局の推移如何に拘らす各方面より包囲攻勢を強化し来るへし

特に今秋冬を期し南東方面の攻勢を愈々熾烈化すると共に「ビルマ」「アンダマン」「スマトラ」方面に対して大規模攻撃を敢行し戦局の急転を図るならん

又我海上交通の破壊並に戦略要点及資源要地に対する空爆を激化すへく特に洋上及支那本土をりする我本土及交通線に対する空襲に対しては大いに警戒を要す

米英は武力攻勢に策応し政謀略を激化し大東亜諸国家諸民族の対日離間を策すへし

四、「ソ」の対日動向

「ソ」は差当り進んて又は米英の強制に依り対日開戦は勿論基地供与の如き措置に出つること先つなかるへきも情勢の推移、当時に於ける帝国及「ソ」の国力如何に依りては其の可能性絶無にあらさるへし

五、欧州に於ける和平

差当り、独、「ソ」、英米何れよりも和平を提議するの算殆んとなかるへし

然れとも諸般の情勢特に人的資源の損耗枯渇、空爆の激化、政謀略の熾烈化等に依り厭戦求和の思想の抬頭を見るへく戦局の推移に伴ひ独英米、独「ソ」、欧州和平等各種和平問題の具体化を見る算無しとせさるへく又予想すへからさる異変を直接動因として急激に和平の実現を見る可能性も亦絶無にあらさるへし


    第四節 綜合判断

米英「ソ」は戦争の主導権を把握しある現状に乗し今や全力を傾倒して政戦両略に亘る攻勢を連続的に強行せんとし之に対し日独は既得の戦果を活用し飽く迄之か阻止破摧に努めつつあるを以て茲に世界戦争は明年春夏の候に最も熾烈化すへし


附録

   各国戦争遂行上の主なる強弱点

一、米国

弱点

1、戦争目的に覇道性あり

2、民族複雑にして国民は個人主義なり

3、作戦か政略の影響を受く

4、「インフレーション」に対し脆弱性大なり

5、死傷に対する感情鋭敏なり

強点

1、物的戦力大なり

2、国防上の地理的条件有利なり

3、国民は進取、積極、冒険的なり

二、英国

弱点

1、国防上の地理的条件不利なり

2、本国は人的資源不足なり

3、本国は資源特に食糧、石油等の海外依存度大なり

強点

1、国民性強靭なり

三、重慶

弱点

1、戦略態勢上孤立しあり

2、軍需工業力貧弱なり

3、国内結束弛緩の因子(国共相剋、民衆求和思想、抗戦名目の喪失等)を内在す

強点

1、国民の生活力強靭なり

2、国土膨大にて人的資源豊富なり

四、「ソ」連

弱点

1、運輸能力不足なり

2、人的消耗に依る影響大なり

3、食糧不足なり

強点

1、国土膨大にして国民の生活力強靭なり

2、政治指導力鞏固にして国家総力の発揮容易なり

五、独国

弱点

1、国防国家態勢確立しあり

2、資源の海外依存度小なり

強点

1、傘下諸国との結束に脆弱性あり

2、石油及人的資源余裕なし

3、空爆に対し国防圏狭少なり

六、連合側綜合強弱点

弱点

1、米、英、「ソ」、重慶間の戦争目的に於て一致せさる点あり

 特に米英と「ソ」との間に於て然りとす

2、連合側の戦争遂行は米国に負ふ所大なるを以て米国の継戦意志に左右せらるる処大なり

強点

1、物的戦力の質量共に優越しあり

2、相互の連絡協同容易なり

七、日独側綜合強弱点

強点

1、共に建設的戦争目的を有するに於て一致しあり

2、概ね自彊不敗圏を取得し各々自力を以てする戦争遂行可能なり

弱点

1、直接連絡困難なり

2、戦力統合指向困難にして各個撃破を受くる危険あり

(日本公文書館:1、昭和18年9月25日 世界情勢判断/目次・本文 2、今後採るへき戦争指導の大綱 3、今後採るへき戦争指導の大綱に基く戦略方策 C12120222100)

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