刑法(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)
十三年七月十七日
第三十六号
刑法別冊の通改定候条此旨布告候事
但実際施行の期日は追て布告すへき事
刑法目録
第一編 総則
第一章 法例
第二章 刑例
第一節 刑名
第二節 主刑処分
第三節 附加刑処分
第四節 徴償処分
第五節 刑期計算
第六節 仮出獄
第七節 期満免除
第八節 後権
第三章 加減例
第四章 不論罪及ひ減軽
第一節 不論罪及ひ宥恕減軽
第二節 自首減軽
第三節 酌量減軽
第五章 再犯加重
第六章 加減順序
第七章 数罪倶発
第八章 数人共犯
第一節 正犯
第二節 従犯
第九章 未遂犯罪
第十章 親属例
第二編 公益に関する重罪軽罪
第一章 皇室に対する罪
第二章 国事に関する罪
第一節 内乱に関する罪
第二節 外患に関する罪
第三章 静謐を害する罪
第一節 兇徒聚衆の罪
第二節 官吏の職務を行ふを妨害する罪
第三節 囚徒逃走の罪及ひ軍人を蔵匿する罪
第四節 附加刑の執行を遁るヽ罪
第五節 私に軍用の銃砲弾薬を製造し及ひ所有する罪
第六節 往来通信を妨害する罪
第七節 人の住所を侵す罪
第八節 官の封印を破棄する罪
第九節 公務を行ふを拒む罪
第四章 一般の信用を害する罪
第一節 貨幣を偽造する罪
第二節 官印を偽造する罪
第三節 官の文書を偽造する罪
第四節 私印私書を偽造する罪
第五節 免状鑑札及ひ疾病証書を偽造する罪
第六節 偽証の罪
第七節 度量衡を偽造する罪
第八節 身分を詐称する罪
第九節 公選の投票を偽造する罪
第五章 一般の健康を害する罪
第一節 阿片烟に関する罪
第二節 飲料の浄水を汚穢する罪
第三節 伝染病予防規則に関する罪
第四節 危害品及ひ健康を害す可き物品製造の規則に関する罪
第五節 健康を害す可き飲食物及ひ薬剤を販売する罪
第六節 私に医業を為す罪
第六章 風俗を害する軍
第七章 死屍を毀棄し及ひ墳墓を発掘する罪
第八章 商業及ひ農工の業を妨害する罪
第九章 官吏涜職の罪
第一節 官吏公益を害する罪
第二節 官吏人民に対する罪
第三節 官吏財産に対する罪
第三編 身体財産に対する重罪軽罪
第一章 身体に対する罪
第一節 謀殺故殺の罪
第二節 殴打創傷の罪
第三節 殺傷に関する宥恕及ひ不論罪
第四節 過失殺傷の罪
第五節 自殺に関する罪
第六節 擅に人を逮捕監禁する罪
第七節 脅迫の罪
第八節 堕胎の罪
第九節 幼者又は老疾者を遺棄する罪
第十節 幼者を略取誘拐する罪
第十一節 猥褻姦淫重婚の罪
第十二節 誣告及誹毀の罪
第十三節 祖父母父母に対する罪
第二章 財産に対する罪
第一節 窃盗の罪
第二節 強盗の罪
第三節 遺失物埋蔵物に関する罪
第四節 家資分散に関する罪
第五節 詐欺取財の罪及ひ受寄財物に関する罪
第六節 贓物に関する罪
第七節 放火失火の罪
第八節 決水の罪
第九節 船舶を覆没する罪
第十節 家屋物品を毀壞し及ひ動植物を害する罪
第四編 違警罪
刑法
第一編 総則
第一章 法例
第一条 凡法律に於て罰す可き罪別て三種と為す
一 重罪
二 軽罪
三 違警罪
第二条 法律に正条なき者は何等の所為と雖も之を罰することを得す
第三条 法律は頒布以前に係る犯罪に及ほすことを得す
若し所犯頒布以前に在て未た判決を経さる者は新旧の法を比照し軽きに処断す
第四条 此刑法は陸海軍に関する法律を以て論す可き者に適用することを得す
第五条 此刑法に正条なくして他の法律規則に刑名ある者は各其法律規則に従ふ
若し他の法律規則に於て別に総則を掲けさる者は此刑法の総則に従ふ
第二章 刑例
第一節 刑名
第六条 刑は主刑及ひ附加刑と為す
主刑は之を宣告す
附加刑は法律に於て其宣告する者と宣告せさる者とを定む
第七条 左に記載したる者を以て重罪の主刑と為す
一 死刑
二 無期徒刑
三 有期徒刑
四 無期流刑
五 有期流刑
六 重懲役
七 軽懲役
八 重禁獄
九 軽禁獄
第八条 左に記載したる者を以て軽罪の主刑と為す
一 重禁錮
二 軽禁錮
三 罰金
第九条 左に記載したる者を以て違警罪の主刑と為す
一 拘留
二 科料
第十条 左に記載したる者を以て附加刑と為す
一 利奪公権
二 停止公権
三 禁治産
四 監視
五 罰金
六 没収
第十一条 刑を執行し及ひ犯人を撿束する方法細目は別に規則を以て之を定む
第二節 主刑処分
第十二条 死刑は絞首す伹規則に定むる所の官吏臨検し獄内に於て之を行ふ
第十三条 先刑は司法卿の命令あるに非されは之を行ふことを得す
第十四条 大祀令節国祭の日は死刑を行ふことを禁す
第十五条 死刑の宣告を受けたる婦女懐胎なる時は其執行を停め分娩後一百日を経るに非されは刑を行はす
第十六条 死刑の遺骸は親属故旧請ふ者あれは之を下付す但式を用ひて葬ることを許さす
第十七条 徒刑は無期有期を分たす島地に発遣し定役に服す
有期徒刑は十二年以上十五年以下と為す
第十八条 徒刑の婦女は島地に発遣せす内地の懲役場に於て定役に服す
第十九条 徒刑の囚六十歳に満る者は通常の定役を免し其体力相当の定役に服す
第二十条 流刑は無期有期を分たす島地の獄に幽閉し定役に服せす
有期流刑は十二年以上十五年以下と為す
第二十一条 無期流刑の囚五年を経過すれは幽開を免し島地に於て地を限り居住せしむることを得
有期流刑の囚三年を経過する者亦同し
第二十二条 懲役は内地の懲役場に入れ定役に服す但六十歳に満る者は第十九条の例に従ふ
重懲役は九年以上十一年以下軽懲役は六年以上八年以下とす
第二十三条 禁獄は内地の獄に入れ定役に服せす
重禁獄は九年以上十一年以下軽禁獄は六年以上八年以下と為す
第二十四条 禁錮は禁錮場に留置し重禁錮は定役に服し軽禁錮は定役に服せす
禁錮は重軽を分たす十一日以上五年以下と為し仍ほ各本条に於て其長短を区別す
第二十五条 定役に服する囚人の賃銭は監獄の規則に従ひ其幾分を獄舍の費用に供し其幾分を囚人に給与す但現役百日以内は給与の限に在らす
第二十六条 罰金は二円以上と為し仍ほ各本条に於て其多寡を区別す
第二十七条 罪金は裁判確定の日より一月内に納完せしむ若し限内納完せさる者は一円を一日に折算し之を鞋禁錮に換ふ其一円に満さる者と雖も仍ほ一日に計算す
罰金を禁錮に換ふる者は更に裁判を用ひす検事の求に因り裁判官之を命す但禁錮の期限は二年に過することを得す若し禁錮限内罰金を納めたる時は其経過したる日数を和除して禁錮を免す但親属其他の者代て罰金を納めたる時亦同し
第二十八条 拘留は拘留所に留置し定役に服せす其刑期は一日以上十日以下と為し仍ほ各本条に於て其長短を区別す
第二十九条 科科は五銭以上一円九十五銭以下と為し仍ほ各本条に於て其多寡を区別す
第三十条 科料は裁判確定の目より十日内に納完せしむ若し限内納完せさる者は第二十七条の例に照し之を拘留に換ふ
第三節 附加刑処分
第三十一条 剥奪公権は左の権を剥奪す
一 国民の持権
二 官吏と為るの権
三 勲章年金位記貴号恩給を有するの権
四 外国の勲章を佩用するの権
五 兵籍に入るの権
六 裁判所に於て証人と為るの権但単に事実を陳述するは此限に在らす
七 後見人と為るの権但親属の許可を得て子孫の為めにするは此限に在らす
八 分散者の管財人と為り又は会社及ひ共有財産を管理するの権
九 学校長及ひ教師学監と為るの権
第三十二条 重罪の刑に処せられたる者は別に宜告を用ひす終身公権を利奪す
第三十三条 禁錮に処せられたる者は別に宣告を用ひす現任の官職を失ひ及ひ其刑期間公権を行ふことを停止す
第三十四条 軽罪の刑に於て監視に付したる者は別に宣告を用ひず監視の期限間公権を行ふことを停止す
主刑を免して止た監視に付したる者亦同し
第三十五条 重罪の刑に処せられたる者は別に宣告を用ひす其主刑の終るまて自から財産を治むることを禁す
第三十六条 流刑の因幽閉を免せられたる時は行政の処分を以て治産の禁の幾分を免することを得
第三十七条 重罪の刑に処せられたる者は別に宜告を用ひす各本刑の短期三分の一に等しき時間監視に付す
第三十八条 軽罪の刑に附加する監視は之を宣告す但各本条に記載するの外監視に付することを得す
第三十九条 死刑及ひ無期刑の期満免除を得たる者は別に宣告を用ひす五年間監視に付す
第四十条 監視の期限は主刑の終りたる日より起算す主刑の期満免除を得たる時は其捕に就きたる日より起算す
若し主刑を免して止た監視に付したる時は其裁判確定の日より起算す
第四十一条 監視に付せられたる者其情状に因り行政の処分を以て仮に監視を免することを得
第四十二条 附加の罰金は之を宣告す若し一月内に納完せさる時は第二十七条の例に照し較禁錮に換へ主刑満限の後之を執行す
第四十三条 左に記載したる物件は宣告して官に没収す但法律規則に於て別に没収の例を定めたる者は各其法律規則に従ふ
一 法律に於て禁制したる物件
二 犯罪の用に供したる物件
三 犯罪に因て得たる物件
第四十四条 法律に於て禁制したる物件は何人の所有を問はす之を没収す犯罪の用に供し及ひ犯罪に因て得たる物件は犯人の所有に係り又は所有に係り又は所有主なき時の外之を汲収することを得す
第四節 微償処分
第四十五条 刑事の裁判費用は其全部又は幾分を犯人に科す但其費用の額は別に規則を以て之を定む
第四十六条 犯人刑に処せられ又は放免せらるヽと雖も被害者の請求に対し贓物の還給損害の賠償を免かるヽことを得す
第四十七条 数人共犯に係る裁判費用贓物の還給損害の賠償は共犯人をして之を連帯せしむ
第四十八条 裁判費用贓物の還給損害の賠償は被害者の請求に因り刑事裁判所に於て之を審判することを得若し贓物犯人の手にある時は請求なしと雖も直ちに之を被害者に還付す
第五節 刑期計算
第四十九条 刑期を計算するに一日と称するは二十四時を以てし一月と称するは三十日を以てし一年と称するは暦に従ふ
受刑の初日は時間を論せす一日に算入し放免の日は刑期に算入せす
第五十条 刑は裁判確定したる後に非されは之を執行することを得す
第五十一条 刑期は刑名宣告の日より起算す若し上訴を為したる者は左の例に従ふ
一 犯人自ら上訴して其上訴正当なる時は前判宣告の日より起算す若し其上訴不当なる時は後判宣告の日より日を起算す
二 検察官の上訴に係る者は其上訴正当なると否とを分たす前判宣告の日より起算す
三 上訴中保釈を得又は責付せられたる者は其日数を刑期に算入することを得す
第五十二条 刑期限内逃走し再ひ捕に就きたる者は其逃走の日数を除き前後受刑の日を計算す
第六節 仮出獄
第五十三条 重罪軽罪の刑に処せられたる者獄則を謹守し悛改の状ある時は其刑期四分の三を経過するの後行政の処分を以て仮を出獄を許すことを得
無期徒刑の囚は十五年を経過するの後亦同し
流刑の囚は第二十一条に照し幽閉を免するの外出獄の例を用ひす
第五十四条 徒刑の囚は仮出獄を許さるヽと雖も仍ほ島地に居住せしむ
第五十五条 仮出獄を許されたる者は行政の処分を以て治産の禁の幾分を免することを得但本刑期限内特別に定めたる監視に付す
第五十六条 仮出獄中更に重罪軽罪を犯したる者は直ちに出獄を停止し出獄中の日数は刑期に算入することを得す
第五十七条 刑期限内更に重罪軽罪を犯したる者は仮出獄を許さす
第七節 期満免除
第五十八条 刑の執行を遁れたる者法律に定めたき期限を経過するに因て期満免除を得
第五十九条 主刑は左の年限に従て期満免除を得
一 死刑は三十年
二 無期徒流刑は二十五年
三 有期徒流刑は二十年
四 重懲役重禁獄は十五年
五 軽懲役軽禁獄は十年
六 禁錮罰金は七年
七 拘留科料は一年
第六十条 剝奪公権停止公権及ひ監視は期満免除を得す
附加の罰金は主刑と共に期満免除を得
没収は五年を経て期満免除を得但禁制物は期満免除の限に在らす
第六十一条 期満免除は刑の執行を遁れたる日より起算す若し捕に就き再ひ逃走したる時は其逃走の日より起算し闕席裁判に係る時は其宣告の日より起算す
第六十二条 刑の執行を遁れたる者に対し逮捕を命したる時は最終の捕令状を出したる日より期満免除を起算す
第八節 復権
第六十三条 公権を剥奪せられたる者は主刑の終りたる日より五年を経過するの後其情状に因り将来の公権を復することを得
主刑の期満免除を得たる者は監視に付したる日より五年を経過するの後亦同し
第六十四条 大赦に因て免罪を得たる者は直ちに復権を得特赦に因て免罪を得たる者は赦状中記載するに非されは復権を得す
赦に因て復権を得たる者は自ら監視を免したる者とす
第六十五条 復権は勅裁に非されは之を得可からす
第三章 加減例
第六十六条 法律に於て刑を加重減軽す可き時は後の数条に記載したる例に照して加減す但加へて死刑に入ることを得す
第六十七条 重罪の刑は左の等級に照して加減す
一 死刑
二 無期徒刑
三 有期徒刑
四 重懲役
五 軽懲役
第六十八条 国事に関する重罪の刑は左の等級に照して加減す
一 死刑
二 無期流刑
三 有期流刑
四 重禁獄
五 軽禁獄
第六十九条 軽懲役に該る者減軽す可き時は二年以上五年以下の重禁錮を処するを以て一等と為す
軽禁獄に該る者減軽す可き時は二年以上五年以下の軽禁錮に処するを以て一等と為す
第七十条 禁錮罰金に該る者減軽す可き時は各本条に記載したる刑期金額を四分の一を減するを以て一等と為し其加重す可き時は亦四分の一を加ふるを以て一等と為す
軽罪の刑は加へて重罪に入ることを得す但禁錮は加へて七年に至ることを得
第七十一条 禁錮を減尽したる時は拘留に処し罰金を減尽したる時は科科に処す禁錮罰金を減して其短期十日以下寡数一円九十五錢以下に及ふ時は亦拘留科料に処することを得
第七十二条 拘留科科に該る者加減す可き時は禁錮罰金の例に照し其四分の一を加減するを以て一等と為す
違警罪の刑は加へて軽罪に入ることを得す但拘留は加へて十二日に至ることを得減して一日以下に降すことを得す科料は加へて二円四十錢に至ることを得減して五銭以下に降すことを得す
第七十三条 禁錮拘留を加減するに因て其期限に零数を生し一日に満さる時は之を除棄す
第七十四条 附加の罰金は主刑に従て加減し其金額の四分の一を加減するを以て一等と為す若し減尽したる時は止た主刑を科す
第四章 不論罪及ひ減軽
第一節 不論罪及ひ宥恕減軽
第七十五条 抗拒す可からさる強制に遇ひ其意に非さる所為は其罪を論せす
天災又は意外の変に因り避く可からさる危難に遇ひ自己若くは親属の身体を防衛するに出たる所為亦同し
第七十六条 本属長官の命令に従ひ其職務を以て為したる者は其罪を論せす
第七十七条 罪を犯す意なきの所為は其罪を論せす但法律規則に於て別に罪を定めたる者は此限に在らす
罪と為る可き事実を知らすして犯したる者は其罪を論せす
罪本重かる可くして犯す時知らせる者は其重きに従て論することを得す
法律規則を知らさるを以て犯すの意なしと為すことを得す
第七十八条 罪を犯す時知覚精神の喪失に因て是非を弁別せさる者は其罪を論せす
第七十九条 罪を犯す時十二歳に満さる者は其罪を論せす但満八歳以上の者は情状に因り為十六歳の過きさる時間之を懲治場に留置することを得
第八十条 罪を犯す時満十二歳以上十六歳に満さる者は其所為是非を弁別したると否とを審案し弁別なくして犯したる時は其罪を論せす但情状に因り満二十歳に過きさる時間之を懲治場に留置することを得
若し弁別ありて犯したる時は其罪を宥恕して本刑に二等を減す
第八十一条 罪を犯す時満十六歳以上二十歳に満さる者は其罪を宥恕して本刑に一等を減す
第八十二条 瘖唖者罪を犯したる時は其罪を論せす但情状に因り五年に過きさる時間之を懲治場に留置することを得
第八十三条 違警罪は満十六歳以上二十歳に満さる者と雖も其罪を宥恕することを得す
満十二歳以上十六歳に満さる者は其罪を宥恕して本刑に一等を減す十二歳に満さる者及ひ瘖唖者は其罪を論せす
第八十四条 此節に記載するの外特別の不論罪宥恕減軽は各本条に於て之を記載す
第二節 自首減軽
第八十五条 罪を犯し事未た発覚せさる前に於て官に自首したる者は本刑に一等を減す但謀殺故殺に係る者は自首減軽の限に在らす
第八十六条 財産に対する罪を犯したる者自首して其贓物を還給し損害を賠償したる時は自首減等の外仍ほ本刑に二等を減す其全部を還償せすと雖に半数以上を還償したる時は一等を減す
第八十七条 財産に対する罪を犯し被害者に首服したる者は官に自首すると同く前二条の例に照して処断す
第八十八条 此節に記載するの外本条別に自首の例を掲けたる者は各其本条に従ふ
第三節 酌量減軽
第八十九条 重罪軽罪違警罪を分たす所犯情状原諒す可き者は酌量して本刑を減軽することを得
法律に於て本刑を加重し又は減軽す可き者と雖も其酌量す可き時は仍ほ之を減軽することを得
第九十条 酌量減軽す可き者は本刑に一等又は二等を減す
第五章 再犯加重
第九十一条 先に重罪の刑に処せられたる者再犯重罪に該る時は本刑に一等を加ふ
第九十二条 先に重罪軽罪の刑に処せられたる者再犯軽罪に該る時は本刑に一等を加ふ
第九十三条 先に違警罪の刑に処せられたる者再犯違警罪に該る時は本刑に一等を加ふ但一年内再ひ其違警罪裁判所の管轄地内に於て犯したる時に非されは再犯を以て論することを得す
第九十四条 再犯加重は初犯の裁判確定の後に非されは之を論することを得す
第九十五条 刑期限内再ひ罪を犯すに因り刑を宣告したる時は先つ其定役に服す可き者を執行し定役に服せさる者を後にす若し初犯再犯共に定役に服する刑に該る時又は共に定役に服せさる刑に該る時は先つ其重き者を執行す
罰金科料に該る者は順序に拘はらす各自に之を徴収す
第九十六条 陸海軍裁判所に於て判決を経たる者再ひ重罪軽罪を犯したる時は初犯の罪常律に従ひ処断したる者に非されは再犯を以て論することを得す
第九十七条 大赦に因て免罪を経たる者は再ひ罪を犯すと雖も再犯を以て論することを得す
第九十八条 三犯以上の者と雖も其加重の法は再犯の例に同し
第六章 加減順序
第九十九条 犯罪の情状に因り総則に照し同時に本刑を加重減軽す可き時は左の順序に従て其刑名を定む但従犯及ひ未遂犯罪の減等其他各本条に記載する特別の加重減軽は其加減したる者を以て本刑と為す
一 再犯加重
二 宥恕減軽
三 自首減軽
四 酌量減軽
第七章 数罪倶発
第百条 重罪軽罪を犯し未た判決を経す二罪以上倶に発したる時は一の重きに従て処断す
重罪の刑は刑期の長き者を以て重と為し刑期の等しき者は定役ある者を以て重と為す
軽罪の刑は其所犯情状最重き者に従て処断す
第百一条 違警罪二罪以上俱に発したる時は各自に其刑を科す若し重罪又は軽罪と倶に発したる時は一の重きに従ふ
第百二条 一罪前に発し已に判決を経て余罪後に発し其軽く若くは等しき者は之を論せす其重き者は更に之を論し前発の刑を以て後発の刑に通算す但前発の刑罰金科料に該り已に納完したる者は第二十七条の例に照し折算して後発の刑期に通算す
若し前発の罪を判決する時未た発せさる罪再犯の罪と倶に発したる者は其再犯と比較し一の重きに従ひ前発の刑を通算せす
第百三条 数罪倶に発し一の重きに従ふ時と雖も其没収及ひ徴償の処分は各本法に従ふ
第八章 数人共犯
第一節 正犯
第百四条 二人以上現に罪を犯したる者は皆正犯と為し各自に其刑を科す
第百五条 人を教唆して重罪軽罪を犯さしめたる者は亦正犯と為す
第百六条 正犯の身分に因り別に刑を加重す可き時は他の正犯従犯及ひ教唆者に及ほすことを得す
第百七条 犯人の多数に因り刑を加重す可き時は教唆者を算入して多数と為すことを得す
第百八条 事を指定して犯罪を教唆するに当り犯人教唆に乗し其指定したる以外の罪を犯し又は其現に行ふ所の方法教唆者の指示したる所と殊なる時は左の例に照して教唆者を処断す
一 所犯殺唆したる罪より重き時は止た其指定したる罪に従て刑を科す
二 所犯教唆したる罪より軽き時は現に行ふ所の罪に従て刑を科す
第二節 従犯
第百九条 重罪軽罪を犯すことを知て器具を給与し又は誘導指示し其他予備の所為を以て正犯を幇助し犯罪を容易ならしめたる者は従犯と為し正犯の刑に一等を減す伹正犯現に行ふ所の罪従犯の知る所より重き時は止た其知る所の罪に照し一等を減す
第百十条 身分に因り刑を加重す可き者従犯と為る時は其重きに従て一等を減す
正犯の身分に因り刑を減免す可き時と雖も従犯の刑は其軽きに従て減免することを得す
第九章 未遂犯罪
第百十一条 罪を犯さんことを謀り又は其予備を為すと雖も未た其事を行はさる者は本条別に刑名を記載するに非されは其刑を科せす
第百十二条 罪を犯さんとして已に其事を行ふと雖も犯人意外の障礙若くは外錯に因り未た遂けさる時は已に遂けたる者の刑に一等又は二等を減す
第百十三条 重罪を犯さんとして未た遂けさる者は前条の例に照して処断す
軽罪を犯さんとして未た遂けさる者は本条別に載するに非されは前条の例に照して処断することを得す
違警罪を犯さんとして未た遂けさる者は其罪を論せす
第十章 親属例
第百十四条 此刑法に於て親属と称するは左に記載したる者を云ふ
一 祖父母父母夫妻
二 子孫及ひ其配偶者
三 兄弟姉妹及ひ其配偶者
四 兄弟姉妹の子及ひ其配偶者
五 父母の兄弟姉妹及ひ其配偶者
六 父母の兄弟姉妹の子
七 配偶者の祖父母父母
八 配偶者の兄弟姉妹及其配偶者
九 配偶者の兄弟姉妹の子
十 配偶者の父母の兄弟姉妹
第百十五条 祖父母と称するは高曾祖父母外祖父母同し父母と称するは継父母嫡母同し子孫と称するは庶子曽玄孫外孫同し兄弟姉妹と称するは異父異母の兄弟姉妹同し
養子其養家に於る親属の例は実子に同し
第二編 公益に関する重罪軽罪
第一章 皇室に対する罪
第百十六条 天皇皇后及ひ皇太子に対し危害を加へ又は加へんとしたる者は死刑に処す
第百十七条 天皇皇后及ひ皇太子に対し不敬の所為ある者は三月以上五年以下の重禁錮に処し二十円以上二百円以下の罰金を附加す
皇陵に対し不敬の所為ある者亦同し
第百十八条 皇族に対し危害を加へたる者は死刑に処す其危害を加へんとしたる者は無期徒刑に処す
第百十九条 皇族に対し不敬の所為ある者は二月以上四年以下の重禁錮に処し十円以上五百円以下の罰金を附加す
第百二十条 此章に記載したる罪を犯し軽罪の刑に処する者は六月以上二年以下の監視に付す
第二章 国事に関する罪
第一節 内乱に関する罪
第百二十一条 政府を顛覆し又は邦土を僣窃し其他朝憲を紊乱することを目的と為し内乱を起したる者は左の区別に従て処断す
一 首魁及ひ教唆者は死刑に処す
二 群衆の指揮を為し其他枢要の職務を為したる者は無期流刑に処し其情軽き者は有期流刑に処す
三 兵器金穀を資給し又は諸般の職務を為したる者は重禁獄に処し其情軽き者は軽禁獄に処す
四 教唆に乗して附和隨行し又は指揮を受けて雑役に供したる者は二年以上五年以下の軽禁錮に処す
第百二十二条 内乱を起すの目的を以て兵器弾薬船舶金穀其他軍備の物品を劫掠したる者は己に内乱を起したる者の刑に同し
第百二十三条 政府を変乱するの目的を以て人を謀殺したる者は兵を挙るに至らすと雖も内乱と同く論し其教唆者及ひ下手者を死刑に処す
第百二十四条 前三条の罪は未遂犯罪の時に於て乃を本刑を科す
第百二十五条 兵隊を招募し又は兵器金穀を準備し其他内乱の予備を為したる者は第百二十一条の例に照し各一等を減す
内乱の陰謀を為し未た予備に至らさる者は各二等を減す
第百二十六条 内乱の予備又は陰謀を為すと雖も未た其事を行はさる前に於て官に自首したる者は本刑を免し六月以上三年以下の監視に付す
第百二十七条 内乱の情を知て犯人に集会所を給与したる者は二年以上五年以下の軽禁錮に処す
第百二十八条 内乱に乗して人の身体財産に対し内乱の目的に関せさる重罪軽罪を犯したる者は通常の刑に照し重きに従て処断す
第二節 外患に関する罪
第百二十九条 外国に与して本国に抗敵し又は外国と交戦中同盟国に抗敵し其他本国に背叛して敵兵に附属したる者は死刑に処す
第百三十条 交戦中敵兵を誘導して本国管内に入らしめ若くは本国及ひ同盟国の都府城塞又は兵器弾薬船艦其他軍事に関する土地家屋物件を敵国に交付したる者は死刑に処す
第百三十一条 本国及ひ同盟国の軍情機密を敵国に漏泄し若くは兵隊屯集の要地又は道路の険夷を敵国に通知したる者は無期流刑に処す
敵国の間謀を誘導して本国管内に入らしめ若くは之を蔵匿したる者亦同し
第百三十二条 陸海軍より委任を受け物品を供給し及ひ工作を為す者交戦の際敵国に通謀し又は其賂遺を収受して故さらに命令に違背し軍備の欠乏を致したる時は有期流刑に処す
第百三十三条 外国に対し私に戦端を開きたる者は有期流刑に処す其予備に止る者は一等又は二等を減す
第百三十四条 外国交戦の際本国に於て局外中立を布告したる時其布告に違背したる者は六月以上三年以下の軽禁錮に処し十円以上百円以下の罰金を附加す
第百三十五条 此章に記載したる罪を犯し軽罪の刑に処する者は六月以上二年以下の監視に付す
第三章 静謐を害する罪
第一節 兇徒聚衆の罪
第百三十六条 兇徒多衆を嘨聚して暴動を謀り官吏の説諭を受くると雖も仍ほ解散せさる者首魁及ひ教唆者は三月以上三年以下の重禁錮に処す附和随行したる者は二円以上五円以下の罰金に処す
第百三十七条 兇徒多衆を嘨聚して官庁に喧閙し官吏に強迫し又は村市を騒擾し其他暴動を為したる者首魁及ひ教唆者は重懲役に処す其嘨聚に応し煽動して勢を助けたる者は軽懲役に処し其情軽き者は一等を減す附和隨行したる者は二円以上二十円以下の罰金に処す
第百三十八条 暴動の際人を殺死し若くは家屋船舶倉庫等を焼燬したる時は現に手を下し及に火を放つ者を死刑に処す
首魁及ひ教唆者情を知て制せさる者亦同し
第二節 官吏の職務を行ふを妨害する罪
第百三十九条 官吏其職務を以て法律規則を執行し又は行政司法官署の命令を執行するに当り暴行脅迫を以て其官吏に抗拒したるは四月以上四年以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
暴行脅迫を以て其官吏の為す可からさる事件を行はしめたる者亦同し
第百四十条 前条の罪を犯し因て官吏を殴傷したる者は殴打創傷の各本条に照し一等を加へ重きに従て処断す
第百四十一条 官吏の職務に対し其目前に於て形容若くは言語を以て侮辱したる者は一月以上一年以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
其目前に非すと雖も刊行の文書図書又は公然の演説を以て侮辱したる者亦同し
第三節 囚徒逃走の罪及ひ罪人を蔵匿する罪
第百四十二条 己決の囚徒逃走したる者は一月以上六月以下の重禁錮に処す
若し獄舎獄具を毀壊し又は暴行脅迫を為して逃走したる者は三月以上三年以下の重禁錮に処す
第百四十三条 囚徒逃走の罪を犯すと雖も再犯を以て論せす其刑期限内再ひ逃走したる者は再犯を以て論す
第百四十四条 未決の囚徒入監中逃走したる者は第百四十二条の例に同し但原犯の罪を判決する時に於て数罪俱発の例に照して処断す
第百四十五条 囚徒三人以上通謀して逃走したる時は第百四十二条の例に照し各一等を加ふ
第百四十六条 囚徒を逃走せしむる為め凶器其他の器具を給与し又は逃走の方法を指示したる者は三月以上三年以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す因て囚徒の逃走を致したる時は一等を加ふ
第百四十七条 囚徒を刧奪し又は暴行脅迫を以て囚徒の委支を助けたる者は一年以上五年以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
若し重罪の刑に処せられたる囚徒に係る時は軽懲役に処す
第百四十八条 囚徒を看守し又は護送する者囚徒を逃走せしめたる時は亦前条の例に同し
第百四十九条 前数条に記載したる軽罪を犯さんとして未た遂けさる者は未遂犯罪の例に照して処断す
第百五十条 看守又は護送者其懈怠に因り囚徒の逃走を覚らさる時は二円以上二十円以下の罰金に処す
若し重罪の刑に処せられたる囚徒に係る時は三円以上三十円以下の罰金に処す
第百五十一条 犯罪人又は逃走の囚徒及ひ監視に付せられたる者なることを知て之を蔵匿し若くは隠避せしめたる者は十一日以上一年以下の軽禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
若し重罪の刑に処せられたる囚徒に係る時は一等を加ふ
第百五十二条 他人の罪を免かれしめんことを図り其罪証と為る可き物件を隠蔽したる者は十一日以上六月以下の軽禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第百五十三条 前二条の罪を犯したる者若し犯人の親属に係る時は其罪を論せす
第四節 附加刑の執行を遁るヽ罪
第百五十四条 公権を剥奪せられ又は公権を停止せられたる者私に其権を行ひたる時は一月以上一年以下の重禁錮に処し二円以上十円以下の罰金を附加す
第百五十五条 監視に付せられたる者其規則に違背したる時は十五日以上六月以下の重禁錮に処す
第百五十六条 前二条の罪は其刑期限内再ひ犯したる時に非されは再犯を以て論することを得す
第五節 私に軍用の銃礮弾薬を製造し及ひ所有する罪
第百五十七条 官命を受けす又は官許を得すして陸海軍を用に供する銃礮弾薬其他破裂質の物品を製造したる者は二月以上二年以下の重禁錮に処し二十円以上二百円以下の罰金を附加す其之を輸入したる者亦同し
前項の物品を私に販売したる者は一月以上一年以下の重禁錮に処し十円以上百円以下の罰金を附加す
第百五十八条 前条の罪を犯すと雖も職工又は雇人にして止た正犯の使令に供したる者は各本刑に照し二等を減す
第百五十九条 前二条の罪を犯さんとして未た遂けさる者は未遂犯罪の例に照して処断す
第百六十条 第百五十七条に記載したる物品を私に所有したる者は二円以上二十円以下の罰金に処す
第百六十一条 第百五十七条に記載したる物品の製造に供したる器械にして単に其用に供す可き者は何人の所有を問はす之を没収す
第六節 往来通信を妨害する罪
第百六十二条 道路橋梁河溝港埠を損壊して往来を妨害したる者は二月以上二年以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罸金を附加す
第百六十三条 偽計又は威力を以て郵便を妨害し若くは之を阻止したる者は亦前条に同し
第百六十四条 電信の器械柱木を損壊し又は条線を切断して電気を不通に致したる者は三月以上三年以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
若し器械柱木条線を損壊して電信の妨害を為すと雖も不通に至らさる時は一等を減す
第百六十五条 汽車の往来を妨害する為の鉄道及ひ其標識を損壊し其他危険なる障礙を為したる者は重懲役に処す
第百六十六条 船舶の往来を妨害する為の燈台浮標其他航海の安寧を保護する標識を損壊し又は詐偽の標識を貼示したる者は亦前条に同し
第百六十七条 前数条に記載したる罪其事務に関する官吏及ひ雇人職工自ら犯したる時は各本刑に照し一等を加ふ
第百六十八条 第百六十二条の罪を犯し因て人を殺傷したる者は殴打創傷の各本条に照し重きに従て処断す
第百六十九条 第百六十五条第百六十六条の罪を犯し因て汽車を顛覆し又は船舶を覆没したる時は無期徒刑に処し人を死に致したる時は死刑に処す
第百七十条 此節に記載したる軽罪を犯さんとして未た遂けさる者は未遂犯罪の例に照して処断す
第七節 人の住所を侵す罪
第百七十一条 昼間故なく人の住居したる邸宅又は人の看守したる建造物に入りたる者は十一日以上六月以下の重禁錮に処す
若し左に記載したる所為ある時は一等を加ふ
一 門戸牆壁を踰越損壊し又は鎖鑰を開きて入らたる時
二 凶器其他犯罪の用に供す可き物品を携帯して入りたる時
三 暴行を為して入りたる時
四 二人以上にて入りたる時
第百七十二条 夜間故なく人の住居したる邸宅又は人の看守したる建造物に入りたる者は一月以上一年以下の重禁錮に処す
若し前条に記載したる加重す可き所為ある時は一等を加ふ
第百七十三条 故なく皇居禁苑離宮行在所及ひ皇陵内に入りたる者は前二条の例に照し各一等を加ふ
第八節 官の封印を破棄する罪
百七十四条 官署の処分に因り特別に家屋倉庫其他の物件に施したる封印を破棄したる者は二月以上二年以下の重禁錮に処す
若し看守者自ら犯したる時は一等を加ふ
第百七十五条 官の封印を破棄して其物件を盗取し又は喪壊したる者は盗罪及ひ毀壊の各本条に照し重きに従て処断す
第百七十六条 看守者其懈怠に因り封印を破棄し又は其物件を盗取毀壊する犯人なることを覚らさる時は二円以上二十円以下の罰金に処す
第九節 公務を行ふを拒む罪
第百七十七条 陸海軍の将校たる者出兵を要求する権ある官署より其要求を受け故なくして之を肯せさる時は二月以上二年以下の軽禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
第百七十八条 陸海軍の徴兵に編入せらる可き者身体を毀傷して疾病を作為し其他詐偽の所為を以て免役を図りたる時は一月以上一年以下の重禁錮に処し三円以上三十円以下の罰金を附加す
若し他人に嘱託し其氏名を詐称し代て徴募に応せしめたる者亦同し其嘱託を受けて徴募に応したる者は第二百三十一条の例に照して処断す
第百七十九条 医師化学家其他職業に因り官署より解剖分析及は鑑定を命せらしたる者故なくして之を肯せさる時は四円以上四十円以下の罰金に処す
第百八十条 裁判所より証人として証拠を陳述することを命せらんたる者故なくして之を肯せさる時は亦前条に同し
第百八十一条 伝染病流行の際又は伝染病の疑ある船舶入港するに当り医師其病患を検査し又は消滅の方法を陳述することを命せられたる者故なくして之を肯せさる時は五円以上五十円以下の罰金に処す
獣類伝染病流行の際獣医此条の罪を犯したる時は一等を減す
第四章 信用を害する罪
第一節 貨幣を偽造する罪
第百八十二条 内国通用の金銀貨及ひ紙幣を偽造して行使したる者は無期徒刑に処す
若し変造して行使したる者は軽懲役に処す
第百八十三条 内国に於て通用する外国の金銀貨を偽造して行使れたる者は有期徒刑に処す
若し変造して行使したる者は二年以上五年以下の重禁錮に処す
第百八十四条 官許を得て発行する銀行の紙幣を偽造し若くは変造して行使したる者は内外国の区別に従ひ前二条の例に照して処断す
第百八十五条 内国通用の銅貨を偽造して行使したる者は軽懲役に処す
若し変造して行使したる者は一年以上三年以下の重禁錮に処す
第百八十六条 前数条に記載したる貨幣の偽造変造已に成て未た行使せさる者は各本刑に照し一等を減し其未た成らさる者は二等を減す
若し偽造の器械を予備して未た著手せさる者は各三等を減す
第百八十七条 貨幣を偽造変造するの情を知て雇を受けたる職工は前数条に記載したる犯人の受く可き刑に照し各一等を減す
若し職工の補助を為して雑役に供したる者は職工の刑に照し一等又は二等を減す
第百八十八条 貨幣を偽造変造するの情を知て房屋を給与したる者は偽造変造の各本刑に照し二等を減す
第百八十九条 偽造変造の貨幣を内国に輸入したる者は偽造変造の刑に同し
第百九十条 偽造変造の情を知て其貨幣を取受し之を行使にたる者は偽造変造して行使したる者の刑に照し各二等を減す
其未た行使せさる者は各三等を減す
第百九十一条 前数条に記載したる罪を犯し軽罪の刑に処する者は六月以上二年以下の監視に付す
第百九十二条 貨幣を偽造変造し及ひ輸入取受したる者未た行使せさる前に於て官に自首したる時は本刑を免し六月以上二年以下の監視に付す
若し職工雑役及ひ房屋を給与したる者未た行使せさる前に於て自首したる時は本刑を免す
第百九十三条 貨幣を取受するの後に於て偽造又は変造なることを知り之を行使したる者は其価額二倍の罰金に戻す但其罰金は二円以下に降すことを得す
第二節 官印を偽造する罪
第百九十四条 御璽国璽を偽造し又は其偽璽を使用したる者は無期徒刑に処す
第百九十五条 各官署の印を偽造し又は其偽印を使用したる者は重懲役に処す
第百九十六条 産物商品等に押用する官の記号印章を偽造し又は其偽印を使用したる者は軽懲役に処す
書籍什物等に押用する官の記号印章を偽造し又は其偽印を使用したる者は一年以上三年以下の重禁錮に処す
第百九十七条 御璽国璽官印記号印章の影蹟を盗用したる者は前数条に記載したる偽造の刑に照し各一等を減す
若し監守者自ら犯したる時は偽造の刑に同し
第百九十八条 官より発行する各種の印紙界紙及ひ郵便切手を偽造変造し又は其情を知て之を使用したる者は一年以上五年以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
第百九十九条 已に貼用したる各種の印紙及ひ郵便切手を再ひ貼用したる者は二円以上二十円以下の罰金に処す
第二百条 此節に記載したる軽罪を犯さんとして未た遂けさる者は未遂犯罪の例に照して処断す
第二百一条 此節に記載したる罪を犯し軽罪の刑に処する者は六月以上二年以下の監視に付す
第三節 官の文書を偽造する罪
第二百二条 詔書を偽造し又は増減変換したる者は無期徒刑に処す
其詔書を毀棄したる者亦同し
第二百三条 官の文書を偽造し又は増減変換して行使したる者は軽懲役に処す
其官の文書を毀棄したる者亦同し
第二百四条 公債証書地券其他官吏の公証したる文書を偽造し又は増減変換して行使したる者は軽懲役に処す
若し無記名の公債証書に係る時は一等を加ふ
第二百五条 官吏其管掌に係る文書を偽造し又は増減変換して行使したる者は前二条の例に照し各一等を加ふ
其文書を毀棄したる者亦同し
第二百六条 官の文書を偽造するに因て官印を偽造し又は盗用したる者は偽造官印の各本条に照し重きに従て処断す
第二百七条 此節に記載したる罪を犯し減軽に因て報罪の刑に処する者は六月以上二年以下の監視に付す
第四節 私印私書を偽造する罪
第二百八条 他人の私印を偽造して使用したる者は六月以上五年以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
若し他人の印影を盗用したる者は一等を減す
第二百九条 為替手形其他裏書を以て売買す可き証書若くは金額と交換す可き約定手形を偽造し又は増減変換して行使したる者は軽懲役に処す
其手形証書に詐偽の裏書を為して行使したる者亦同し
第二百十条 売買貸借贈遺交換其他権利義務に関する証書を偽造し又は増減変換して行使したる者は四月以上四年以下の重禁錮に処し四円以上四十円以下の罰金を附加す
其余の私書を偽造し又は増減変換して行使したる者は一月以上一年以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第二百十一条 此節に記載したる軽罪を犯さんとして未た遂けさる者は未遂犯罪の例に照して処断す
第二百十二条 此節に記載したる罪を犯し軽罪の刑に処する者は六月以上二年以下の監視に付す
第五節 免状鑑札及ひ疾病証書を偽造する罪
第二百十三条 官の免状又は鑑札を偽造して行使したる者は一月以上一年以下の重禁錮に処し四円以上四十円以下の罰金を附加す伹官印を偽造し又は盗用したる時は偽造官印の各本条に照して処断す
第二百十四条 属籍身分氏名を詐称し其他詐偽の所為を以て免状鑑札を受けたる者は十五日以上六月以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
官吏情を知て其免状鑑札を下附したる者は一等を加ふ
第二百十五条 分務を免かる可き為め医師の氏名を用ひ疾病の証書を偽造して行使したる者は自己の為めにし他人の為めにするを分たす一月以上一年以下の重禁錮に処し三円以上三十円以下の罰金を附加す
医師嘱託を受けて其詐偽の証書を造りたる者は一等を加ふ
第二百十六条 陸海軍の徹兵を免かる可き為め疾病の証書を偽造して行使したる者及ひ嗜託を受けて其詐偽の証書を造りたる医師は前条の例に照し各一等を加ふ
第二百十七条 免状鑑札及ひ疾病の証書を増減変換して行使したる者は亦偽速の刑に同し
第六節 偽証の罪
第二百十八条 刑事に関する証人として裁判所に呼出されたる者被告人を曲庇する為め事実を掩蔽して偽証を為したる時は左の例に照して処断す
一 重罪を曲庇する為め偽証したる者は二月以上二年以下の重禁錮に処し四円以上四十円以下の罰金を附加す
二 軽罪を曲庇する為め偽証したる者は一月以上一年以下の重禁錮を戻し二円以上二十円以下の罰金を附加す
三 違警罪を曲庇する為め偽証したる者は違警罪の本条に依て処断す
第二百十九条 偽証の為め被告人正当の刑を免かれたる時は偽証者の刑前条の例に照し各一等を加ふ
第二百二十条 被告人を陥害する為め偽証を為したる者は左の例に照して処断す
一 重罪に陥らしむる為め偽証したる者は二年以上五年以下の重禁錮に処し十円以上五十円以下の罰金を附加す
二 軽罪に陥らしむる為め偽証したる者は六月以上二年以下の重禁錮に処し四円以上四十円以下の罰金を附加す
三 違警罪に陥らしむる為め偽証したる者は一月以上三月以下の重禁錮に処し二円以上十円以下の罰金を附加す
第二百二十一条 偽証の為め被告人刑に処せられたる後に於て偽証の罪発覚したる時は偽証者を其刑に反坐す若し反坐の刑前条に記載したる偽証の刑より軽き時は前条の例に照して処断す
其刑期限内に於て偽証の罪発覚したる時は現に経過したる日数に照して反坐の刑罰を減することを得伹減して前条偽証の刑より降すことを得す
第二百二十二条 偽証の為め被告人死刑に処せられたる時は反坐の刑一等を減す其未た刑を執行せさる前に於て発覚したる時は二等を減す若し
被告人を死に陥るヽの目的を以て偽証を為したる時は死刑に反坐す其未た刑を執行せさる前に於て発覚したる時は一等を減す
第二百二十三条 民事商事又は行政裁判に関して偽証を為したる者は一月以上一年以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
第二百二十四条 鑑定又は通事の為め裁判所に呼出されたる者詐偽の陳述を為したる時は前数条に記載したる偽証の例に照して処断す
第二百二十五条 賄賂其他の方法を以て人に嘱託して偽証又は詐偽の鑑定通事を為さしめたる者は亦偽証の例に同し
第二百二十六条 此節に記載したる罪を犯したる者其事件の裁判宣告に至らさる前に於て自首したる時は本刑を免す
第七節 度量衡を偽造する罪
第二百二十七条 度量衡を偽造し又は変造して販売したる者は二年以上五年以下の重禁錮に処し十円以上五十円以下の罰金を附加す但官の記号印章を偽造し又は盗用したる時は偽造官印の各本条に照し重きに従て処断す
第二百二十八条 偽造変造の情を知て其度量衡を販売したる者は前条の刑に一等を減す
第二百二十九条 商売農工匠定規を増減したる度量衡を所有したる者は一月以上三月以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
若し其度量衡を使用して利を得たる者は詐欺取財を以て論す
第二百三十条 人の嘱託を受けて度量衡を偽造し又は変造したる者は其嘱託したる犯人の刑に照し各一等を減す
第八節 身分を詐称する罪
第二百三十一条 官署に対し文書又は言語を以て其属籍身分氏名年齢職業を詐称したる者は二円以上二十円以下の罸金に処す
第二百三十二条 官職位階を詐称し又は宮の服飾徽章若くは内外国の勲章を僭用したる者は十五日以上二月以下の軽禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第九節 公選の投票を偽造する罪
第二百三十三条 公選の投票を偽造し又は其数を増減したる者は一月以上一年以下の軽禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第二百三十四条 賄賂を以て投票を為さしめ又は賄賂を受けて投票を為したる者は二月以上二年以下の軽禁錮に処し三円以上三十円以下の罰金を附加す
第二百三十五条 投票を検査し及ひ其数を計算する者其投票を偽造し又は増減したる時は六月以上三年以下の軽禁錮に処し四円以上四十円以下の罰金を附加す
第二百三十六条 調書を造り投票の結局を報告する者其数を増減し其他詐偽の所為ある時は一年以上五年以下の軽禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
第五章 健康を害する罪
第一節 阿片烟に関する罪
第二百三十七条 阿片烟を輸入し及ひ製造し又は之を販売したる者は有期徒刑に処す
第二百三十八条 阿片烟を吸食するの器具を輸入し及ひ製造し又は之を販売したる者は軽懲役に処す
第二百三十九条 税関官吏情を知て阿片烟及ひ其器具を輸入せしめたる者は前二条の刑に照し各一等を加ふ
第二百四十条 阿片烟を吸食する為め房屋を給与して利を図る者は軽懲役に処す
人を引誘して阿片烟を吸食せしめたる者亦同し
第二百四十一条 阿片烟を吸食したる者は二年以上三年以下の重禁錮に処す
第二百四十二条 阿片烟及ひ吸食の器具を所有し又は受寄したる者は一月以上一年以下の重禁錮に処す
第二節 飲料の浄水を汚穢する罪
第二百四十三条 人の飲料に供する浄水を汚穢し因て之を用ふること能はさるに至らしめたる者は十一日以上一月以下の重禁錮に処し二円以上五円以下の罰金を附加す
第二百四十四条 人の健康を害す可き物品を用ひて水質を変し又は腐敗せしめたる者は一月以上一年以下の重禁錮に処し三円以上三十円以下の罰金を附加す
第二百四十五条 前条の罪を犯し因て人を疾病又は死に致したる者は殴打創傷の各本条に照し重きに従て処断す
第三節 伝染病予防規則に関する罪
第二百四十六条 伝染病予防の為め授けたる規則違背して入港の船舶より上陸し又は物品を陸地に運搬したる者は一月以上一年以下の軽禁錮に処し又は二十円以上百円以下の罰金に処す
第二百四十七条 船長自ら前条の罪を犯し又は人の犯すことを知て制せさる者は前条の刑に一等を加ふ
第二百四十八条 伝染病流行の際予防規則に違背して流行地方より他処に出たる者は十五日以上六月以下の軽禁錮に処し又は十円以上五百円以下の罰金に処す
第二百四十九条 獣類の伝染病流行の際予防規則へ違背して獣類を他処に出したる者は十一日以上二月以下の軽禁錮に処し又は五円以上五十円以下の罰金に処す
第四節 危害品及ひ健康を苦す可き物品製造の規則に関する罪
第二百五十条 官許を得すして危害を生す可き物品の製造所を創設したる者は二十円以上二百円以下の罰金に処す
若し健康を害す可き物品の製造所を創設したる者は十円以上百円以下の罰金に処す
第二百五十一条 官許を得て前条に記載したる製造所を創設すと雖も危害を予防し健康を保護する規則に違背したる者は前条の例に照し各一等を減す
第二百五十二条 前二条の罪を犯し因て人を疾病死傷に致したる時は過失殺傷の各本条に照し重きに従て処断す
第五節 健康を害す可き飲食物及ひ薬剤を販売する罪
第二百五十三条 人の健康を害す可き物品を飲食物に混和して販売したる者は三円以上三十円以下の罰金に処す
第二百五十四条 規則に違背して毒薬劇薬を販売したる者は十円以上五百円以下の罰金に処す
第二百五十五条 前二条の罪を犯し因て人を疾病又は死に致したる者は過失殺傷の各本条に照し重き従て処断す
第六節 私に医業を為す罪
第二百五十六条 官許を得すして医業を為したる者は十円以上五百円以下の罰金に処す
第二百五十七条 前条の犯人治療の方法を誤り因て人を死傷に致したる時は過失殺傷の各本条に照し重きに従て処断す
第六章 風俗を害する罪
第二百五十八条 公然猥褻の所行を為したる者は三円以上三十円以下に処す
第二百五十九条 風俗を害する冊子図書其他猥褻の物品を公然陳列し又は販売したる者は四円以上四十円以下の罰金に処す
第二百六十条 賭場を開張して利を図り又は博徒を招結したる者は三月以上一年以下の重禁錮に処し十円以上百円以下の罰金を附加す
第二百六十一条 財物を賭して現に博奕を為したる者は一月以上六月以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す其情を知て房屋を給与したる者亦同し但飲食物を賭する者は此限に在らす
賭博の器具財物其現場に在る者は之を没収す
第二百六十二条 財物の醵集し富籤を以て利益を僥倖するの業を興行したる者は一月以上六月以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
第二百六十三条 神祠仏堂墓所其他礼拝所に対し公然不敬の所為ある者は二円以上二十円以下の罰金に処す
若し説教又は禮拝を妨害したる者は四円以上四十円以下の罰金に処す
第七章 死屍を毀棄し及ひ墳墓を発掘する罪
第二百六十四条 埋葬す可き死屍を毀棄したる者は一月以上一年以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第二百六十五条 墳墓を発掘して棺槨又は死屍を見はしたる者は二月以上二年以下の重禁錮に処し三円以上三十円以下の罰金を附加す
因て死屍を毀棄したる者は三月以上三年以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
第二百六十六条 此章に記載したる罪を犯さんとして未た遂けさる者は未遂犯罪の例に照して処断す
第八章 商業及ひ農工の業を妨害する罪
第二百六十七条 偽計又は威力を以て穀類其他衆人の需用に欠く可からさる食用物の売買を妨害したる者は一月以上六月以下の重禁錮に処し三円以上三十円以下の罰金を附加す
前項に記載したる以外の物品の売買を妨害したる者は一等を減す
第二百六十八条 偽計又は威力を以て糶売又は入札を妨害したる者は十五日以上三月以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第二百六十九条 偽計又は威力を以て農工の業を妨害したる者は亦前条に同し
第二百七十条 農工の雇人其雇賃を増さしめ又は農工業の景況を変せしむる為め雇主及ひ他の雇人に対し偽討威力を以て妨害を為したる者は一月以上三六月以下の重禁錮に処し三円以上三十円以下の罰金を附加す
第二百七十一条 雇主其雇賃を減し又は農工業の景況を変する為め雇人及ひ他の雇主に対し偽計威力を以て妨害を為したる者は亦前条に同じ
第二百七十二条 虚偽の風説を流布して穀類其他衆人需用物品の価値を昂抵せしめたる者は十円以上百円以下の罰金に処す
第九章 官吏瀆職の罪
第一節 官吏公益を害する罪
第二百七十三条 官吏其管掌に係る法律規則を公布施行せす又は他の官吏の公布施行を妨害したる者は二月以上六月以下の軽禁錮に処し十円以上五十円以下の罰金を附加す
第二百七十四条 兵隊を要求し及び之を使用する権ある官吏地方の騒擾其他兵権を以て鎮撫す可き時に当り其処分を為さヽる者は三月以上三年以下の軽禁錮に処し二十円以上百円以下の罰金を附加す
第二百七十五条 官吏規則に違背して商業を為したる者は二十円以上五百円以下の罰金に処す
第二節 官吏人民に対する罪
第二百七十六条 官吏擅に威権を用ひ人をして其権利なき事を行はしめ又は其為す可き権利を妨害したる者は十一日以上二月以下の軽禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第二百七十七条 人の身体財産を妨害するの犯人あるに当り予審判事検事警察官吏其報告を受けて速に保護の処分を為さヽる者は十五日以上之三月以下の軽禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第二百七十八条 逮捕官支法律に定めたる程式規則を遵守せすして人を逮捕し又は不正に人を監禁したる者は十五日以上三月以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す但監禁日数十日を過る毎に一等を加ふ
第二百七十九条 司獄官吏程式規則を遵守せすして囚人を監禁し若くは囚人を出獄せしむ可きの時に至り之を放免せさる者は亦前条の例に同し
第二百八十条 前二条に記載したる官吏又は護送者囚人に対し飲食衣服を屏去し其他苛刻の所為を施したる者は三月以上三年以下の重禁錮に処し四円以上四十円以下の罰金を附加す
因て囚人を死傷に致したる時は殴打創傷の各本条に照し一等を加へ重きに従て処断す
第二百八十一条 水火震災の際官吏囚人の監禁を解くことを怠り因て死傷に致したる者は殴打創傷の各本条に照し一等を加ふ
第二百八十二条 裁判官検事及ひ警察官吏被告人に対し罪状を陳述せしむる為め暴行を加へ又は陵虐の所為ある者は四月以上四年以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
因て被告人を死傷に致したる時は殴打創傷の各本条に照し一等を加へ重きに従て処断す
第二百八十三条 裁判官検察官事故なくして刑事の訴を受理せす又は遷延して審理せさる者は十五日以上三月以下の軽禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
其民事の訴に係る者亦同し
第二百八十四条 官吏人の嘱託を受け賄賂を収受し又は之を聴許したる者は一月以上一年以下の重禁錮に処し四円以上四十円以下の罰金を附加す
因て不正の処分を為したる時は一等を加ふ
第二百八十五条 裁判官民事の裁判に関して賄賂を収受し又は之を聴許したる者は二月以上二年以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
因て不正の裁判を為したる時は一等を加ふ
第二百八十六条 裁判官検事警察官吏刑事の裁判に関して賄賂を収受し又は之を聴許したる者は二月以上二年以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
因て被告人を曲庇したる者は三月以上三年以下の重禁錮に処し十円以上百円以下の罰金を附加す
其被告人を陥害したる者は二年以上五年以下の重禁錮に処し二十円以上二百円以下の罰金を附加す
若し枉断したる所の刑此刑より重き時は第二百二十一条第二百二十二条の例に照して反坐す
第二百八十七条 裁判官検事警察官吏賄賂を収受聴許せすと雖も情に徇かひ又は怨を扶さみ被告人を曲庇陥害したる者は亦前条の例に同し
第二百八十八条 前数条に記載したる賄路已に収受したる者は之を没収し費用したる者は其価を追徴す
第三節 官吏財産に対する罪
第二百八十九条 官吏自ら監守する所の金穀物件を窃取したる者は軽懲役に処す
因て官の文書簿冊を増減変換し又は毀棄したる時は第二百五条の例に照して処断す
第二百九十条 租税其他諸般の入額を徴収する官吏正数外の金穀を徴収したる者は二月以上四年以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
第二百九十一条 此節に記載したる罪を犯し軽罪の刑に処する者は六月以上二年以下の監視に付す
第三編 身体財産に対する重罪軽罪
第一章 身体に対する罪
第一節 謀殺故殺の罪
第二百九十二条 予め謀て人を殺したる者は謀殺の罪と為し死刑に処す
第二百九十三条 毒物を施用して人を殺したる者は謀殺を以て論し死刑に処す
第二百九十四条 故意を以て人を殺したる者は故殺の罪と為し無期徒刑に処す
第二百九十五条 支解折割其他惨刻の所為を以て人を故殺したる者は死刑に処す
第二百九十六条 重罪軽罪を犯すに便利なる為め又は已に犯して其罪を免かるヽ為め人を故殺したる者は死刑に処す
第二百九十七条 人を殺すの意に出て詐称誘導して危害に陥れ死に致れたる者は故殺を以て論し其予め謀る者は謀殺を論す
第二百九十八条 誅殺故殺を行ひ誤て他人を殺したる者は仍ほ謀殺を以て論す
第二節 殴打創傷の罪
第二百九十九条 人を殴打創傷し因て死に致したる者は重懲役に処す
第三百条 人を殴打創傷し其両目を■し両耳を聾し又は両肢を折り及ひ舌を断ち陰陽を毀敗し若くは知覚精神を喪失せしめ篤疾に致したる者は軽懲役に処す
其一目を■し一耳を聾し又は一肢を折り其他身体を残■し㾱疾に致したる者は二年以上五年以下の重禁錮に処す
第三百一条 人を殴打創傷し二十日以上の時間疾病に罹り又は職業を営むこと能はさるに至らしめたる者は一年以上三年以下の重禁錮に処す
其疾病休業の時間二十日に至らさる者は一月以上一年以下の重禁錮に処す
疾病休業に至らすと雖も身体に創傷を成したる者は十一日以上一月以下の重禁錮に処す
第三百二条 予め謀て人を殴打創傷し休業㾱篤疾又は死に致したる者は前数条に記載したる刑に照し各一等を加ふ
第三百三条 重罪軽罪を犯すに便利なる為め又は已に犯して其罪を免かるヽ為め人を殴打創傷したる者は亦前条の例に同し
第三百四条 殴打に因り謀て他人を創傷したる者は仍ほ殴打創傷の本刑を科す
第三百五条 二人以上共に人を殴打創傷したる者は現に手を下し傷を成すの軽重に従て各自に其刑を科す若し共殴して傷を成すの軽重を知ること能はさる時は其重傷の刑に照し一等を減す伹教唆者は減等の限に在らす
第三百六条 二人以上共に人を殴打するに当り自を人の傷せすと雖ひ幇助して傷を成さしめたる者は現に傷を成したる者の刑に一等を減す
第三百七条 健康を害す可き物品を施用して人を疾苦せしめたる者は予め謀て殴打創傷するの例に照して処断す
第三百八条 人を殺すの意に非すと雖も詐称誘導して危害に陥し因て疾病死傷に致したる者に殴打創傷を以て論す
第三節 殺傷に関する宥恕及ひ不論罪
第三百九条 自己の身体に暴行を受るに因り直ちに怒を発し暴行人を殺傷したる者は其罪を宥恕す但不正の所為に因り自ら暴行を招きたる者は此限に在らす
第三百十条 殴打して互に創傷し其手を下すの先後を知ること能はさる者は各其罪を宥恕することを得
第三百十一条 本夫其妻の姦通を覚知し姦所に於て直ちに姦夫又は姦婦を殺傷したる者は其罪を宥恕す但本夫先に姦通を縦容したる者は此限に在らす
第三百十二条 昼間故なく人の住居したる邸宅に入り若くは門々牆壁を踰越損壊せんとする者を防止する為め之を殺傷したる者は其罪を宥恕す
第三百十二条 前数条に記載したる宥恕す可き罪は各本刑に照し二等又は三等を減す
第三百十四条 身体生命を正当に防衛し己むことを得さるに出て暴行人を殺傷したる者は自己の為めにし他人の為めにするを分たす其罪を論せす但不正の所為に因り自ら暴行を招きたる者は此限に在らす
第三百十五条 左の諸件に於て已むことを得さるに出て人を殺傷したる者は其罪を論せす
一 財産に対し放火其他暴行を為す者を防止するに出たる時
二 盗犯を防止し又は盗賊を取還するに出たる時
三 夜間故なく人の住居したる邸宅に入り若くは門戸牆壁を踰越損壊する者を防止するに出たる時
第三百十六条 身体財産を防衛するに出ると雖も己むことを得さるに非すして害を暴行人に加へ又は危害已に去りたる後に於て勢に乗し仍ほ害を暴行人に加へたる者は不論罪の限に在らす但情状に因り第三百十三条の例に照し其罪を宥恕することを得
第四節 過失殺傷の罪
第三百十七条 疎虞懈怠又は規則慣習を遵守せす過失に因て人を死に致したる者は二十円以上二百円以下の罰金に処す
第三百十八条 過失に因て人を創傷し㾱篤疾に致したる者は十円以上五百円以下の罰金に処す
第三百十九条 過失に因て人を創傷し疾病休業に至らしめたる者は二円以上五十円以下の罰金に処す
第五節 自殺に関する罪
第三百二十条 人を教唆して自殺せしめ又は嘱託を受けて自殺人の為めに手を下したる者は六月以上三年以下の軽禁錮に処し十円以上五十円以下の罰金を附加す其他自殺の補助を為れたる者は一等を減す
第三百二十一条 自己の利を図り人を敎唆して自殺せしめたる者は重懲役に処す
第六節 擅に人を逮捕監禁する罪
第三百二十二条 擅に人を逮捕し又は私家に監禁したる者は十一日以上二月以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す但監禁日数十日を過る毎に一等を加ふ
第三百二十三条 擅に人を監禁制縛して殴打拷責し又は飲食衣服を屏去し其他苛剤の所為を施したる者は二月以上二年以下の重禁錮に処し三円以上三十円以下の罰金を附加す
第三百二十四条 前条の罪を犯し因て人を疾病死傷に致したる者は殴打創傷の各本条に照し重きに従て処断す
第三百二十五条 擅に人を監禁し水火震災の際其監禁を解くことを怠り因て死傷に致したる者は亦前条の例に同し
第七節 脅迫の罪
第三百二十六条 人を殺さんと脅迫し又は人の住居したる家屋に放火せんと脅迫したる者は一月以上六月以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
殴打創傷其他暴行を加へんと脅迫し又は財産に放火し及ひ毀壊劫掠せんと脅迫したる者は十一日以上二月以下の重禁錮に処し二円以上十円以下の罰金を附加す
第三百二十七条 凶器を持して前条の罪を犯したる者は各一等を加ふ
第三百二十八条 親属に害を加ふ可き事を以て脅迫したる者は亦二条の例に同し
第三百二十九条 此節に記載したる罪は脅迫を受けたる者又は其親属の告訴を待て其罪を論す
第八節 墮胎の罪
第三百三十条 懐胎の婦女薬物其他の方法を以て墮胎したる者は一月以上六月以下の重禁錮を処す
第三百三十一条 薬物其他の方法を以て墮胎せしめたる者は亦前条に同し因て婦女を死に致したる者は一年以上三年以下の重禁錮に処す
第三百三十二条 医師穏婆又は薬商前条の罪を犯したる者は各一等を加ふ
第三百三十三条 懐胎の婦女を威逼し又は誆騙しを堕胎せしめたる者は一年以上四年以下の重禁錮に処す
第三百三十四条 懐胎の婦女なることを知て殴打其他暴行を加へ因て堕胎に至らしめたる者は二年以上五年以下の重禁錮に処す其墮胎せしむるの意に出たる者は軽懲役に応す
第三百三十五条 前二条の罪を犯し因て婦女を㾱篤疾又は死に致したる者は殴打創傷の各本条に照し重きに従て処断す
第九節 幼者又は老疾者を遺棄する罪
第三百三十六条 八歳に満さる幼者を遺棄したる者は一月以上一年以下の重禁錮に処す
自ら生活すること能はさる老者疾病者を遺棄したる者亦同し
第三百三十七条 八歳に満さる幼者又は老疾者を寥閴無人の地に遺棄したる者は四月以上四年以下の重禁錮に処す
第三百三十八条 給料を得て人の寄託を受け保養す可き者前二条の罪を犯したる時は各一等を加ふ
第三百三十九条 幼者老疾者を遺棄し因て㾱疾に致したる者は軽懲役の処し篤疾に致したる者は重懲役に処し死に致したる者は有期徒刑に処す
第三百四十条 自己の所有地又は看守す可き地内に遺棄せられたる幼者老疾者あることを知て之を扶助せす又は官署へ申告せさる者は十五日以上六月以下の重禁錮に処す
若し疾病に罹り昏倒する者あることを知て扶助せす又は申告せさる者亦同し
第十節 幼者を略取誘拐する罪
第三百四十一条 十二歳に満さる幼者を略取し又は誘拐して自ら蔵匿し若くは他人に交付したる者は二年以上五年以下の重禁錮に戻し三十円以上五百円以下の罰金を附加す
第三百四十二条 十二歳以上二十歳に満さる幼者を略取して自ら蔵匿し若くは他人に交付したる者は一年以上三年以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す其誘拐して自ら蔵匿し若くは他人に交付したる者は六月以上二年以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第三百四十三条 略取誘拐したる幼者なることを知て自己の家属僕婢と為し又は其他の名称を以て之を収受したる者は前二条の例に照し各一等を減す
第三百四十四条 前数条に記載したる罪は被害者又は其親属の告訴を待て其罪を論す但略取誘拐せられたる幼者式に従て婚姻を為したる時は吉訴の效なし
第三百四十五条 二十歳に満さる幼者を略取誘拐して外国人に交付したる者は軽懲役に処す
第十一節 猥褻姦淫重婚の罪
第三百四十六条 十二歳に満さる男女に対し猥褻の所行を為し又は十二歳以上の男女に対し暴行脅迫を以て猥褻の所行を為したる者は一月以上一年以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第三百四十七条 十二歳に満さる男女に対し暴行脅迫を以て猥褻の所行を為したる者は二月以上二年以下の重禁錮に処し四円以上四十円以下の罰金を附加す
第三百四十八条 十二歳以上の婦女を強姦したる者は軽懲役に処す
薬酒等を用ひ人を昏睡せしめ又は精神を錯乱せしめて姦淫したる者は強姦を以て論す
第三百四十九条 十二歳に満さる幼女を姦淫したる者は軽懲役に処す若し強姦したる者は重懲役に処す
第三百五十条 前数条に記載したる罪は被害者又は其親属の告訴を待て其罪を論す
第三百五十一条 前数条に記載したる罪を犯し因て人ふ死傷に致したる者は殴打創傷の各本条に照し重きに従て処断す但強姦に因て㾱篤疾に致したる者は有期徒刑に処し死に致したる者は無期徒刑に処す
第三百五十二条 十六歳に満さる男女の淫行を勧誘して媒合したる者は一月以上六月以下の重禁銅に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第三百五十三条 有夫の婦姦通したる者は六月以上二年以下の重禁網に処す其相安する者亦同し此条の罪は本夫の告訴を待て其罪を論す但本夫先に姦通を縦容したる者告訴の效なし
第三百五十四条 配偶者ある者重ねて婚姻を為したる時は六月以上二年以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
第十二節 誣告及ひ誹毀の罪
第三百五十五条 不実の事を以て人を誣告したる者は第二百二十条に記載したる偽証の例に照して処断す
第三百五十六条 誣告を為すと雖も被告人の推問を始めさる前に於て誣告者自首したる時は本刑免す
第三百五十七条 誣告に因て被告人刑に処せられる時は第二百二十一条第二百二十二条に記載したる例に照して処断す
第三百五十八条 悪事醜行を摘発して人を誹毀したる者は事実の有無を問はす左の例に照して処断す
一 公然の演説を以て人を誹毀したる者は十一日以上三月以下の重禁錮に処し三円以上三十円以下の罰金を附加す
二 書類尽図を公布し又は雑劇偶像を作為して人を誹毀したる者は十五日以上六月以下の重禁錮に処し五円以上五十円以下の罰金を附加す
第三百五十九条 死者を誹毀したる者は誣罔に出たるに非されは前条の例に照して処断することを得す
第三百六十条 医師薬商穏婆又は代言人弁護人代書人若くは神官僧侶其身分職業に於て委託を受けたる事に因り知得たる陰私を漏告したる者は誹毀を以て論し十一日以上三月以下の重禁錮に処し三円以上三十円以下の罰金を附加す但裁判所の呼出を受けて事実を陳述する者は此限に在らす
第三百六十一条 此節に記載したる誹毀の罪は被害者又は死者の親属の告訴を待て其罪を論す
第十三節 祖父母父母に対する罪
第三百六十二条 子孫其祖父母父母を誅殺故殺したる者は死刑に処す
其自殺に関する罪は凡人の刑に照し二等を加ふ
第三百六十三条 子孫其祖父母父母に対れ殴打創傷の罪其他監禁脅迫遺棄誣告誹毀の罪を犯したる者は各本条に記載したる凡人の刑に照し二等を加ふ但㾱疾に致したる者は有期徒刑に処し篤疾と致したる者は無期徒刑に処し死に致したる者は死刑に処す
第三百六十四条 子孫其祖父母父母に対し衣食を供給せす其他必要なる奉養を欠きたる者は十五日以上六月以下の重禁錮に処し五円以上二十円以下の罰金を附加す
因て疾病又は死に致したる者は亦前条の例に同し
第三百六十五条 祖父母父母に対したる殺傷の罪は特別の宥恕及ひ不論罪の例を用ふることを得す但其犯す時知らさる者は此限に在らす
第二章 財産に対する罪
第一節 窃盗の罪
第三百六十六条 人の所有物を窃取したる者は窃盗の罪と為し二月以上四年以下の重禁錮に処す
第三百六十七条 水火震災其他の変に乗して窃盗を犯したる者は六月以上五年以下の重禁錮に処す
第三百六十八条 門戸牆壁を踰越損壊し若くは鎖鑰を開き邸宅倉庫に入り窃盗を犯したる者は亦前条に同し
第三百六十九条 二人以上共に前三条の罪を犯したる者は各一等を加ふ
第三百七十条 凶器を携帯して人の仕居したる邸宅に入り窃盗を犯したる者は軽懲役に処す
第三百七十一条 自己の所有物と雖も典物として他人に交付し又は官署の命令に因り他人の看守したる時之を窃取したる者は窃盗を以て論す
第三百七十二条 田野に於て穀類菜菓其他の産物を窃取したる者は一月以上一年以下の重禁錮に処す
第三百七十三条 山林に於て竹木礦物其他の産物を窃取し又は川沢池沼湖海に於て人の生養し若くは営業に関する産物を窃取したる者は亦前条に同し
第三百七十四条 牧場に於て牧畜の獣類を窃取したる者は二月以上二年以下の重禁錮に処す
第二百七十五条 此節に記載したる軽罪を犯さんとして未た遂けさる者は未遂犯罪の例に照して処断す
第二百七十六条 此節に記載したる罪を犯し軽罪の刑に処する者は六月以上二年以下の監視に付す
第三百七十七条 祖父母父母夫妻子孫及ひ其配偶者又は同居の兄弟姉妹互に其財物を窃取したる者は窃盗を以て論するの限に在らす
若し他人共に犯して財物を分ちたる者は窃盗を以て論す
第二節 強盗の罪
第三百七十八条 人を脅迫し又は暴行を加へて財物を強取したる者は強盗の罪と為し軽懲役に処す
第三百七十九条 強盗左に記載したる情状ある者は一個毎に一等を加ふ
一 二人以上共に犯したる時
二 凶器を携帯して犯したる時
第三百八十条 強盗人を傷したる者は無期徒刑に処し死に致したる者は死刑に処す
第三百八十一条 強盗婦女を強姦したる者は無期徒刑に処す
第三百八十二条 窃盗財を得て其取還を拒く為め臨時暴行脅迫を為したる者は強盗を以て論す
第三百八十三条 薬酒等を用ひ人を酔迷せしめ其財物を盗取したる者は強盗を以て論し軽懲役に処す
第三百八十四条 此節に記載したる罪を犯し減軽に因て軽罪の刑に処する者は六月以上二年以下の監視に付す
第三節 遺失物埋蔵物に関する罪
第三百八十五条 遺失及ひ漂流の物品を拾得て隠匿し所有主に還付せす又は官署に申告せさる者は十一日以上三月以下の重禁錮に処し又は二円以上二十円以下の罰金に処す
第三百八十六条 他人の所有地内に於て埋蔵の物品を堀得を隠匿したる者は亦前条に同し
第三百八十七条 此節に記載したる罪を犯したる者第三百七十七条に掲けたる親属に係る時は其罪を論せす
第四節 家資分散に関する罪
第三百八十八条 家資分散の際其財産を蔵匿脱漏し又は虚偽の負債を増加したる者は二月以上四年以下の重禁錮に処す
情を知て虚偽の契約を承諾し若くは其媒介を為したる者は一等を減す
第三百八十九条 家資分散の際牒簿の類を蔵匿毀棄し若くは分散決定の後債主中の一人又は数人に其負債を私償して他の債主を害したる者は一月以上二年以下の重禁錮に処す
第五節 詐欺取財の罪及ひ受寄財物に関する罪
第三百九十条 人を欺罔し又は恐喝して財物若くは証書類を騙取したる者は詐欺取財の罪と為し二月以上四年以下の重禁錮に処し四円以上四十円以下の罰金を附加す
因て官私の文書を偽造し又は増減変換したる者は偽造の各本条に照し重きに従て処断す
第三百九十一条 幼者の知慮浅薄又は人の精神錯乱したるに来して其財物若くは証書類を授与せしめたる者は詐欺取財を以て論す
第三百九十二条 物件を販売し又は交換するに当り其物質を変し若くは分量を偽て人に交付したる者は詐欺取財を以て論す
第三百九十三条 他人の動産不動産を冒認して販売交換し又は抵当典物と為したる者は詐欺取財を以て論す
自己の不動産と雖も己に抵当典物と為したるを欺隠して他人に売与し又は重ねて抵当典物と為したる者亦同し
第三百九十四条 前数条に記載したる罪を犯したる者は六月以上二年以下の監視に付す
第三百九十五条 受寄の財物借用物又は典物其他委託を受けたる金額物件を費消したる者は一月以上二年以下の重禁錮に処す若し騙取拐帯其他詐欺の所為ある者は詐欺取財を以て論す
第三百九十六条 自己の所有に係ると雖も官署より差押へたる物件を蔵匿脱漏したる者は一月以上六月以下の重禁錮に処す但家資分散の際此罪を犯したる者は第三百八十八条の例に照して処断す
第三百九十七条 此節に記載したる罪を犯さんとして未た遂けさる者は未遂犯罪の例に照して処断す
第三百九十八条 此節に記載したる罪を犯したる者第三百七十七条に掲けたる親属に係る時は其罪を論せす
第六節 贓物に関する罪
第三百九十九条 強窃盗の贓物なることを知て之を受け又は寄蔵故買し若くは牙保を為したる者は一月以上三年以下の重禁錮に処し三円以上三十円以下の罰金を附加す
第四百条 前条の罪を犯したる者は六月以上二年以下の監視に付す
第四百一条 詐欺取財其他の犯罪に関したる物件なることを知て之を受け又は奇蔵故買し若くは牙保を為したる者は十一日以上一年以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第七節 放火失火の罪
第四百二条 火を放て人の住居したる家屋を焼燬したる者は死刑に処す
第四百三条 火を放て人の住居せさる家屋其他の建造物を焼燬したる者は無期徒刑に処す
第四百四条 火を放て廃屋及ひ柴草肥料等を貯ふる屋舎を焼燬したる者は重懲役に処す
第四百五条 火を放て人を乗載したる船舶汽車を焼燬したる者は死刑に処す
其人を乗載せさる船舶汽車に係る時は重懲役に処す
第四百六条 火を放て山林の竹木田野の穀■又は露積したる葉草竹木其他の物件を焼燬したる者は軽懲役に処す
第四百七条 火を放て自己の家屋を焼燬したる者は二月以上二年以下の重禁錮に処す
第四百八条 放火の罪を犯し軽罪の刑に処する者は六月以上二年以下の監視に付す
第四百九条 火を失して人の家屋財産を焼燬したる者は二円以上二十円以下の罰金に処す
第四百十条 火薬其他激発す可き物品又は煤気并蒸気缶を破裂せしめて人の家屋財産を毀壊したる者は其故意に出ると過失とを分ち放火失火の例に照して処断す
第八節 決水の罪
第四百十一条 堤防を決潰し又は水閘を毀壊して人の住居したる家屋を漂失したる者は無期徒刑に処す
若し人の住居せさる家屋其他の建造物を漂失したる者は重懲役に処す
第四百十二条 堤防を決潰し水閘を毀壞して田圃礦坑牧場等を荒廃したる者は軽懲役に処す
第四百十三条 他人の便益を損し又は自己の便益を図る為め堤防を決潰し水閘を毀壊し其他水利を妨害したる者は一月以上二年以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第四百十四条 過失に因て水害を起したる者は失火の例に照して処断す
第九節 船舶を覆没する罪
第四百十五条 衝突其他の所為を以て人を乗載したる船舶を覆没したる者は死刑に処す伹船中死亡なき時は無期徒刑に処す
第四百十六条 前条の所為を以て人を乗載せさる船舶を覆没したる者は軽懲役に処す
第十節 家屋物品を毀壊し及ひ動植物を害する罪
第四百十七条 人の家屋其他の建造物を毀壊したる者は一月以上五年以下の重禁錮に処し二円以上五十円以下の罰金を附加す
因て人を死傷に致したる者は殴打創傷の各本条に照し重きに従て処断す
第四百十八条 人の家屋に属する牆壁及ひ圃池の装飾又は田圃の樊囲牧場の柵欄を毀壊したる者は十一日以上三月以下の重禁錮に処し又は二円以上二十円以下の罰金に処す
第四百十九条 人の稼穡竹木其他需用の植物を毀損したる者は十一日以上六月以下の重禁錮に処し又は三円以上三十円以下の罰金に処す
第四百二十条 土地の経界を表したる物件を毀壊し又は移転したる者は一月以上六月以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第四百二十一条 人の器物を毀棄したる者は十一日以上六月以下の重禁錮に処し又は三円以上三十円以下の罰金に処す
第四百二十二条 人の牛馬を殺したる者は一月以上六月以下の重禁錮に処し二円以上二十円以下の罰金を附加す
第四百二十三条 前条に記載したる以外の家畜を殺したる者は二円以上二十円以下の罰金に処す但被害者の告訴を待て其罪を論す
第四百二十四条 人の権利義務に関する証書類を毀棄減尽したる者は二月以上四年以下の重禁錮に処し三円以上三十円以下の罰金を附加す
第四編 違警罪
第四百二十五条 左の諸件を犯したる者は三日以上十日以下の拘留に処し又は一円以上一円九十五銭以下の科料に処す
一 規則を遵守せすして火薬其他破裂す可き物品を市街に運搬したる者
二 規則を遵守せすして火薬其他破裂す可き物品は自ら火を発す可き物品を貯蔵したる者
三 官許を得すして烟火を製造し又は販売したる者
四 人家稠密の場所に於て濫りに烟火其他火器を玩ひたる者
五 蒸気器械其他烟筒火竈を建造修理し及ひ掃除する規則に違背したる者
六 官署の督促を受けて■壊せんとする家屋牆壁の修理を為さヽる者
七 官許を得すして死屍を解剖したる者
八 自己の所有地内に死屍あることを知て官署に申告せす又は他所に移したる者
九 人を殴打して創傷疾病に至らさる者
十 密に売淫を為し又は其媒合容止を為したる者
十一 人の住居せさる家屋内に潜伏したる者
十二 定りたる住居なく平常営生の産業なくして諸方に徘徊する者
十三 官許の墓地外に於て私に埋葬したる者
十四 違警罪の犯人を曲庇する為め偽証したる者但被告人偽証の為め刑を免かれたる時は第二百十九条の例に従ふ
第四百二十六条 左の諸件を犯したる者は二日以上五日以下の拘留に処し又は五十銭以上一円五十銭以下の科科に処す
一 人家の近傍又は山林田野に於て濫りに火を焚く者
二 水火其他の変に際し官吏より防禦す可きの求めを受て傍観して之を肯せさる者
三 不熟の菓物又は腐敗したる飲食物を販売したる者
四 健康を保護する為め設けたる規則又は伝染病予防規則に違背したる者
五 人の通行す可き場所にある危険の井溝其他凹所に蓋又は防囲を為さヽる者
六 路上に於て犬其他の獣類を嗾し又は驚逸せしめたる者
七 発狂人の看守を怠り路上に徘徊せしめたる者
八 狂犬猛獣等の繋鎖を怠り路上に致ちたる者
九 変死人の検視を受けすして埋葬したる者
十 墓碑及ひ路上の神仏を毀損し又は汚潰したる者
十一 神祠仏堂其他公の建造物を汚損したる者
十二 公然人を罵詈嘲弄したる者但訴を待て其罪を論す
第四百二十七条 左の諸件を犯したる者は一日以上三日以下の拘留に処し又は二十銭以上一円二十五銭以下の科料に処す
一 濫りに車馬を疾駆して行人の妨害を為したる者
二 制止を肯せすして人の群集したる場所に車馬を牽きたる者
三 夜中燈火なくして車馬を疾駆する者
四 木石等を道路に堆積して防囲を設けす又は標識の点燈を怠りたる者
五 瓦礫を道路家屋園囿に投擲したる者
六 禽獣の死屍を道路に棄擲し又は取除かさる者
七 汚穢物を道路家屋園囿に投擲したる者
八 警察の規則に違背して工商の業を為したる者
九 医師穏婆事故なくして急病人の招きに応せさる者
十 死亡の申告を為さすして埋葬したる者
十一 流言浮説を為して人を誑惑したる者
十二 妄に吉凶禍福を説き又は祈祷符咒等を為し人を惑はして利を図る者
十三 私有地外へ濫りに家屋墻壁を設け又は軒■を出したる者
十四 官許を得すして路傍又は河岸に床店等を開きたる者
十五 路上の植木市街の常燈及ひ厠場等を毀損したる者
十六 道路橋梁其他の場所に榜示したる通行禁止及ひ指道標の類を毀棄汚損したる者
第四百二十八条 左の諸件を犯したる者は一日の拘留に処し又は十銭以上一円以下の科料に処す
一 官署より価額を定めたる物品を定価以上に販売したる者
二 渡船橋梁其他の場所に於て定価以上の通行銭を取り又は故なく通行を妨けたる者
三 渡船橋梁其他通行銭を払ふ可き場所に於て其定価を出さすして通行したる者
四 路上に於て賭博に類する商業を為したる者
五 官許を得すして劇場其他観物場を開き及ひ其規則に違背したる者
六 溝梁下水を毀損し又は官署の督促を受けて溝梁下水を浚はさる者
七 制止を肯せすして路傍に食物其他の商品を羅列したる者
八 官許を得すして獣類を官有地に放ち又は牧畜したる者
九 身体に刺文を為し及ひ之を業とする者
十 他人の繋きたる牛馬其他の獣類を解放したる者
十一 他人の繋きたる舟筏を解放したる者
第四百二十九条 左の諸件を犯したる者は五銭以上五十銭以下の科料に処す
一 橋梁又は堤防の害と為る可き場所に舟筏を繫きたる者
二 牛馬諸車其他物件を道路に横たへ又は木石薪炭等を堆積して行人の妨害を為したる者
三 車馬を並へ牽て行人の妨害を為したる者
四 水路に於て舟を並へ通船の妨害を為したる者
五 氷雪塵芥等を路上に投棄したる者
六 官署の督促を受けて道路の掃除を為さヽる者
七 制止を肯せすして路上に遊戯を為し行人の妨害を為したる者
八 牛馬に牽き又は繫くことを忽かせにして行人の妨害を為したる者
九 出入を禁止したる場所に濫りに出入したる者
十 通行禁止の榜示を犯して通行したる者
十一 道路に於て放歌高声を発して制止を肯せさる者
十二 酩酊して路上に喧噪し又は酔臥したる者
十三 路上の常燈を消したる者
十四 人家の墻壁に貼紙及ひ楽書したる者
十五 邸宅の番号標札招牌又は貸家売家の貼紙其他報告の榜標等を毀損したる者
十六 他人の田野園囿に於て菜菓を採食し又は花卉を採折したる者
十七 公園の規則を犯したる者
十八 通路なき他人の田圃を通行し又は牛馬を牽入れたる者
第四百三十条 前数条に記載するの外各地方の便宜により定むる所の違警罪を犯したる者は其罰則に従て処断す
(Source:国立公文書館 刑法改定 A24101827000)
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