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陸軍刑法 1908年04月10日

 陸軍刑法(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)


法律第四十六号

陸軍刑法

 第一編 総則

 第二編 罪

第一章 叛乱の罪

第二章 檀権の罪

第三章 辱職の罪

第四章 抗命の罪

第五章 暴行脅迫の罪

第六章 侮辱の罪

第七章 逃亡の罪

第八章 軍用物損壞の罪

第九章 掠奪の罪

第十章 俘虜に関する罪

第十一章 違令の罪


陸軍刑法

   第一編 総則

第一条 本法は陸軍軍人にして罪を犯したる者に之を適用す

第二条 本法は陸軍軍人に非すと雖左に記載したる罪を犯したる者に之を適用す

一 第六十四条乃至第六十七条の罪及此等の罪の未遂罪

二 第七十四条の罪

三 第七十九条乃至第八十五条の罪

四 第八十六条乃至第八十九条の罪

五 第九十一条乃至第九十三条の罪及第九十一条、第九十二条の未遂罪

六 第九十五条第一項、第九十六条、第九十七条第二項及第九十九条の罪

第三条 本法は前二条に記載したる者帝国外に於て罪を犯したるときと雖之を適用す

第四条 帝国軍の占領地に於て陸軍軍人刑法又は他の法令の罪を犯したるときは之を帝国内に於て犯したるものと看做す

 陸軍軍人に非すと雖帝国臣民、従軍外国人及俘虜の犯したるとき亦前項に同し

第五条 帝国外に在る部隊に属し若は従ふ者又は之に俘虜たる者其の部隊の所在地に於て刑法又は他の法令の罪を犯したるとき亦前条に同し

第六条 陸軍と共同作戦に従ふ海軍軍人に対する行為は其の職務、官等、等級又は階級に相当する陸軍軍人に対する行為と看做す

第七条 陸軍と共同作戦に従ふ外国の陸海軍に属する者に対する行為は其の職務、官等、等級又は階級に相当する陸軍軍人に対する行為と看做す但し其の外国に於て同一の取扱を為すことを保せさる場合は此の限に在らす

第八条 陸軍軍人と称するは左に記載したる者を謂ふ

一 陸軍の現役に在る者但し未た入営せさる者及婦休兵を除く

二 召集中の在郷軍人

三 召集に依らす部隊に在りて陸軍軍人の勤務に服する在郷軍人

四 前二号に記載したる者の外陸軍の制服着用中又は現に服投上の義務履行中の在郷軍人

五 志願に依り国民軍隊に編入せられ服務中の者

第九条 左に記載したる者は陸軍軍人に準す

一 陸軍所屬の学生、生徒

二 陸軍軍属

三 陸軍の勤務に服する海軍軍人

前項第一号に記載したる者の中特に除外すへき者あるときは命令を以て之を定む

第十条 陸軍将校、相当官、陸軍准士官、海軍将校、同相当官、海軍候補生反海軍准士官は陸軍将校に準す陸軍士官の候補者にして士官の勤務に服する者亦同し

第十一条 陸軍士官の候補者にして下士の階級に在り士官の勤務に服せさる者は陸軍下士に準す

第十二条 陸軍の兵役に在りて官等、等級を有せさる者は兵卒に準す陸軍士官の候補者にして兵卒の階級に在る者亦同し

第十三条 在郷軍人と称するは陸軍の現役以外の役に在る者、陸軍の現役に在りて未た入営せさる者、陸軍の帰休兵及退役陸軍将校、同相当官、准士官を謂ふ

第十四条 陸軍軍属と称するは陸軍文官、同待遇者及宣誓して陸軍の勤務に服する者を謂ふ但し予備又は退職の文官は此の限に在らす

第十五条 海軍軍人と称するは海軍刑法に於て海軍軍人と為す者を謂ふ

第十六条 上官と称するは命令関係ある陸軍軍人間に於て命令権を有する者を謂ふ

命令関係なき者の間に於ては官等、等級又は階級の上なる者は之を上官に準す但し兵卒は下士勤務上等兵を除くの外総て同等とす

第十七条 司令官と称するは軍隊の同令に任する陸軍軍人を謂ふ

第十八条 哨兵の称するは儀仗又は警戒の為守地に在る陸軍軍人を謂ふ

第十九条 部隊と称するは陸軍の軍隊、官衙、学校、特務機関及戦時に於ける陸軍の特設機関を謂ふ

第二十条 軍中と称するは左に記載したる部隊に在る場合を謂ふ

一 戦時の体勢を執りたる部隊但し留守部隊、衙成勤務に服する後備又は国民諸隊、戦地以外の地に在る輸送又は補給諸機関にして対敵状態に在らさるものを除く

二 戦時の体勢を執らさるも対敵状態に在る部隊

三 事変又は一地方の騷擾に際し其の鎮定に従事する部隊

第二十一条 陸軍に於て死刑を執行するときは陸軍法衙を管轄する長官の定むる場所に於て銃殺す

第二十二条 多衆共同の暴行を鎮圧する為又は敵前に在る部隊の急迫に臨み軍紀を保持する為巳むことを得さる出てたる行為は之を罰せす

必要の程度を超えたる行為は情状に因り其の刑を減軽又は免除することを得

第二十三条 前条の規定は刑法又は他の法令の罪と為るへき行為に亦之を適用す

第二十四条 本法及海軍刑法に於て俱に罰すへき正条あり且其の刑に軽重なきときは陸軍軍人に準する者と雖海軍軍人に対しては海軍刑法を適用す

   第二編 罪

    第一章 叛乱の罪

第二十五条 党を結ひ兵器を執り反乱を為したる者は左の区別に従て処断す

一 首魁は死刑に処す

二 謀議に参与し又は群衆の指揮を為したる者は死刑、無期若は五年以上の懲役又は禁錮に処し其の他諸般の職務に従事したる者は三年以上の有期の懲役又は禁錮に処す

三 附和隨行したる者は五年以下の懲役又は禁錮に処す

第二十六条 反乱を為す目的を以て党を結ひ兵器、弾薬其の他軍用に供するに物を劫掠したる者は前条の例に同し

第二十七条 左に記載したる行為を為したる者は死刑に処す

一 軍隊又は要塞、陣営、艦船、兵器、弾薬、其の他軍用に供する場所、建造物其の他の物を敵国に交付すること

二 敵国の為に間諜を為し又は敵国の間諜を幇助すること

三 軍事上の機密を敵国に漏泄するすること

四 敵国の為に嚮導を為し又は地理を指示すること

五 敵国に降らしむる為司令官を強要すること

六 敵国の為に俘虜を奪守し又は之を逃走せしむること

第二十八条  敵国を利する為左に記載したる行為を為したる者は死刑に処す

一 要塞、陣営、艦船、兵器、弾薬其の他軍用に供する場所、建造物其の他の物を損壞し又は使用すること能はさるに至らしむること

二 水陸の通路、橋梁を損壊又は壅塞し又は其の他の方法を以て軍隊、艦船の往来の妨害を生せしむること

三 司令官軍隊を率いて守地若は配置の地に就かす又は其の地を離るること

四 隊兵を解散し又は其の潰走混乱を誘起し又は其の連絡集合を妨害すること

五 兵器、弾薬、糧食、被服其の他軍用に供する物を欠乏せしむること

六 命令、通報若は報告を詐り伝へ又は虚偽の命令、通報若は報告を為すこと

七 造言飛語し又は敵前に於て叫呼喧噪すること

第二十九条 前二条に記載したる以外の方法を以て敵国に軍事上の利益を与へ又は帝国の軍事上の利益を害したる者は死刑又は無期若は五年以上の懲役に処す

第三十条 反乱者又は内乱者を利する為前三条に記載したる行為を為したる者は死刑、無期若は三年以上の懲役又は禁錮に処す

第三十一条 前六条の未遂罪は之を罰す

第三十二条 第二十五条乃至第三十条の罪の予備又は陰謀を為したる者は一年以上の有期の懲殺又は禁錮に処す

第三十三条 第二十五条又は第二十六条の罪の予備又は陰謀を為したる者未た事を行はさる前自首したるときは其の刑を免除す

第三十四条 本章の規定は戦時同盟国に対する行為に亦之を適用す

    第二章 擅権の罪

第三十五条 司令官外国に対し故なく戦闘を開始したるときは死刑に処す

第三十六条 司令官休戦又は媾和の告知を受けたる後故なく戦闘を為したるときは死刑に処す

第三十七条 同令官権外の事に於て已むことを得さる理由なくして檀に軍隊を進退したるときは死刑又は無期若は七年以上の禁錮に処す

第三十八条 命令を待たす故なく戦鬪を為したる者は死刑又は無期若は七年以上の禁錮に処す

第三十九条 本章の未遂罪は之を罰す

    第三章 辱職の罪

第四十条 司令官真の尽すへき所を尽さすして敵に降り又は要塞を敵に委したるときは死刑に処す

第四十一条 司令官野戦の時に在りて隊兵を率い敵に降りたるときは其の尽すへき所を尽したる場合と雖六月以下の禁錮に処す

第四十二条 司令官敵前に於て其の尽すへき所を尽さすして隊兵を率ひ逃避したるときは死刑に処す

第四十三条 司令官軍隊を率い故なく守地若は配置の地に就かす又は其の地を離れたるときは左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは死刑に処す

二 戦時、軍中又は戒厳地境なるときは五年以上の有期禁錮に処す

三 其の他の場合なるときは三年以下の禁錮に処す

第四十四条 司令官出兵を要求する権ある官憲より其の要求を受け故なく之に応せさるときは二年以下の禁錮に処す

第四十五条 将校部隊若は一部の兵員を率い又は之に属し輸送船舶に在りて敵の艦船に遭遇したる際其の尽すへき所を尽さすして其の船舶を退去したるときは死刑、無期若は十年以上の懲役又は禁錮に処す

第四十六条 部下多衆共同して罪を犯すに当り鎮定の方法を尽ささる者は三年以下の禁錮に処す

第四十七条 哨兵故なく守地を離れたるときは左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは死刑に処す

二 軍中又は戒厳地境なるときは三年以下の禁錮に処す

三 其の他の場合なるときは一年以下の禁錮に処す

第四十八条  哨兵睡眠又は酩酊して其の職務を怠りたるときは左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは五年以下の禁錮に処す

二 其の他の場合なるときは一年以下の禁錮に処す

第四十九条 ■兵、■兵、巡察、斥候其の他警戒又は伝令の勤務に服する者故なく勤務の場所若は隊伍を離れたるとき又は到るへき場所に到らさるときは左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは死刑又は無期若は十年以上の禁錮に処す

二 軍中又は戒厳地境なるときは二年以下の禁錮に処す

三 其の他の場合なるときは一年以下の禁錮に処す

第五十条 故なく規則に依らすして哨兵を交代せしめ其の他哨令に違反したる者は左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは一年以上五年以下の禁錮に処す

二 軍中又は戒厳地境なるときは三年以下の禁錮に処す

三 其の他の場合なるときは一年以下の禁錮に処す

第五十一条 戦時、軍中又は戒厳地境に在りて斥候、巡察又は偵察の勤務に服する者虚偽の報告を為したるときは七年以下の懲役に処す

戦時、軍中又は戒厳地境に在りて軍事に関する命令、通報又は報告の伝達を掌る者其の命令、通報若は報告を詐り伝へ又は故なく之を伝達せさるとき亦前項に同し

第五十二条 軍事機密の図書、物件を保管する者危急の時に当り之を敵に委せさる方法を尽ささるときは五年以下の禁錮に処す

第五十三条 戦時、軍中又は戒厳地境に在りて兵器、弾薬、糧食、被服其の他軍用に供する物の運搬又は支給を掌る者故なく之を欠乏せしめたるときは一年以上十年以下の懲役に処す

第五十四条 健康を害すへき飲食物を配給したる者は一年以上十年以下の懲役に処す因て人を死に致したる者は無期又は五年以上の懲役に処す

第五十五条 従軍を免れ又は危険なる勤務を避くる目的を以て疾病を作為し、身体を毀傷し其の他詐偽の行為を為したる者は左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは五年以上の有期懲役に処す

二 其の他の場合なるときは五年以下の懲役に処す

第五十六条 第四十条、第四十二条、第四十三条、第四十五条、第四十七条、第四十九条第五十一条及第五十三条乃至第五十五条の未遂罪は之を罰す

    第四章 抗命の罪

第五十七条 上官の命令に反抗し又は之に服旋せさる者は左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは死刑又は無期若は十年以上の禁錮に処す

二 軍中又は戒厳地境なるときは一年以上七年以下の禁錮に処す

三 其の他の場合なるときは二年以下の禁錮に処す

第五十八条 党与して前条の罪を犯したる者は左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは首魁は死刑に処し其の他の者は死刑又は無期禁錮に処す

二 軍中又は戒厳地境なるときは首魁は無期又は五年以上の禁錮に処し其の他の者は一年以上十年以下の禁錮に処す

三 其の他の場合なるときは首魁は三年以上十年以下の禁錮に処し其の他の者は五年以下の禁錮に処す

第五十九条 暴行を為すに当り上官の制止に従はさる者は三年以下の禁錮に処す

    第五章 暴行脅迫の罪

第六十条 上官に対し暴行又は脅迫を為したる者は左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは一年以上十年以下の懲役又は禁錮に処す

二 其の他の場合なるときは五年以下の懲役又は禁錮に処す

第六十一条 党与して前条の罪を犯したる者は左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは首魁は無期若は十年以上の懲役又は禁錮に処し其の他の者は三年以上の有期の懲役又は禁錮に処す

二 其の他の場合なるときは首魁は五年以上の有期の懲役又は禁錮に処し其の他の者は十年以下の懲役又は禁錮に処す

第六十二条 上官に対し兵器又は兇器を用いて暴行又は脅迫を為したる者は左の区別に於て処断す

一 敵前なるときは死刑、無期若は十年以上の懲役又は禁錮に処す

二 其の他の場合なるときは無期若は二年以上の懲役又は禁錮に処す

第六十三条 党与して前条の罪を犯したる者は左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは首魁は死刑に処し其の他の者は死刑又は無期の懲役若は禁錮に処す

二 其の他の場合なるときは首魁は死刑又は無期の懲役若は禁錮に処し其の他の者の他の者は死刑、無期若は五年以上の懲役又は禁錮に処す

第六十四条 哨兵に対し暴行又は脅迫を為したる者は左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは七年以下の懲役又は禁錮に処す

二 其の他の場合なるときは四年以下の懲役又は禁錮に処す

第六十五条 党与して前条の罪を犯したる者は左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは首魁は三年以上の有期の懲役又は禁錮に処し其の他の者は十年以下の懲役又は禁錮に処す

二 其の他の場合なるときは首魁は一年以上十年以下の懲役又は禁錮に処し其の他の者は五年以下の懲役又は禁錮に処す

第六十六条 哨兵に対し兵器又は兇器を用いて暴行又は脅迫を為したる者は左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは無期若は五年以上の懲役又は禁錮に処す

二 其の他の場合なるときは一年以上の有期の懲役又は禁錮に処す

第六十七条 党与して前条の罪を犯したる者は左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは首魁は死刑又は無期の懲役若は禁錮に処し其の他の者は無期若は七年以上の懲役又は禁錮に処す

二 其の他の場合なるときは首魁は死刑、無期若は七年以上の懲役又は禁錮に処し其の他の者は無期若は二年以上の懲役又は禁錮に処す

第六十八条 上官又は哨兵以外の陸軍軍人其の職務を執行するに当り之に対し暴行又は脅迫を為したる者は四年以下の懲役又は禁錮に処す

党与して前項の罪を犯したるときは首魁は六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処し其の他の者は五年以下の懲役又は禁錮に処す

第六十九条 上官又は哨兵以外の陸軍軍人其の職務を執行するに当り之に対し兵器又は兇器を用いて暴行又は脅迫を為したる者は一年以上十年以下の懲役又は禁錮に処す

党与して前項の罪を犯したるときは首魁は無期若は三年以上の懲役又は禁錮に処し其の他の者は一年以上の有期の懲役又は禁錮に処す

第七十条 多衆聚合して暴行又は脅迫を為したる者は左の区別に従て処断す

一 首魁は三年以上の有期の懲役又は禁錮に処す

二 他人を指揮し又は他人に率先して勢を助けたる者は一年以上十年以下の懲役又は禁錮に処す

三 附和隨行したる者は二年以下の懲役又は禁錮に処す

第七十一条 職権を濫用して陵虐の行為を為したる者は三年以下の懲役又は禁錮に処す

第七十二条 第六十条乃至第七十条の未遂罪は之を罰す

    第五章 侮辱の罪

第七十三条 上官を其の面前に於て侮辱したる者は三年以下の懲役又は禁錮に処す

文書、図画若は偶像を公示し又は演説を為し其の他公然の方法を以て上官を侮辱したる者は五年以下の懲役又は禁錮に処す

第七十四条 哨兵を其の面前に於て侮辱したる者は二年以下の懲役又は禁錮に処す

    第七章 逃亡の罪

第七十五条 故なく職役を離れ又は職役に就かさる者は左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは死刑無期若は五年以上の懲役又は禁錮に処す

二 戦時、軍中又は戒厳地境に在りて三日を過きたるときは五年以下の懲役又は禁錮に処す

三 其の他の場合に於て六日を過きたるときは二年以下の懲役又は禁錮に処す

第七十六条 党与して前条の罪を犯したる者は左の区割に於て処断す

一 敵前なるときは首魁は死刑又は無期の懲役若は禁錮に処し其の他の者は死刑、無期若は七年以上の懲役又は禁錮に処す

二 戦時、軍中又は戒厳地境に在りて三日を過きたるときは首魁は五年以上の有期の懲役又は禁錮に処し其の他の者は六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処す

三 其の他の場合に於て六日を過きたるときは首魁は一年以上七年以下の懲役又は禁錮に処し其の他の者は三年以下の懲役又は禁錮に処す

第七十七条 敵に奔りたる者は死刑又は無期の懲役若は禁錮に処す

第七十八条 第七十五条第一号、第七十六条第一号及前条の未遂罪は之を罰す

    第八章 軍用物損壞の罪

第七十九条 陸軍の工場、船舶、戦闘の用に供する建造物、汽車、電車若は橋梁又は陸軍の軍用に供する物を貯蔵する倉庫を焼燬したる者は死刑又は無期若は十年以上の懲役に処す

第八十条 露積したる兵器、弾薬、糧食、被服其の他陸軍の軍用に供する物を焼燬したる者は左の区別に従て処断す

一 戦時、軍中又は戒厳地境なるときは死刑又は無期懲役に処す

二 其の他の場合なるときは無期又は二年以上の懲役に処す

第八十一条 火薬、汽缶其の他激発すへき物を破裂せしめて前二条に記載したる物を損壊したる者は焼燬の例に同し

第八十二条 第七十九条に記載したる物又は陸軍戦闘の用に供する鉄道、電線若は水陸の通路を損壊し又は使用すること能はさるに至らしめたる者は無期又は二年以上の懲役に処す

第八十三条 兵器、弾薬、糧食、被服、馬匹其の他陸軍の軍用に供する物を毀棄又は傷害したる者は十年以下の懲役又は禁錮に処す

第八十四条 第七十九条乃至第八十二条の未遂罪は之を罰す

第八十五条 本章の規定は陸軍と共同作戦に従ふ外国陸海軍の軍用物に対する行為に亦之を適用す

    第九章 掠奪の罪

■29■第八十六条 戦地又は帝国軍の占領地に於て住民の財物を掠奪したる者は一年以上の有期懲役に処す

前項の罪を犯すに当り婦女を強姦したるときは無期又は七年以上の懲役に処す

第八十七条 戦場に於て戦死者又は戦傷病者の衣服其の他の財物を■奪したる者は一年以上の有期懲役に処す

第八十八条 前二条の罪を犯す者人を傷したるときは無期又は七年以上の懲役に処し死に致したるときは死刑又は無期懲役に処す

第八十九条 本章の未遂罪は之を罰す

    第十章 俘虜に関する罪

第九十条

 俘虜を看守又は護送する者其の俘虜を逃走せしめたるときは三年以上の有期懲役に処す

第九十一条 俘虜を逃走せしめたる者は十年以下の懲役に処す

俘虜を逃走せしむる目的を以て器具を給与し其の他逃走を容易ならしむへき行為を為したる者は七年以下の懲役に処す

前項の目的を以て暴行又は脅迫を為したる者は一年以上十年以下の懲役に処す

第九十二条 俘虜を奪取したる者は二年以上の有期懲役に処す

第九十三条 逃走したる俘虜を蔵匿し又は隠避せしめたる者は五年以下の懲役に処す

第九十四条 第九十条乃至第九十二条の未遂罪は之を罰す

    第十一章 違令の罪

第九十五条 哨兵を欺きて哨所を通過し又は哨兵の制止に背きたる者は左の区別に従て処断す

一 敵前なるときは一年以上五年以下の禁錮に処す

二 軍中又は戒厳地境なるときは三年以下の禁錮に処す

三 其の他の場合なるときは一年以下の禁錮に処す

前項の外哨兵に対し哨令を犯したる者亦前項に同し

第九十六条 在郷軍人故なく召集の期限に■れたるときは左の区別に従て処断す

一 戦時に際し又は事変の為召集を受けたる場合に於て五日を過きたる者は二年以下の禁錮に処す

二 其の他の場合に於て十日を過きたる者は一年以下の禁錮に処す

第九十七条 兵役を免るる目的を以て疾病を作為し、身体を毀傷し其の他詐偽の行為を為したる者は三年以下の懲役に処す

在郷軍人召集を免るる目的を以て前項の行為を為したるとき亦前項に同し

第九十八条 戦時、軍中又は戒厳地境に在りて軍事に関する虚偽の命令、通報又は報告を為したる者は五年以下の懲役に処す

第九十九条 戦時又は事変に際し軍事に関し造言飛語を為したる者は三年以下の禁錮に処す

第百条 礼砲、銃砲其の砲空包を発すへき場合に於て弾丸、■石其の他の物を装填して発したる者は二年以下の禁錮に処す

第百一条 哨兵又は衞兵故なく銃砲を発したるときは二年以下の禁錮に処す

第百二条 戦時、軍中又は戒厳地境に在はりて急呼の号報ありたる場合に故なく来会せさる者は二年以下の禁錮に処す

第百三条 政治に関し上書、建白其の他請願を為し又は演説若は文書を以て意見を公にしたる者は三年以下の禁錮に処す

第百四条 服従の義務に違ふへき事を目的として党を結ひたるときは首魁は六月以上五年以下の禁錮に処し其の他の者は二年以下の禁錮に処す

   附則

本法施行の期日は勅令を以て之を定む

明治十四年第六十九号布告陸軍刑法は之を廃止す

(Source:国立公文書館 A03020745200)

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徴兵令詔書及び徴兵告諭(口語訳)  今回、全国募兵の件に付き、別紙の詔書の通り徴兵令が仰せ出され、その定めるところの条々、各々天皇の趣意を戴き、下々の者に至るまで遺漏なきように公布しなさい。全体として詳細は陸軍・海軍両省と打ち合わせをしなさい。この趣旨を通達する。  ただし、徴兵令および徴募期限については追って通達するべきものとする。 (別紙) 詔書の写し   私(明治天皇)が考えるに、往昔は郡県の制度により、全国の壮年の男子を募って、軍団を設置し、それによって国家を守ることは、もとより武士・農民の区別がなかった。中世以降、兵は武士に限られるようになり、兵農分離が始まって、ついに封建制度を形成するようになる。明治維新は、実に2千有余年来の一大変革であった。この際にあたり、海軍・陸軍の兵制もまた時節に従って、変更しないわけにはいかない。今日本の往昔の兵制に基づいて、海外各国の兵制を斟酌し、全国から兵を徴集する法律を定め、国家を守る基本を確立しようと思う。おまえたち、多くのあらゆる役人は手厚く、私(明治天皇)の意志を体して、広くこれを全国に説き聞かせなさい。 明治5年(壬申)11月28日  わが国古代の兵制では、国をあげて兵士とならなかったものはいなかった。有事の際は、天皇が元帥となり、青年壮年兵役に耐えられる者を募り、敵を征服すれば兵役を解き、帰郷すれば農工商人となった。もとより後世のように両刀を帯びて武士と称し、傍若無人で働かずに生活をし、甚だしい時には人を殺しても、お上が罪を問わないというようなことはなかった。  そもそも、神武天皇は珍彦を葛城の国造に任命し、以後軍団を設け衛士・防人の制度を始めて、神亀天平の時代に六府二鎮を設けて備えがなったのである。保元の乱・平治の乱以後、朝廷の軍規が緩み、軍事権は武士の手に落ち、国は封建制の時代となって、人は兵農分離とされた。さらに後世になって、朝廷の権威は失墜し、その弊害はあえていうべきものもなく甚だしいものとなった。  ところが、明治維新で諸藩が領土を朝廷に返還し、1871年(明治4)になって以前の郡県制に戻った。世襲で働かずに生活していた武士は、俸禄を減らし、刀剣を腰からはずすことを許し、士農工商の四民にようやく自由の権利を持たせようとしている。これは上下の身分差をなくし、人権を平等にしようとする方法で、とりもな...

日清修好条規 1871年09月13日

内容見直し点:口語訳中途 修好条規(口語訳、前文署名省略) 第一条 この条約締結のあとは、大日本国と大清国は弥和誼を敦うし、天地と共に窮まり無るべし。又両国に属したる邦土も、各礼を以て相待ち、すこしも侵越する事なく永久安全を得せしむべし。 第二条 両国好を通ぜし上は、必ず相関切す。若し他国より不公及び軽藐する事有る時、其知らせを為さば、何れも互に相助け、或は中に入り、程克く取扱い、友誼を敦くすべし。 第三条 両国の政事禁令各異なれば、其政事は己国自主の権に任すべし。彼此に於て何れも代謀干預して禁じたる事を、取り行わんと請い願う事を得ず。其禁令は互に相助け、各其商民に諭し、土人を誘惑し、聊違犯あるを許さず。 第四条 両国秉権大臣を差出し、其眷属随員を召具して京師に在留し、或は長く居留し、或は時々往来し、内地各処を通行する事を得べし。其入費は何れも自分より払うべし。其地面家宅を賃借して大臣等の公館と為し、並びに行李の往来及び飛脚を仕立書状を送る等の事は、何れも不都合がないように世話しなければならない。 第五条 両国の官位何れも定品有りといえども、職を授る事各同じからず。因彼此の職掌相当する者は、応接及び交通とも均く対待の礼を用ゆ。職卑き者と上官と相見るには客礼を行い、公務を辨ずるに付ては、職掌相当の官へ照会す。其上官へ転申し直達する事を得ず。又双方礼式の出会には、各官位の名帖を用う。凡両国より差出したる官員初て任所に到着せば、印証ある書付を出し見せ、仮冒なき様の防ぎをなすべし。 第六条 今後両国を往復する公文について、清国は漢文を用い、日本国は日本文を用いて漢訳文を副えることとする。あるいはただ漢文のみを用い、その記載に従うものとする。 (これ以下まだ) 第七条 両国好みを通ぜし上は、海岸の各港に於て彼此し共に場所を指定め、商民の往来貿易を許すべし。猶別に通商章程を立て、両国の商民に永遠遵守せしむべし。 第八条 両国の開港場には、彼此何れも理事官を差置き、自国商民の取締をなすべし。凡家財、産業、公事、訴訟に干係せし事件は、都て其裁判に帰し、何れも自国の律例を按して糾辨すべし。両国商民相互の訴訟には、何れも願書体を用う。理事官は先ず理解を加え、成丈け訴訟に及ばざる様にすべし。其儀能わざる時は、地方官に掛合い双方出会し公平に裁断すべし。尤盗賊欠落等の事件は、両国の地方官より...

下関条約 1895年04月17日

下関条約(口語訳、前文署名省略)  第一条 清国は朝鮮国の完全無欠なる独立自主の国であることを確認する。よって右独立自主を損害すべき朝鮮国より清国に対する貢献典礼等は将来全くこれを廃止する。  第二条 清国は左記の土地の主権並びに当該地方にある城塞、兵器製造所及び官有物を永遠に日本国に割譲する。  一 左の境界内にある奉天省南部の地    鴨緑江口より該江を遡り、安平河口に至り該河口より鳳凰城海城営口にわたり遼河口に至る折線以南の地、併せて前記の各城市を包含する。そして遼河を以って界とするところは該河の中央を以って境界とすることとする。    遼東湾東岸及び黄海北岸にあって奉天省に属する諸島嶼  二 台湾全島及びその付属諸島嶼  三 澎湖列島、即ち英国「グリニッジ」東経百十九度から百二十度まで及び北緯二十三度から二十四度までの間にある諸島嶼  第三条 前条に掲載し付属地図に示すところの境界線は、本条約批准交換後直ちに日清両国より各二名以上の境界画定委員を任命し、実地について確定するところあるべきものとする。そしてもし本条約に掲記するところの境界にして地形上又は施政上の点につき完全にならない場合には、当該境界画定委員はこれを更正することに任ずる。  第四条 清国は軍費賠償金として、庫平銀2憶両を日本国に支払うべきことを約する。右金額は都合8回に分け、初回及び2回には毎回5千万両を支払う。そして初回の払込は本条約批准交換後6か月以内に、次回の払込は本条約批准交換後12か月以内において行う。残りの金額は6箇年賦に分け、その1次は本条約批准交換後2年以内に、2次は本条約批准交換後3年以内に、3次は本条約批准交換後4年以内に、4次は本条約批准交換後5年以内に、5次は本条約批准交換後6年以内に、6次は本条約批准交換後7年以内に支払う。また、初回払込期日より以後未だ払込を終了しない額に対しては、毎年5%の利子を支払うべきものとする。 但し、清国は何時でも当該賠償金の全額あるいはその一部を前もって一時に支払うことができる。本条約批准交換後3年以内に当該賠償金の総額を完済するときは、すべての利子を免除する。もし2年半若しくは更に短期の利子を払い込んだときは、これを元金に編入する。  第五条 日本国へ割譲された地方の住民にして、割譲された地方の外に住居したいと希望する者には自由にその所...