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日独通商航海条約 1911年06月24日

 日独通商航海条約(ひらがな化、一部新字体化)


日獨通商航海條約

第一条

両締約国の一方の国民は他の一方の版国内の各地に到り又は滞在することに付完全なる自由を有すへし

該国民は国法に遵由するに於ては左記の権利を享有すへし

一 居住すること、修学研究を為すこと、生業職業に従ふこと及生産製造の業を営むことに関する一切の事項に付総て最恵国の国民と同一の基礎に置かるへく

二 内国民と均しく締約国の他の一方の版図内を旅行するの権利を有し又適法なる商業の目的物たる各種商品の取引に従事するの権利を有すへく

三 家屋、製造所、倉庫、店舗及附属構造物を所有又は賃借して之を使用し又住居、商業、生産業、製造業其の他適法なる目的の為土地を貸借することを得へく

四 各種動産を占有すること、生存者間に於て適法に取得し得へき各種動産を遺言其の他の方法に因りて相続すること及適法に取得したる各種財産を一切の方法に因りて処分することに関し内国民又は最恵国の国民と同一の特権、自由及権利を享有し且此等の事項に付内国民又は最恵国の国民よりも多額なる何等の租税又は課金を課せらるることなかるへく

五 国法に依り別国の国民か取得占有することを得又は得ることあるへき各種の不動産を相互の条件に依り且常に右国法の定むる条件及制限に従ひ取得占有することを得へく

六 陸軍、海軍、䕶国軍又は民兵の何れたるを問はす総ての強制兵役を免れ且服役の代として課せらるる一切の租税竝強募公債を免るへく内国民又は最恵国の国民と同一の条件及基礎に依るの外如何なる軍用徴発又は取立金をも課せらるることなかるへく

七 又何等の名義を以てするも内国民又は最恵国の国民か納付し又は納付することあるへき所と異なるか或は之より多額なる課金又は租税を徴収せらるることなかるへし

第二条

■■両締約国の一方の国民か他の一方の版一国内に於て有する家宅、倉庫、製造所及店一舗竝一切の附属構造物は侵すへからす

右建物又は附属構造物に付ては内国民に対する法定の条件及方式に依るの外臨検捜索を為し又は帳簿、書類若は計算書類を検査点閲することを得す

第三条

両締約国版図の間には相互に通商及航海の自由あるへし

締約国の一方の国民は他の一方の版図内に於て外国通商の為に開かれ又は開かるることあるへき一切の場所、港及河川に船舶及貨物を以て自由に到ることを得但し常に到達国の国法に従ふことを要す

第四条

両締約国の一方の版図内の生産又は製造に係る物品にして他の一方の版図内に輸入せらるるものに対する輸入税は両国間の特別取極又は各自の国内法に依りて之を定むへし

締約国の孰れの一方たりとも他の一方の版図に輸出せらるる物品に対し同様の物品か別国に輸出せらるるに当り納付し又は納付することあるへき所と異なるか或は之より多額なる何等の税金又は課金を課することを得す

第五条

両締約国は輸入、輸出又は通過の禁止に依りて相互の通商関係を妨けさるへきことを約す

左記の場合に於ては前項の規定に対し例外を設くることを得但し別国一般に又は同一の条件の下に在る別国に対し総て適用せらるるものたることを要す

一 非常の場合に於て軍需品に関するとき

二 公安に関するとき

三 公共衛生に関するとき及動物又は有用植物を病疫又は寄生物に対して保護せむとするとき

四 内国商品の製産、販売又は運搬に関して国内法を以て定めたる禁止又は制限を同種の外国商品に適用せむとするとき

第六条

両締約国の一方の国民は他の一方の版国内に於て通過税の免除、税関庫入、輸出奨励金、戻税及商品の輸出入に関する便益に付内国民と全く均等の待遇を享受すへし

第七条

両締約国の一方の官庁より発給したる営業証明書を提示し以て該国版図内に於て営業に従事するを得ることを証明する商工業者は他の一方の版図内に於て本人自ら又は旅商を使用して物品を買入れ見本携帯又は不携帯にて注文を取集むることを得而して右商工業者及其の使用する旅商は買入を為し又は注文を取集むるに当り課税及便益に関して最恵国待遇を享受すへし

締約国は如何なる官庁か営業証明書発給の権限を有するやを相互に通知すへし

第一項に掲くる目的を以て見本として輸入せらるる物品は其の再輸出せらるへきこと又は法定期間内に再輸出せられさる場合に成規の関税の納付せらるへきことを確実ならしめむか為に制定せられたる関税法規及手続を履行するときは各締約国に於て一時無税輸入を許可せらるへし但し此の特権は物品の数量又は価額に徴し見本と認むること能はさるもの又は其の性質上再輸出の際校合すること能はさるものには之を与ふることなし見本か無税輸入を許可せらるへきものたると否とを決定するは何れの場合に於ても輸入地当該官庁の権内に專属す

第八条

前条に掲くる見本に対し其の輸出の際両締約国の一方の税関か施したる記号、極印又は印章は右見本の詳細なる説明を記載し該税関の公の査証を有する目録と共に其の見本品たることを証明するものとして且該目録列記のものたることを確認するか為必要なる外右見本をして検査を免れしむるものとして互に他の一方の税関より承認せらるへし但し其の特に必要と認むる場合には更に記号を該見本に施すことを得

第九条

両締約国の一方の版図内に住所を有する商工業又は金融業に関する株式会社其の他の会社及組合(保険会社を包含す)にして該国の国法に従ひ法律上成立せるものは他の一方の版図内に於て法律上成立せるものと認めらるへく且其の地の国法に従ひ原告又は被告として裁判所に出頭することを得

右会社又は組合か他の一方の版図内に於て其の営業に従事し又は財産を取得し得るや否やは其の地の国法に依りて定まるへく而して何れの場合に於ても右会社及組合は該版国内に於て最恵国の同種の会社及組合に許与せられ又は許与せらるることあるへき所と同一の権利を享有すへし

第十条

両締約国の一方の港に其の国の船舶を以て適法に輸入せられ又は輸入せらるることあるへき一切の物品は他の一方の船舶を以て亦均しく該港に之を輸入することを得此の場合に於て右物品の内国船舶に依りて輸入せらるるとき譯する所と異なるか或は之より多額なる税金又は課金は如何なる名称を有するものたりとも之を課することなし右相互均等の待遇は該物品か直接に製産原地より到ると又は其の他の外国より到るとを問はす之を実行すへし

輸出に関しても右と同様に全く均等の待遇を為すへく従て締約国の一方の版図より適法に輸出せられ又は輸出せらるることあるへき物品は其の輸出か日本船舶に依ると独逸船舶に依るとを問はす且其の仕向先か締約国の他の一方の港たると第三国の港たるとに拘らす之か輸出に当り該版図内に於て同一の輸出税を納付し又同一の奨励金及戻税を受くへし

第十一条

締約国の領水内に於ける船舶の繋留及貨物の積卸に関する一切の事項に付ては締約国に於て両国の船舶を全く均等に待遇するの意思なるに因り締約国の孰れの一方たりとも他の一方の船舶に対し同様の場合に均しく許与せさる何等の特権又は便益を自国船舶に許与することなかるへし

第十二条

独逸国の国法に従ひ独逸船舶と認めらるる一切の船舶又は日本国の国法に従ひ日本船舶と認めらるる一切の船舶は本条約の適用上相互に之を独逸船舶又は日本船舶と認むへし

第十三条

政府、官公吏、私人、国体又は各種営造物の名義を以て又は其の利益の為に課せらるる噸税、通過税、運河税、港税、水先案内料、燈台税、検疫費其の他名称の如何に拘らす之に類似又は該当する税金又は課金は同一の条件を以て均しく内国船舶一般に又は最恵国船舶に課するものに非されは締約国の一方の領水内に於て之を他の一方の船舶に課することなし右均等の待遇は両国の船舶か何れの地より來り又何れの地に往くを問はす相互に之を実行すへし

第十四条

締約国の一方の定期郵便運送の任務に当る船舶は他の一方の領水内に於て同様の最恵国船舶に許与せらるる便益、特権及免除を享有すへし

第十五条

沿岸貿易は本条約の規定する限に在らす之を内国船舶に留保す但し本件に関し各締約国は他の一方か別国船舶に許与し又は許与することあるへき所と同一の権利又は特権を自国船舶の為に請求することを得るものとす尤も此の場合には自国に於ても他の一方の船舶に対し同一の権利又は特権を許与することを要す

左に掲くる場合は沿岸貿易と看做さす

一 外国より積載し来りたる旅客又は貨物の全部若は一部を陸揚せむか為或は外国行の旅客又は貨物の全部若は一部を積載せむか為一港より他港に航海すること

二 外国に於て交付せられ又は外国を目的地とする通し切符又は通し船荷証券を有する旅客又は商品を一港より他港に運送すること

第十六条

締約国の一方は他の一方の船舶に対し難破、海上損害又は不可抗力に因る寄航の場合に於て其の国有たると私有たるとを問はす同様の場合に内国船舶に許与すると同一の援助、救護及免除を許与すへし右難破又は被害船舶より救上けたる貨物に対しては総て関税を免除す但し内国消費の為引取らるる場合には成規の関税を納付すへし

地方官庁は成るへく速に難破又は損害の事実を最近地に駐在する船舶所属国領事官に通知すへし締約国領事官は自国民に必要なる援助を与ふることを得

第十七条

本条約に於て別段の明文ある場合を除くの外両締約国は各締約国の通商、航海及工業を総て最恵国の基礎に置くの意思なるに因り通商、航海及工業に関する一切の事項に付其の一方か別国の船舶又は国民に現に許与し又は今後許与することあるへき一切の特権、恩典又は免除は右例外の場合を除くの外即時且無条件にて他の一方の船舶又は国民に及ほすことに同意す

第十八条

本条約の規定は各締約国の関税地域に現に属し又は今後属することあるへき国及地域にも均しく之を適用す

第十九条

本条約は本日調印の特別相互関税条約と共に千九百十一年七月十七日より実施し其の有効期間は千九百二十三年七月十六日迄とす

右期間満了の十二月前に締約国の孰れよりも本条約を消滅せしむるの意思を通告せさるときは本条約は締約国の一方か其の廃棄を声明したる日より一年の期間の満了に至る迄引続き効力を有す

尤も千九百十二年三月三十一日迄は両締約国に於て本条約の廃棄を声明するの権能を留保す右廃棄声明の場合には本条約は千九百十二年十二月三十一日を以て其の効力を失ふへし締約国は本条第一項に掲くる関税条約を同時に廃棄するに非されは右権能を行使せさるへきことを約す

第二十条

本条約は批准を要す其の批准書は成るへく速に東京に於て交換すへし

右証拠として各全権委員本条約に署名調印す

千九百十一年六月二十四日伯林に於て本書二通を作る

                      珍田捨已  印

                      キダーレン 印

(Source:日本公文書館 御署名原本・明治四十四年・条約第九号・日独通商航海条約 A03020920800)

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