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大東亜共栄圏確立に伴い価格形成上採るべき万策 1942年11月04日

 大東亜共栄圏確立に伴い価格形成上採るべき万策(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)


大東亞共栄圈確立ニ伴ヒ價格形成上採ルベキ万策

                    一七、一一、四

皇国の物価政策は支那事変勃発以来低物価堅持の基調の下に中央物価委員会決定の「初価統制大綱」に基き国際物価水準に照応し輸出増進を可能ならしむることを目標とし施策し来りたるも昭和十四年十月第二次欧州大戦の勃発に伴ふ諸般の情勢の変化に即応し政府は価格竝に其の構成要素の停止を眼目とする価格等統制令其の他の法令を公布し爾来極力当時の物価水準の維持を目途とし自主的物価の建設に邁進し来りたるは蓋し機宜に適したるものなり、然れども其の間に在りても皇国経済の実情は皇国物価の国際物価よりの完全なる離脱を許さす自主的物価の建設は絶えず阻碍されつつありたるも昭和十六年七月米英等の対日資産凍結更には大東亜戦争の勃発に因り米兵等との連繋は完全に遮断され茲に大東亜共栄圏を一丸とする自足時給経済の発足を見るに至れり、依つて政府は斯る情勢に即応する価格形成万策及之に関連する万策を樹立実施して自主的物価を建設し以て大東亜戦争遂行力の急速なる増強を図ると共に大東亜共営圏の恒久的建設を促進すること肝要なり

而して其の万策左記の如し

       記

第一 方針

一、大東亜兵栄圏に於ける物価政策は囊に大東亜建設審議会に於て審議決定されたる大東亜金融財政及交易基本万策に依れば

(一) 大東亜を通ずる生産の増強、物資の交流、労務の調達を円滑ならしめ且大東亜経済建設に関する各地域の負担を公正ならしむるものとし

(二) 之か統制に付ては各地域の実情民度に応ぜしむるに在り

二、 而して右に基き差当り採るべき万策は

(一) 皇国に於ては支那事変勃発以来の低物価堅持の方針を持続しつつ戦時の生産増強の要請に応じ之を最高度に可能ならしむべき価格形政万策を確立すると共に物価に関連ある財政、金融、産業、運輸、労務等各方面の施策に低物価堅持の方針に指向せしめ

(二) 圏内各地域に於ては皇国の低物価堅持の方針に照応しつつ各地域の産業事情、民度等を勘案したる物価政策を樹立し以て戦争遂行上緊要なる物資の生産増強、物資交流の円滑化竝に各地域民生の安定を図り

(三) 皇国と圈内各地域及各地域相互間の価格差を調整する為大東亜を通ずる交易竝に価格調整機構を整備し以て戦争遂行力を増強するに在り

第二 皇国に於ける価格形成万策竝に之に関連し考慮すべき万策

大東亜戦争を完遂するか為には強大なる生産力を有する米英に拮抗し軍需資材の補給を完璧ならしむるか如く生産力の飛躍的増大を図り以て経済戦力を極度に昂揚するの要あること云ふをまたさるところなり、生産増強に付ては支那事変勃発以来政府に於ては最も力を致し就中生産増強と低物価との調整に付ては昭和十六年八月物価対策審議会決定の「低物価と生産増強との調整に関する件」に基き着々実施に努めつつあるも今日の情勢に於ては既定の万策を更に協力に遂行するの要あり、即ち官民の戦時責任意識の下に計画生産を確保するの措置を講ずると共に徹底せる生産の合理化を図ること肝要なり、而して生産に関する如上の要請の実現を前提とし現行価格に再検討を加ふるを適当とするも結局原価の昂騰を免れざる場合に於て之を其の儘市値に反映せしむるときは循環高の悪現象を招来すべきを以て生産者販買価格と対需要者価格とは之を分離し生産者に対する価格保障を需要者に影響なからしむべき万策を考慮するの要あるべし

而して右措置と相呼応し通貨面に対する施策を強化徹底し通貨の不当膨脹を抑止し余剰吸収を図り此の方面よりの物価への影響を絶無ならしむる様強力なる施策を要すべし

(一) 生産の合理化を図り生産費の引下を齎す為特に留意すべき点概ね左の如し

(1) 生産は資材、労務、運輸、燃料、軍刀、賃金等の有機的結合に依り営まるるものなるところ 其の均衡ある配当行はれさる為生産能率は減退すると共に未働設備を生じ生産原価の騰貴を来せるもの尠からさるものの如し依て政府は戦時に於て特に生産増強の要ある物資竝に国民生活安定上の必須物資等の生産に対し資材、労務、運輸、燃料、電力、資金等凡ゆる生産要素の配当を時期的、数量的に均衡ならしむべし

(2) 高能率工場事業場の完全操業を為さしむる如く生産割当を行ふと共に低能率工場、事業場の生産要素を高能率工場に転換活用し以て生産要素の效率的使用を図り生産原価の低下に努むべし

(3) 現下の情勢に於て所期すべきは生産設備の拡充に依る生産量の増大よりも寧ろ能率増進に依る単位当生産量の増大に在り之が為政府は資材使用効率、労働能率等に関する能率基準を設くる等の方法に依り設備、資材、労力等の合理的効率的使用を徹底せしむべし

 尚之が実施に当りては能率増進者に対しては国家報償其の他凡ゆる報償を行ひ又能率増進に依る超過利潤は適宜右報償に引当てしむべし

(二) 軍需充足又は生産増強上の基礎資材等の価格は之ら生産者販売備格と対需要者価格とに分離し原則として前者に付ては生産確保の為必要限度の価格的保障を与へ後者に対しては現行価格を維持し現行価格体系は差当り之を維持して循環高の悪現象を一応阻止すると共に生産増強を可能ならしむること肝要なり

 而して生産省価格と対需要者価格との差額は国家に於て補償するを適当とすべし

(三) 日用品に関しては国民生活に検討を加へ戦時国民生活に真に必要なるものを除きては其の製造禁止制限の指置を講ずると共に規格の単純化を積極的に促進し以て資材の有効利用、公定価格の維持励行に資せしむるの外質実簡素なる戦時国民生活の確立を図るを適当とすべし

(四) 食料品就中生鮮食料品に関しては最近の実情に鑑み量的に其の生産を確保するの外出荷配給機構を整備すると共に計画出荷制度を強化し出荷の確保を図ること肝要なり

 之が為には生産者価格を設定すると共に現行時季別価格を更に合理的ならしむるの要あり又通貨のプール計算制を実施するの外此の際中央卸売市場の手数料を引下げ之が為生する不足額の補填に付ては別途考究するを適当とすべし

(五) 低物価堅持は価格形成の基礎的要素たる運賃、賃金、電力料等の安定を絶対的要件とすること云ふを俟たざるところなり、依て之等の妄案に付ては当該部内に対する統制を徹底的に強化し生産計画に即応せる諸計画を樹立し其の間の齟齬に因る経済増嵩を仰止すると共に運賃、賃金、電力料等は厳に現行水準を維持する方針の下に左に依り施策するを適当とすべし

(1) 運賃

 戦争遂行に伴ひ輸送の逼迫を来し運員の昂騰を来しつつある現状に鑑み海陸を通ずる輸送能力を敢大限に発揮せしむる為左の如き措置を講じ以て極力輸送原価の低下を図り現行運賃の堅持に努むべきも尚現行運賃を維持し得さるときは其の差韻は国家に於て負担すべし

(イ) 船舶、機帆船、鉄道、小運送、尚役各相互間に於ける有機的連絡を密にし輸送能力の増大、輸送原価の低下を図ること

(ロ) 各種輸送機関特に小運送及機帆船に付夫々強力なる一元的統制機関を整備し其の合理的な運営に因り極力輸送原価の低下に努むると共に必要に応じ運賃共同計算制を実施し物資輸送の円滑化を図ること

(ハ) 各地に於ける港湾荷役統制機関を一元的に連用して荷役の迅速化を図ると共に右統制機関を強化して労務管理を徹底的に強化し且一般的労務統制を円滑ならしむる為に荷役人夫賃の引下を行ふこと

(2) 賃金

 労務者の移動、労働能率の低下等に依り製品単位当労務諸費は漸騰の傾向に在り、依つて政府は賃金の現行水準を維持すると共に労務統制を一段と強化し之に伴ひ労務管理の改善竝に能率増進の万策に新工夫を凝す一方労務者の生産担当者たる名誉心と責任怠識を昂揚せしめて移動の防止及労働能率の同上に遺憾なからしめ以て製品単位当労務諸費の低下を図るべし

 右に関し差当り考慮すべき事項左の如し

(イ) 生産計画に照応し之と齟齬せざる様適切且重点的なる労務の配置を行ふと共に不要不急事業に於ける従業の禁止制限を行ふこと

(ロ) 生産手段の機械化を図り流れ作業の採用に努むると共に生産分野の画定を徹底し以て労務内容を可及的に単純化し製品の量及質の向上を図ること

(ハ) 各種の技能者養成設備を整理拡充し計画的に技能者を養成する外転戦者竝に激用工員の訓練に付て特段の考慮を払ふこと

(ニ) 能率増進者に対しては国家報償其の他適当なる報償を行ふこと

(ホ) 現下の状勢に於て生産増強を特に必需する特定工場、事業場の労務者に付ては米、麦、味噌、醤油等生活必需食糧品及作業衣地下足袋等生産に必要なる労働用具を潤沢ならしむると共に之が配給の確保に付特別の考慮を為すこと

(ヘ) 永年勤続者に対しては昇進被傭会社株式の保有等適切なる優遇策を講じ労務者の定着化を図ること

(3) 電力料

 生産計画に照応せる電力配当計画を樹立し其の円滑なる供給を行ふ外産業設備営団を活用して発電施設を急速に設くる等の方法に依り発電原価の低下を図るべし

(六) 国民生活の三要素の一たる住宅に付ては甚しき需給の不均衡を招来し之が家賃の騰貴を来しつヽある現状に鑑み遊休家屋等の積極的活用を為す外土木建築に付統制を強化し住宅の計画的配給特に労業者住宅の供給確保を図ると共に建築費の低下を図るべし

 尚不動産の売買価格に付ては一部に付統制実施され居るも夫統制部分の値上甚しく延いては家賃騰貴の原因となり又既統制部面にも悪影響を及ぼし生産拡充竝に国民生活の安定を害する憾あるを以てに全面的統制を実施するの要あるべし

(七) 車官需価格又は料金と民需価格又は料金との均衡を図り車官需価格又は科金の低位に依り民需に過度の資源を課すること無き様留意すると共に車官需価格又は料金の牽引に依り民需価格又は科金の引上を来さざる様考慮すべし

 之か為要すれば予算は民需価格又は料金を基準として編成すべし

(八) 記述の政府の諸措置の結果補償金の増大を来すことを予想せらるるも之に伴ふ通貨の増大を放任するときは既物価の堅持方針は此の面より破壊せられ補助金制度の効用をも失はしむるの虞あり、依て政府は国庫より補償金を支出するに当りては公債其の他の方法に依る等努めて余剰購買力に轉化せざる様留意すべし

(九) 近時価格、料金、賃金等にして最高額の公定せられたるもの必ずしも完全に励行せられ居るとは認め難き実情なるを以て物資配給統制を一層強化することに依り国民に必要の最低限を確保して違反行為発生の原因の除去に努むると共に国民精神の昂揚、商業道徳の向上を図り且他面取締の万全を期する等所謂闇行為の根絶を期する為適切なる万策を構すべし

第三 国内各地域に於ける物価政策

如上の措置を購じ皇国物価の健全を期するも大東亜共栄圈の確立に伴ひ皇国と国内各地域との経済関係の緊密の度を加ふるに至り其の結果皇国物価は国内各地域に於ける物価に牽引さるる傾向を生じつつあり茲に於て我国の価格形成万策は最早皇国に於ける事情のみを考慮するを以ては足らす広く国内各地域も物価事情を勘案するに非れば其の万全は期し難きものとなれり、且又国内各地域に於ける生産の増強、民生の安定は経済活動の基底たる物価の健全を確保するに非されば到底望み得ざるのみならず各地域相互間の物資の円滑なる交流は大東亜を通ずる一元的初価統制を前提として初めて可能なり依つて政府は皇国の大東亜に於ける核心たる地位に鑑み皇国の指導の下に国内各地域の物価政策を皇国の低物価方針を基準とし強力に遂行せしむる様考慮するを要す

而して国内各地域の政策は各地域に於ける経済の発展段階、民度其の他の実情に応じ多元的に考慮すること肝要なり

国内各地域の物価政策概ね左の如し

一、 満洲に於ける物価政策

満洲に於ては夙に低物価の方針の下に物価政策を遂行し来りたるも日満経済関係の盆々緊密の度を加へ来りたる現下の状勢に鑑み諸般の政策を低物価方針に集中せしめて物価政策の徹底的強化を図り少くとも対日供給物資に付ては我が物価水準と同一ならしむべきを目途とし全般的に物価水準の低下を図ること肝要なり

其の万策次の如し

(一) 鉱産品及重工業品の生産に対し生産諸要素を動員集中し之に因り生産の確保を図り対日供給の完全を期すること刻下の急務なるも其の遂行に当りては極力生産の合理化を行ひ低物価との調整を図るの外次の点に留意することを要す

(1) 労務統制を一段と強化し労務者の重点的配置を行ふと共に賃金は厳として現行水準に据置くことを要す

 右に伴ひ少くとも基礎産業の労務者に付ては労務者用生活必需物資の配給を確保する為重要工場、事業場に対する配給機構を整備し之に因る配給系統を確立すると共に二重価格制度の特定価格を適用し以て労務者の生活を確保すると共に労務者生活費の騰貴を来すこと無き様留意すべし

(2) 生産及輸送施設の機械化を行ひ労務内容を努めて単純化し以て労務能率の向上を図り製品の量及質の向上を期すること

(3) 満洲に於ける生産設備は概ね新設のものにして月其の地域的條件不利なる為其の建設費比較的高位に在り従つて生産原価の高位は免れざるところなり、依つて満洲に於ける国家繁要産業に対しては産業設備営団をして主要企業の生産設備の建設に当らしめることを適当とすべし

 但し鉱業の設備建設に付ては産業設備営団の事業とするには困難なる事情あるべきを以て此の業種に付ては満洲国に於て産業設備営団類似の機構を設け建設費高位に依る生産原価の騰貴を抑制する様考慮すること

(4) 如上の万策を講ずるも生産強行に因り生産原価の昂騰する場合に於ては適正価格の設定を考慮すべきも之に依り全般的価格体系を破壊すること無き様措置することを要し少くとも対日供給物資に付ては国庫又は経済平衡資金に於て補償し対需要者価格の安定を図ること

(二) 軽工業品及日用品は生活の基礎物資たるを以て量の面に於て最少必要識度を確保すると共に価格面に於ても慎重なる考慮を要するは勿論なるも必要に応じては二重価格制を考慮すべし

 其の万策概ね左の如し

(1) 共栄圏内各地域の供給状況に鑑み司及的国内自給を目途とし現地生産の増強を期すること

 右の実施に当りては努めて土着資本の沽用を図ると共に既存の工場を善用竝に日本に於ける遊休施設の活用を期すること

(2) 満洲に於ては配給段階の単純化に努めつつあるは妥当なるも之を更に強力に遂行すると共に企業の整備を行ふこと

(3) 二重価格制を実施し浮動購買力の吸収を図ると共に之を財源とし経済平衡資金を設け価格調整を行ひつつあるは妥当なるも其の実施に当りて全般的物価水準の騰貴を来すこと無き様厳に留意し特に基礎産業の労務者等特定社会層に対しては低位価格を適用することとし之か為必要なる施策を強力に実施すること

(三) 農産物は満洲経済の根基たると共に満洲農業か大東亜共栄圏に於ける地立極めて大なるに鑑み特に其の生産の増加を図ると共に極力現行水準の維持を図る為次の如き措置を考慮することを要す

(1) 農法を改善し要すれば農業の機械化等を図り生産量の増大を図ること

(2) 興農合作社を活用する外既存蒐荷機関の機能に鑑み之か改善利用を図ると共に軽工業品及日用品の配給を出荷促進に資する如くならしめ出廻りの円滑化を図ること

(四) 運賃は賃金と相並ひ価格形成の基礎要素なるを以て其の変動は価格体系を破壊する虞大なり依つて運賃は少くとも現行水準を維持すると共に車用貨物運賃との均衡を図り車用貨物運賃に依り民需貨物運賃か適当の負担を負はざる様特に留意すべし

(五) 生活必要品は前記諸万策に依り生産の増加を図ると共に之か適正配給を行ひ生活の最低限の保障に努むべきも戦争遂行に伴ふ国内各地域国民、民度の負担を公正ならしむる為生活を可及的に簡素ならしむること肝要なり、之か為必要なる施策を考慮すべし

(六) 貯蓄を奨励する外浮動購買力の吸収を図る為富籤、馬券等の活用を図るべし

(七) 満洲経済の実情上租税は概ね間接税の形式に依りつつあるも之に対し再検討を加へ生活必需品に対する関税率の軽減を図る等其の運用に当りては物価政策との関連を考願すべし

(八) 物価統制を更に強化する趣旨に於て物価統制に関する行政機関の整備強化を図るべし

(九) 経済取締機構を強化すると共に取締の厳正を図り又特に民間の自治的取締を励行せしめ必要に応じては連座罰の制度等を考慮すべし

二、北支に於ける物価政策

 北支の物価に関しては対日満供給物資の円滑なる供給及■の自活を目途とし資金凍結以前の物価水準への引下を目標として現在の異常なる騰貴を一応安定せしむること緊急の要務なり、之か為には次の如き産業各方面に渉る総合物価政策を急速且強力に遂行することを要すべし

(一) 華北人の民度竝に経済の発展段階に鑑み且現在の異常なる騰貴の原因が思盛取引の横行に存することを考慮すれば取敢へず暴利の取締を目的とする法令を公布し心理的に価格騰貴を抑止すること最も妥当なり

(二) 暴利取締と平行して意迷に適正価格を設定すること肝要なるも農産品等に付ては蒐荷の現状に鑑み市場操作の方法に依るを妥当とす而して統制の対象たる物資及地区は物価の関連性に鑑み能ふ限り普遍的なるを要するも未統制物資又は未統制地区存する場合に於ては左の措置を能ふ限り講じ部分的統制の弊を減ずるを要す

(1) 未統制物資の生産に付ては原材料の使用制限禁止を行ふと共に過大利得に付賦課金徴収等の方法を採用すること

(2) 蒐荷配給統制を強力に行ひ統制地区への物資流入の円滑化を図ること

(三) 賃金、運賃、電力料等価格形成の基礎要素に付ては厳に現行水準を維持し家賃等は積極的に引下を行ふべし

 尚賃金に付改訂の要生じたるときは現物供与を行ひ貨幣給与の引上は絶対に抑止すべし

(四) 蒐荷配給機構を整備し思惑取引を抑制すると共に敵匪地区への物資流出を断絶し対日供給及現地自給に遺憾なき様留意すること肝要なり

 特に皇国其の他国内諸地域の供給力に鑑み食糧品及生活必需品に極力現地自給を行ふと共に消費規正を励行すべし

(五) 交易価格の調整の為の調整料以外の調整料又は之に類似せるものは北支物価高の一因を為すものなるを以て(将来は之を廃止する目途の下に)物価統制の進展に応じ漸次低減を計ると共に過去に積立てたる金額は価格調整に用ふるを妥当とす

(六) 物価統制を一元的に為し得るが如き強力なる機構を急速に整備すべし

(七) 前記物価統制機構と密接なる連絡を有する強力なる取締機構を設くる外保甲制度を活用する等の方法に依り経済統制に関する取締を強化し統制の運用に遺憾無きを期すべし

三、中支に於ける物価政策

 中支に於ける物価は新旧法幣の切替後種々の対策効を奏しを安定に向ひつつあるも之の情勢を持続し更には新旧法幣切替前に於ける水準への引下を行ひ対日供給力の増強■の自治及民生の安定を図るか為には急速且強力に総合的対策を講ずるの要あり

 其の要点左の如し

(一) 現任既に公布され居る暴利行為等取締規則を最大限に活用する外之と平行して適正価格を可反的広範囲に設定すると共に中支経済の実情に鑑み配給機関を動員し物資の買付、貯蔵、放出等を行ひ所謂市場操作に対し特に重点を置くべし

(二) 賃金、運賃、電力料等の価格構成要素に付ても新旧法幣切替前の水準を目途とし急速に積極的引下を図るべし

(三) 市場操作を完璧ならしむると共に需給の抜本的調整を図る為左の措置を急速に講ずべし

(1) 物資の生産を計画的に増強し其の蒐荷を確保すること

(2) 国内各地域特に南方よりの原材料確保に努め現地産業を復興し現地供給力の増大に努むこと

(3) 蒐荷、配給、交易を調整する為一元的機構を設くること

(4) 占領地内に於ては物資の計画的移動を行ふと共に敵匪地区への物資流出は厳に取締ること

(5) 配給機構を整備し思惑取引の余地無からしむること

(6) 生活必需品に付ては消費規正を行ふこと

(四) 交易価格調整に非らさる調整料又は之に類似せるものは、中支物価高の一因なるを以て(将来は之を廃止する目途の下に)物価統制の進展に応じ漸次低減を計ると共に過去に積立たる金額は価格調整に用ふるを妥当とす

(五) 速に新法幣を基調とする通貨対策を樹立し其の流通拡大に最大の努力を傾注すると共に資金対策を案■し極力不動資金を吸収し思惑取引の絶滅と呼応し資金の生産面への動員を図るべし

(六) 通貨、金融、経済の各般の施策を物価統制へ指向せしめ其の一元的運営を為し得る様機構の整備を図るべし

(七) 経済統制の取締に関しては北支に於けると同様強力なる取締機構を設立すると共に保甲制度の活用に努むべし

四、南方占領地域の物価政策

 南方占領地域の現地通貨表示の物価は当初に於ては比較的安定し居りたるも通貨の放出、物資の減少に伴ひ漸騰の傾向に在るを以て之に対しては重要物資の取得、■の自活を主眼とし更には民生の安定を目途とし事前に対策を講じ極力低物価の線に沿ふこと肝要なり

 依つて 政府は大凡左の如き措置を考慮すべし

(一) 物資の存在を確保し消費統制に依り消費遷延を講じ之と共に生活必需品機構の整備等に依り配給の円滑適正を計るべし

(二) 集中生産品(主として鉱産品)の価格は原価に適正利潤を加算して定むるも一般物価の漸騰に伴ふ賃金竝諸経費の騰貴に対しては適宜買上価格の改訂を行ひ苟くも生産を阻害するが如きことなからしむべし

(三) 鉱山労務者の賃金に関しては米、綿布、燐寸等生活必需品の現物給与制を実施し以て貨幣給与の抑制を図るべし

(四) 分散生産品(主として農林産品)の中ゴム、砂糖、植物油脂等は原則として住民生活を著しく不安ならしめざる限り低価格に定むべし

(五) 内地より送付する物資竝南方諸地域相互間交流物資の価格は生活必需品を除きては通貨の裏付としての效果あらしむる如く政策的に定むべし

(六) 現地生産現地消費品の価格は住民生活を考慮し可及的低物価堅持に努むべきも原価の高騰を来す場合は適正価格に改め採算割れを来すこと無き様留意すべし

(七) 日本人に対しては住宅給与、生活必需品の現物支給制度を実施し生活の安定を得せしむべし尚必要に応じては下級官吏に付ても右制度を適用し生活の安定を図ると共に貨幣給与の増大を抑制すること妥当なるべし

(八) 価格形成の基礎要素たる運賃、家賃、料金、金利等に関しては特に強力なる統制を行ひ可及的現行水準以下に維持すること肝要なり

(九) 不急不要の事案は出来得る限り制限すると共に課税、公債、貯蓄、富籤、馬券等に依り浮動購買力の吸収に努むべし

(十) 物価政策の統一ある運用を為し得る如機構の整備を図るべし

第四 大東亜共栄圈を通ずる価格調整万策

右万策を講じ国内各地域物価の均衡化を図るも各地域特に大陸の現状に鑑み各地間の価格差は依然存すべく右は皇国の低物価を直接脅かすのみならず国内各地域の物価を動揺せしめ間接的に皇国に波及するの虞あるのみならす斯る価格差の存在は物資の交流を不円滑ならしむるものなり茲に於て為替政策等を勘案しつつ国内各地域間の価格差を調整し各地域相互間の物価を隔絶する為に大東亜を通ずる交易竝に価格調整機構を考究するの要あるべし

而して現在に於て対支輸出入に付価格調整制度を行ひつつあるも交易機構の統一の欠如と調整制度の不完全に依り価格調整は必ずしも完璧ならず、国内の高物価の影響か我国に波及しつつあり、依て交易機構を一元化すると共に交易と一体となり価格差を完全に捕捉し以て総合的価格調整を行ふの要あり

其の万策左の如し

(1) 現在の交易機構を統合して一元的交易機構を設け国内全交易物資の輸出入、保有及配分を行ふこと

(2) 右交易機構は自己の計算に於て輸出入を行ひ国内各地域間の価格差を完全に捕捉すると共に右価格差は各種物資に渉り総合的に調整し以て各地域物価を完全に遮断すること

(3) 右に伴ひ現地輸出入機構を整理し右交易機構に統合するか又は之と不可分の関係に置き国内各地域間の交易統制竝に価格調整を一元的総合的ならしむること

(4) 右機構の価格調整は原則として収支均衡を保つを理想とするも差当りは相当の支出超過を予想せらるるを以て国家に於て之を補填し以て価格調整の万全を期すること

(Source:国立公文書館 A17110609600)

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徴兵の詔(徴兵令詔書及ヒ徴兵告諭) 1872年12月28日

徴兵令詔書及び徴兵告諭(口語訳)  今回、全国募兵の件に付き、別紙の詔書の通り徴兵令が仰せ出され、その定めるところの条々、各々天皇の趣意を戴き、下々の者に至るまで遺漏なきように公布しなさい。全体として詳細は陸軍・海軍両省と打ち合わせをしなさい。この趣旨を通達する。  ただし、徴兵令および徴募期限については追って通達するべきものとする。 (別紙) 詔書の写し   私(明治天皇)が考えるに、往昔は郡県の制度により、全国の壮年の男子を募って、軍団を設置し、それによって国家を守ることは、もとより武士・農民の区別がなかった。中世以降、兵は武士に限られるようになり、兵農分離が始まって、ついに封建制度を形成するようになる。明治維新は、実に2千有余年来の一大変革であった。この際にあたり、海軍・陸軍の兵制もまた時節に従って、変更しないわけにはいかない。今日本の往昔の兵制に基づいて、海外各国の兵制を斟酌し、全国から兵を徴集する法律を定め、国家を守る基本を確立しようと思う。おまえたち、多くのあらゆる役人は手厚く、私(明治天皇)の意志を体して、広くこれを全国に説き聞かせなさい。 明治5年(壬申)11月28日  わが国古代の兵制では、国をあげて兵士とならなかったものはいなかった。有事の際は、天皇が元帥となり、青年壮年兵役に耐えられる者を募り、敵を征服すれば兵役を解き、帰郷すれば農工商人となった。もとより後世のように両刀を帯びて武士と称し、傍若無人で働かずに生活をし、甚だしい時には人を殺しても、お上が罪を問わないというようなことはなかった。  そもそも、神武天皇は珍彦を葛城の国造に任命し、以後軍団を設け衛士・防人の制度を始めて、神亀天平の時代に六府二鎮を設けて備えがなったのである。保元の乱・平治の乱以後、朝廷の軍規が緩み、軍事権は武士の手に落ち、国は封建制の時代となって、人は兵農分離とされた。さらに後世になって、朝廷の権威は失墜し、その弊害はあえていうべきものもなく甚だしいものとなった。  ところが、明治維新で諸藩が領土を朝廷に返還し、1871年(明治4)になって以前の郡県制に戻った。世襲で働かずに生活していた武士は、俸禄を減らし、刀剣を腰からはずすことを許し、士農工商の四民にようやく自由の権利を持たせようとしている。これは上下の身分差をなくし、人権を平等にしようとする方法で、とりもな...

日清修好条規 1871年09月13日

内容見直し点:口語訳中途 修好条規(口語訳、前文署名省略) 第一条 この条約締結のあとは、大日本国と大清国は弥和誼を敦うし、天地と共に窮まり無るべし。又両国に属したる邦土も、各礼を以て相待ち、すこしも侵越する事なく永久安全を得せしむべし。 第二条 両国好を通ぜし上は、必ず相関切す。若し他国より不公及び軽藐する事有る時、其知らせを為さば、何れも互に相助け、或は中に入り、程克く取扱い、友誼を敦くすべし。 第三条 両国の政事禁令各異なれば、其政事は己国自主の権に任すべし。彼此に於て何れも代謀干預して禁じたる事を、取り行わんと請い願う事を得ず。其禁令は互に相助け、各其商民に諭し、土人を誘惑し、聊違犯あるを許さず。 第四条 両国秉権大臣を差出し、其眷属随員を召具して京師に在留し、或は長く居留し、或は時々往来し、内地各処を通行する事を得べし。其入費は何れも自分より払うべし。其地面家宅を賃借して大臣等の公館と為し、並びに行李の往来及び飛脚を仕立書状を送る等の事は、何れも不都合がないように世話しなければならない。 第五条 両国の官位何れも定品有りといえども、職を授る事各同じからず。因彼此の職掌相当する者は、応接及び交通とも均く対待の礼を用ゆ。職卑き者と上官と相見るには客礼を行い、公務を辨ずるに付ては、職掌相当の官へ照会す。其上官へ転申し直達する事を得ず。又双方礼式の出会には、各官位の名帖を用う。凡両国より差出したる官員初て任所に到着せば、印証ある書付を出し見せ、仮冒なき様の防ぎをなすべし。 第六条 今後両国を往復する公文について、清国は漢文を用い、日本国は日本文を用いて漢訳文を副えることとする。あるいはただ漢文のみを用い、その記載に従うものとする。 (これ以下まだ) 第七条 両国好みを通ぜし上は、海岸の各港に於て彼此し共に場所を指定め、商民の往来貿易を許すべし。猶別に通商章程を立て、両国の商民に永遠遵守せしむべし。 第八条 両国の開港場には、彼此何れも理事官を差置き、自国商民の取締をなすべし。凡家財、産業、公事、訴訟に干係せし事件は、都て其裁判に帰し、何れも自国の律例を按して糾辨すべし。両国商民相互の訴訟には、何れも願書体を用う。理事官は先ず理解を加え、成丈け訴訟に及ばざる様にすべし。其儀能わざる時は、地方官に掛合い双方出会し公平に裁断すべし。尤盗賊欠落等の事件は、両国の地方官より...

下関条約 1895年04月17日

下関条約(口語訳、前文署名省略)  第一条 清国は朝鮮国の完全無欠なる独立自主の国であることを確認する。よって右独立自主を損害すべき朝鮮国より清国に対する貢献典礼等は将来全くこれを廃止する。  第二条 清国は左記の土地の主権並びに当該地方にある城塞、兵器製造所及び官有物を永遠に日本国に割譲する。  一 左の境界内にある奉天省南部の地    鴨緑江口より該江を遡り、安平河口に至り該河口より鳳凰城海城営口にわたり遼河口に至る折線以南の地、併せて前記の各城市を包含する。そして遼河を以って界とするところは該河の中央を以って境界とすることとする。    遼東湾東岸及び黄海北岸にあって奉天省に属する諸島嶼  二 台湾全島及びその付属諸島嶼  三 澎湖列島、即ち英国「グリニッジ」東経百十九度から百二十度まで及び北緯二十三度から二十四度までの間にある諸島嶼  第三条 前条に掲載し付属地図に示すところの境界線は、本条約批准交換後直ちに日清両国より各二名以上の境界画定委員を任命し、実地について確定するところあるべきものとする。そしてもし本条約に掲記するところの境界にして地形上又は施政上の点につき完全にならない場合には、当該境界画定委員はこれを更正することに任ずる。  第四条 清国は軍費賠償金として、庫平銀2憶両を日本国に支払うべきことを約する。右金額は都合8回に分け、初回及び2回には毎回5千万両を支払う。そして初回の払込は本条約批准交換後6か月以内に、次回の払込は本条約批准交換後12か月以内において行う。残りの金額は6箇年賦に分け、その1次は本条約批准交換後2年以内に、2次は本条約批准交換後3年以内に、3次は本条約批准交換後4年以内に、4次は本条約批准交換後5年以内に、5次は本条約批准交換後6年以内に、6次は本条約批准交換後7年以内に支払う。また、初回払込期日より以後未だ払込を終了しない額に対しては、毎年5%の利子を支払うべきものとする。 但し、清国は何時でも当該賠償金の全額あるいはその一部を前もって一時に支払うことができる。本条約批准交換後3年以内に当該賠償金の総額を完済するときは、すべての利子を免除する。もし2年半若しくは更に短期の利子を払い込んだときは、これを元金に編入する。  第五条 日本国へ割譲された地方の住民にして、割譲された地方の外に住居したいと希望する者には自由にその所...