帝国憲法改正要綱(近衛私案)(ひらがな化、一部新字体化)
帝国憲法の改正に関し考査して得たる結果の要綱次の如し
第一 帝国憲法改正の必要の有無
我国今回の敗戦に鑑み国家将来の建設に資するが為に帝国憲法改正をなすの要あり、単にその解釈運用のみに頼るべからず
第二 帝国憲法改正の要点
一、天皇統治権を行ふは万民の翼賛に依る旨を特に明にす
二、天皇の憲法上の大権を制限する主旨の下に
イ、帝国議会をして自ら解散を提議するを得しむること、帝国議会に代るべき憲法事項審議会(両院議員を以て組織す)をして直接天皇に召集を奏請するを得しむること、及濫りに解散を繰返すを得ざることとす
ロ、緊急命令に付ては予め憲法事項審議会に諮ることとし、又所謂委任命令の規定事項には一定の範囲の存することを明にす
ハ、宣戦講和及条約締結に付ては帝国議会の協賛を経ることとし、開会の暇なき場合は憲法事項審議会に諮ることとす
ニ、他の憲法上の大権事項も帝国議会の協賛を経て行ひ得ることとす
三、軍の統帥及編成も国務なることを特に明にす、第十一条及第十二条は之を削除又は修正することを考究するの要あり
四、臣民の自由を尊重する主旨の下に
イ、現行帝国憲法に於ける如く臣民は法律の範囲内に於てのみ行動上の自由を有する如き印象を払拭するの要あり
ロ、外国人も本則として日本臣民と同様の取扱を受くるものなることを特に明記す
ハ、所謂非常大権の条項を削除することを考究するの要あり
五、衆議院は一般国民に代て活溌に国務に参加し貴族院は平静なる態度を以て国務に参加する機関たらしむる主旨の下に
イ、貴族院の名を改め特議院(仮称)としその議員は衆議院と異りたる選挙其の他の方法により選任す
ロ、特議院の組織も衆議院と同じく法律に依り定めらるることとす
ハ、本来帝国議会の議決を以てするを妥当とするも議会の行動を待つを得ざる事項を審議する為両院議員を以て憲法事項審議会を置く
六、国務大臣の地位を明確ならしむる主旨の下に
イ、天皇の外帝国議会も国務大臣の責任を問ふものなることを明にす
ロ、国務大臣を以て内閣を組織し内閣総理大臣の選任に関し一定の手続を定むべきことを特に明記す
ハ、内閣総理大臣は内閣の統一を保ち国務全般に付き上奏し之を宣示することを明にす、その結果内閣総理大臣は他の国務大臣に上奏の事項に付き通告を求むるを得ることとす
七、枢密院は之を廃止す
八、帝国議会の予算審議権を尊重する主旨の下に
イ、皇室経費も帝国議会之が変更を議し得るものとす
ロ、衆議院の予算先議権の主旨を一層具体的に実現する方法を講ずるの要あり、其の例として特議院の予算審議権を制限すること必要なるべし
ハ、予算不成立の場合現行帝国憲法の下に於ては帝国議会の監視を不十分ならしむる虞あり、故に此の見地より之を改正するの要あり
九、帝国憲法改正発議に付き帝国議会も之に参与し得ることとす、但改正に関する手続は之を慎重ならしむること必要なるべし、之に関連し国民投票に依る方法も考究の要あるべし
(Source:国立国会図書館 https://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/02/041shoshi.html)
コメント
コメントを投稿