極東国際軍事裁判所手続規程(ひらがな化、一部新字体化、不明文字あり)
極東國際軍事裁判所手續規程
一九四六年一月十九日附連合国最高司令官の発したる特別宣言竝に同日附裁判所条例及其の改正条項に基き設置せられたる極東国際軍事裁判所(以下之を裁判所と称す)の手続規程は同条例第七条の規定に従ひ本一九四六年四月二十五日本裁判所玆に之を公布す
第一条 被告人に対する通知
イ、収容中の各被告人に対しては証拠調開始の日より少くとも十四日前に被告人の理解する国語に翻訳せられたる左記書類の謄本を交付するを要す
(1)起訴状
(2)極東国際軍事裁判所条例
(3)起訴状に添附せられたる其の他の書類
ロ、未収容の被告人に対しては起訴ありたる事実竝に前項に掲ぐる文書の交付を受くる権利ある旨を裁判所の定むる形式及び方法に依り通告するを要す
ハ、公判廷に於て弁護をなす弁護人は被告人一人に付一人を超ゆることを得ず但し特に裁判所の許可を受けたる場合は此の限に在らず
第二条 追加書類の送達
イ、証拠調開始前首席検察
官か起訴状を訂正又は補足したるときは之を裁判所に提出するを要す右訂正又は補足に附属する書類に付亦同し、収容中の被告人に対しては被告人の理解する国語に翻訳せられたる右書類の謄本を交付するを要す、未収容の被告人に対しては第一条(ロ)項所定の通告を為すを要す
ロ、書記長に対し申請ありたるとき起訴状関係書類にして首席検察官の提示し得べきものは被告人の理解する国語に翻訳し其の謄本を被告人に交付し右書類にして首席検察官の提示し得さるものは其の謄本の閲覧を許容せらるへし
第三条 公判廷の秩序維持
条例第十二条の所定に従ひ且同条所定の懲戒権に基き裁判所は裁判長に依り法廷に於ける秩序の維持に任す被告人又は其他の者裁判所の命令を遵守せす若は裁判所の威信を損傷する行為ありたるときは裁判所の公判より除斥せらるることあるへし
第四条 証人
イ、証人は裁判所に於て証言を為すに先立ち自国の慣習に従ひ宣誓、宣言又は誓言を為すを要す
ロ、証人は証言を為すときの外出廷するを得す但し裁判所の許可したる場合は此の限に在らす裁判長は必要に応じ証人か証言を為すに先立ち相互に協議すへからさる旨命することを得
第五条 裁判所の証拠調開始前に為されたる申請及申立竝に公判中の裁定
イ、裁判所の証拠調開始に先立ち裁判所に対し為されたる申立申請又は其の他の請求は書記長に依り夫々の場合に応し首席検察官に若は関係被告人又は其の弁護人に通告せらるへし右の者に於て異議なきとき裁判長は裁判所の為適当と認むる命令を発することを得右の者に於て異議あるとき裁判所は当該事項決定の為裁判所の特別会議を召集することを得
ロ、裁判所は証拠の証拠能力の問題、休廷に関する問題及び申請に基く問題を含む公判中生することあるへき凡ゆる問題に関し裁判長に依り之を裁定し且之に先立ち必要あるときは執■■■閉廷を宣し又は傍聴人の退席を命し或は裁判所の正当■■■■其の他の措置を執ることを得
第六条 記録、証拠物及文書
イ、凡て口頭弁論に関する記録は保存するを要す証拠物は適当に照査したる上一連番号を附す、右記録及弁論の内容にして裁判所か裁判の公正を期し且公衆の参考に供する為適当と認むるものは之を日本語に翻訳せしむることを得
ロ、検察官側又は被告人側か証拠として引用せんとする文書は可能なる限り謄本を作成し之を夫々の場合に応し関係被告人又はその弁護士に若は検察官側に交付すると共に少くとも右文書を証拠として差出す二十四時間前に裁判所書記課言語部主任将校に提出するを要す右謄本には検察官側若は被告人側か夫々援用せんとする箇所を明示すへく且右箇所を英語又は日本語に各翻訳し之を右謄本に添附するを要す若し右文書か英語又は日本語に非さる国語により作成せられあるとき右文書又は前記箇所を英語又は日本語に翻訳し之を夫々の場合に応し前記検察官側若は関係被告人或はその弁護人に交付し且それを前記言語部将校に提出するを以て本項所定の要件を充足するものと看做す
ハ、公判中検察官側若は被告人又はその弁護人か受理したる追加文書にして公判廷に於て援用せんとするものは直ちに之を相手方たる関係被告人又は弁護人若は検察官側に夫々通告すると共に為し得る限り速にその謄本を右相手方に交付すへし
ニ、凡て証拠物及ひ公判調書予め裁判所に差出され又は公判中裁判所に提出せられたる文書竝に公の決議及公文書はその謄本又は決議文か正当なる請求に基き提供せらるへきものと思料せらるる場合は裁判所の同意を得如何なる政府に対しても又は如何なる他の裁判所に対しても書記長之を認証することを得
ホ、検察官側又は被告人側より文書の原本か証拠として提出せられたる場合に於て左記各号に掲くる事由あるとき裁判所は録中に存する原本に代へ書記長の認証ある該原本文書の写真謄写を許可し且右原本を申請者に返還す
(1)日本の降伏文書に連署したる諸国中の一国又は前記連署国の総てより同意を得たる他の政府か史料となす為又は其他の理由に基き特に原本たる文書を裁判所の記録より回収し之を保存せんと欲したること且
(2)右に因り事実中衡平を害する虞なきこと
第七条 証印
イ、裁判所に証印を備ふ、凡て命令状、証拠其他裁判長の随時指定する文書には之を押捺すべし
ロ、証印は書記長之を保管す其の方法は裁判長の認可を受くべし
第八条 宣誓及び誓言の方式
イ、書記長、裁判所書記■全員、速記者、通訳及び其の他裁判官に従属する者は左の方式又はそれと同趣旨の方式に従ひ宣誓書に署名し且之を裁判所に提出するを要す
「私儀(氏名及職名)極東国際軍事裁判所に勤務中同裁判所に関し知り得べき如何なる事項と雖、当該事項に付き報告を受くる権限を有する者又は同裁判所裁判官を除くの外之を漏洩致す間数く候」
ロ、正式に任命せられたる法廷記録委員及び通訳は其の執務開始に先ち左に想定する方式に従ひ宣誓又は誓言するを要す
(1)、記録員の宣誓方式(日本人を除く)
「当裁判所に対し記録員たるの職責を忠実に果すことを誓ふ、神も照覧あれ」
(2)、記録員の誓言方式(日本人を除く)
「当裁判所に対し記録員たるの職責を忠実に果すことを誓ふ」
(3)、通訳の宣誓方式(日本人を除く)
「現に審理中の事件に付き正当なる通訳を為すことを誓ふ、神も照覧あれ」
(4)、通訳の誓言方式(日本人を除く)
「現に審理中の事件に付き正当なる通訳を為すことを誓ふ」
(5)、日本人記録員
「良心に従ひ■裁判所に対し記録員たるの職責を忠実に果すことを誓ふ」
(6)、日本人通訳
「良心に従ひ現に審理中の事件に付き正確なる通訳をなすことを誓ふ」
第九条 施行時期竝に改正及び増補の権能
本規程中の各条項を適用するに当り、審理の公正且迅速を期する為、裁判所は一般原則に基き又は各箇の事件に付き裁判所の正当と認むる形式に依り且相当の予告期間を定めて発したる特別命令に基き本規程を随時停止、改正又は増補するの権を妨げらるることなし
本葉及び前四葉は極東国際軍事裁判所の定めたる手続規程を記載せるものなることを認証す
裁判長「ウイリアム・エフ・ウェッブ」
(Source:国立公文書館 A08071274100)
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