ヴェルサイユ条約（原文：一部新字体化）
（前文省略）
第一部
国際連盟規約
大正八年（一九一九）六月二八日
締約国ハ
戰爭ニ訴ヘサルノ義務ヲ受諾シ
各国間ニ於ケル公明正大ナル関係ヲ規律シ
各国政府間ノ行為ヲ律スル現實ノ規準トシテ国際法ノ原則ヲ確立シ
組織アル人民ノ相互ノ交渉ニ於テ正義ヲ保持シ且嚴ニ一切ノ条約上ノ義務ヲ尊重シ
以テ国際協力ヲ促進シ且各国間ノ平和安寧ヲ完成セムカ為
茲ニ国際連盟規約ヲ協定ス
第一条
本規約附属書列記ノ署名国及留保ナクシテ本規約ニ加盟スル該附属書列記ノ爾餘諸国ヲ以テ国際連盟ノ原連盟国トス右加盟ハ本規約實施後二月以内ニ宣言書ヲ連盟事務局ニ寄託シテ之ヲ為スヘシ右ニ関シテハ一切ノ他ノ連盟国ニ通告スヘキモノトス
附属書ニ列記セサル国、領地又ハ殖民地ニシテ完全ナル自治ヲ有スルモノハ其ノ加入ニ付連盟総会三分ノ二ノ同意ヲ得ルニ於テハ総テ連盟国ト為ルコトヲ得但シ其ノ国際義務遵守ノ誠意アルコトニ付有效ナル保障ヲ與へ且其ノ陸海及空軍ノ兵力其ノ他ノ軍備ニ関シ連盟ノ定ムルコトアルヘキ準則ヲ受諾スルコトヲ要ス
連盟国ハ二年ノ豫告ヲ以テ連盟ヲ脱退スルコトヲ得但シ脱退ノ時迄ニ其ノ一切ノ国際上及本規約上ノ義務ハ履行セラレタルコトヲ要ス
第二条
本規約ニ依ル連盟ノ行動ハ連盟総会及連盟理事会竝附属ノ常設連盟事務局ニ依リテ之ヲ為スヘキモノトス
第三条
連盟総会ハ連盟国ノ代表者ヲ以テ組織ス
連盟総会ハ連盟本部所在地又ハ別ニ定ムルコトアルヘキ地ニ於テ定期ニ及必要ニ應シ隨時之ヲ開ク
連盟総会ハ連盟ノ行動範圍ニ属シ又ハ世界ノ平和ニ影響スル一切ノ事項ヲ其ノ会議ニ於テ處理ス
連盟国ハ連盟総会ノ会議ニ於テ各一箇ノ表決権ヲ有スヘク且三名ヲ超エサル代表者ヲ出スコトヲ得
第四条
連盟理事会ハ主タル同盟及連合国ノ代表者竝他ノ四連盟国ノ代表者ヲ以テ之ヲ組織ス該四連盟国ハ連盟総会其ノ裁量ニ依リ隨時之ヲ選定ス連盟総会カ第一次ニ選定スル四連盟国ニ於テ其ノ代表者ヲ任命スル迄ハ白耳義国、伯刺西爾国、西班牙国及希臘国ノ代表者ヲ以テ連盟理事会員トス
連盟理事会ハ連盟総会ノ過半數ノ同意アルトキハ連盟理事会ニ常ニ代表者ヲ出スヘキ連盟国ヲ追加指定スルコトヲ得連盟理事会ハ同会ニ代表セシムル為連盟総会ノ選定スヘキ連盟国ノ數ヲ前同樣ノ同意ヲ以テ増加スルコトヲ得
連盟理事会ハ連盟本部所在地又ハ別ニ定ムルコトアルヘキ地ニ於テ必要ニ應シ隨時ニ且少クトモ毎年一回之ヲ開ク
連盟理事会ハ連盟ノ行動範圍ニ属シ又ハ世界ノ平和ニ影響スル一切ノ事項ヲ其ノ会議ニ於テ處理ス
連盟理事会ニ代表セラレサル連盟各国ハ特ニ其ノ利益ニ影響スル事項ノ審議中連盟理事会会議ニ理事会員トシテ列席スル代表者一名ノ派遣ヲ招請セラルヘシ
連盟理事会ニ代表セラルル連盟各国ハ連盟理事会会議ニ於テ一箇ノ表決権ヲ有スヘク且一名ノ代表者ヲ出スコトヲ得
第五条
本規約中又ハ本条約ノ条項中別段ノ明文アル場合ヲ除クノ外連盟総会又ハ連盟理事会ノ会議ノ議決ハ其ノ会議ニ代表セラルル連盟国全部ノ同意ヲ要ス
連盟総会又ハ連盟理事会ノ会議ニ於ケル手續ニ関スル一切ノ事項ハ特殊事項調査委員ノ任命ト共ニ連盟総会又ハ連盟理事会之ヲ定ム此ノ場合ニ於テハ其ノ会議ニ代表セラルル連盟国ノ過半數ニ依リテ之ヲ決定スルコトヲ得
連盟総会ノ第一回会議及連盟理事会ノ第一回会議ハ亞米利加合衆国大統領之ヲ招集スヘシ
第六条
常設連盟事務局ハ連盟本部所在地ニ之ヲ設置ス連盟事務局ニハ事務総長一名竝必要ナル事務官及属員ヲ置ク
第一次ノ事務総長ハ附属書ニ之ヲ指定シ爾後ノ事務総長ハ連盟総会過半數ノ同意ヲ以テ連盟理事会之ヲ任命ス
連盟事務局ノ事務官及属員ハ連盟理事会ノ同意ヲ以テ事務総長之ヲ任命ス
事務総長ハ連盟総会及連盟理事会ノ一切ノ会議ニ於テ其ノ資格ニテ行動ス
連盟事務局ノ經費ハ萬国郵便連合総理局ノ經費分擔ノ割合ニ從ヒ連盟国之ヲ負擔ス
第七条
連盟本部所在地ハ「ジュネーヴ」トス
連盟理事会ハ何時タリトモ其ノ議決ニ依リ他ノ地ヲ以テ連盟本部所在地ト為スコトヲ得
連盟ニ関シ又ハ之ニ附帶スル一切ノ地位ハ連盟事務局ノ地位ト共ニ男女均シク之ニ就クコトヲ得
連盟国代表者及連盟職員ハ連盟ノ事務ニ從事スル間外交官ノ特権及免除ヲ享有ス
連盟、連盟職員又ハ連盟会議參列代表者ノ使用スル建物其ノ他ノ財産ハ之ヲ不可侵トス
第八条
■ここから■連盟国ハ平和維持ノ為ニハ其ノ軍備ヲ国ノ安全及国際義務ヲ協同動作ヲ以テスル強制ニ支障ナキ最低限度迄縮少スルノ必要アルコトヲ承認ス
連盟理事会ハ各国政府ノ審議及決定ニ資スル為各国ノ地理的地位及諸般ノ事情ヲ參酌シテ軍備縮少ニ関スル案ヲ作成スヘシ
該案ハ少クトモ十年毎ニ再審議ニ付セラルヘク且更正セラルヘキモノトス
各国政府前記ノ案ヲ採用シタルトキハ連盟理事会ノ同意アルニ非サレハ該案所定ノ軍備ノ限度ヲ超ユルコトヲ得ス
連盟国ハ民業ニ依ル兵器彈藥及軍用器材ノ製造カ重大ナル非議ヲ免レサルモノナルコトヲ認ム仍テ連盟理事会ハ該製造ニ伴フ弊害ヲ防遏シ得ヘキ方法ヲ具申スヘシ尤モ連盟国中其ノ安全ニ必要ナル兵器彈藥及軍用器材ヲ製造シ得サルモノノ需要ニ関シテハ相当斟酌スヘキモノトス
連盟国ハ其ノ軍備ノ規模、陸海及空軍ノ企畫竝軍事上ノ目的ニ供用シ得ヘキ工業ノ状況ニ関シ充分ニシテ隔意ナキ報道ヲ交換スヘキコトヲ約ス
第九条
第一条及第八条ノ規定ノ實行竝陸海及空軍問題全般ニ関シテハ連盟理事会ニ意見ヲ具申スヘキ常設委員会ヲ設置スヘシ
第十条
連盟国ハ連盟各国ノ領土保全及現在ノ政治的獨立ヲ尊重シ且外部ノ侵略ニ對シ之ヲ擁護スルコトヲ約ス右侵略ノ場合又ハ其ノ脅威若ハ危險アル場合ニ於テハ連盟理事会ハ本条ノ義務ヲ履行スヘキ手段ヲ具申スヘシ
第十一条
戰爭又ハ戰爭ノ脅威ハ連盟国ノ何レカニ直接ノ影響アルト否トヲ問ハス総テ連盟全體ノ利害関係事項タルコトヲ茲ニ聲明ス仍テ連盟ハ国際ノ平和ヲ擁護スル為適当且有效ト認ムル措置ヲ執ルヘキモノトス此ノ種ノ事變發生シタルトキハ事務総長ハ何レカノ連盟国ノ請求ニ基キ直ニ連盟理事会ノ会議ヲ招集スヘシ
国際関係ニ影響スル一切ノ事態ニシテ国際ノ平和又ハ其ノ基礎タル各国間ノ良好ナル了解ヲ攪亂セムトスル虞アルモノニ付連盟総会又ハ連盟理事会ノ注意ヲ喚起スルハ連盟各国ノ友誼的権利ナルコトヲ併セテ茲ニ聲明ス
第十二条
連盟国ハ連盟国間ニ国交斷絶ニ至ルノ虞アル紛爭發生スルトキハ当該事件ヲ仲裁裁判又ハ連盟理事会ノ審査ニ付スヘク且仲裁裁判官ノ判決後又ハ連盟理事会ノ報告後三月ヲ經過スル迄如何ナル場合ニ於テモ戰爭ニ訴ヘサルコトヲ約ス
本条ニ依ル一切ノ場合ニ於テ仲裁裁判官ノ判決ハ相当期間内ニ、連盟理事会ノ報告ハ紛爭事件付託後六月以内ニ之ヲ為スヘシ
第十三条
連盟国ハ連盟国間ニ仲裁裁判ニ付シ得ト認ムル紛爭ヲ生シ其ノ紛爭カ外交手段ニ依リテ滿足ナル解決ヲ得ルコト能ハサルトキハ当該事件全部ヲ仲裁裁判ニ付スヘキコトヲ約ス
条約ノ解釋、国際法上ノ問題、国際義務ノ違反ト為ルヘキ事實ノ存否竝該違反ニ對スル賠償ノ範圍及性質ニ関スル紛爭ハ一般ニ仲裁裁判ニ付シ得ル事項ニ属スルモノナルコトヲ聲明ス
審理ノ為紛爭事件ヲ付託スヘキ仲裁裁判所ハ当事国ノ合意ヲ以テ定メ又ハ当事国間ニ現存スル条約ノ規定ノ定ムル所ニ依ル
連盟国ハ一切ノ仲裁判決ヲ誠實ニ履行スヘク且判決ニ服スル連盟国ニ對シテハ戰爭ニ訴ヘサルコトヲ約ス判決ヲ履行セサルモノアルトキハ連盟理事会ハ其ノ履行ヲ期スル為必要ナル處置ヲ提議スヘシ
第十四条
連盟理事会ハ常設国際司法裁判所設置案ヲ作成シ之ヲ連盟国ノ採擇ニ付スヘシ該裁判所ハ国際的性質ヲ有スル一切ノ紛爭ニシテ其ノ当事国ノ付託ニ係ルモノヲ裁判スルノ権限ヲ有ス尚該裁判所ハ連盟理事会又ハ連盟総会ノ諮問スル一切ノ紛爭又ハ問題ニ関シ意見ヲ提出スルコトヲ得
第十五条
連盟国間ニ国交斷絶ニ至ルノ虞アル紛爭發生シ第十三条ニ依ル仲裁裁判ニ付セラレサルトキハ連盟国ハ当該事件ヲ連盟理事会ニ付託スヘキコトヲ約ス何レノ紛爭当事国モ紛爭ノ存在ヲ事務総長ニ通告シ以テ前記ノ付託ヲ為スコトヲ得事務総長ハ之カ充分ナル取調及審理ニ必要ナル一切ノ準備ヲ為スモノトス
此ノ目的ノ為紛爭当事国ハ成ルヘク速ニ当該事件ニ関スル陳述書ヲ一切ノ関係事實及書類ト共ニ事務総長ニ提出スヘク連盟理事会ハ直ニ其ノ公表ヲ命スルコトヲ得
連盟理事会ハ紛爭ノ解決ニ力ムヘク其ノ努力效ヲ奏シタルトキハ其ノ適当ト認ムル所ニ依リ当該紛爭ニ関スル事實及説明竝其ノ解決条件ヲ記載セル調書ヲ公表スヘシ
紛爭解決ニ至ラサルトキハ連盟理事会ハ全会一致又ハ過半數ノ表決ニ基キ当該紛爭ノ事實ヲ述へ公正且適当ト認ムル勸告ヲ載セタル報告書ヲ作成シ之ヲ公表スヘシ
連盟理事会ニ代表セラルル連盟国ハ何レモ当該紛爭ノ事實及之ニ関スル自国ノ決定ニ付陳述書ヲ公表スルコトヲ得
連盟理事会ノ報告書カ紛爭当事国ノ代表者ヲ除キ他ノ連盟理事会員全部ノ同意ヲ得タルモノナルトキハ連盟国ハ該報告書ノ勸告ニ應スル紛爭当事国ニ對シ戰爭ニ訴ヘサルヘキコトヲ約ス
連盟理事会ニ於テ紛爭当事国ノ代表者ヲ除キ他ノ連盟理事会員全部ノ同意アル報告書ヲ得ルニ至ラサルトキハ連盟国ハ正義公道ヲ維持スル為必要ト認ムル處置ヲ執ルノ権利ヲ留保ス
紛爭当事国ノ一国ニ於テ紛爭カ国際法上專ラ該当事国ノ管轄ニ属スル事項ニ付生シタルモノナルコトヲ主張シ連盟理事会之ヲ是認シタルトキハ連盟理事会ハ其ノ旨ヲ報告シ且之カ解決ニ関シ何等ノ勸告ヲモ為ササルモノトス
連盟理事会ハ本条ニ依ル一切ノ場合ニ於テ紛爭ヲ連盟総会ニ移スコトヲ得紛爭当事国一方ノ請求アリタルトキハ亦之ヲ連盟総会ニ移スヘシ但シ右請求ハ紛爭ヲ連盟理事会ニ付託シタル後十四日以内ニ之ヲ為スコトヲ要ス
連盟理事会ノ行動及権限ニ関スル本条及第十二条ノ規定ハ連盟総会ニ移シタル事件ニ関シ総テ之ヲ連盟総会ノ行動及権能ニ適用ス但シ紛爭当事国ノ代表者ヲ除キ連盟理事会ニ代表セラルル連盟各国代表者及爾餘過半數連盟国ノ代表者ノ同意ヲ得タル連盟総会ノ報告書ハ紛争当事国ノ代表者ヲ除キ他ノ連盟理事会員全部ノ同意ヲ得タル連盟理事会ノ報告書ト同一ノ效力ヲ有スヘキモノトス
第十六条
第十二条、第十三条又ハ第十五条ニ依ル約束ヲ無視シテ戰争ニ訴ヘタル連盟国ハ当然他ノ総テノ連盟国ニ對シ戰争行為ヲ為シタルモノト看做ス他ノ総テノ連盟国ハ之ニ對シ直ニ一切ノ通商上又ハ金融上ノ関係ヲ斷絶シ自国民ト違約国国民トノ一切ノ交通ヲ禁止シ且連盟国タルト否トヲ問ハス他ノ総テノ国ノ国民ト違約国国民トノ間ノ一切ノ金融上通商上又ハ個人的交通ヲ防遏スヘキコトヲ約ス
連盟理事会ハ前項ノ場合ニ於テ連盟ノ約束擁護ノ為使用スヘキ兵力ニ對スル連盟各国ノ陸海又ハ空軍ノ分擔程度ヲ関係各国政府ニ提案スルノ義務アルモノトス
連盟国ハ本条ニ依リ金融上及經濟上ノ措置ヲ執リタル場合ニ於テ之ニ基ク損失及不便ヲ最少限度ニ止ムル為相互ニ支持スヘキコト、連盟ノ一国ニ對スル違約国ノ特殊ノ措置ヲ抗拒スル為相互ニ支持スヘキコト竝連盟ノ約束擁護ノ為協力スル連盟国軍隊ノ版圖内通過ニ付必要ナル處置ヲ執ルヘキコトヲ約ス
連盟ノ約束ニ違反シタル連盟国ニ付テハ連盟理事会ニ代表セラルル他ノ一切ノ連盟国代表者ノ連盟理事会ニ於ケル一致ノ表決ヲ以テ連盟ヨリ之ヲ除名スル旨ヲ聲明スルコトヲ得
第十七条
連盟国ト非連盟国トノ間又ハ非連盟国相互ノ間ニ紛争ヲ生シタルトキハ此ノ種紛争解決ノ為連盟国ノ負フヘキ義務ヲ該非連盟国カ連盟理事会ノ正当ト認ムル条件ヲ以テ受諾スルコトヲ之ニ勸誘スヘシ勸誘ノ受諾アリタル場合ニ於テハ第十二条乃至第十六条ノ規定ハ連盟理事会ニ於テ必要ト認ムル修正ヲ加ヘテ之ヲ適用ス
前項ノ勸誘ヲ為シタルトキハ連盟理事会ハ直ニ紛争事情ノ審査ヲ開始シ当該事情ノ下ニ於テ最善且最有效ト認ムル行動ヲ勸告スヘシ
勸誘ヲ受ケタル国カ此ノ種紛争解決ノ為連盟国ノ負フヘキ義務ノ受諾ヲ拒ミ連盟国ニ對シ戰争ニ訴フル場合ニ於テハ第十六条ノ規定ハ該行動ヲ執ル国ニ之ヲ適用ス
勸誘ヲ受ケタル紛争当事国ノ雙方カ此ノ種紛争解決ノ為連盟国ノ負フヘキ義務ノ受諾ヲ拒ム場合ニ於テハ連盟理事会ハ敵對行為ヲ防止シ紛争ヲ解決スヘキ措置及勸告ヲ為スコトヲ得
第十八条
連盟国カ將來締結スヘキ一切ノ条約又ハ国際約定ハ直ニ之ヲ連盟事務局ニ登録シ連盟事務局ハ成ルヘク速ニ之ヲ公表スヘシ右条約又ハ国際約定ハ前記ノ登録ヲ了スル迄其ノ拘束力ヲ生スルコトナカルヘシ
第十九条
連盟総会ハ適用不能ト為リタル条約ノ再審議又ハ繼續ノ結果世界ノ平和ヲ危殆ナラシムヘキ国際状態ノ審議ヲ隨時連盟国ニ慫慂スルコトヲ得
第二十条
連盟国ハ本規約ノ条項ト兩立セサル連盟国相互間ノ義務又ハ了解カ各自国ノ関スル限リ総テ本条約ニ依リ廢棄セラルヘキモノナルコトヲ承認シ且今後本規約ノ条項ト兩立セサル一切ノ約定ヲ締結セサルヘキコトヲ誓約ス
連盟国ト為ル以前本規約ノ条項ト兩立セサル義務ヲ負擔シタル連盟国ハ直ニ該義務ノ解除ヲ得ルノ處置ヲ執ルコトヲ要ス
第二十一条
本規約ハ仲裁裁判条約ノ如キ国際約定又ハ「モンロー」主義ノ如キ一定ノ地域ニ関スル了解ニシテ平和ノ確保ヲ目的トスルモノノ效力ニ何等ノ影響ナキモノトス
第二十二条
今次ノ戰争ノ結果從前支配シタル国ノ統治ヲ離レタル殖民地及領土ニシテ近代世界ノ激甚ナル生存競争状態ノ下ニ未タ自立シ得サル人民ノ居住スルモノニ對シテハ該人民ノ福祉及發達ヲ計ルハ文明ノ神聖ナル使命ナルコト及其ノ使命遂行ノ保障ハ本規約中ニ之ヲ包容スルコトノ主義ヲ適用ス
此ノ主義ヲ實現スル最善ノ方法ハ該人民ニ對スル後見ノ任務ヲ先進国ニシテ資源、經驗又ハ地理的位置ニ因リ最此ノ責任ヲ引受クルニ適シ且之ヲ受諾スルモノニ委任シ之ヲシテ連盟ニ代リ受任国トシテ右後見ノ任務ヲ行ハシムルニ在リ
委任ノ性質ニ付テハ人民發達ノ程度、領土ノ地理的地位、經濟状態其ノ他類似ノ事情ニ從ヒ差異ヲ設クルコトヲ要ス
從前土耳其帝国ニ属シタル或部族ハ獨立国トシテ假承認ヲ受ケ得ル發達ノ程度ニ達シタリ尤モ其ノ自立シ得ル時期ニ至ル迄施政上受任国ノ助言及援助ヲ受クヘキモノトス前記受任国ノ選定ニ付テハ主トシテ当該部族ノ希望ヲ考慮スルコトヲ要ス
他ノ人民殊ニ中央阿弗利加ノ人民ハ受任国ニ於テ其ノ地域ノ施政ノ責ニ任スヘキ程度ニ在リ尤モ受任国ハ公ノ秩序及善良ノ風俗ニ反セサル限リ良心及信教ノ自由ヲ許與シ、奴隸ノ賣買又ハ武器若ハ火酒類ノ取引ノ如キ弊習ヲ禁止シ竝築城又ハ陸海軍根據地ノ建設及警察又ハ地域防衛以外ノ為ニスル土民ノ軍事教育ヲ禁遏スヘキコトヲ保障シ且他ノ連盟国ノ通商貿易ニ對シ均等ノ機会ヲ確保スルコトヲ要ス
西南阿弗利加及或南太平洋諸島ノ如キ地域ハ人口ノ稀薄、面積ノ狹小、文明ノ中心ヨリ遠キコト又ハ受任国領土ト隣接セルコト其ノ他ノ事情ニ因リ受任国領土ノ構成部分トシテ其ノ国法ノ下ニ施政ヲ行フヲ以テ最善トス但シ受任国ハ土著人民ノ利益ノ為前記ノ保障ヲ與フルコトヲ要ス
各委任ノ場合ニ於テ受任国ハ其ノ委託地域ニ関スル年報ヲ連盟理事会ニ提出スヘシ
受任国ノ行フ権限、監理又ハ施政ノ程度ニ関シ豫メ連盟国間ニ合意ナキトキハ連盟理事会ハ各場合ニ付之ヲ明定スヘシ
受任国ノ年報ヲ受理審査セシメ且委任ノ實行ニ関スル一切ノ事項ニ付連盟理事会ニ意見ヲ具申セシムル為常設委員会ヲ設置スヘシ
第二十三条
連盟国ハ現行又ハ將來協定セラルヘキ国際条約ノ規定ニ遵由シ
（イ） 自国内ニ於テ及其ノ通商産業関係ノ及フ一切ノ国ニ於テ男女及兒童ノ為ニ公平ニシテ人道的ナル勞働条件ヲ確保スルニ力メ且之カ為必要ナル国際機関ヲ設立維持スヘシ
（ロ） 自国ノ監理ニ属スル地域内ノ土著住民ニ對シ公正ナル待遇ヲ確保スルコトヲ約ス
（ハ） 婦人及兒童ノ賣買竝阿片其ノ他ノ有害藥物ノ取引ニ関スル取極ノ實行ニ付一般監視ヲ連盟ニ委託スヘシ
（ニ） 武器及彈藥ノ取引ヲ共通ノ利益上取締ルノ必要アル諸国トノ間ニ於ケル該取引ノ一般監視ヲ連盟ニ委託スヘシ
（ホ） 交通及通過ノ自由竝一切ノ連盟国ノ通商ニ對スル衡平ナル待遇ヲ確保スル為方法ヲ講スヘシ右ニ関シテハ千九百十四年乃至千九百十八年ノ戰役中荒廢ニ歸シタル地方ノ特殊ノ事情ヲ考慮スヘシ
（ヘ） 疾病ノ豫防及撲滅ノ為国際利害関係事項ニ付措置ヲ執ルニ力ムヘシ
第二十四条
一般条約ニ依ル既設ノ国際事務局ハ当該条約当事国ノ承諾アルニ於テハ総テ之ヲ連盟ノ指揮下ニ属セシムヘシ国際利害関係事項處理ノ為今後設ケラルヘキ国際事務局及委員会ハ総テ之ヲ連盟ノ指揮下ニ属セシムヘキモノトス
一般条約ニ依リ規定セラレタル国際利害関係事項ニシテ国際事務局又ハ委員会ノ管理ニ属セサルモノニ関シテハ連盟事務局ハ当事国ノ請求ニ基キ連盟理事会ノ同意ヲ得テ其ノ一切ノ関係情報ヲ蒐集頒布シ其ノ他必要又ハ望マシキ一切ノ援助ヲ與フヘシ
連盟理事会ハ連盟ノ指揮下ニ属セシメタル事務局又ハ委員会ノ經費ヲ連盟事務局ノ經費中ニ編入スルコトヲ得
第二十五条
連盟国ハ全世界ニ亘リ健康ノ増進、疾病ノ豫防又苦痛ノ輕減ヲ目的トスル公認ノ国民赤十字篤志機関ノ設立及協力ヲ奬勵促進スルコトヲ約ス
第二十六条
本規約ノ改正ハ連盟理事会ヲ構成スル代表者ヲ出ス連盟各国及連盟総会ヲ構成スル代表者ヲ出ス過半數連盟国之ヲ批准シタルトキ其ノ效力ヲ生スルモノトス
右改正ハ之ニ不同意ヲ表シタル連盟国ヲ拘束スルコトナシ但シ此ノ場合ニ於テ当該国ハ連盟国タラサルニ至ルヘシ
（以下、第四百四十条まで省略）
(国立公文書館：同盟及聯合国ト独逸国トノ平和条約及附属議定書・御署名原本・...)
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