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憲法草案要綱 1945年12月26日

 憲法草案要綱


  憲法草案要綱


      憲法研究会案

       高野岩三郎

       馬場恒吾

       杉森孝次郎

       森戸辰男

       岩淵辰雄

       室伏高信

       鈴木安蔵


   根本原則


一、日本国の統治権は日本国民より発す

一、天皇は国政を親らせす国政の一切の最高責任者は内閣とす

一、天皇は国民の委任により専ら国家的儀礼を司る

一、天皇の即位は議会の承認を経るものとす

一、摂政を置くは議会の議決による


   国民権利義務


一、国民は法律の前に平等にして出生又は身分に基く一切の差別は之を廃止す

一、爵位勲章其の他の栄典は総て廃止す

一、国民の言論学術芸術宗教の自由を妨ケる如何なる法令をも発布するを得す

一、政府憲法に背き国民の自由を抑圧し権利を毀損するときは国民之を変更するを得

一、国民は拷問を加へらるることなし

一、国民は国民請願国民発案及国民表決の権利を有す

一、国民は労働の義務を有す

一、国民は労働に従事し其の労働に対して報酬を受くるの権利を有す

一、国民は健康にして文化的水準の生活を営む権利を有す

一、国民は休息の権利を有す国家は最高八時間労働制の実施勤労者に対する有給休暇制療養所社交教養機関の完備をなすヘし

一、国民は老年疾病其の他の事情により労働不能に陥りたる場合生活を保証さるる権利を有す

一、男女は公的並私的に完全に平等の権利を享有す

一、民族人種による差別を禁す

一、国民は民主主義並平和思想に基く人格完成社会道徳確立諸民族との協同に努むるの義務を有す


   議会


一、議会は立法権を掌握す法律を議決し歳入及歳出予算を承認し行政に関する準則を定め及其の執行を監督す条約にして立法事項に関するものは其の承認を得るを要す

一、議会は二院より成る

一、第一院は全国一区の大選挙区制により満二十才以上の男女平等直接秘密選挙(比例代表の主義)によりて満二十才以上の者より公選せられたる議員を以て組織され其の権限は第二院に優先す

一、第二院は各種職業並其の中の階層より公選せられたる満二十才以上の議員を以て組織さる

一、第一院に於て二度可決されたる一切の法律案は第二院に於て否決するを得す

一、議会は無休とす

 その休会する場合は常任委員会その職責を代行す

一、議会の会議は公開す秘密会を廃す

一、議会は議長並書記官長を選出す

一、議会は憲法違反其の他重大なる過失の廉により大臣並官吏に対する公訴を提起するを得之か審理の為に国事裁判所を設く

一、議会は審問委員会を設く

一、議会は国民投票によりて解散を可決されたるときは直ちに解散すヘし

一、国民投票により議会の決議を無効ならしむるには有権者の過半数か投票に参加せる場合なるを要す


   内閣


一、内閣総理大臣は両院議長の推薦によりて決す

 各省大臣国務大臣は総理大臣任命す

一、内閣は外に対して国を代表す

一、内閣は議会に対し連帯責任を負ふ其の職に在るには議会の信任あることを要す

一、国民投票によりて不信任を決議されたるときは内閣は其の職を去るヘし

一、内閣は官吏を任免す

一、内閣は国民の名に於て恩赦権を行ふ

一、内閣は法律を執行する為に命令を発す


   司法


一、司法権は国民の名により裁判所構成法及陪審法の定むる所により裁判所之を行ふ

一、裁判官は独立にして唯法律にのみ服す

一、大審院は最高の司法機関にして一切の下級司法機関を監督す

 大審院長は公選とす国事裁判所長を兼ぬ

 大審院判事は第二院議長の推薦により第二院の承認を経て就任す

一、行政裁判所長検事総長は公選とす

一、検察官は行政機関より独立す

一、無罪の判決を受けたる者に対する国家補償は遺憾なきを期すヘし


   会計及財政


一、国の歳出歳入は各会計年度毎に詳細明確に予算に規定し会計年度の開始前に法律を以て之を定む

一、事業会計に就ては毎年事業計画書を提出し議会の承認を経ヘし

 特別会計は唯事業会計に就てのみ之を設くるを得

一、租税を課し税率を変更するは一年毎に法律を以て之を定むヘし

一、国債其の他予算に定めたるものを除く外国庫の負担となるヘき契約は一年毎に議会の承認を経ヘし

一、皇室費は一年毎に議会の承認を経ヘし

一、予算は先つ第一院に提出すヘし其の承認を経たる項目及金額に就ては第二院之を否決するを得す

一、租税の賦課は公正なるヘし苟も消費税を偏重して国民に過重の負担を負はしむるを禁す

一、歳入歳出の決算は速に会計検査院に提出し其の検査を経たる後之を次の会計年度に議会に提出し政府の責任解除を求むヘし

 会計検査院の組織及権限は法律を以て之を定む

 会計検査院長は公選とす


   経済


一、経済生活は国民各自をして人間に値すヘき健全なる生活を為さしむるを目的とし正義進歩平等の原則に適合するを要す

 各人の私有並経済上の自由は此の限界内に於て保障さる

 所有権は同時に公共の権利に役立つヘき義務を要す

一、土地の分配及利用は総ての国民に健康なる生活を保証し得る如く為さるヘし

 寄生的土地所有並封建的小作料は禁止す

一、精神的労作著作者発明家芸術家の権利は保護せらるヘし

一、労働者其の他一切の勤労者の労働条件改善の為の結社並運動の自由は保障せらるヘし之を制限又は妨害する法令契約及処置は総て禁止す


   補則


一、憲法は立法により改正す但し議員の三分の二以上の出席及出席議員の半数以上の同意あるを要す

 国民請願に基き国民投票を以て憲法の改正を決する場合に於ては有権者の過半数の同意あることを要す

一、此の憲法の規定並精神に反する一切の法令及制度は直ちに廃止す

一、皇室典範は議会の議を経て定むるを要す

一、此の憲法公布後遅くも十年以内に国民授票による新憲法の制定をなすヘし

(国立公文書館:憲法草案要綱(憲法研究会案) A15060204500)

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