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国立銀行条例 1872年12月15日

 国立銀行条例(ひらがな化、一部新字体化)


國立銀行條例

国立銀行は政府より発行する公債証書を抵当として之を大蔵省に預け紙幣寮より銀行紙幣を受取り引換の準備金を設け之を発行し以て其業を営むものなり今之を創立するに付大日本政府に於て制定したる条々左の如し

第一章 銀行創立の方法。創立証書銀行定款の差出方及ひ開業免状の下附並に諸役員選任方法等の事を明かにす

第一条 此条例を遵奉し国立銀行を創立せんと欲する者は何人を論せす(外国人を除くの外)五人以上結合したる人々成規第一条に掲くる所の手続を以て其創立願書を大蔵省の紙幣寮へ差出すへし紙幣頭之を検按し相当と思慮するに於ては之を大蔵卿に稟議して其銀行創立証書及ひ銀行定款の差出方を命すへし

第二条 右紙幣頭の命を受けたる人々は各其姓名を創立証書に記入し諸般の手続を経て其創立証書に紙幣頭の承認許可を受るに於ては此条例に規定せる箇条を遵奉し以て国立銀行を創立するを得へし而して其創立証書に掲載すへき件々は左の如し

第一 銀行の名号

但し此名号は紙幣頭の承認許可を得て之を公称すへし

第二 銀行の本店及ひ支店(若し之あらは)を置くへき場所

第三 銀行の資本金額及ひ株数

第四 銀行営業の年限

第五 株主の姓名。住所。属族。職業(若し之あらは)及ひ其引受けたる株式の番号。箇数

第六 此創立証書は此条例を遵奉し銀行の事業を営なみ株主一同の利益を謀るため取極めたる旨

第三条 右創立証書は其株主等各記名調印し之に一銭の印紙を貼用し其管轄地方長官の奧書鈐印を受たるものたるへし斯く従事したる創立証書は当人は勿論其相続人後見人たる者に於ても右創立証書の箇条を確守し此条例成規の旨趣を遵奉する者とすへし

第四条 右創立証書の箇条を更正するには其社中の格段決議を経て紙幣頭の承認許可を得るに於ては之に従事することを得へし但し其事件は即ち資本金の増减及ひ本店転移或は支店開設等の如き是なり而して右の如く更正したる箇条は最初右創立証書中に記載せし箇条と同しく確守すへし且右の箇条は其創立証書の本紙正写の別なく之を綴込み又は添附し置くへし

但し右の外創立証書中の箇条を更正することを得さるへし

第五条 此条例を遵奉する国立銀行は右創立証書に必す銀行定款を添ふへし而して此定款は即ち成規第六条に掲くる所の雛形に準拠し其箇条を悉皆(又は若干)記載し創立証書と同様株主一同之に記名調印し一銭の印紙を貼用したるものたるへし

但し此定款は唯紙幣頭の承認を得紙幣寮の官印を受くるのみにして其管轄地方長官の奧書鈐印を乞ふに及はさるへし

第六条 此条例を遵奉する国立銀行は社中の格段決議を経て紙幣頭の承認を得るに於ては銀行定款中に掲けたる諸款を更正増補し及ひ之れを廢止することを得へし而して右の如く更正増補したる箇条は最初右定款中に掲載せし箇条と同しく確守すへし且右の箇条は其定款の本紙正写の別なく之を綴込み又は添附し置くへし

第七条 創立証書並に銀行定款は本紙一通正写二通都合三通宛を製し而して創立証書へ其管轄地方長官の奧書鈴鈐印を受け銀行定款と共に之を紙幣頭へ差出すへし

第八条 紙幣頭は右創立証書及ひ銀行定款を領受し其銀行株主等此条例第三十条に規定する所の割合を以て資本金の入金をなせしや否やの状実を検査し且株主等の正不正其他百般の事務を視察し不都合あるに非れは之を大蔵卿へ禀議し開業免状を下附すへし

但し創立証書銀行定款共本紙は記録寮に納め正写一通は紙幣寮の簿冊に綴込み一通は紙幣寮の官印を鈐して開業免状と共に之を其銀行へ下附すへし

第九条 銀行は右の開業免状を得て始て一団の会社となり何々国立銀行と公称し此条例成規に規定したる箇条を履行して国立銀行の事業を経営するを得へし

第十条 此条例に従ひ紙幣頭の記名調印したる開業免状。創立証書。銀行定款は何れの裁判所何れの官庁に於ても之を正確なる証拠として採用せるヽを得へし

第十一条 創立証書。銀行定款の写又は版本等(用意分配の手続了るの後)各株主よりの要需あるに於ては銀行に於て定むる所の代価を以て之を付与すへし若し銀行右付与の事を怠慢するに於ては銀行は其怠慢時間一日に付五円に踰えさる罰金を納むへし

第十二条 此条例を遵奉して創立する銀行は鎖店其他の事故あるに非れは開業免状を受けし日より二十箇年の間其営業を取続くことを得へし右期限を過き尙ほ営業せんと欲するに於ては其趣を紙幣頭へ申請して更に免許を受くへし

第十三条 此条例を遵奉する銀行の頭取取締役等は開業免状を得るの日より社印を刻し諸役員の印信と共に大蔵省の紙幣寮国債寮出納寮の三寮へ差出すへし而して銀行の諸出願を始め訴訟。約定。保証及ひ報告。往復其他一切の文書に至るまて都て其社号を用い社印を鈐すへし

但し報告。約定。保証等の如き文書には頭取取締役及ひ支配人の名印をも加用すへし

第十四条 此条例を遵奉する銀行は頭取取締役を始め支配人。書記方。出納方。計算方。簿記方其他適宜の役員を選任し其職制権限進退及ひ頭取。取締役交代の手続等諸般の規約を取極め之を銀行定款中に掲載すへし

第十五条 此条例を遵奉する銀行の取締役は必す自力を以て成規第五十一条に規定する所の株数を所持したる者にして其総員は五人以上(内一人は頭取)たるへし而して其四分の三は其銀行創立の地に於て上任前一箇年以上在住したる者に限るへし

第十六条 此条例を遵奉する銀行の頭取取締役は上任の節に其地方長官の面前に於て誓詞を為し其事務を施行するに忠実公平を以てし且此条例中の要旨に決して背戻せさる旨を認め其管轄地方長官の奧書鈐印を受け之を紙幣頭へ差出すへし紙幣頭は之を領受して寮中の簿冊に綴込むへし

第二章 銀行資本金の制限。公債証書銀行紙幣交收の割合並に其手続及ひ引換準備金等の事を明かにす

第十七条 此条例を遵奉する国立銀行の資本金額は十万円より下る可からす尤人口十万人以上の地に於ては二十万円未満の資本金を以て創立するを許さす

但し時宜により紙幣頭差支なしと思考して大蔵卿への禀議を経るに於ては五万円以上十万円未満の資本金にても創立を許ことあるへし

第十八条 此条例を遵奉する国立銀行は其資本金額十分の八(即ち十万円なれは八万円)を政府より発行する所の公債証書にて此条例第二十二条に掲くる所の割合に従ひ実価(即ち市中売買の時相場にして紙幣頭の時々指定する所)を以て之を出納寮へ預くへし尤右公債証書は四朱以上利付の者(即ち新公債証書。金札引換公債証書。秩祿公債証書及ひ爾後政府より発行すへき四朱以上利付の公債証書)に限るへし

但し右の公債証書市中売買の相場低下する時は紙幣頭は更に之を其銀行に命して其不足は猶ほ他の公債証書を納めて本条規定する所の割合額数に満たしむへし

第十九条 右公債証書は此条例を遵奉する銀行より発行する紙幣の抵当なるを以て出納頭は其銀行永続中は正に之を預り置くへし而して若し此公債証書の内国債寮に於て施行する所の公債支消の抽籤に当る者あれは銀行は他の公債証書を納めて之を引換ふへし

第二十条 此条例を遵奉する銀行は其資本金額十分の二を通貨を以て銀行に積置き前条に掲くる所の公債証書の代りとして紙幣寮より受取る銀行紙幣の引換準備に充つへし故に其銀行紙幣発行の際に於ては常に其流通高の四分一の割合を以て準備金を現存するを定度とす尤銀行紙幣発行の増減に隨ひ其準備通貨も亦た便宜之を増減し之を資用するを得へし

但し右紙幣の引換多くして四分一の準備にて引換方差支ふることあれは別に通貨を加へて之を引換へ決して之を拒み又は之を怠るへからす

第二十一条 此条例第四十条四十二条に掲くる所の手続を以て資本金額を増減することあるに於ては前条に掲くる所ら公債証書並に銀行紙幣引換の準備金も亦其割合に従て之を増减すへし

第二十二条 此条例を遵奉する銀行に於て資本金集合の手続を了りたる後公債証書を納めて同額の銀行紙幣を受取り其引換準備金を積立るの割合は即ち左の如し

例へは資本金十万円を以て創立する銀行なれは

八万円は 四朱以上利付の公債証書実価八万円に当る高を出納寮へ納め即ち八万円の銀行紙幣を紙幣寮より受取へし

二万円は 通貨を以て銀行に積置き銀行紙幣引換の準備となすへし

但し此条例第三十条に掲くる所の規定に従て資本金を集合するときは其入金毎に右の割合を以て公債証書銀行紙幣交収の手続をなすへし

第二十三条 此条例を遵奉する銀行の頭取支配人は公債証書を出納寮へ納め其受取証書を領受したる後同額の銀行紙幣を各種の種類にて紙幣寮より受取り之に頭取支配人等の名印を加用し以て銀行営業の資本となすへし

第二十四条 右公債証書の請取証書は紙幣頭出納頭の連署調印したる者たるへし尤此公債証書の勘査に付ては該両寮頭互に其簿冊を開らき須らく注意を画し詳明に之を記入し又互に之を点検するを得へし

第二十五条 此条例第十八条に掲くる所を出納頭に預けたる公債証書は毎年一度(又は数度)銀行の役員出納寮に至りて之を点検し其銀行の元帳に照して其種類員額等相違なきに於ては改人は改済の旨を書面に認め之を出納頭へ差出すへし

但し右改人山納寮へ出る時は其銀行頭取の委任状を持参すへし

第二十六条 右公債証書は銀行の都合により四朱以上利付の他の公債証書を以て之か引換を申請し紙幣頭の考案に於て差支なしとせは其趣を出納頭へ通知し之を交換下附すへし

但し其引換へたる趣並に其公債証書の種類金額等は紙幣出納両寮の簿冊に詳記すへし

第二十七条 右公債証書より生する年々の利息は其銀行之を受取り毎年銀行の利益精勘定の内に加へて之を株主一同へ分配すへし

但し銀行に於て其銀行紙幣引換のことを怠るか又は此条例に背に戻することあれは紙幣頭は其利息を取押ふることあるへし

第三章 株式の分割。資本金入金の割合。株式没入。株主牒の記入。株式の売買及ひ資本金増減等の事を明かにす 

第二十八条 此条例を遵奉する銀行の資本金は之を株式に分割し百円又は五十円又は二十五円を以て一株と定むへし尤一株百円に分配したる銀行の株式は悉皆百円の金高たるへし五十円二十五円の株式も亦之に準すへし

但し十万円以上の資本金を以て創立する銀行なれは百円又は五十円を以て一株と定むへし又十万円未満五万円まての資本金を以て創立する者五十円又は二十五円を以て一株と定むへし

第二十九条 此条例を遵奉する銀行の株主たる者は各自の望に任せ幾株にても之を所持するを得へし而して其株主は何れの属族何れの職務あるに拘はらす総て其所持株高相当の権利を有し其銀行営業に付ての損益は株高に応して之を負担すへし

但し大蔵省の官員其他の官員とも此銀行の事務に関係ある者は株主となるを許さす

第三十条 此条例を遵奉する銀行の株主等は開業免状を得其業を始むる前に於て少なくとも資本金総額十分の五は必す之を銀行に入金すへし而して他の十分の五は資本金総額の十分一を以て月賦と定め開業免状を得たる月の翌月より入金すへし

第三十一条 右資本金の月賦入金毎に其銀行の頭取支配人は成規第十三条に準拠し資本金集合高届書を紙幣頭へ差出すへし

第三十二条 此条例を遵奉する銀行の株主等株金の月賦入金を怠る時は頭取取締役等に於て其株を没入し競売其他の手続を以て三十日以内に之を売払ひ而して其入用を差引き尙ほ過金あれは之を元株主へ返還すへし尤此競売に於て右株式を買取りたる株主も亦他の株主同様の権利を有すへし

第三十三条 右競売に於て其株を買ふ者あらさる時は是迄入金したる金高は銀行に没入して其株を消すへし尤此消株により資本金額此条例第十七条に規定する所の制限より減少するときは頭取取締役等は三十日間に之を補ひ定限の高に満たしむへし若し頭取取締役等之を怠るときは紙幣頭は其銀行に鎖店を申渡し更に跡引受人を命すへし

第三十四条 此条例を遵奉する銀行は株主牒を製し左の要件を記載すへし

第一 各株主の姓名。住所。属族。職業(若し之あらは)

第二 各株主の所持せる株式の番号。箇数

第三 入社の年月日

第四 退社の年月日

第三十五条 此条例を遵奉する銀行の創立証書に記名する者は即ち其銀行の株主たるか故に前条に規定せる株主牒に各其姓名を登記すへし且其他何人にても(外国人を除くの外)爾後其銀行の株主くらんことを同意し隨て其姓名を株主牒に登記したるものは又同しく其銀行の株主たるの権利あるへし

第三十六条 右株主牒は銀行其開業免状を領受するの即日より之を其本店に備置くへし而して此株主牒は営業時間なれは何時にても株主等之を検閲するを得へし若し銀行其検閲を拒みたるときは株主は其趣を書面に認め之を其管轄地方官庁へ差出し紙幣頭への照会を乞ふへし其照会を得るに於ては紙幣頭は直ちに官吏を派遣し其本店を検査せしむることあるへし

但し銀行は新聞紙又は其他の手続を以て其旨を報知するに於ては一箇年中日数三十日に過きされは何時にても右検閲を停止することを得へし

第三十七条 右株主牒に何人か故なく姓名を記入せられ又は妄りに除名せられ又或は退社せし所以の記載を故なく遷延せられたる等の事ありて其人之か為め妨碍を受くるに於ては其事由を書面に認め之を其管轄地方官庁へ差出し紙幣頭への照会を乞ふへし其照会を得るに於ては紙幣頭は直ちに銀行に命して之を修正せしむへし

第三十八条 此条例を遵奉する銀行の株式は成規第二十七条三十条に規定せる所の手続を以て之を売買譲与することを得へし

但し銀行は新聞紙又は其他の手続を以て其旨を報知するに於ては一箇年中日数三十日に過きされは何時にても其株式の売買譲与を停止することを得へし

第三十九条 此条例を遵奉する銀行の株主死去するの際名代人を以て株式を売却譲与する等の事あるときは仮令に此名代人は其銀行の株主に非すと雖も記名調印等の事に至りては猶ほ株主同様の権利を有すへし

第四十条 此条例を遵奉する銀行は社中の格段決議を経て紙幣頭の承認を得るに於ては其資本金額を増加することを得へし而して右増加すへき資本金額の制限は大蔵卿への禀議を経て紙幣頭之を定むへし故に其資本金額を増加するには紙幣頭に申請し其承認を得て之に従事すへし尤全く入金済の上は成規第十四条に準拠して其増加証書を差出すへし

第四十一条 此条例を遵奉する銀行前条に掲くる如く資本金を増加せしにより公債証書を納め銀行紙幣を請取るの手続は現に其株主たる者より増加の総額を全く入金したる後に非れは之を施行するを許さす

第四十二条 此条例を遵奉する銀行若し其資本金額を減少せんとする時は社中の格段決議を経て紙幣頭の承認を得るに於ては之に従事するを得へし尤其減少の高は此条例第十七条に於て規定する所の員額より下るを許さす但し紙幣頭の承認を得て此決議を施行せんとするに於ては其施行の日限より少なくとも三箇月以前に於て資本金の減少員額と其残り資本金額とを記載したる報告を製し適宜の手続を以て之を其預り金ある得意先へ送達すへし且右減少せんとするの趣は其銀行所在の地に行はるヽ三種以上の新聞紙を以て三箇月以上毎日之を公告すへし

第四十三条 此条例を遵奉する銀行若し前条の如く其資本金額を減少せんとするに際し其銀行へ貸金。預け金等ある者は未た其仕払期日至らすと雖右減少を施行すへき日限前一箇月の間なしは何時にても左の定則に準拠し之か償却を乞ふの権利あるへし

第一 凡つ定期預け金ある者は其元金並に当日迄の利息を受取るの権利ありとす

第二 其他期限未満たりとも凡そ銀行より受取るへき勘定ある者は時の相場を以て其仕払期日迄の利息を引去り残金高のみを受取るの権利ありとす

第四十四条 此条例を遵奉する銀行は此条例第四十二条四十三条に掲くる所の諸般の手続を了るに於ては成規第十五条に準拠し其減少証書を紙幣頭へ差出すへし若し右第四十二条四十三条の規定に背戻し資本金減少の報告又は公告を怠り及ひ期限未満の勘定仕払を拒むことあるときは紙幣頭は右資本金減少証書に許可を与へさるへし

第四章 銀行紙幣の製造及ひ種類。其通用の能力。引換場所及ひ燒捨等の事を明かにす

第四十五条 此条例を遵奉して発行する所の銀行紙幣は大蔵卿の命を奉し紙幣頭其製造の事務を董括し極めて其紙質の堅牢と彩紋の精緻を要し深く贋摸の弊を予防するの術を画して以て之に従事すへし

但し右銀行紙幣製造の入費は其銀行より現費を以て紙幣寮へ納むへし

第四十六条 右銀行紙幣の種類は一円。二円。五円。十円。二十円。五十円。百円。五百円の八種と定め銀行の望に応して製造下付すへし

但し五円以下の銀行紙幣は其銀行発行総額十分の五より多からさるへし

第四十七条 右銀行紙幣の表裏面には政府の公債証書を抵当として発行するの旨趣及ひ其他の要件を摘載し大蔵卿並に出納頭記録願の印を鈐し且大蔵省並に銀行の記号。番号を押捺して紙幣頭之を其銀行へ下付すへし而して銀行に於ては之に其頭取支配人の名印を加用すへし

第四十八条 此条例を遵奉して創立したる国立銀行より発行する所の銀行紙幣は諸官庁又は銀行。会社其他を論せす日本全国何れの地に於ても租稅。運上。貸借の取引。俸給其他一切公私の取引に於て都て政府発行の貨幣同様通用すへし

但し公債証書の利息と海関税には之を用うるを許さす

第四十九条 此条例を遵奉して創立したる銀行より発行する所の銀行紙幣は其銀行の本店に於て之を引換ふへし

但し支店を設置する銀行は其銀行の都合に依り本店の外支店に於ても亦其引換に従事するを得へし

第五十条 此条例を遵奉する銀行より発行する所の銀行紙幣通用の際其授受を拒み或は之を妨け其他不正の所為をなす者あるに於ては皆国法に従て之を罰すへし

第五十一条 此条例を遵奉する銀行より発行する所の銀行紙幣通用中敗裂汚染等にて通用し難きものあるに於ては其所持人は銀行に持参して之を引換ふへし而して銀行は之を紙幣頭へ差出し其代り銀行紙幣を受取るへし○尤右引換銀行紙幣の種類。記号。番号。金額等は之を紙幣寮の公書及ひ銀行の簿冊に詳明に記入し其廃紙幣は大蔵卿よりの立会を得て紙幣頭は其主任の官員をして銀行役員の立会を要し之を焼捨に付すへし而して其趣は尙ほ右簿冊に登記し各記名調印すへし

但し右焼捨の後は新聞紙又は其他の手続を以て其趣を世上に公告すへし

第五章 銀行営業の本務。公債証書其他の売買並に貸附金の制限。利息の制限。銀行紙幣並に株式抵当の制禁及ひ預り金準備等の事を明かにす

第五十二条 此条例を遵奉する銀行は金銀を(引受貸し抵当貸しの別なく)貸附け又は当坐並に定期預り金を為し又は為換を取組み又は為換手形。約束手形。代金取立手形其他の証書を割引し又は公債証書。外国貨幣並に金。銀。銅の地金を売買し及ひ保護預り又は両替等の事を以て営業の本務となすへし

第五十三条 此条例を遵奉する銀行の本務たるや前条に掲くる所の種類なるを以て公債証書の売買をなすを得ると雖も貸附金。預り金。為換等の如きは殊に銀行の主として為すへき営業の目的たるにより此等の事業を経営せすして唯公債証書の売買を專らにするを許さす

第五十四条 此条例を遵奉する銀行は前第五十二条に掲くる所の営業本務の外地所家屋其他物件の売買をなすへからす又職工作業の功を興し及ひ此等の功を興す会社の株主となるを許さす尤左に掲載する所の条件に付ては地所又は家屋物件等を売買し又は之を引取り又は之を所持する等の事は此条例に於て之を宥恕すへし但し銀行所有の地所は勿論一般の地税法に従ふへし

第一 銀行の業を営むへき為め緊要なる地所家屋は之を買取り之を所持し之を売払ふを得へし

第二 滞貸金の抵当として質物に取りたる地所物件は之を引取り之を所持し之を売払ふを得へし

第三 貸金返済の約定日切となりて借主より返金の代りとして引渡されたる地所物件は之を引取り之を所持し之を売払ふを得へし

第四 銀行より貸金の抵当又は質物となりしものにして官庁の裁判を経て売払ひとなりたるものか又は之を引取りたるもの又は右質入の流込みとなりたるもの又は銀行よりの貸金を返済する為めに売物に出したる地所物件は之を買取り之を引取り之を所持し之を売払ふを得へし

第五十五条 前条に掲くる所の款項中銀行営業の為め緊要なる地所家屋を除くの外銀行に於て引取り又は買取りたる地所物件は遲くとも十箇月以内に於て之を売払ふへし

第五十六条 此条例を遵奉する銀行より貸附くる所の金額の制限は一口に付資本金総額の十分一を限りとなすへし

第五十七条 此条例を遵奉する銀行の貸付金の利息は年一割(元金十分の一)より超過すへからす若し此制限を超過し不相当の利息を要することあるに於ては紙幣頭は大蔵卿への禀議を経て其銀行を督責し以て之を其制限の割合に帰せしむへし

第五十八条 此条例を遵奉する銀行は其銀行紙幣を紙当又は質物として借金をなすへからす又其銀行の株式を抵当に取りて貸付金をなすへからす又其株の買主となり又は其株主となるへからす然れとも貸付金の滞りにて銀行の損失となることあれは止むを得す其株を引当に取り又は買取ることを得へし尤其株は遅くとも六箇月以内に於て之を売払ふへし

第五十九条 此条例を遵奉する銀行は諸方よりの預り金を他へ運転流用するには須らく之か制限を立て其預り金総額の内少くも十分の二。五(即ち四分の一)を引残し之を返却の準備として銀行の金庫中に積立置くへし尤内十分一の員額は政府の公債証書を実価を以て積立るを得べし

但し此準備金は銀行紙幣引換の準備金と混同すへからす

第六十条 此条例を遵奉する銀行は其営業の為め銀行紙幣を発行するには此条例第二十条に規定したる準備金の割合を超過すへからす若し此割合を超過して発行するは紙幣頭は之を督責して速かに其準備金を増加し規定の割合に満たしむへき旨を命すへし若し銀行に於て此命を受けし日より三十日を過きて尚ほ増加することを怠る時は紙幣頭は其銀行の開業免状を取上け跡引受人を命すへし

第六十一条 此条例を遵奉する銀行に於て銀行紙幣の引換或は預り金の返済又は為換手形。約束手形等の仕払をなすに当り兼て積置きたる準備金を以て之を償ふこと能はさるときは其銀行の株主等は各其所持の株数に応し別に出金して一時之を償弁するの責に任すへし

但し此出金は全く一時償弁のためにして其株金と異なるを以て其銀行は速かに之を各株主へ返弁すへし

第六章 銀行名号の掲牌。社印の書体並に諸手形に於ける銀行の負責。所有物の明細帳及ひ営業時間等の事を明かにす

第六十二条 此条例を遵奉する銀行は読易き書体を以て其名号を掲牌に記載し之を其銀行の店前最も見易き所に掲くへし而して其社印の彫刻より諸報告並に諸公告。諸証書。諸手形。諸切手の類に至る迄凡そ其名号を用うる所の者は亦同しく読易き書体を用うへし

第六十三条 此条例を遵奉する銀行若し前条の如く其社号を掲けさるときは銀行は其時間一日に付五円より多からさる罰金を納むへし且其頭取取締役及ひ支配人たるもの知て之を為さしめ或は故さらに之を見逃すに於ては是亦右同額の罰金を納むへし若し又銀行の頭取取締役支配人其他の役員又は何人にても前条の如く彫刻せさる社印を用い或は人をして之を用いしめ又は前条の規定に悖りたる社号を以て報告書を出し或は之を出さしめ又は為換手形。約束手形。切手。証書。注文書。受取証書。受合状等に至る迄凡そ其名を用うる者前条の規定に悖りて記名調印し又は記名調印せしむるときは十円より少なからす五十円より多からさる罰金を納めしめ且右等為換手形。約束手形。切手。注文書。等に記載する所の金額を銀行より払渡さヽるときは其規定に悖りたる役員等は自費を以て右持主に弁償するの責に任すへし

第六十四条 此条例を遵奉する銀行其名号を以て為換手形。約束手形を振出し又は之を引受け又或は之に裏書したるものヽ如きは仮令ひ右等の取扱ひ何人の手に出ると雖も人苟も其銀行の命任を受けたるものに相違なきに於ては一切之を其銀行の為めに取扱ひしものと見做すへし

第六十五条 此条例を遵奉する銀行は其所有財產(動產。不動產の別なく)の種類員数は勿論其授受売買及ひ質入書入委托其他に於ける一切の事件を記載せる簿冊を製し右等の挙ある毎とに其事由並に其種類員数及ひ質預り人又は受托人等を遺漏なく記載し其時々頭取取締役等之に検印し常に其銀行に備置き以て債主及ひ株主等の検閱に供すへし○若し前段の記載なくして銀行其所有財産を質入書入し又は之を委托する等の事あるに当て其銀行の頭取取締役支配人等知て之を捨置き又は故さらに之を見逃すに於ては右役員は五十円を踰えさる罰金を納むへし

但し右所有財產の簿冊は即ち其事件の正確なる証拠として何れの裁判所何れの官庁に於ても採用せらるヽを得へし

第六十六条 此条例を遵奉する銀行の営業時間は其本店支店共定式(又は臨時)休暇日を除くの外毎日午前第九時より午後第三時まてたるへし尤銀行の都合により紙幣頭の承認を得るに於ては其営業時間を変更するを得へし而して其趣は新聞紙其他の手続を以て之を世上に公告すへし

但し為換並に預り金等の仕払期日若し定式(又は臨時)休暇日に当るものは其翌日之を仕払ふへし

第七章 株主総会の定規並に格段決議の順序。諸簿冊の点検及ひ検査の手続。諸報告差出方等の事を明かにす

第六十七条 此条例を遵奉する銀行の総会は毎年少くとも両度宛之を執行すへし尤臨時の事件を評決せんか為め執行する所の臨時総会は此限にあらす

第六十八条 此条例を遵奉する銀行は社中の総会に於て次条に掲載せる方法を以て執行せし格段決議に於ては其銀行定款中に記載したる事件箇条を変更訂正することを得へし

第六十九条 凡そ社中評決すへき事件ありて其議案を出し其銀行株主臨席の総員(本人代人を論せす)四分の三以上の同意を以て一且其大体を決定し隨て其旨趣を詳述して之か報告をなし後も十四日以外一箇月以内の時日に於て更に執行する所の総会に於て其臨席したる株主総員の同意せる発言投票の多数を以て其事件を確定する者之を格段決議と称すへし

第七十条 凡そ格段決議に於て確定したる事件は其旨趣顛末を記載したる書附を刊行し又は謄写して右確定の日より日数十五日(郵便逓送日数を除く)の内に之を紙幣頭へ差出して其承認を受くへし○若し銀行前段の書附を右期日内に差出すことを怠るに於ては右の日数以後(即ち十六日目より)は怠慢時間一日に付十円をに踰えさる罰金を納むへし且頭取取締役等故さらに之をなさしめ又は知て之を見逃せしときは是亦右同額の罰金を納むへし

第七十一条 凡そ格段決議に於て確定したる事件にして(此条例第四条六条に準拠し)現に之を施行するものは右の事件を正しく記載したる写を各株主へ分賦すへし○若し銀行此箇条を遵守せすして詐偽を記載するか又は写を分賦せさるに於ては右写一通に付五円を踰えさる罰金を納むへし且頭取取締役等故さらに之を為さしめ又は知て之を見逃せしときは是亦右同額の罰金を納むへし

第七十二条 此条例を遵奉する銀行の株主たる者は其銀行の営業時間中なれは何時にても其銀行実際記入する所の諸簿冊及ひ報告計表を点検するを得へし○若し銀行此箇条を遵守せすして株主の点検を拒むときは五円に踰えさる罰金を納むへし且頭取締役支配人等故さらに之をなすか又は知て之を見逃せし時は右同額の罰金を納むへし

第七十三条 此条例を遵奉する銀行の営業実際を詳知監督する為め紙幣頭は大蔵卿への禀議を経て(定例臨時の別なく)官員を命遣し銀行一切の業体を検査せしむへし

但し紙幣頭は時宜により大蔵卿への禀議を経て其銀行管轄地方官に依托し其銀行実際の営業を(定例臨時の別なく)検査せしむることあるへし尤右検查に従事したる地方官は其検査したる旨趣を詳記し速かに之を紙幣頭へ報知すへし

第七十四条 右検査の官員は各銀行の本店又は支店とも其営業時間中なれは何時にても其用所に至り詳密に其諸簿冊。計表其他銀行一般の業体を検査し其銀行役員の処務此条例成規に規定する所の箇条を遵守するや否やを視察し而して其検査の実況と考按の旨趣を書面に詳記し之を紙幣頭へ差出すへし

第七十五条 此条例を遵奉する銀行の総株五分一以上を所持する株主等よりの請願あるに於ては紙幣頭は官員を命遣し或は其管轄地方官へ委托して其銀行一切の業体を検査せしむることあるへし但し其検査の実況と考按の旨趣は之を書面に認め紙幣頭へ差出すへし而して紙幣頭は其写を其銀行の本店並に此検査を請願せし株主等へ下附すへし

第七十六条 此条例を遵奉する銀行此条例第七十三条七十五条に規定する所の検査官員の検査を除くの外他の検査は一切之を受けさるへし尤諸官庁の職掌上に於て国法を以て検査するか如きは此限にあらす

第七十七条 此条例を遵奉する銀行は半季及ひ毎月其事務計算等の実際証明なる考課状並に報告計表(成規第六十六条に規定する所の種類)を製し本店は頭取支配人支店は支配人並に計算方之に記名調印して之を紙幣頭に差出すへし尤其書式は紙幣頭の指図に従ふへし

但し右半季報告計表は銀行より新聞紙其他の手続を以て之を世上に公告すへし

第七十八条 右定例報告計表の外紙幣頭尙ほ要用と思考することあれは銀行に命して臨時の報告計表を差出さしむることあるへし○若し銀行の頭取取締役支配人等右定例或は臨時の報告を怠り紙幣頭の命する日より(郵便逓送日数を除く)十日以内に差出さヽるは十日以外(即ち十一日目より)は一日に付五十円より少なからす百円より多からさる罰金を納むへし

第八章 利益金分配の方法及ひ積金割合の規定を明かにす

第七十九条 此条例を遵奉する銀行の頭取取締役等は半季毎とに其銀行の総勘定をなし其総益金の内より諸雜費並に損失補償の金額及ひ滞貸金の金額(若し之あらは)を引去り其剰余を以て純益金となし又此内より次条に規定せる積金を引去り其余の金額を以て総株主へ分配すへし○尤右利益の計算は株主に分配せさる前十日以内に(郵便逓送日数を除く)紙幣頭へ差出し其承認を得て後ち之を株主一同へ通知し且新聞紙を以て世上に公告し而して之を株主一同へ分配すへし

但し慥かなる抵当物或は確実なる引受人ある貸附金を除くの外其返済期限を過くること六箇月以上に及ふものは都て之を滞貸金と看做すへし

第八十条 此条例を遵奉する銀行は其資本金額十分の二に至るまて毎半季其純益金の内より少なくとも十分の一宛を引分け之を積金となし以て非常の予備に供すへし○右積金一旦十分二の員額に至るの後ち若し損耗其他の事故ありて右割合の金額より減少するときは尚ほ其後毎半季純益金の内より少なくとも十分の一宛を積立到底右十分二の員額に復すべし

第九章 銀行は官庁の為換方に従事すること及ひ外国銀行と連合すへからさる事を明かにす

第八十一条 此条例を遵奉する銀行は其通常営業事務の外大蔵卿の命令に依り大蔵省又は各地方官庁其他の為換方を勤むることを得へし尤其勤方の手続は爾時大蔵卿の考按により其筋より命する所の規定を奉して以て之に従事すへし

第八十二条 此条例を遵奉する銀行は大蔵卿の命令を奉するか或は其免許を得るかに非れは内外地に設置する所の外国の銀行は勿論本邦の銀行(又は交換所等)と雖とも凡そ海外にあるものと相共に連合し以て為換を取組み又は其他の営業に従事することを得さるへし

第十章 銀行役員職務上一般の制禁及ひ其負責の事を明かにす

第八十三条 此条例を遵奉する銀行の頭取取締役たる者は自ら此条例の箇条に悖るへからす或は銀行の役員其他の者をして之に悖らしむへからす若し背戻のことあるに於ては此条例に於て其銀行へ附与したる特殊の権利は悉く之を取上くへし

但し右頭取取締役此条例に背戻するときは紙幣頭は其裁判所(又は其府県の聴断主任官員)へ通達して之を推糺し其罪の実あるに於ては即ち其銀行を鎖店せしむへし

第八十四条 此条例を遵奉する銀行の頭取取締役等若し此条例に背戻することありて夫れか為め株主又は其他の人へ損失を受けしむるときは其損失は頭取取締役等之を償弁するの責に任すへし

第八十五条 此条例を遵奉する銀行の頭取取締役支配人其他の役員たる者は銀行所有の金銀及ひ諸証書。預り品等を私用し又は竊掠し又は之を妄用すへからす又頭取取締役の承認を得すして銀行紙幣及ひ預り証書を発行し又は諸貸附をなし為換手形を振出し又は証書及ひ切手の引受けをなし約束手形。為換手形。諸証書。質物及ひ公裁にて引取りたるものを売渡すへからす又銀行の諸簿冊。計表。報告書其他の要書に詐偽を記載すへからす○若し右の箇条を犯して其銀行又は他の銀行。会社其他の者を損害欺騙し又は其銀行の役員或は検査官員を欺かんと謀る者は皆な国法に従て之を罰すへし

第八十六条 此条例を遵奉する銀行の頭取取締役支配人其他の役員は社中申合規則の規定に従ひ尋常借り得へき金額の外は自身又は仲人等を以て一切銀行より借受くへからす又其銀行より借財をなす者の為め其証人又は受人となるへからす○若し右等の役員右の規定に背戻して借財をなし又は証人受人となり又は人をして之を為さしめ又は之を承諾する等の事あるときは此等の役員は十円より少なからす五十円より多からさる罰金を納むへし且其借財の金額は其規定に背戻せし者より速かに銀行へ返済すへし

第八十七条 此条例を遵奉する銀行の頭取取締役支配人其他の役員たる者は其銀行の名を仮り以て自己の利盆を謀るは勿論総て私用を弁すへからす若し此等の役員之を犯し又は人をして犯さしめ又は知て之を見逃す者は皆な国法に従て之を罰すへし

第十一章 紙幣及ひ諸手形類の発行並に銀行紙幣の贋造描改及ひ其版板彫刻等禁止の事を明かにす

第八十八条 此条例を遵奉して創立したる国立銀行を除くの外何人又は何会社を論せす凡て紙幣又は望次第持参人へ仕払ふへき約束手形又は右類似の証書其他政府発行の貨幣同様に通用すへき諸手形又は切手を振出し其引受をなし之を製し之を発行するを禁す若し此等の数件を犯す者あるに於ては何人を論せす皆な国法に従て之を罰すへし

第八十九条 此条例を遵奉する国立銀行より発行する銀行紙幣は何人を論せす之を贋造すへからす贋造せしむへからす贋造するを助け又は之を勧むへからす贋造と知りて之を通用すへからす又は之を通用せしむへからす又其文字画図を描改すへからす描改せしむへからす描改するを助け又は之を勧むへからす捕改せし紙幣と知りて之を通用すへからす又は之を通用せしむからす

第九十条 右銀行紙幣を印刷するに用うる所の版板又は之に類似する者は之を私に彫刻すへからす又は私に彫刻を命すへからす又右銀行紙幣に用うる所の紙品又は之に類似する紙品は之を私に製すへからす又は人をして之を製せしむへからす又は之を私に所持すへからす若し前第八十九条及ひ本条の数件を犯す者あるに於ては皆な国法に従て之を罰すへし

第九十一条 此条例を遵奉する銀行より発行したる銀行紙幣又は為換手形。約束手形其他証書の類は何人に限らす之を切抜き又は切裂き又は剝去り又は塗抹し又は孔を穿ち又は糊付にする等のことをなすへからす又人をして此等の事をなさしむへからす若しの此等の数件を犯す者あるときは其裁判所(又は府県の聴断主任官員)に於て之を裁判し其金高十倍の償金を銀行へ払はしむへし

第十二章 銀行に於て其紙幣引換を拒みし時の処分。特列監督役跡引受人等の取扱方並に公債証書の没入及ひ紙幣引換等の手続を明かにす

第九十二条 此条例第六十六条に規定する銀行の営業時間中其発行紙幣を其本店又は支店(銀行紙幣引換の事務を取扱ふ)に持参して通貨と引換を望むものあるとき其本店又は支店に於て之を拒み又は之を怠りて其引換をなさヽるに於ては右紙幣の持主は其趣を書面に認め之を其管轄地方官庁へ差出し其銀行へ掛合方を乞ふへし○尤頭取取締役其掛合方を止んとするときは其引換を拒みし旨趣及ひ其金額月日等を書面に認め頭取又は取締役之れに記名調印して之を紙幣持主へ渡すへし然るときは其持主は右書面を地方官庁へ差出すのみにして別に銀行への掛合方は乞はさるへし

但し預り金の返却を拒み又は怠りたる時も亦其預け主たる者は本条に準して申請することを得へし

第九十三条 右地方官庁に於て紙幣持主より銀行へ掛合方の書面を領受するときは直ちに其銀行へ掛合ふへし而して其掛合状及ひ持主より差出したる書面の写を紙幣頭へ送達して其由を報知すへし尤紙幣持主より頭取又は取締役の調印したる書面のみを受取りたるときは唯其書面を紙幣頭に送致するのみにして銀行へ掛合に及はさるへし

但し紙幣頭へ報知せし書面の写は其地方官庁に蔵め置くへし

第九十四条 右地方官の報知を得るに於ては紙幣頭は速かに検査の官員を命遣し其事実を推糺し其背戻の事実相違あらさるときは都て其銀行の営業を差止め金銀其他の出納を禁すへし

第九十五条 前条の如く営業を差止められたる銀行の頭取取締役支配人其他の役員は諸手形。諸証書類又は抵当物。地所等を他人へ譲り渡し又は売渡すへからす又他人より金銀其他の物件を預るへからす若し頭取取締役支配人其他の役員等此箇条に背き或は譲り渡し又は売渡し又は預り又は払方の引受をなすことあるに於ては紙幣頭は督促して其金額を償はしめ之を其元に復せしむへし

第九十六条 紙幣頭は更に大蔵卿へ禀議し特例の監督役を命遣し其銀行の実際諸般の取扱を推究して其事実を詳明に報知せしむへし而して其背戻の事実相違なきに於ては紙幣頭は其銀行より出納寮に預け置きたる公債証書を没入すへき旨を(右報知を得たる日より三十日以内に)申渡し其公債証書を取上くへし

第九十七条 右諸般の手続了りし後ち紙幣頭は大蔵卿への禀議を経て凡そ此銀行の紙幣を所持する者は都て之を大蔵省に出して其引換を乞ふへき旨を公告し相当の時日を以て之を引換遣はすへし而して其引換たる紙幣は総て此条例第五十一条の手続に従ひ之を焼捨て其趣を新聞紙其他の手続を以て世上に公告すへし

第九十八条 紙幣頭は出納国債の両頭に恊議し此条例第九十六条銀行より没入する所の公債証書を通貨又は其銀行紙幣を以て公売又は私売とも爾時大蔵省の便宜に従ひ之を世人に売渡すへし尤其趣は新聞紙其他の手続を以て世上に公告すへし

第九十九条 此条例第九十六条に掲くる所の特例監督役の報知を得之か処分をなすに於ては紙幣頭は即ち右銀行の跡引受人を命し其銀行の諸簿冊及ひ各種の資産等を取押へ諸貸付金。立替金を取立たる上にて其裁判所(又は府県の聴断主任官員)に謀りて滞り貸金類及ひ銀行の所有物を売払ひ其集合金を以て其銀行の諸借財又は預り金其外を償却し過金あれは株高に応して之を株主へ割返し不足あれは都て銀行の株高及ひ其所有物を限りて相当の分散をなさしむへし

第百条 右借財又は預り金等を償却するには紙幣頭より新聞紙其他の手続を以て三箇月間世上に公告し其銀行に貸金預け金等ある者は右時限中に申出てしめ其事由と証書類とを検按し紙幣頭は厚く之に注意し適正の処分を以て貸方に賦当償却すへし

第百一条 此条例を遵奉する国立銀行の株主等は仮令ひ其銀行に損失又は其他の事故ありて其銀行鎖店分散することあるとも其株主等は其創立証書に於て掲載したる株式金額のみを損失するの外其鎖店分散に付て別に賦当出金を受くるの責め勿かるへし

第百二条 紙幣頭は此条例第九十六条に掲くる所の処分をなすに際し其銀行より尙ほ請願することありて其状実を具陣する時は監督役を出せし日より三十日以内(郵便逓送日数を除く)ならは其地方官庁に謀り更に其実況を詳悉して全く其背戻せさるの実証あるに於ては紙幣頭は之を大蔵卿へ禀議し而して之を宥恕すへし尤右の請願書は必す其地方官庁を経て之を紙幣頭へ差出すへし

但し此宥恕をなす時は紙幣頭は速かに其趣を出張の監督役に達して暫らく其処置に取掛ることを見合せしむへし

第百三条 此条例第九十二条に掲載するか如く銀行紙幣の引換或は預り金の返済を拒み之か為め生する処の費用即ち紙幣持主或は預け金ある者の出願入費及ひ諸検査推糺の入費。跡引受人の入費等は都て相当の処分を以て紙幣頭之を取極め其銀行より之を弁償せしむへし

第十三章 銀行平穩鎖店の手続及其紙幣引換方等の事を明かにす

第百四条 此条例を遵奉する銀行三分二以上の株主等の恊議に従て平穏に分散又は鎖店せんとするには其銀行の頭取支配人より其銀行の名印を以て其決議の旨趣を紙幣頭に申牒し其承認を得て後ち三箇月間新聞紙其他の手続を以て世上に公告し発行紙幣の引換方其他銀行に属する取引の清算を詳載したる報告を製して之を世上に公告すへし

第百五条 右の公告をなしたる日より其銀行は其引換へたる銀行紙幣を以て予て山納寮に預け置きたる公債証書の内を取戻すことを得へし尤其公告の日より半箇年を過き其銀行の簿冊上に於て尙ほ世上に残在する銀行紙幣あるに於ては其員額丈けの通貨を出納頭に差出し右預け置きたる公債証書の全額を取戻すことを得へし然る上は其銀行紙幣の世上に残在する分は大蔵省に於て之を引換へ銀行の株主等は一切其引換の責に任せさるへし

第百六条 右鎖店したる銀行より其残在銀行紙幣引換のため通貨を差出すに於ては出納頭は之を領受し其趣を詳記したる受取証書を製し之を其銀行へ下付すへし

但し出納頭は右受取証書の外に預り証書を製して之を紙幣頭は回附し置其残在銀行紙幣引換の為め右通貨の受取方を要するに於ては何時にても之を紙幣頭へ渡すへし

第百七条 右預り証書を領受するに於ては紙幣頭は大蔵卿の禀議を経て相当の期限を定め新聞紙其他の手続を以て之を世上に公告し其残在銀行紙幣の引換方に従事すへし

第百八条 右の手続を以て引換たる銀行紙幣は此条例第五十一条の規定に従て之を焼捨し其趣を世上に公告すへし尤右に属する諸計算其外とも紙幣頭国債頭出納頭は各其簿冊に詳記し置くへし

第十四章 銀行訴訟の取扱及ひ罰金処分の事を明かにす

第百九条 此条例を遵奉して創立したる銀行若し他の会社又は一般の人民を相手取り訴訟するか又は他より此銀行を相手取り訴訟せらるヽかのときは都て一般の訴訟法に従ひ其裁判所(又は府県の聴断主任官員)之を裁判処分すへし

第百十条 此条例に於て規定せる罰金を以て処置すへき罪科に付ては裁判所(又は府県の聴断主任官員)之を裁判処分すへし但し此条例中現に罰金の明文無き箇条を犯すことあるは其時に当り其裁判所(又は府県の聴断主任官員)に於て相当と思考する罰金(三円より少なからす五十円より多からさる額数)を右犯罪の銀行又は頭取取締役其他の役員に命すへし

第十五章 銀行納税の事を明かにす

第百十一条 此条例を遵奉して創立したる銀行は追て政府に於て制定施行する所の収税規則に遵ひ相当の稅金を納むへし

第十六章 条例の更正及ひ廃止の事を明かにす

第百十二条 此国立銀行条例は政府の都合に依り要用の事あれは何時にても之を増補し又は之を更正し又或は之を廃止することあるへし但し右増補其他の節は直ちに其由を世上に公告すへし

(Source:書籍「國立銀行條例附成規」)

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