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万国郵便連合条約 1877年06月01日

 万国郵便連合条約(ひらがな化、一部新字体化)


萬國郵便聯合條約

千八百七十四年即ち明治七年十月九日瑞西国ベルン府に於て締結せる万国郵便連合条約

下に記名する各国政府の全権公使は衆員の協議により更に批准を得へきものとして左の条約を修整せり

第一条

締盟の諸国は各々其郵便局の間に郵便物を交換せん為め万国郵便連合の名義を以て単一の郵逓邦疆を画すへし

第二条

此条約に遵て交換すへきものは連合の諸国より発し連合の諸国に逓送すへき信書端書書籍新聞紙諸般の印刷物其他商品の見本公用及ひ商用上の書類とす

又連合の諸国と連合外の諸国の間に前節記載の郵便物を交換することあるへし但し此交換は少なくも二個以上連合の州郡を要するときに限るへし

第三条

連合疆内に於て払はしむへき郵便税は前払にて信書一通二十五センチム一センチムは我か凡そ一厘九毛に当ると定む可し然れとも通貨其他計算上の異同を調理せん為め右定税を多少増減するは各国其自由に任すへし尤も此増減は三十五センチムより過超せさるへく二十センチムより減少せさるへし

重量十五グラムに過きさる信書は一通となすへし故に此重量に超る信書は毎十五グラム若しくは其分数毎に一通つヽの定税を払はしむべし

前払せざる信書は其届先の国に於て二倍税を払はしむへし郵便端書は前払するを以て定則とす尤も其税額は前払信書定税の半減たるへし若し其税額に分数を生するか如きは之を全数に充てへし

連合の疆内に於て海運の路程三百海里以上に及ふものは通常税の外更に増税を払はしむ此増税は連合疆内に於て前払信書定税の半額に超ゆへからす

第四条

公券及ひ商用上の書類商品の見本新聞紙仮綴又は本綴の書籍、雜誌、楽譜、名刺書、名録、大意報告書、又は広告書類は活版木板に拘はらす石版筆書写真を問はす連合全国を通して一箇七センチムつヽの定税を払はしむへし然れとも通貨其他計算上の差同を調理せん為め右定税を多少増减するは各国其自由に任すへし尤も此増减は十一センチムより過超せさるへく五センチムより低減せさる可し

重量五十グラムに過きさるものを以て一箇となすへし故に此重量に超るものは五十グラム毎に若しくは其分数毎に一箇の定税を払はしむへし

連合疆内に於て海運の路程三百海里以上に及ふものは通常税の外更に増税を払はしむへし

但し此増税は連合疆内に於て此種の郵便物より払はしむへき定税の半額に過くへからす

此種の郵便物の最大重量は商品見本類を二百五十グラム其他の郵便物は総て一千グラムと制限すへし

連合の各国政府は其国の政令法度に矛盾して発行せる此種の郵便物を其国境を通して逓送配達せさるの権利を有すへし

第五条

第二条に記載したる郵便物は書留を以て逓送するを得べし

各書留の郵便物は前払せざるへからす

前払は書留郵便物又は書留にあらさる郵便物も同様たるへし

書留手数料及ひ書留を領受したる報知の手数料は之を発出する国の内地郵便成規に遵て取立可き金額に過くへからす

非常変災を除くの外其他の原因により書留郵便物を毀失するときは毀失を醸したる地の郵便局又は其海運を取扱たる局より五十フランク一フランクは我凡そ十九銭に当るの償金を其差出人又は差出人の望みにより受取人へ払ふへし尤も国法により書留郵便物の危難弁償を担保せさる郵便局は此限にあらす

此償金は成丈け遅滞なく払ふへし若し遅滞するも其請求を促したる日より一ヶ年を過くへからす

請求を促かすの時限は最初其書留を差出したる時より一ヶ年の中に促かすへし此期を過くれは其請求を許るさす

第六条

各種郵便物の前払は之を発出する国に於て発行せる郵便切手又は郵便封皮を以てすへし

前彿せさる又は不充分に前払したる新聞紙又は其他の出板物は之を逓送すへからぬ尤も其他の郵便物は前払せさるも不充分に前払せるも総て前払せさる信書と見做して之を逓送し信書定税の二倍を取立へし但し郵便封皮或は切手を以て多少の税を払へるものは之を引去り右倍税に算入すへし

第七条

連合疆内に於ては郵便物を再達の為め何等の増税をも取立へからす

然れとも連合の一国内に発したる其内地逓送の郵便物を再達の為め連合の他国へ其内地逓送として差立るときは其届先の郵便局に於て其内地逓送税を増加すへし

第八条

郵便事務に関したる公用信書は都て無税にて逓送すへし尤も右公用信書の外は無税又は減税逓送を許るさす

第九条

既に記載したる第三第四第五第六第七条に依憑して領受せる金額は各局の所得として之を収む可し故に連合の各郵便局は互に計算を保つに及はす

信書其他の郵便物は前数条に記載する如く当然払はしむへき税額の外発出地又は到着地を間はす差出人或は請取人より何等の税をも取立へからす

第十条

連合の疆内を通して継越郵便を往復するは正に其自由を保証すへし故に連合の各郵便局は其時の都合と事務の緩急に依り閉嚢又は開嚢を以て其媒介国を通し互に継越物を逓送交換するは全く其自由に任すへし

閉嚢又は開嚢は其郵便局の任意を以て最も速達すへき線路へ向け之を逓送すへし若し数条の線路均しく速達し得へきか如きは其差立局於て其最も速達し得へき線路を選定するの権理を有せり

信書其他の郵便物の数夥多にして継越局の手数を煩はすに足るものヽ如きは閉嚢に仕立るを以て通例とす但し差立の郵便局は其因故を告知すへし

差立局は其継越局に対して開嚢又は開嚢に拘はらす信書は正量キログラムに付二フランク第四条に揭載せる郵便物は正量キログラムに付二十五センチムつヽ手数料として払ふへし

一の媒介局を通して継越すへき郵便物の重量七百五十キログラム以上に至るときは此手発料を増加して信書は四フランク第四条の郵便物は五十センチムとなすべし

然も継越郵便の為め是迄現に手数料を取立さるか或は下低の課金を収入し来たる場合に於ては従前の振合に遵ふ可は勿論のこととす

連合の纒内に於て諸程三百海里以上を通し継越物を海運するときは其海運の取扱をなせる若しくは其事業を維持する郵便局は其海運に属する費用を領受するの権理を有すへし

連合の各局は此海運に属する費用の成丈け減少せんことを勤とむへし

海運の事業を維持する郵便局は信書は正量キログラムに付六フランク五十センチム第四条の郵便物は正量キログラムに付五十センチムを過ぎさる金額を其差立局より要請するを得へし

此海運の費用は前節記載の金額より決して多からさるへし故に現費より多き金額を海路運送の費用として払ふへからす

閉嚢又は開嚢に拘はらす継越郵便物の重量を整調せん為め双方の協議を以て其勘定期限を約し会て二週開逓送せしものヽ計算をなすへし此計算は他日精算仕上けを為す迄双方の郵便局に於て計算の根基となすへし各局夫々精算仕上けを督促するを得へし

第一 継越物の逓送方法に於て必要な る変更をなせし場合に於て

第二 最前計算を為したる日より一ヶ年の期限の過き去るときに於て

本条の諸節目は印度郵便又は紐約桑港間の鉄道に依り合衆国を横截して到着せるものに其効力を及ぼさヽるものとす斯の如き郵便事務は其相関渉せる郵便局の間に取極めたる一種の約条として其取扱を続くへし

第十一条

連合の諸国と連合外の諸国の間の約束は即今存在する又は将来締結すへき一種の条約に依て之を整理すへし

連合国外に逓送すへき郵税は前節一種の条約に依て之を定む可し此場合に於ては連合内の定税に右の税額を加ふへし

第九条の節目に従て連合内の定税を左の如く割合ふへし

第一 連合の差立局は他の外国へ差立たる前払郵便物より其連合内定税の全額を収領し得へし

第二 他の外国より発せし前払せさる郵便物を受取たる局は其連合内定税の全額を取領し得へし

第三 他の外国と閉嚢を交換する連合内の郵便局は其外国より到着せる前払の郵便物及ひ其外国へ差立たる前払せさる郵便物より其連合内定税の全額を収領し得へし

第一第二第三項に記載せし場合に於て外国と郵便物を交換する局は継越の為め何等の勘定を要求するを得す然れとも其他の場合に於ては総て第十条の箇条に遵て継越の為勘定を求むるを得へし

第十二条

価額公記の書状及ひ郵便為替証書の交換は連合の数国若しくは其群国の間に特別の約条を以て之を定む可し

第十三条

連合各国の郵便局は此条約を実施せん為め協同合議を以て必要なる細目及ひ順序を規画し以て細目規則を定む可し

此細目規則の条款は協同合議を以て尚ほ之を変更し得へきは勿論たるへし

総て連合に干渉せさる事件例へは分界地の交換方法近国を通して低税逓送の区域を定め郵便為替証書及ひ価額公記書状等の交換方法を定むるか如きは各局に於て夫々適切の処分をさすべし

第十四条

此条約の諸条款は各国内地の郵便成規を変更するの効力なきものとす且郵便事務をして一層簡便ならしむるの目的を以て数国相連結し或は締盟するの自由を束縛することなし

第十五条

万国郵便連合総理局の名義を以て一の中央局を置き会同を以て選挙したる一の郵便全権をして之を担当監検せしむ可し其諸費の如きは連合各国より之を給す可し

此総理局の主務は万国郵便事務に関涉せる各般の報知を拾収し之を上木し之を頒布すへし且若し連合の両国異議を生するか如きは其告発を得て之か說明を附すへく、細目規則を変更するに臨んて先つ其問題を解知すへく、一般に係る計算を簡易ならしむ可く殊に第十条の出納を詳明ならしむ可し総て連合全国に関する利害を攻察し宜に隨て之を裁理すへし

第十六条

此条約の意味を説解するに係り連合内の二局以上異論を搆ひるときは中裁判に依て之を断決すへし故に異論を生したる各局は此事に関係なき連合内の他局を推して之に当らしむ可し

此断決は中裁判員の多数を以て定む可し若し同数両分するか如きは此中裁判員たる者斎しく此事に関係なき他局を推して更に其断決をなさしむ可し

第十七条

海外の諸国新たに此連合に加入せんと要せは左の順序に照凖すべし

第一 連合に加入せんと欲するの国は万国郵便連合総理局の事務を主理する全権に之を請願すへし

第二 連合に加入せんと要せは連合条約の諸節目を履行せさるへからす尤も海路逓送の経費の如きは別種の恊議に遵ふへし

第三 連合に加入せんとせは先つ郵便交換条約既整国の全権即ち直接の関係を有する国の全権の間に於て協議を得んことを要す

第四 此協議を遂んか為め万国郵便連合総理局を主理せる全権は若し機会を得は紹介する全権と加入を希望する全権の会議を命すへし

第五 此協議整頓するときは万国郵便連合総理局を主理せる全権より之を連合の諸国に報知すへし

第六 之を報知するの日より算して六週間の中に故障を発するものなきときは其加入を許可せしものと看做し主理の全権より加入の全権に其事を報知すへし然る後真主理する全権の政府と其加入せる全権の政府と特命を以て其加入を確実ならしむ可し

第十八条

此条約に加はる各国全権公使は少なくも毎三ヶ年に於て会同合議し以て連合の方法を完全にし以て緊要の釐正を加へ以て一般の得失を論定すへし

発声の権理は各国各々一とす

各国一員若しくは数員を出して代理せしむるも或は他国の委員をして其代理を兼さしむるも妨けざることなし

然れとも一国の委員は其自国を併せて二ヶ国を限り代理するを得へきは勿論たるへし

次後の会同は千八百七十七年仏国巴黎府に於て之を開くへし然れとも少なくも連合国の三分一のものより其期を急促するは之を縮すへし

第十九条

此条約は千八百七十五年即ち明治八年第七月一日より施行すへし但し施行の期限は当日より三ヶ年と定む可し

満三ヶ年後に至るも尚ほ此期を伸長するを得へし然れとも連合を脱せんとするの各国は一ヶ年前の報告を以て退去するの自由を有す可し

第二十条

此条約実施の日より是迄各国及ひ各局の間に取結たる別種の条約中此条約の箇条に抵触するもの及ひ第十四条の節目を妨害せさるものは総て廃止すへし


此条約は成丈け速かに批准を要すへし其最も遅延に至るも実施前三ヶ年を出へからす但し批准の交換はベルン府に於て執行ふへし下に掲けたる各国政府の全権公使は此条約を証せん為め千八百七十四年即ち明治七年第十月九日ベルン府に於て手書記名するもの也

 各国政府の全権公使手記記名は略之

(Source:日本公文書館 万国郵便聨合条約へ連盟の件 C04017598200)

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