海戦の場合に於ける中立国の権利義務に関する条約(ひらがな化、一部新字体化) 条約第十二号 海戰ノ場合ニ於ケル中立國ノ權利義務ニ關スル條約 第一条 交戦者は中立国の主権を尊重し且中立国に於て寛容の結果其の中立違反を構成するに至るヘき一切の行為を中立領土又は領水に於て行ふことを避くることを要す 第二条 交戦国軍艦か中立国領水に於て捕獲及臨検捜索権の行使其の他一切の敵対行為を行ふことは中立の侵犯を構成するものとし之を厳禁す 第三条 船舶か中立国領水に於て捕獲せられたる場合に於て該国は捕獲せられたる船舶か尚其の管轄内に在るときは其の職員及船員と共に之を解放する為且捕獲者か右船舶に乗込ましめたる艦員を抑留する為施し得ヘき一切の手段を尽すことを要す 右捕獲せられたる船舶か既に中立国の管轄外に在るときは捕獲国政府は右中立国の要求に依り該船舶を其の職員及船員と共に解放することを要す 第四条 交戦者は中立領土内又は中立領水に在る船舶内に捕獲審検所を設くることを得す 第五条 交戦者は中立の港及領水を以て敵に対する海軍作戦根拠地と為すことを得す殊に無線電信局又は陸上若は海上に於ける交戦国兵力との通信の用に供すヘき一切の器械を設置することを得す 第六条 中立国は如何なる名義を以てするを問はす交戦国に対し直接又は間接に軍艦、弾薬又は一切の軍用材料を交付することを得す 第七条 中立国は交戦者の一方又は他方の為にする兵器、弾薬其の他軍隊又は艦隊の用に供し得ヘき一切の物件の輸出又は通過を防止するを要せさるものとす 第八条 中立国政府は自己と平和関係を有する国に対し巡邏の用に供し又は敵対行為に加るヘきものと信すヘき相当の理由ある一切の船舶か其の管轄内に於て艤装又は武装せらるることを防止する為施し得ヘき手段を尽すことを要す中立国政府は又巡邏の用に供し又は敵対行為に加るヘき船舶にして其の管轄内に於て全部又は一部戦争の用途に適合せしめたるものは総て其の管轄外に出発することを防止する為同様の監視を為すことを要す 第九条 中立国は其の港、泊地又は領水に交戦国軍艦又は其の捕獲したる船舶を入らしむることに関して定めたる条件、制限又は禁止を交戦者双方に対して均等に適用することを要す 中立国は其の定めたる命令及規則を遵守することを怠り又は中立を侵害したる交戦国艦船に対し其の港又は泊地に入るを禁する...